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2016.03.23
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小澤実編『物語るロマネスク霊性―池上俊一著『ヨーロッパ中世の宗教運動』(名古屋大学出版会 2007年)書評集―(クリオ22号別冊)』
~クリオの会、2008年~

 池上俊一先生の大著『ヨーロッパ中世の宗教運動』(本ブログでの記事は こちら 。きわめて拙いので、いずれ修正したいです)刊行後に行われた合評会の内容(+α)、そこでなされた池上先生からのレスポンスを含む第1部、若手研究者たちによる様々な専門分野からの本書へのコメントの第2部、そして池上先生の著作一覧(2008年4月まで)を含む書評集です。
 書評集の感想を書くというのも妙な感じですが、まずは本誌の構成を紹介したうえで、簡単に感想をメモしておきます。

―――
序(小澤実)

第I部 フォーラム:『ヨーロッパ中世の宗教運動』の解読
 西洋中世の民衆宗教運動―グルントマン以降―(小澤実)

 コメント2:ロマネスク、ゴシック期の宗教運動への視角(杉崎泰一郎)
 コメント3:中世後期ヨーロッパの宗教文化の理解に向けて(赤江雄一)
 コメント4:構造と運動―池上俊一『ヨーロッパ中世の宗教運動』の方法論をめぐって―(千葉敏之)
 レスポンス(池上俊一)

第II部 『ヨーロッパ中世の宗教運動』に寄せる9稿
 1.越境者との対話
  美術様式と時代の色調(金沢百枝)
  ビザンツの「民衆的宗教運動」とその「霊性」について―異端メッサリアノイの射程―(草生久嗣)
  近世フランスから見た宗教運動―連続・変容・地域―(山本妙子)
 2.宗教運動の震源
  「十字軍」と「少年十字軍」―十字軍研究の立場から見た『ヨーロッパ中世の宗教運動』―(櫻井康人)

  都市の宗教とは何か(青谷秀紀)
 3.「辺境」からの眼差し
  中世スカンディナヴィア人と同時代ヨーロッパの霊性―北欧中世史から『ヨーロッパ中世の宗教運動』へのコメント(成川岳大)
  フス派運動における民衆と民族―池上俊一著『ヨーロッパ中世の宗教運動』によせて―(藤井真生)
  スペイン中世から見た『ヨーロッパ中世の宗教運動』(村上司樹)



池上俊一 略歴と業績一覧(2008年4月まで)
執筆者一覧
―――

 まず、池上先生の『ヨーロッパ中世の宗教運動』が、今後の西洋(中世)史研究に与える影響の大きさを感じました。ロマネスク期(紀元1000年ころ)から中世後期(本書の言葉でいえば「フランボワイアン期」)までの長期的なスパンで、「霊性」という観点から中世史を描いた本書は、本誌第2部にもある「近世」史や「辺境」の歴史を、また新しい角度から見直すきっかけとなっていることから、特にそれを感じました。

 小澤先生による「西洋中世の民衆宗教運動―グルントマン以降―」は、中世の宗教運動に関する欧米の先行研究に関する簡明な見取り図を与えてくれます。
 続くフォーラムのコメントとレスポンスは、どれも興味深く読みました。

 第2部からは、興味深かった点のメモを。

 金沢先生の「美術様式と時代の色調」では、「ロマネスク期」霊性の発現者とされる隠修士の「棲息地」と、最古のロマネスク建築が残る地域との「ズレ」を示した地図が興味深いです。

 櫻井先生の「「十字軍」と「少年十字軍」」では、十字軍説教の果たした役割の重要性が強調されていて、興味深いです(十字軍説教に関して、本ブログでは Christoph T. Maier, Preaching the Crusades. Mendicant Friars and the Cross in the Thirteenth Century を紹介しています)。

 藤井先生の「フス派運動における民衆と民族」でも、説教師の役割が強調されています。特に、説教師の出自の分析という観点は、私自身が今後勉強を進めていくうえで重要だと感じました。

 池上先生の大著を通じて、いろんな領域の研究にもふれられる、嬉しい1冊です。
 ほとんど自分のためのメモとなってしまいましたが、このあたりで。





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Last updated  2016.03.23 22:11:31
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Comments

のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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