鶴見太郎『ユダヤ人の歴史―古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで―』
~中公新書、 2025
年~
著者の鶴見先生は東京大学大学院総合文化研究科准教授で、ロシア東欧・ユダヤ史・パレスチナ戦争などを専門とされています。
古代から現代までのユダヤ人の歴史を、「組み合わせ」をキーワードに明解に描く本書の構成は次のとおりです。
―――
まえがき―ある巡り合わせ
序章 組み合わせから見る歴史
第1章 古代―王国とディアスポラ
第2章 古代末期・中世―異教国家のなかの「法治民族」
第3章 近世―スファラディームとアシュケナジーム
第4章 近代―改革・暴力・革命
第5章 現代―新たな組み合わせを求めて
むすび
あとがき
参考文献
図版出典
ユダヤ人の歴史 関連年表
―――
冒頭にも書きましたし、序章と第5章のタイトルにもありますが、本書はユダヤ人の歴史を「組み合わせ」をキーワードに読み解いていきます。
たとえば、ある国に自分たちの国を征服された場合で、その国の法に従っていれば自分たちの信仰できる(イスラーム諸国による場合)状況であれば、比較的おだやかに彼らは生きて行けます。
以下、印象的だった点をいくつかメモしておきます。
ユダヤ教をめぐって、ときに批判的に用いられる「選民思想」ですが、これは、神の立法をイスラエルの民が守ることによって全人類が救われるということで、「選ばれたので他の民族より優位にあるという意味ではない」 (22
頁 )
とのこと。
また、ユダヤ教はキリスト教・イスラームとならび一神教ですが、初期には徹底した一神教ではなかったと指摘されます。聖書は、一神教信仰の観点から「検閲」を受けていて、唯一神信仰が既定路線であったかのように組み立てられていますが、「それでも漏れは見られ、例えば、創世記では神が「我々」と語っている」 (33
頁 )
といいます。もちろん、この「我々」については、様々な解釈があるのでしょうが、本書での指摘は私にはわかりやすく思えました。
第1章からの引用が多くなってしまいましたが、現在のイスラエル、ガザ地区の問題などを考えるにあたり、その複雑な歴史背景を知ることもできます。
通史という性格上、全体的な紹介は省略しますが、ユダヤ人の歴史の概観を得るのに非常に便利な1冊だと思います。
(2026.01.06 読了 )
・西洋史関連(邦語文献)一覧へ 大塚滋『食の文化史』 2026.06.13
甚野尚志『隠喩のなかの中世―西洋中世にお… 2026.05.24 コメント(2)
今野國雄『ヨーロッパ中世の心』 2026.05.10
Keyword Search
Comments