Penny J. Cole, The Preaching of the Crusades to the Holy Land, 1095-1270 , The Medieval Academy of America, Cambridge, 1991
1990 年代以降本格化する十字軍説教研究の先陣を切る研究です。
本書は 1985 年のトロント大学での博士論文がもととなっています。
まず、本書の構成は次のとおりです。(拙訳)
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序論
文献略号
第1章 ウルバヌス2世とクレルモンでの説教
第2章 第二回十字軍と幻滅
第3章 伝統の終焉
第4章 インノケンティウス3世
第5章 新しい方向性
第6章 悔悛としての十字軍
第7章 敗北と刷新
結論
付録
A.アブヴィルのヨハネスの説教
B.ソールズベリのロジャーに帰される説教
C.エルストウ説教( 1283 年)
D.ウード・ド・シャトルーによる2つの説教
引用写本
参考文献目録
索引
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本書の目的は、中世説教活動の発展と、中東での政治的・軍事的変化という2つの背景を考慮しつつ、イスラームに対する十字軍への説教活動などを研究することとされます。
第1章は、有名な 1095 年のクレルモン教会会議でのウルバヌス2世の説教を分析します。これは、史料により様々な描き方がなされており、本書は主要史料について、その著者の経歴などもふまえながら、叙述を分析します。
第2章は第2回十字軍(の失敗)とそれに関係する説教などを分析します。面白いのは、この十字軍が失敗に終わったのは説教師の責任とする声もあった、という指摘です。また、教会側からは、失敗に対する弁明もなされ、有名なクレルヴォーのベルナルドゥスは、失敗の原因を十字軍士が救済への招待を拒否したからだ、としているそうです。
第3章は、 12 末頃に活躍したアルバノの司教枢機卿アンリと、カンタベリ大司教ボールドウィンを主に取り上げ、説教におけるパーソナリティなどの重要性が終焉し、転換期を迎えることを示します。
第4章は、教皇インノケンティウス3世が役割を論じます。特に、従来の十字軍説教が霊的改心に重点を置いていたところ、 1198 年の教皇勅書「ポスト・ミゼラブレ」以降、資金集めも重視され、霊的改心+集まった資金が説教の成功の尺度となるという指摘が興味深いです。
第5章は、インノケンティウス3世が活躍した時代に説教活動を行った人々の説教を主に分析します。この時代、パリ大学での倫理神学への強調や民衆への説教の重要性の認識により、ますます説教活動の重要性が増していきます。
第6章は、教皇と王の対立といった時代背景を描きつつ、説教において十字軍の悔悛としての性格が強調されていくことが示されます。
第7章では、とりわけ2人の托鉢修道士、フランシスコ会士ギベール・ド・トゥルネーの十字軍士向け説教と、ドミニコ会士ロマンのフンベルトゥスの『十字軍説教について』という手引きの丹念な分析がなされており、両者の説教活動に関心を持っている私は特に興味深く読みました。
以上、簡単なメモとなりましたが、さいごに、本書の概要と意義を簡潔に記した文献として、次の書評を紹介しておきます。(別文献についての書評ですが、前提として本書の重要性にふれているものです。)
・櫻井康人「書評 Christoph T. Maire, Preaching the Crusades, Mendicant Friars & The Cross in the Thirteenth Century , 1994 」『西洋史学』 192 、 1998 年、 70-74 頁(コールの著作については 70 頁参照。)
( 2020.01.12 読了)
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