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2008.05.24
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幽霊座

~角川文庫、1995年37版(1973年初版)~

 金田一耕助シリーズの短編集です。表題作「幽霊座」のほか、「鴉」「トランプ台上の首」の、計3編が収録されています。
 では、それぞれの作品について紹介とコメントを。

ーーー
「幽霊座」 東京七不思議ともいわれる稲妻座で、17年前、奇妙な事件が起こった。専属の歌舞伎役者を抱えるこの劇場の人気役者・佐野川鶴之助と、彼と人気を二分する役者・水木京三郎が演じた「鯉つかみ」という演目の中で、早変わりをする直前の芸の直後に鶴之助が消えた。そこには、鶴之助によって、友人の金田一耕助も招待されていた…。
 そして、昭和27年(1952年)7月。稲妻座では、当時の役者とほぼ同様の役者をそろえ、鶴之助追悼のため、「鯉つかみ」が演じられることになった。鶴之助のかわりは、彼の子供・雷蔵が演じることになっていたが、劇の前に届いたチョコレートにより、雷蔵は倒れてしまう。鶴之助の弟が急遽かわりを演じることになったが、彼は舞台の途中で殺されてしまうのだった。
   *
 私は、いま手元にある角川文庫に収録された横溝さんの作品は、ジュヴナイルを除き全て読んでいますが、厳密には、この一編だけは今回はじめて読みました。以前、テレビドラマで見てしまったこと、他の金田一耕助シリーズとずいぶん毛色が違うことから、なんとなく読めずにいたのです。


※脱線が長くなりますが、「女怪」( 『悪魔の降誕祭』 所収)では、金田一さんが思いを寄せる女性が事件の当事者ということもあり、やはり金田一さん自身の心情がクローズアップされる部分がありました。 『獄門島』 にかかわるきっかけは、金田一さんの友人の依頼ですが、その友人自身は事件が起きているときには既に故人となっているので、金田一さんと事件関係者の近しさは、ほとんどないように思います(早苗さんには恋心を抱きますが…)。

 …とまれ、ちょっと独特の雰囲気の作品でしたが、やっぱり面白かったです。失踪などの謎はともかく、その裏にあるどろどろした部分が興味深かったです。

「鴉」 昭和24年11月。休養のために岡山を訪れた金田一耕助は、磯川警部の案内で、ひなびた村の旅館に案内された。その旅館に婿にきていた男が、3年前、失踪してしまったという。同日、その村では神聖視されていた、鴉も殺されていたという。
 その事件からちょうど3年。男が帰ってこなければ、夫が消えた女性は新しく婿を迎えることになっていたが、関係者はそれぞれの思惑を抱え、ぎずぎすした雰囲気にあった。
   *
 派手な印象はありませんが、面白かったです。巨石の並ぶ台地の描写はとてもきれいで、想像がかきたてられました。

「トランプ台上の首」 昭和3X年11月。川の上でお総菜を売って歩く飯田屋の男は、新しい顧客対象となったアパートのお得意の客―ストリッパーのアケミ―が顔を見せないのを不審に思い、彼女の部屋をのぞこうとした。ところが、あたりには血の跡が。大家の許可をえて開いていた窓から部屋に入ると、部屋トランプの並んだテーブルの上には女の首がちょこなんと乗っていた…。
 首を切る場合、首が持って行かれるのが常であるが、この事件では、現場には胴体が残されていなかった。犯人は、なぜ首を残したのか…。
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ーーー

 全体を通して面白いのですが、本書の場合は、それぞれの短編のバラエティ豊かなのも嬉しいですね。歌舞伎という新しい舞台に、人間消失、そして切断された首…。なかでも「トランプ台上の首」はトリックも秀逸で、おすすめの一編です。
(2008/05/21読了)


*表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。





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Last updated  2008.05.24 07:31:19
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