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2015.10.03
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~出版ニュース社、2006年~


 著者の箕輪先生は新聞学博士。神奈川大学名誉教授で、初代国際出版協会会長、元・日本出版学会会長といった経歴をお持ちです。
 本書は、中世ヨーロッパの写本文化を、「出版」という観点から論じる興味深い1冊です。出版といえば印刷術発明後の本のイメージですが、それだけが出版ではない、というのですね。
 本書の構成は次のとおりです。

―――
はじめに
I 3つのルネサンス
II 写本の中世
III 教父時代の出版
IV 宣教師時代(初期修道院時代)の出版

VI 修道院出版への挑戦
VII 写本出版の研究

あとがき
主な参考文献
本書登場人物一覧
―――

 著者は、写本史の観点から、中世の時代を次の4つに分けます。(1)中世初期(6~8世紀)=教父・宣教師時代、(2)中世中期(9~11世紀)=修道会修道院時代、(3)中世後期(12~14世紀)=大学・商業都市時代、(4)中世末期(15世紀~)=印刷革命前夜。本書が扱うのは(1)(2)の時代です。

 以下、興味深かった点を何店かメモしておきます。

 まず、中世の紙は、獣皮紙で、特に羊皮紙がよく使われました。紙を作るため、多くの羊が必要となりますが、案外羊の調達自体には困らなかったのではないか、と著者は言います。肉を食べるため、またその羊毛を利用するため、大量の羊が飼育されていました。紙にするための皮は、「いわば、脱穀したのちの稲藁みたいに、畜羊の副産物だったのだろう」(34頁)というのですね。また面白いのは、牧畜民族のイギリス・ドイツでは羊皮紙が潤沢にあったのに対して、農耕民族のイタリアやフランスでは羊皮紙不足に悩まされたそうです。

 また、印刷と写本の比較として面白いのは、次のような話です。印刷では1冊だけ作るにはコストがかかりすぎるので、大量生産をする。けれどもその結果、売れ残りが大量に出てしまうおそれもある。写本の方は、固定費や初期投資の回収、売れ残りといった心配がない、ということです。もちろん、写本には、写し間違いというリスクがあります。善し悪しですね。

 第V章では、以前紹介したケン・フォレット『大聖堂』が紹介されています。本当に面白い小説でした。同じく小説関連で、ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』を題材として、写本活動の実態の復元が試みられています。



 修道士たちが活躍した時代の背景や写本の作成・その受容など、興味深いテーマがわかりやすく語られます。面白い1冊でした。





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Last updated  2015.10.03 15:44:43
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Re:箕輪成男『中世ヨーロッパの書物―修道院出版の900年―』(10/03)  
シモン さん
奥深い写本の世界。
羊皮紙はいわば木材産業の割り箸のような副産物だったとか、印刷を前提としない出版は売れ残りが出ないとか、興味深いですね。

平易な解説を今回も有難うございました。早速購入することにします。 (2015.10.14 10:10:39)

シモンさんへ  
のぽねこ  さん
こちらこそ、いつもあたたかいコメントをありがとうございます。
割り箸のような、というご指摘、なるほどと思いました。同じように無駄がありませんね。
こちらの記事を購入のきっかけにしていただいたようで、本当に嬉しく思います。ありがとうございました。 (2015.10.17 14:03:54)

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のぽねこ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) スパイシーチューリップさんへ コメント…
スパイシーチューリップ @ Re:銀色夏生『流星の人』(05/16) 流行りましたね!キラキラ系、あまり知ら…
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