風呂なしアパートに住み夜になると洗面器を抱えて銭湯に通う日常も今は昔のことだが、風呂付き住宅の普及に伴い銭湯は衰退産業となったそうで、 1960 年代に 2500 以上あった東京の銭湯の数は昨年には 544 へと急減しているという。ところがこの下降トレンドに変化が起きつつあって件数が減少する一方で利用者数は昨年度ののべ利用者数が 2 万 3000 人台で下げ止まり 1 日平均入浴人員は前年比で増加しているというのだ。若者が都内の先頭を知るきっかけの 1 つになっているのが銭湯で開かれるユニークなイベントだという。浴槽をステージにミュージシャンが熱演を繰り広げる「銭湯フェス」だけでなく、飲料メーカーとのコラボレーション、トマト色の湯船に入れる「トマトの湯」などの斬新な企画は高い注目を集めているそうなのだ。
経営者は銭湯に人を呼び込むための窓口を作って人を呼び込むための活動を続けることが重要だと語るが、この銭湯では初代が設備を含めた入浴の体験を整え 2 代目は入浴後にくつろげる待合室の拡張に力を入れてきたそうなのだが、 3 代目である現在の経営者が進めているのはいわば銭湯の機能拡張で社会との接点作りなのだという。機能拡張の一環として今年 3 月にオープンするのが銭湯に隣接する複合施設の 1 階には、お酒や食事が楽しめる飲食スペースを作り、 2 階は仕事をすることもできる書斎・作業スペースで、 3 階は貸し切りができる個室が出来る予定だという。「 2 階で軽く仕事をして、終わったらお湯でひとっ風呂、そのあとに 1 階で一杯やる、といった使い方をしてもらえたら」と期待しているそうなのだ。
銭湯そのものの改善も続けているそうで、銭湯の初心者が多くやってくることから浴室内には入浴の作法をわかりやすく記した手製のイラストポスターを掲示し、シャンプーやリンスなどのアメニティーに高級ドライヤーなども備え付けられており、女性客が手ぶらで入っても困ることはないうえに、 50 円払えば旅館などで用いられる高級な今治タオルを借りることも可能という充実ぶりだという。最初はイベント目当てにこの銭湯に来た若者も銭湯の居心地のよさを知ると足繁く通うようになるという。入浴は 1 回 470 円でカラオケや居酒屋に行くよりずっと安く長い時間滞在し人とコミュニケーションを取ることができる。公衆衛生のための施設からちょっとした非日常を味わうレジャーの場へと銭湯の存在意義は急激に転換しつつあるという。
銭湯はデジタルデトックスにはもってこいの場所で、このような現代社会特有の疲れを癒やしてくれる場所と言えるそうなのだが、また銭湯の注目すべき点は気持ちの疲れだけではなく 身体の疲れを癒やしてくれるところにもあるというのだ。近年の健康志向の高まりの中でヨガやフィットネスなど身体の調子を整える為のアクティビティに注目が集まるが、銭湯もまたそうした目的を持つ人々に十分な効果を発揮するのではないかというのだ。銭湯は昔からあるコミュニケーション場所だとされていたが、あらためて現代社会の中での存在を考えるとサードプレイスとしてコミュニケーションの場でもあり、一人でゆっくりすごすこともできさらには身体の調子も整えてくれる大変魅力的な場所であると言えるようになっているそうなのだ。
若い世代の銭湯の利用が増えているとはいえまだまだ銭湯産業は厳しい状態にあるとされているが、メディアで銭湯ブームを取り上げられることも増えているが、やはりレジャースポットの一つとしての紹介になりがちだという。銭湯の古い感じを面白いと思って来る人もいるが、銭湯に非日常的な場としての役割を求める人たちには普通の銭湯よりも スーパー銭湯の方が人気はあるという。銭湯が今後も続いていくためには若い人たちも日常的に来てくれて居場所と感じてくれることが必要だとされ、銭湯というのは「ケの日のハレ」でヘトヘトに疲れた一日の終わりにふらっと行ってお酒を飲んで帰って次の日も頑張ろうと気持ちをリセットする場所で、ちょっとしたご褒美というような使い方をしてくれる人が増えると嬉しいという。
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