のぽねこミステリ館

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2005.05.29
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子どもたちは夜と遊ぶ(下)

~講談社ノベルス~

 いつものような形での内容紹介はなしで。
 読みながら何度となく涙したし、心もゆさぶられたし、感動した。
 真紀ちゃん(なぜか地の文でも常にこう表記されていたので)の、彼氏とのこと。ただひたすらに胸が痛んだ。どうして、庇えるの?
 秋山先生は、彼になんと言ったのだろう。私には分からない。ただ、上巻を読みながら、思ったことを、ここでも考えた。これは、もっと前から、認識していたこと。言葉は人を殺すことができる。人生をめちゃくちゃにすることができる、ということ。もちろん、言葉は同時に、人を救うことができる。このことを無視するつもりはない。ただ-。ただひたすらに苦しくて辛くて悲しくてどうしようもないとき、あるいは、そういう人が身近にいたとき、何を言ってよいのか分からない、あるいは、何を言われたいのかが分からない、そういうとき。私なら、自分がつらい状況にあるときは、ただ誰かにそばにいてもらえたらよいと思う。そこに、言葉はなくてもよい気がする。なんだか変なこと書いてしまっている気がする…。
 くくりとしてはミステリになるのだろうが、そんなことは考えずに読みたかった。前に『名探偵の掟』を読んでいたせいか、「i」の正体とかをどこかで勘繰りながら読んでいる自分がいて、ちょっといやだった。たしかに「i」の正体はふせられているし、ミステリの謎解きにあたる部分もある。あるけれども、そんな枠にはおさめたくない、いろんなことを考えさせてくれる一つの物語だと思う。あるいは、いくつもの物語の交錯(あらゆる小説がそうだともいえると思うが)。いま、交錯、といったのは、なんだか書くのが恥ずかしいけれど、人間社会に関して言うと、それは何人もの人間から構成されている。人間一人一人には、それぞれの人生があって、それは一つの物語なのだと思う。月子さんの物語、狐崎さんの物語、浅葱の物語…。そしてそれらの物語は、どこか重なり合う。月子さんと狐崎さんが話しているとき、二人の物語は、表面的には重なっている。一人称の地の文で、それぞれが思っていることは完全には一致しないにしても。
 辻村さんは、前作は特に顕著だったが、登場人物の描写がとても細かい。それぞれの登場人物の「人生」というのを、ちゃんと考えているんだろうな、などと私は思っている。
 素敵な、という形容は、これだけ悲しく辛い出来事の描写に満ちた物語にはふさわしくない気がする。ただ、私はこの物語を読んで、とても考えさせられ、感動した。良い読書体験だった。

 蛇足だが、前作同様、表紙を並べると、一枚の絵になる。
   *
 本書の章題の一つにもなっているベン・ライス著『ポビーとディンガン』。これは私にとって、学生時代に珍しく衝動買いした本の一冊である。読み直そうと思いながら、結局一度読んだきりで、内容もあまり覚えていない。ただ、この本が言及されていて、なんだか嬉しかった。





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Last updated  2005.05.29 13:34:26
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早速・・・  
タップ さん
読んでみようと思い、図書館2箇所はしごしましたが
ありません・・・・・・・
もう少しさがしてみます。(買うしかないのか?)
では、また。 (2005.06.08 17:21:43)

タップさんへ  
のぽねこ  さん
辻村さんの本は素敵ですよ。ぜひ読んでみてください(といいながら、私はタップさんから紹介いただいた本を読めていませんが…すみません)。
では、失礼します。 (2005.06.08 20:40:07)

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