~角川文庫、 1971
年~
金田一耕助シリーズの長編です。
まずは、簡単に内容紹介を。(内容紹介は 2007.07.12
の記事から再録)
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昭和 21
年( 1946
年)9月。
「俺が死んだら、三人の妹たちが殺される。獄門島へ行ってくれ」―戦友の鬼頭千万太の言葉を受け、彼が託した紹介状を持って、金田一耕助は瀬戸内海に浮かぶ小島、獄門島を訪れた。
漁師の多い島のこと、網元の鬼頭家が大きな力を持っていた。また別格の人々が、千万太が紹介状をあてた和尚、村長、医師の三人。耕助は、和尚のもとにしばらくとどまることになる。
鬼頭家は本鬼頭と分鬼頭に分かれていた。絶大な権力を握っていた本鬼頭の前当主は亡くなり、息子は錯乱して家の座敷牢に入れられていることから、孫の千万太、そのいとこの一に期待がかけられていたのだが、その千万太が死んだ。跡取りをめぐる、血なまぐさい事件―千万太の最後の言葉が実現される嫌な予感を抱く耕助だが、ついに事件が起こる。
鬼頭家の、千万太の三人の妹―花子、雪枝、月代のうち、花子が、千万太の通夜の夜に行方不明になる。彼女の遺体は、寺の木の枝から、逆さに吊されていた。
さらに、事件は続く。花子の次の犠牲者、雪枝の遺体は、釣り鐘の中に閉じこめられていた。恐ろしい事件が続く中、本鬼頭をほとんど一人で支えている早苗も、不審な行動をとりはじめる。
―――
何度目かの再読で、もちろんあの言葉の意味も分かった上で読み返しましたが、何度読んでも面白いです。
本題と関係ないところばかりになりますが、たとえば、金田一さんが屏風の俳句を読もうとするシーン。「 ぼんやりとしていると、腹の底からいらいらしたものがこみあげてきそうなので、耕助は臍下丹田に力をおさめて、一意専心、これを読むことに努力することにきめる
」。俳句を読む覚悟の描写のこの面白さ、抜群です。そして、がんばっているときに駐在所の清水さんに声を掛けられて現実の世界へ呼び戻されると、「 其角などくそくらえであった
」。大好きです。
床屋の親方と金田一さんの軽妙なトークも面白いです。
そして、物語としては、釣鐘に被害者が押し込められた時間の謎、何かを知っていながら不審な行動をする早苗さんの意図など、魅力的な謎が満載です。
あらためて、金田一耕助シリーズ、そして横溝作品の面白さ、魅力をふんだんに味わえる素敵な読書体験でした。
(2025.08.16 再読 )
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