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2007.07.16
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魔女の暦

~角川文庫、1975年~

 金田一耕助シリーズの中編集です。表題作に加え、「火の十字架」という一編があわせて収録されています。それでは、内容紹介と感想を。

「魔女の暦」
 昭和2×年5月。
 浅草にあるインチキ・レビュー、紅薔薇座で次に行われる興業の出し物は、題して「メジューサの首」。見物は、三人で一つの目を共有する魔女が、勇士に目を奪われて、さんざん翻弄されたあげく着物を脱いでいき、ダンスを披露する場面だという。配役は、脚本家をかいた柳井の発案であるが、多少の物議をかもした。魔女の三人―飛鳥京子、霧島ハルミ、紀藤美沙緒は、それぞれ劇団の中にパトロンがいるにも関わらず、若い碧川克彦と関係を持っているのだった。
 ところで、金田一耕助のもとに、犯罪の予告をほのめかすような、新聞からの活字の切り抜きで作られた奇怪な手紙が届けられた。差出人は、魔女の暦と名乗っていた。彼は手紙に不安を抱き、「メジューサの首」を見に行ったが、そこでついに事件が起こる。舞台の上で踊っている三人の魔女―そのうちの一人、飛鳥京子が、猛毒を塗られた吹き矢に刺されて絶命したのだった。
 捜査陣を嘲笑うかのように、魔女の暦はさらにめくられていく…。

「火の十字架」

 女性は、深川、浅草、新宿にそれぞれ男と劇場をもつ、ヌード・ダンサーの女王、星影冴子であった。ところが同じ頃、浅草パラダイスでは、男性の凄惨な遺体が見つかった。男性は、塩酸で顔や手足の一部をやられていた。金田一耕助の手紙にあった、「火の十字架の刺青をした男女が殺されていく」という言葉が想起される。男性は、塩酸によって、顔も、刺青も隠されていたのだった。
 戦時下、肉の饗宴を繰り広げた五人の男女に恨みを抱く男が復員してきて、顔面におおきなひきつれのあるその顔はいろんな人に目撃されていた。塩酸により顔を消された男は、パラダイスのオーナーの立花なのか、復員してきた男なのか…。

(以下の感想は、あるいはネタバレかもしれない部分もあるので、ご注意ください)
 「魔女の暦」にも「火の十字架」にも、「堕ちたる天女」事件が言及されています。その事件のために、浅草のそういう人々には、金田一耕助さんが有名になったのだとか。なお、「魔女の暦」は、正確な年代は伏せられていますが、『幽霊男』の事件よりも後のことになるようです。
「魔女の暦」では、「メジューサの首」のかつらのヘビがにょろにょろなるのがかわいかったです。横溝さんの文体は、生首がちょこなんと乗っていたり、へびがにょろにょろなったり、擬態語がかわいいのが好きです。これが映像化されるやいなや、グロテスクなものとなるのですが…。金田一さんも飄々としていますし、陰惨な事件な中にも無邪気さの感じられるところが、横溝さんの作品の魅力の一つだと感じています。
「火の十字架」は、解決編が良かったです。「○○のトリック」という小見出しのついたいくつかの節で、それぞれの謎が鮮やかに解体されていく過程にわくわくしました。金田一さん、かっこいいですね。
 それから、「火の十字架」では、旧仮名遣いにかわって新仮名遣いが普及していく過程にもふれられていて、そのあたりのことがよく分からない私には勉強にもなります。そういえば、私の祖父母は旧仮名遣いですね…。

*表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。





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Last updated  2007.07.16 09:34:03
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