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2008.07.22
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筒井康隆『暗黒世界のオデッセイ』


 解説の文章を引用すると、「本書は、小説家としての筒井さんの作品集ではなくて、漫画家、エッセイストとしての筒井さんの作品集」です。簡単な構成は以下の通りです。

ーーー
「二〇〇一年暗黒世界のオデッセイ」
「レオナルド・ダ・ヴィンチの半狂乱の生涯」
「星新一論」
「筒井康隆全漫画」 …17編の漫画を収録
「乱調人間大研究」

 第二章 天上天下唯我独尊
 第三章 アンコール万歳
 第四章 デマ・デマ・デマ
 第五章 ヒストリー大行進
 第六章 もうひとりのあなた
 第七章 気ちがいと紙一重
 第八章 乱調傾向分類表
ーーー

 章立てまで書きましたが、「乱調人間大研究」がすごく良かったです。…が、まずは順番に、簡単にコメントを。

「二〇〇一年暗黒世界のオデッセイ」は、昭和49年(1974年)時点での未来予想…それも暗黒の未来予想です。幸い、2001年段階ではこの作品ほどの世界になっていませんが、「分娩地獄」の話はどきっとします。もっとも、この作品上では、人口爆発のせいで、産科が足りなくなっているという想定ではありますが…。

「筒井康隆全漫画」…絵がむつごいですが、面白かったです。短編を漫画化した作品もオリジナルの作品もあります。
『笑うな』 所収)、「客」(『笑うな』所収)あたりが良かったです。「客」は、『笑うな』の記事では感想を書きませんでしたが、あらためて読むと深いですね…。
オリジナルでは、「カンニバリズム・フェスティバル」が、かなりブラックユーモアで面白かったです。「冠婚葬祭(葬儀編)」はブラックがすぎていますね。…くすっとなりましたけれど。

 さて、先にも書きましたように、「乱調人間大研究」が良かったです。

 第一章は、自殺志願の症例を専門書などから多く引用しています。

 第二章は、(行きすぎた)権力志向について。面白いところをいくつか引用しておきます。

「下に対して威張り散らす人間ほど、上からの圧力に弱く、自分以上の権力にはぺこぺこするという定説もある。[…]特に会社などのように、階級がはっきり定められているところでは、こういう人間は相手が自分の上役か下役かで驚くべき態度の急変を見せるから面白い」(227-228頁)
 このあたりは、島田荘司さんが書いているいくつかの文章を連想しながら読みました。

 第三章は、アルコール依存について。個人的にはお酒が嫌いなので、無理強いする人間は嫌悪しているのですが、しかしここでも指摘されているように、「日本では特に、酔っぱらいの狂態を黙認して咎めない習慣があり、それに甘えている酒飲みも多い。だからたまに批判されると、心外だから怒るわけだ」(233-234頁)。さらに、筒井さんはこう続けます。「どうやらアルコールに関して日本は、正気の人間よりも乱調度の高い人間の法が住みやすい国らしい」。
 個人的にはタバコは吸いません。吸う人が他人に迷惑かけずに吸う分には構いませんが、ぽいぽい捨てられているタバコを見ると、この人たちが職場や家庭でどんな方なのか知らないけれど、残念な人間なんだなぁと思っています。そんな昨今、タバコを1000円にしてみようという意見も出てきていて(禁煙者の私は賛成ですが)、とかく喫煙者には厳しい世の中になっています。
 …が、どうも飲酒の方は規制されていないような…?(私の無知ならすみません)。第二章とも関連しますが、えてして自分の下役に偉そうな人が下役にお酒を無理強いするのではないかと想像するのですが、部下はなかなか上司には反論しづらく、苦しむ、ということになるでしょう。酩酊による暴力事件や器物損壊事件などもあるでしょう。といって、タバコのように酒税もどかっと上げて、醜悪な酔っぱらいを減らそう、という風にはあまり動かないように思います。
 なおお酒にしても、自分の好みでたしなむ分にはまったく良いとは思っています。友人たちと楽しく飲む、素敵なことです。タバコにも通じますが、一部の残念な人間のせいで全てを否定する、というわけにもいきません。が、どうも腑に落ちない部分もありますね…。

 第四章の、デマが広まっていく過程や言い間違いについての話も面白かったです。

 ちょっと飛ばしまして、第七章では天才についての話です。歴史的に天才と認められる人たちには、みな異常なところがある、という話。いろんな天才たち(ドストエフスキー、ニーチェ、モーパッサンなどなど)のいろんなエピソードが紹介されます。同時に、現代は、こういう天才は生まれにくい(認められない)という指摘もあり、興味深かったです。

 ただ、こちらのエッセイ(?)は、いろんな研究者の名前を挙げながら事例を紹介してくれていますが、そうした参考文献も掲載してもらっていると良かったのかな、と思いました。「二〇〇一年暗黒世界のオデッセイ」では、参考文献が紹介されているのですが。

 この中で、「乱調人間」は、「一般社会に棲息している「少しおかしい」人間」という意味で使われています。が、どの章も、自分(あるいは、多かれ少なかれ誰にでも)にあてはまる部分がありそうです。

 とまれ、興味深い一冊でした。
(2008/07/21読了)





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Last updated  2008.07.22 06:43:30
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のぽねこ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) スパイシーチューリップさんへ コメント…
スパイシーチューリップ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) 流行りましたね!キラキラ系、あまり知ら…
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