コメントありがとうございます。

今では不思議な感じですが、実は本格的に小説そのものを読み始めたのも、横溝さんがきっかけなのです(中3までほとんど読書はしていませんでした)。当時は理解が追いつかない部分もありましたが、読書ってこんなに楽しいのかと感動したことを思い出します。

hirsakakiさんの本との出会いも、インクの匂いなども覚えておられるとのこと、素敵ですよね。

あらためて、コメントありがとうございました。 (2008.10.07 20:51:55)

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2008.10.06
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刺青された男

~角川文庫、1977年~

 横溝さんの10の短編を収録した作品集です。全体的に面白い短編が多くて楽しめました。
 では、それぞれの内容紹介と感想を。

ーーー
「神楽太夫」 おじについてキノコ狩りに出かけた私が出会った不思議な男。男は私に、この地の神楽について話をする。昔、神楽の太夫たちのあいだで殺人事件が起こったというのだ。
 いわゆる、顔のない死体ものの作品です。こうしてみると、横溝さんがこのテーマに力を注いでいたことがよく分かります。

「靨(えくぼ)」 私は数年ぶりにその宿を訪れた。蓑浦家のお嬢さん―浄美の夫が7年前に殺害されてから、宿は客をとらなくなったとのことだったが、宿に困っていた私は泊めてもらえることになった。そして、宿の女将から、その事件の話を聞くことになる。
 電車の友に読んでいたのですが、ラストあたりでは泣きそうになりました。悲しい物語ですが、素敵な作品だと思います。

「刺青された男」
 これはミステリ的要素はほとんどありません。…が、ぐいぐい読ませられました。

「明治の殺人」 謙三は、娘が結婚を希望している男の人柄を認めながらも、その結婚を許すことはできなかった。自分が、その男の父親を殺したから…。死期が近づいた彼は、親しい医師に娘と男の結婚に関する決断を一任する。
 こちらも、「靨」と並んで好きな作品です。謎の提示も魅力的ですが、なにより綺麗な物語です。「靨」と同じく、電車の中で泣きそうになった作品。

「蝋の首」 火事の起きた家に残っていた二つの焼死体。不審なことに、男女の遺体は少しももがいたような跡がなかった。医学者が二つの顔の復元を試みたとき、意外な事実が浮かび上がる。

「かめれおん」 学校横町で起こった殺人事件。現場付近で見られたレインコートの男は誰なのか…。
 こちらは、パズル的要素の強い作品だと思います。二人の主要人物の間で推理合戦が展開されるのも興味深いです。そして、ラストの一行が余韻を残して、素敵でした。

「探偵小説」 東北の地で起こった殺人事件を題材に、探偵作家が物語を展開する。その話を聞きながら、二人の友人はその話の不十分な点を指摘したり、物語をさらに広げたりする。
 語り手の軽快な語り口も楽しい作品です。

「花粉」 隣組で親しくしている沢村さんに、女優殺害の嫌疑がかかった。美穂子夫人は自ら探偵となって、事件の真相を暴こうとする。
 論理性に重点が置かれた探偵小説です。こちらも面白かったです。金田一さんも事件を解決する段階において悲しみを感じる方ですが、身近な事件に乗り出した美穂子さんの悲しみも大きく、読了後は切ないような気分になります。

「アトリエの殺人」 アトリエの中で、画家が殺された。そのモデルをつとめていた女性と、画家の友人の男性が現場を訪れ、男は事件の真相を暴く。 こちらも、ラストの一行が余韻を残します。

「女写真師」
ーーー

 上でも書きましたが、「靨」「明治の殺人」「花粉」あたりがお気に入りです。
 戦後すぐ…『本陣殺人事件』や『蝶々殺人事件』を執筆している頃の作品群らしいですが、どれも良かったです。
(2008/10/03読了)


*表紙画像は、横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。





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Last updated  2008.10.06 19:11:10
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横溝文学  
シモン さん
のぽねこさんこんにちは、シモンと申します。
西洋史データベースの他にも、推理モノに興味がわきました。
横溝さんの小説というと、年配と言われる年代にとってもある種の「古さ」を感じさせてくれて、昭和の戦前を垣間見せてくれるような情感があります。
私より確実に若いと思われるのぽねこさんにとって、そういう古臭さがどんなテイストに感じられるのか、興味深いです。

例えば、私が今黒岩涙香の小説を読んでも「黴臭い」と感じるのですが…
(2008.10.06 15:53:18)

シモンさんへ  
のぽねこ  さん
コメントありがとうございます。

私は中学生のときに横溝さんの『本陣殺人事件』を読んでかなりの衝撃を受け、他のミステリも読み始めるようになったので、私にとって横溝さんは特別な作家です。
私がほとんど体験していないような時代・社会のことなので、当時の雰囲気を想像しながら楽しんでいます。 (2008.10.06 19:24:18)

Re:シモンさんへ(10/06)  
シモン さん
のぽねこさん、
ありがとうございます。特別な作家だったんですね。

私も、のぽねこさんにとっての横溝正史のような
「きっかけになる本」に幾つか出会いました。体験そのものは人それぞれですが、読書の愉しみはこれからも共有していきたいものです。

これからもブログ、楽しみに拝見させて頂きます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
(2008.10.07 12:23:02)

Re[1]:シモンさんへ(10/06)  
hirsakaki さん
横合いから失礼します。

私も、高一の時に友人に誘われて買った「初等整数論講義」という本が、数学を専攻することを決めたきっかけになりました。

「特別な本との出会い」というのは、書肆の紙とインクの匂いと一緒に、今でも記憶に残っています。
のぽねこさんにとっての横溝正史シリーズも、きっと鮮烈な邂逅だったんでしょうね。

(2008.10.07 19:26:47)

シモンさんへ  
のぽねこ  さん
あらためて、コメントありがとうございます。

本の紹介を中心としたブログを続けていますと、本の愉しみを共有してくださる方々の応援は本当に励みになっています。ありがとうございます。

こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。 (2008.10.07 20:40:47)

hirsakakiさんへ  
のぽねこ  さん

egLtMw I appreciate you sharing this article post.Really thank you! Awesome.  
egLtMw I appreciate you sharing this article post. さん
egLtMw I appreciate you sharing this article post.Really thank you! Awesome. (2012.10.20 10:09:00)

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