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2010.06.04
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~講談社現代新書、2000年~

 西洋法制史を専門とされていらっしゃる山内先生の著作です。『北の十字軍』など、有名な著作があることは知っていますが、山内先生の著作を読むのはこれが初めてです。
 さて、タイトルどおり、中世ヨーロッパを中心に行われていた決闘裁判について論じた著作です。決闘と裁判、一見矛盾するかのような二つの要素の混在に、先生はこんにちのヨーロッパの法の原風景が見られると指摘します。
 本書の構成は以下のとおりです。

ーーー
プロローグ 『ローエングリン』―神の裁きとしての決闘
第一章 神判―火と水の奇跡と一騎討ち
第二章 決闘裁判―力と神意

第四章 決闘裁判の終焉と自由主義
エピローグ 正義と裁判

おわりに
参考文献
ーーー

 今回も、読了から記事を書くまでに時間があいてしまったので、あまり整理ができていないのですが、簡単にメモを書いておこうと思います。
 まず、決闘裁判は、「不純」な神判と位置づけられます。
 神判には、大きく次の4つがあります。
(1)熱湯裁判 (2)熱鉄裁判 (3)冷水裁判 (4)決闘裁判
 (1)~(3)は、熱湯に手を入れたり熱された鉄を持ったりして火傷したら有罪、無傷なら無罪、水に浮かべば有罪、沈めば無罪とされた裁判で、そこには超自然的な性格があります。これに対して、(4)の決闘裁判だけは、超自然的な性格は薄く、自力救済の要素もあり、また後にふれますがフェアな精神も見られます。そういう決闘裁判の性格から、著者はこれを「不純」な神判だというのですね。
 ところで、著者のいう「純粋」な神判について面白いと思ったのは、結果を下すのは「共通感情」だというピーター・ブラウン説です。たとえば熱湯裁判では、火傷の痕や膿の状態をみるのは、三日後のことでした。誰が判定するかというのももちろんですが、火傷の痕は三日もすれば、判定の基準はあいまいになってきます。そこで、実際に判断をくだすのは「顔なじみの世界」のなかでの「共通感情」だというのですね。


 決闘裁判に勝った方が、神の奇跡により勝ったとみなされます。正しい者は、神が味方するので勝つ。ということであれば、たとえば老人が強壮な若者に訴えられたところで、老人の方に非がないのであれば、老人が勝つはずです。ところが決闘裁判の運用では、老人や女性などが当事者になる場合には、代理人が戦うようになっていたそうです。基本は親族ですが、決闘裁判で代理に戦うことを専門とする人々(代闘士)もいたそうです。
 さらに、女性が自ら戦う場合でも、男性と戦う場合にはハンデが設けられたりもしたようで、興味深かったです。

 このような決闘裁判が、なぜほとんど西洋に独自のものとして行われ、また長く続いたか。この問題について、著者は「当事者主義」「自力救済の精神」をその理由としてあげます。これら、こんにちにも続く西洋(あるいはアメリカ)の裁判の特徴をかんがみるに、決闘裁判はそれらの「原風景」だというのですね。

 と、おおざっぱにまとめてみましたが、本書には上にあげた神判のそれぞれについても割と詳しく説明がありますし、決闘裁判については具体的な運用も描かれます。興味深い指摘が多く、良かったです。
 あえて残念な点をあげれば、章の中が細かい項に分かれているだけで、節分けがないこと。一章あたり50頁くらいあり、それぞれ20以上ほどの項があるのですが、たとえば一章ごとに3節程度に節分けして整理していれば、議論の流れも追いやすく、もっと読みやすいのかなぁと思いました。


 しばらく前に買っていながら、ずっと読めていなかったのですが、今回通読することができて良かったです。

(2010/05/13読了)





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Last updated  2010.06.04 07:04:45
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のぽねこ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) スパイシーチューリップさんへ コメント…
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