のぽねこミステリ館

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2007.04.07
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~集英社文庫、2001年~

 OL・片桐陶子さんが主人公の(連作)短編集です。連作をかっこに入れてみたのは、『ななつのこ』や『魔法飛行』のように、ラストに全ての話がつながって一つの長編のようになるというよりは、個々独立した短編という性格が強いように思うからです。ですが、それまでの話がリンクしてくることもありますので、読むときは前から順番に読む方がよいかと思います。
 中には、もはや(狭義の)ミステリという形容が似合わないような短編もあるので、いつものようにミステリの謎の提示をメインにした内容紹介が書きにくいです。それぞれの短編の標題を挙げた後に、つらつらと感想を書こうと思います。

「月曜日の水玉模様」
「火曜日の頭痛発熱」
「水曜日の探偵志願」
「木曜日の迷子案内」
「金曜日の目撃証言」

「日曜日の雨天決行」

 毎日、満員電車で通勤している陶子さんは、ある月曜日に、一人の男性にいら立ちます。その男性は、5本のネクタイを、曜日ごとにきっちり使い分けている男性でした。彼はいつも座席に座っているのですが、陶子さんが下車する駅よりも先におりるので、彼の前に立っていれば、席に座ることができるはずなのですが…。その日、彼はいつもの駅で降りる気配がありません。それどころか、陶子さんと同じ駅で降りるのでした。
 その日、オフィスの窓掃除をしていたのが、その男でした。その頃、オフィスで噂になった会社荒らしの話。まさかその男が、と思う陶子さんですが、そのときに彼女のつとめるオフィスで起こった<事件>が、正式に彼と陶子さんが話をするきっかけになります。彼は、萩広海さんという名前でした。
 その<事件>は、萩さんがうまい発想で解決することになります。それからも陶子さんはいろんな<事件>や出来事に関わり、多くの場合、萩さんも関わることになります。
 ある火曜日には、(萩さんたちが)他人の風邪薬を間違ってもらってしまったことから、他人になりすまして風邪薬を受け取るという妙な行動をする男性を知ることになります。
 ある水曜日には、萩さんが昔経験(実行)した、尾行の体験談が語られます。
 ある木曜日には、陶子さんが久々に先輩に出会った日、後輩の真理さんが迷子につかまってしまいます。
 ある金曜日には、オフィスのお金を盗んだということで一人の女性が疑われるのですが、もう一人の怪しい人物にはアリバイがあるという事件が起こります。
 ある土曜日には、出張で大阪に向かう陶子さんが、失恋したと考えている女性にアドバイスを、ある日曜日には、今にも雨が降りそうな曇天の下、接待ソフトボールが行われます。
 …結局、簡単にそれぞれの内容まで書いてしまいましたね。
 陶子さんは割とイラチで負けず嫌いな性格で、『ななつのこ』シリーズの駒子さんとは対照的です。一方で鈍感なところがほほえましいですね。

 本書の解説で、西澤保彦さんが次のように書いておられます。「加納朋子さんの作品世界に触れる度に、心温まる安らぎと同時に、まるで身体が引き裂かれるかのような痛みをも覚えてしまうのは私だけでしょうか?」
 即座に、「いいえ」と思いました。私も、加納さんの作品の感想を読むときは(北村薫さんでも、坂木司さんでも同様の感慨を抱くのですが)、痛みを感じます。基本的にはハッピーエンドなので、心も温まるし、涙することもしばしばなのですが…。
 この作品では、オフィスが主要な舞台ということもあり、会社社会のはらむ矛盾が一つのテーマだといえるでしょう。その他、「木曜日の迷子案内」に描かれるような、陶子さん自身の辛い過去、彼女の周辺の複雑な心境も、インパクトをもつ主題だと思います。この短編集の中で、一番泣きそうになったのが、その「木曜日の迷子案内」でした。

 最後に、本書の中から、気に入った一節を引用しておきます。



   *

 『月曜日の水玉模様』は、私が最初に読んだ加納さんの作品です。当時はハードカバー(集英社、1998年)で読んだので、そちらの画像もアップしておきます。





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Last updated  2007.04.07 06:26:39
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