のぽねこミステリ館

のぽねこミステリ館

PR

Profile

のぽねこ

のぽねこ

Calendar

2005.10.29
XML
占星術殺人事件

~講談社ノベルス~

 昭和11年の梅沢家一家殺人事件の謎は、40年経った今でも、解かれていなかった。
 占星術師・御手洗潔のもとに、なかば助手のような立場にいる石岡和己。二人のもとへ、ある女性が訪れた。警察官だった自分の父が、40年前の事件に関わる手記を残していた。彼女の知人が、御手洗にトラブルを解決してもらったときき、相談にきたという。
 御手洗はその事件を知らなかったため、石岡は事件の概要を説明する。
 梅沢平吉という画家がいた。彼は占星術に凝っており、また、人形にも関心を抱いていた。
 彼の名による手記が残っていた。そこには、以下のようなことがかかれていた。 母親がみな同じというわけではないが、彼には七人の娘がいた。一人は年も違うので除くとして、残りの六人は、みなそれぞれを支配する星座が異なっている。彼女たちの肉体の一部ずつを使って、究極の存在「アゾート」を作ろう、という。アゾート造りに使わなかった部分の遺棄の方法も記していた。
 そして、実際に事件は起こる。まず、平吉自身が、密室状況で殺されていた。雪の足跡もからんでくるものだった。
 そして、娘たちのうち、アゾート造りには関係なかった女性も殺された。彼女には、屍姦された形跡もあり、アゾート殺人事件とは別件と考えられていた。

 真相は、40年解かれていない。
 こうした背景を知り、依頼主が持ってきた手記を読んだ御手洗は、事件の「解決」のため、動き始める。

 数年ぶりの再読です。島田荘司さんのデビュー作です。
 はじめて読んだとき、このトリックにかなりの衝撃をうけたので、、正直トリックも犯人もおぼろげに覚えているままに読んだのですが、やはりすごい作品はすごいですね。梅沢平吉が密室で殺されていたというのを忘れていたので、そこも興味深かったのはあるとはいえ、話のもっていきかたがいいです。「パズル」を解くために、効果的な順番で、情報が提示されているように感じました。
 ところで、御手洗さんはおだての利くタイプだったのですね。…そんな気はしていませんでしたが。
 竹越刑事に対する態度。ああいうのが大好きなのです。権力をかさに着せた傲慢な人間に真っ向から反抗する。自分の信じる生き方をまっすぐに。
犯人に対する思いやり(?)にも、やはり心をうたれます。そういえば、いま何作か御手洗さんシリーズを連想したのですが、彼はある種の犯人には非常に優しくふるまいますね。
 ところで、本作のトリックは某マンガがほぼそのままの形で使ったのだそうです。私はそのマンガは読んでいませんし、先の記述が正確でなければすみません。密室トリック、アリバイトリック、一人二役、顔のない殺人、なんでもよいですけれど、巷はミステリであふれかえっていますから、似たようなトリックが出てくるのは、それは仕方ないと思います。でもいくらなんでも、これを使う(少なくとも、借用したと思われても仕方ない形で使われたから、私もどこかで非難の言葉を聞いたことがあるわけでしょう)のはどうかと。
 たしかに、本作は、トリック以外にも読ませてくれる部分はあります。けれども逆にいえば、そのトリックが核心にあるわけで、さらにそれを効果的にプレゼンしていることが、本作の評価を高めているのでしょう。なのにその「核心」の部分を使いますか?本来ならそのマンガを読んだ上で以上のような批判をすべきだと思いますが(マンガはマンガでストーリーテリングがうまくて、感動させてくれるのかもしれませんけれど)、まあしばらく読むことはないでしょう。 私には、そのマンガでトリックを知った人があとから本作を読んだときに驚きが減ってしまうのが、残念なのです。たとえそのマンガの「核心」はそのトリックにあるのではなく、別のところにあるのだとしても。
 ともあれ、私はトリックも知らないままに本作を読めて、本当によかったです。
 やっぱり御手洗さんシリーズはいいですね。他にも感想を書いていない作品があるので、また読んでいきたいです(一作を除き再読になりますが)。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2005.10.29 11:15:53
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Comments

のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: