京極夏彦『了巷説百物語』
~角川書店、 2024
年~
「巷説百物語」シリーズ第7弾にして最終巻。
これまでのシリーズで仕掛けに関わってきたほぼすべての人物が登場する、シリーズ最大の仕掛けです。
本作では、嘘を見抜く洞観屋の藤兵衛さん、そして拝み屋の中禪寺洲齋さんも活躍します。 それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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世の中をよくするためと信念を持つ山崎は、藤兵衛に、改革を進める水野の邪魔をする化け物遣いたちの正体を見破るように依頼を持ち掛ける。遠くの音も察する源助、どこにでも溶け込めるお玉の2人の助力を得て、化け物遣いに探りを入れようとする藤兵衛たちを待ち受けるのは。
皿屋敷の怪異が伝わる空家での、おぎんたちとの出会い。(「於菊蟲」)
柳屋での、山岡百介との出会い。(「柳婆」)
なんらかの事情で何人もの娘が命を落としている櫻木村の事件への関わり…このあたりから、もはや敵・味方の区別はなくなっていき、藤兵衛は事触れの治平たちと一部協力をしていくことになる。(「累」)
後日、大坂の一味から、ある人物を守るように依頼を受けた藤兵衛は、一方で、水野の周囲にいる福乃屋から、怪異が頻発する中、拝み屋の中禪寺の言った言葉が本当なのか見定めてほしいと依頼を受ける。福乃屋に雇われていると思われる、人を平気で殺す七福連の動きも激しくなっていき…。(「葛乃葉」)
そして、全ての事件の裏にいる人物との戦いへと発展していく。(「手洗鬼」「野宿火」)
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後日譚「百物語」も含め、7章からなりますが、これまでのシリーズのような連作短編(連作長編?)という趣が薄れ、全体でひとつの長編のような味わいです。
本文 1149
頁ととんでもない厚さですが、面白さも抜群です。
物語は藤兵衛さんの視点で展開していきます。化け物遣いたちは敵なのか味方なのか。依頼人の背後にいる水野は敵なのか味方なのか。敵・味方との立場が不透明になりながらも、藤兵衛さんは自身の思いにしたがって行動していきます。
本作では、中禪寺洲齋さんの活躍も見どころです。これは味わい深いです。
シリーズ初期の作品の再読から始め、未読だった作品も一気に読みましたが、シリーズ全体を通して素敵な読書体験でした。
(2025.05.29 読了 )
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