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「ひかりは・会長の好みなんじゃないの?」教室に戻った俺を心配してくれたのか・と思いきや。小町が鋭いことを言い放った。もし、そうだとしたら気持ちが悪いけど。「で。生徒会に入るの?」髪の毛をいじりながら聞いてくる。まるっきり女の子の仕草じゃないの。「入らないよ。」「ふうん。」今に始まったことじゃないけど、そっけない・。俺に興味が無いのかなー・・。あまり深く聞いてくれないし。俺が生徒会に入ったら、ひとりで帰るんだぞ?寂しいんだぞ?・・俺が。あーあ・・。少しは深く聞いてよね。「ひかり。今日の夕ごはん。うちで食べよ。」なんだ?いきなり。やさしいことを言おうとしてくれているのかな!?「え?」期待をこめて聞き返してみた。「母さんがたまには一緒にって言ってたの思い出した。」「あ・ああそう・・。」はー・・と肩の力も抜けた。期待するのが間違いだった。「越野。宮御先輩が呼んでるよ。」近江があわてている。「宮御先輩?って誰?」「会長だよ!ほら、廊下で待ってるよ!」「えーーーー?」ものすごく会いたくない。席を立ちたくない。「ひかり。むくれてる。」小町が俺のほっぺたを 人差し指でぎゅっと押した。ぽふっと・口から空気が抜けた。意外なくらいに小町が俺をじっと見ている。「小町・・?」小町の大きな目が・・近い!いつもより・・近い!ちかいよ?顔がかーーーっと赤くなってしまう・・。耳まで熱い、困った困った。あわてて頬を両手でぱんぱん叩いてみる。「どうした越野?」「なんでもない!」「早く宮御先輩のところへ行けよ。会長待たせるなよ、なんか怖いからさー。」「あ・あ・うん。」「きみは秋田小町くんだね。」げ。ここに来ちゃったんだ・・。「会長・・宮御先輩。なんですか?」「ひかりくん。膳先輩と呼んでくれ。俺のフルネームは宮御 膳 。 会長とか肩のこるような言い方はしなくていい。」「ひかり・・・って呼んでるんですか。」こ・小町?どうした?「きみだけの特権だとでも?秋田小町くん。」宮御・・膳先輩は首をかしげてみせた。細い首をかしげて、なかなかきれいな姿勢だけど・・目が全然笑っていない・・。このひとは怖い。 「そうです。俺の特権です。」 えっ?! 今なんて言った?小町!「小町、関わるなよ。このひとは生徒会長だぞ?」嬉しくて心臓が活魚のように跳ね回りそうなのをこらえて。声が上ずってしまいそうだけど、ここは抑えさせなきゃ・。「秋田小町くん。女の子みたいな容姿の割りに強いね?」 「ひかりは。俺が初恋の相手なんですから。昨日今日会ったようなひとが。 馴れ馴れしくしないでよ。」何だこれはーーーー!?いや。その前に。小町は何て言った?ちょっと・・ちょっとお?「初恋・・相手を間違えたんだね。ひかりくん。」ふふ・・と鼻で笑うなー! 「間違えていないよ。ひかりの ひとめぼれだよ。」 小町ーーーーーー!! お前は何を言い出しているんだ。しかも何だ・その強さは。この最悪な状況は俺の生活を一変させるに違いない。近江がおそるおそる・・尋ねてきた・・。「おい・・越野。これマジ?」「悪い。黙っててくれないか?俺・泣きそうなんだけど。」
2006/05/01
小町と同じクラスなのは幸運としか言いようがない。俺は盆と正月にもお墓参りを欠かさないから、きっと俺のご先祖様は願いを聞いてくださったんだ。おかげで小町と離れなくて済んだ。席も隣が良かったんだけど。俺は小町の席の斜め後ろ。まあ・・いいか。小町が授業中に寝たりしないように、見張る毎日だ。テスト前にノート見せろとか言われて自分の勉強の妨げにならないように・と。でも・まあ・・・・小町の面倒を見るのは好きなんだけど・・。「なあ。越野。お前生徒会長の知り合いなの?」最近親しくなった、近江 錦 が爪をかみながら聞いてきた。「いいや?なんで?」「生徒会が、今年度の立ち上げで新入生のお前を抜擢したからさ。 通常は2年と3年が主体らしいから異例なんだって。・・あれ。知らなかった?」「・・困るよ!生徒会なんて。」そんなものに関わっていたら小町と一緒に下校が出来なくなる。小町がひとりで下校?危なくて、そんなことをさせれないよ。ボーっとしてるから、変なおじさんに声をかけられたりしたらどうするんだ。事が起きてからでは済まないんだから。「発表されているんだから。決定事項だろう?お前が知り合いとかじゃないんなら、 なんで抜擢されたのかね。」近江の言葉は左の耳から右の耳へ、すうううーと流れていく。俺は、ずっと小町の後姿を見ていた。<変なおじさんに声をかけられて連れ去られないように、俺がちゃんと送って帰るんだ。>小町の横顔に俺はメッセージを発信した。<事故にあわないように守るんだ。小学校の頃からずっと。これからだって。>・・でも小町はまた眠そうにあくびをしている。あわてて生徒会室をノックした。朝だからまだ誰も居ないかもしれないけど、いても立ってもいられないから。「どうぞ。」よくとおる低い声がした。がらら・と引き戸を開けると年上の先輩っぽい男子が2.3人いた。「・・ああ。きみは新入生の越野ひかりくんだね。早速挨拶にきてくれたのかい。」「違います。会長はいらっしゃいますか?」「ん?俺だけど・?」おでこ前回のベリーショートの黒髪は全体にチョップカットを施したようで、ワックスでずらしてはねさせている。毛の量も調節しているみたいで黒い髪の割りに重たくない。一重の切れ長の眼が個性的な髪型を一層際立たせている。「俺、生徒会には入りたくないんです。撤回してください。」「へえ?なんで?」ひとは見たことのない動物を見たときに、きっとこんな顔をするんだろうな・・。興味深げに見つめてきた。俺は返答に困っていた。小町のことをストレートにいえないし・・。「越野ひかりくん。きみがなかなかの個性をもっていると踏んだからメンバーに入れたんだ。 校則では黒い髪が確かに原則だが、長さは規定していない。 きみのウルフベースのカットされた髪、バックだけパーマをかけているね。 小さいきみの顔型にあわせて縦長に流れるように計算されたカット。 トップにふくらみをもたせるワックスでの跳ねさせ方。 なかなかの個性だよ。 きみのくっきりとした二重を隠すような前髪のスライドカットも見事だ。よく似合う。」「はあ。それは美容師がいいので。」「似合うか似合わないか。の問題だよ。 きみは自分自身のよさ・うりを知らないで過ごしてきたんだろう? よく一緒にいる、女の子みたいな子よりもきみのような少しワイルドな感じのほうが、 ここでは 人気があるんだよ。」「男子校で人気あるといわれても気持ちが悪いです。」「はっきり言うね。気にいったよ。越野ひかりくん・・ひかりくんと呼んでもいいかい。」「困ります。」「それは?あの子にしか呼ばせないとか?」会長がじっと見てきた。するっと、知らないうちに、刺されたみたいに。「・・そうです。俺はあいつの幼馴染なんです。あいつにしか呼ばせないんです。」「じゃあ。この背中のきらきらとひかる唇の痕は。秋田小町くんの?」他の人が背中を見ていたんだ。気がつかなかった。しまった・・。消しておかないといけなかった。惜しいけど。「・・はあ。今日ちょっと事故りかけて。急ブレーキ踏んでって。・・関係ないでしょう!」「ふーん?」会長がすたすたと近寄ってきた。「あのさあ・ひかりくん。きみは多分・勘違いをしているんだよ。」「勘違い?」「この男子校で、危険にさらされているのはきみなんだよ? きみのようなワイルドな髪型・ものいいは どまんなかだよ。 この生徒会で守ってあげようとしてるんだけど。気にいらないのかい?」自分の容姿のことなんて深く考えたことはなかった。小町より、俺?なんで?
2006/05/01
聞いてはいけないもののような気がして、手を引っ込めました。耳について離れないかすれた声。心臓がどくどく、早打ちします。脳を刺激するように、どくどくなり続けます。なんだ・・なにをやっているんだ・・?まだ少ない人生経験のなかで合致するのは、猫をいじめたときの泣き声と・・あとひとつ。そのひとつって・・。まるで汚れたものを触ったみたいに。手を洗いたくなりました。ドアノブを触った手の平は、なぜか汗をかいていました。AVなら見たことがあります。高校のときの彼女と・・寸前まではしたことがあります。そんなときのような声がしたのです。喉から空気がもれるような・・。心臓がまだどきどきしています。こんなことってあるんだ・・。これじゃAVだ。どうしてバイト先でこんな声を聞かなきゃいけないんだ?第一。仕事場じゃないの。かかわりたくない。聞かなかったことにしたいよ。バイト初日から、なんだか嫌な場面に遭遇してしまいました。「終わった?」夏至がバックヤードに入ってきました。自分は、このもやもやした憤りを感じているのに。夏至ときたら爽やかな笑顔です。セックス未経験な自分にとって、あの声だけでも・・悶々としてしまいます。ましてやひとりでも作業でしたから。ずっと・・・・・・そのことしか考えれませんでした。「あ・はい・・。」もうため息のような声しか出ません。「?どうかしました?」「ううん。」「あー。寂しかったんですか?ここでひとりで作業だから。」ふふふ・と笑う夏至に、言ってやりたい気がしました。夏至に教えてやりたい。そんな笑顔もなくなるよって。このお店で・・。「ひとりじゃなかったよ・・。」恭は言葉を呑みました。夏至の首筋に、汗が一筋流れているのを見てしまったのです。まさか。まさか?「?どうしました、本当に。」夏至は気がつかないみたいです。あの声は・・夏至?恭は、ひとりで勝手にがっかりしました。とても感じのいい先輩だと思っていたのに。もしかしなくても・・疑惑がこころで広がります。さっきからずっと、そのことしか考えていなかった恭は、否が応でも結びつけて考えていました。「夏至くんさあ。どこでそんなに汗かいたの?」はっ・・。思わず。声が出てしまいました・・。「は。今レジを打ってたけど。混んでたからかな。汗が・・匂います?」夏至は動揺しません。「いや、そういうんじゃなくてさ。」「寂しかったんでしょ?さ、そろそろレジを覚えてもらいましょうか。」夏至に連れられて店内に入ります。バックヤードとは違って、明るい店内で、少し目がくらくらしました。「暗いところから急に、だと。目がすぐには慣れませんよねー。」また楽しそうに笑っています。・・気のせいかも。そうだ、夏至とは限らないじゃないか。どうかしてる・・と自分を責めました。
2006/05/01
夏至は値札をつけるラベラーの使い方を教えてくれました。「ね。簡単でしょ。恭さん、これ全部お願いしますね。」「わかった。」特売のシャンプーに値札をつけます。1箱に24本、それが5箱。まあ・・すぐに出来そうです。隣でシャッと音がします。夏至がカッターで箱を1づつ開けてくれていました。「えっ。ありがとう。」「初日ですから。これくらいは。」にこにこしながら全部開けてくれました。「マイ・カッターがあると便利ですよ。 多分事務用の机の中に1つくらいあるでしょうから探しておきますよ。」夏至が店内に行ったのとすれ違うように店長が来ました。「おっ。よろしくね、恭くん。」「よろしくお願いします。」恭の名札を見て店長が笑いました。「夏至が書いたの?あいつは・・。」「なんかおかしいですか?」「いや。あいつがちゃんと面倒みてるんだなーと思ってさ。」店長は楽しそうです。「あいつも恭くんみたいに新人のバイトだった時期があったから。 あいつが新人を教育するようになるとはね。」「?だって、頼れって。言ってくれましたよね、店長。」「まあ。そうだけどさ。言うこと聞くと思わなかった。」なんでしょう?「夏至さん。いい人ですよ。」「あいつが聞いたら喜ぶよ。まあ仲良くね。」店長が手を振りながら事務所へ入っていきました。ああ。そういえば。マイ・カッターがあると便利って言ってたな。恭はバックヤードのロッカーに入ろうとドアノブに手をかけました。・・・なにか声が聞こえてきます。息を殺すような・・それでももれるような・・。激しい息使いも。
2006/04/30
お店のバックヤードのロッカーの前に恭は案内されました。「春田さんは6番です。俺の隣。」夏至が6と書かれたキーを渡しました。「中にエプロン入れておきましたから。着けてください。」新品らしく。ビニール袋に黒いエプロンがきちんとたたんで入っています。恭が折り目の入ったエプロンをばさっと出して。髪にひっかからないよう首からかけて腰の辺りで結びます。「名札・・が無いですね。」その様子をじっと見ていた夏至が気がつきました。事務用の机をがたがたと開けています。勝手知ったる様子で、名札を1つ取り出すとマジックできゅきゅっと書きました。「はい。春田さん。」夏至の字で・自分の名が書かれたことが何だか得した気分です。「ありがとう。・・あれ?」「はい。恭 にしときました!」「え?」「下の名前のほうがお客さんが覚えやすいでしょ?」ふふ・・と笑っています。「えー?」からかわれているのでしょうか?「ちなみに・俺もそうですから。夏至って。下の名前です。」夏至が自分の黒いエプロンにつけた名札を見せてくれました。「そうなんだ!?ごめん、なれなれしく呼んでたよ。」「いいえ?」夏至がまばたきをして言いました。「そう呼んでください。夏至で。かまいません。」急に距離感がなくなった気がしました。「店長もそう呼んでるし。みんなそうだから。」・・あ。そうなんだ。なんだか寂しかったり。「?どうかしました?春田さん。」「俺も 恭 でいいよ。名札のままで、さ。」「いや。俺は年下ですよ?」「でも先輩じゃん!」「うーん・・。いいんですか?」ああ、やっぱりまだ距離はありました。仲良くなりたくてもなんとなく。「そう呼んでよ。そのほうが仕事でこき使いやすいだろ?」「ああ!そうですね!!」あはは・と夏至が笑いました。その笑顔に、恭は ほっとしました。少しづつ、仲良くなりたいな。そう思いました。
2006/04/30
「おはよう。ひかりくん。毎朝ごめんなさいねー。小町が遅くて!」「いいえ。遅刻しないくらいまで待ちますよ。」毎朝。小町を呼びに行って。小町と一緒に登校する。これは小学校のときから変わらない。そして、待たされるのも変わらない。「小町!まーだ御飯食べてるの?いい加減になさいな。早く!ひかりくん待ってるわよ!」おばさんの声がヒートアップしても、一向に返事が返ってこない。いつも危ない綱渡り。今日は・・遅刻かも。「おはよ。ひかり。」小町の・けろっとした声がした。待たせたくせに。長すぎる前髪は毛束をつくり。肩に着かない程度のウエーブかかったボブ。横に軽めにシャギーを入れてるけど。まるっきり女の子だよ。ただでさえ、細身だし。肌の色が米みたいに白くて、大きな二重の目が髪の色と同じで黒い。唇が乾燥して剥けるからって。リップクリームぬるから・・つやつやで。毎日、顔をみているのに。ついつい・・目を奪われるんだ。「・・おはよ。今日も急ぐぞ。」「眠いね。」小町は、ぼけっとしている。いつものことだ。朝は本当に弱いんだ。そのくせ朝ごはんを抜かない。たべれるんだからすごい。「御飯たべたんだろう?起きろよ。」「んー!今日も。学校かー。」猫みたいに伸びをしている。「早く後ろに乗れよ。本当に遅刻だぞ!」「はいはい。」俺が自転車をこぐ。後ろに小町が乗る。ペダルは重いし、坂道は辛いけど、この役目を誰かに譲る気は全くない。「ちゃんとつかまってるのか?落ちるなよ!」「大丈夫だって。」小町は俺にしがみつかない。後ろ手で荷台をつかんでいるらしい。それが・・寂しいといえば、寂しいんだけど。「うわっ!!」急に猫が飛び出してきて。ブレーキを思いっきりかけた。「あっ!」背中に何かがぶつかってきて、俺の胸の辺りに両手がしがみついてきた。・・小町だ。「ごめん小町。大丈夫か?」「びっくりしたー・・。」はあ・・と息が背中にかかった。その感じにどきどきしながらも。「さ。行くぞ!」「ひかり。ごめん。背中に ちゅーしちゃった。」?!「リップがついちゃったー。」そんな女の子みたいなことを言うんじゃないよ・・。「も。もういいから!行くぞ!遅刻しちゃうよ!」そのまま・小町がそのまま俺にしがみついていてくれた・・。多分。急ブレーキが怖いからだと思うけど。なんとか今日もぎりぎりだけど間にあった。学校につくといつも妙な感じ。この・・真っ黒い制服のせいだ。噂では、うちの学校はカンコンソウサイと呼ばれているらしい。確かに。だ。シャツは白だけどノーネクタイだから、まだマシか。これで共学だったら、女子はどうなんだろうと思う。そう。うちは男子校・・。俺としては、小町は興味の目で見られてしまうから心配なんだ。なのにこいつは、シャツのボタンを第三まで閉めない。かーと開いた肌の白さ。華奢な鎖骨が見えて、本当にまずいんだ。人の目だけじゃない。俺だって・・・・・ 本当に毎日、こらえているから大変なんだぞ。小町!そう言えたら楽だけど。そう言ったら小町ににらまれそうだし。この毎日の葛藤が、小町にわかる日がくるんだろうか?
2006/04/30
引っ越してきた新しい町で、春の日差しに汗を感じながら。母さんとご近所へ挨拶まわりをしていた あの日。「つぎは・・秋田さん のお宅ね。」呼び鈴を鳴らして、母さんがその家の人と挨拶を始めた後ろで。 お人形が こっちを見てる?窓からさす日差しで銀色の輪をつくる胸まで伸びた黒い髪。前髪は目のすぐ上でまっすぐに切りそろえられた。赤い絞りの着物を着た女の子。こころなしか青白い肌の色。何か言いたそうに・・口が動いた。人形じゃない。「か・母さん。お人形・・。」うごいた・うごいた、と母さんの肩を、ばしばしたたく。「これ失礼なことを!すみません、秋田さん。」「いいえー。今日はお雛さんですから。ふざけて着せていたのですよ。」ははは・と豪快におばさんが笑う。「ふざけて?」母さんも不審に思ったらしく聞いた。「小町。いらっしゃいな。」呼ばれて、そのお人形は ぽてぽて と歩いてきた。「わー。動いてるよ。」「これ。ひかり。いいかげんになさい。可愛いお嬢さんですね。」母さんが俺をたしなめながらも、そのお人形を見てほめた。「いいえー。これは男です。うちの長男の小町です。」「はっ?」母さんもびっくりしてるけど、俺のほうがびっくりだ。同じ男とは思えない。なんだか違う生き物だよ。「もう。ふざけてこれの姉の着物を着せていたんですよー。よく似合うでしょ?ははは。」豪快に笑うおばさんの横で、そのお人形は俺をじっと見た。「な。なんだよ。」すこし怖かった。怖気づいた。「これも長男です。ひかり といいます。10歳です。」母さんがひきつりながら紹介してくれた。「あら。小町と同じ年なのね。よろしくねーひかりくん。」「こ。こちらこそ。あのー本当に男・・ですか?」「あらー。気にいっちゃった?ははは。」「あのー?」「男だよ。残念ながら?」そのお人形は。かわいい顔して憎たらしい口の利き方をしたんだ。見透かされた俺のこころのなか。顔が がーっ と熱くなってしまった。「あら?どうしたの。ひかり?」帰りたくて母さんの服の袖を引張った。それすらも・・・お人形。いや・小町に、見られていた。「越野さん、明日から小町と一緒に学校へ行ってやってくださいな。 この辺じゃ、女の子ばかりでね。仲良くしてやってねーひかりくん。ほら。小町。」「よろしく。越野ひかりくん。」俺をまっすぐに見つめながら小町が俺の名前を覚えて言った。本気で、かわいい と思ったんだ。その日から今もずっと。俺と同じ年で。同じ男の。小町が。
2006/04/29
バイトは明日から開始になりました。時給は市内では高めの設定で。助かります。恭は、部屋で雑誌の整理をしながら思い出します。夏至 というひと。左の耳につけたピアスが、多分 恭の好きなブランドのものなのです。少し高くて、それに取り扱っている店舗が近くに無くて、欲しくても集めにくいブランドです。話があうひとかもしれない。なんだかバイトが楽しみになりました。しかし自分より年下なのに・・あのピアス・・。あのバイトは儲かるんだなあ・・。大学から帰ると、冷蔵庫に入れてあったコーヒーを飲んで。さっそくバイトに出かけます。指定の時間より早くつきそうなので、本屋に寄り道します。情報誌が平積みになっています。1冊手にとって、ぱらぱらめくっていると。「あ。こんにちは。」声がしました。「今日からですよね?」夏至です。昨日は茶髪の子・・左耳にピアス・・しか見ていませんでしたが。やわらかそうな生地のモスグリーンとアイボリーのチェックのシャツを着て。ゆるめのジーンズを腰ではいて。グレーとワインの色の入ったスニーカー。「どうか・・しました?」上から下まで、見てしまいました・・。それは不審がられますね。「その服って。」「これ?古着ですよ。俺、古着がすきなんです。」にこっと笑います。「古着って。高いでしょ?」「そーでもないですよ?俺から見たら恭さんのそのシャツ。好きなんですよ、そのブランド。なかなか手に入らないでしょ?」「あ。わかる?」なんだか、ほめられたみたいで嬉しくなりました。「俺・ネットオークションでも探してるくらいですもん。なかなかでませんけどねー。」「オークションやってるの?」「たまに掘り出し物が出ますよ。見るだけでも面白いですよ。」嬉しいです。服をほめられると。それに、やっぱり話が合いそうで。「あ。そろそろ行きましょう。初日から遅刻はまずいですよ。」さりげなく腕の時計を見ました。それは・・結構お高いものでは・・?「ねえ。夏至くんて学生?」「俺は専門学校生ですよ。」「へえ・・。」学生しながらのバイトで、いろいろ買えたりするんだ。て・ことはお金持ちの家の子・・?だよなー。きっと。と庶民の恭は遠い目をしました。自分はバイトしないと欲しいものが手に入らないけど、多分この子は おこずかい でも買えるんだよな。「春田さん。俺の名前覚えてくれたんですか。」急に声をかけられて驚きました。「あ。・・珍しい名前だし。」「ありがとう。なんか・嬉しいです。」並んで歩くと気がひけるくらいの子・・。自分とは背丈は変わらなくても。爽やかな笑顔に・すらりと細い体。腰パンだからよく判別しがたいけどこの背なら足も長いでしょう。すたすた と歩いて。風を切って。陽の光に髪の毛が透けて・きらきらと輝きます。思わず、横目で追いかけてしまいます。「あー俺。早いです?」いきなり立ち止まらなくても。「いや?」びっくりして手を振ります。「・・そうですか?まあ・すぐそこだし。ゆっくり行きましょうか。」・・本当は少し息があがりました。ついていくのがきつくて。でもすたすた 歩く夏至がかっこよくて・・。ついていきたかったのです。
2006/04/29
学生ってのはお金がかかるものです。毎日の服に迷う女の子と同じように、男の子もいろいろあるのです。雑誌を見れば・今のおこずかいではとても買えない指輪。モデルがすかしてきめてるその服も。ならば。バイトするしかないでしょう。家の近くでは近所のおばさんたちが来たときに恥ずかしいな。ならば。少し離れた所で。時給も高めで。学校に行きつつ通えて。求人雑誌をめくり。ネットで探して。コーヒー飲みながら・ぼんやり探して。・・本当にやる気があるのかな?「きみはバイトは初めてなの?」店長らしい人が聞いてきました。「いいえ。高校生のときに郵便局で年賀状の仕分けのバイトしました。」「あ。そう・・。そのときはその髪。なんにも言われなかった?」茶髪と言うよりオレンジに近い髪の色です。ゆるめのパーマかけて。まるで寝癖のような・・。「はあ。」でも本人は気に入っていますね。自信を持って答えていますよ。「・・えーと。恭くん?」「はい。春田 恭です。」「うちのお店のこと。知ってる?」「いいえ。ネツトで知りました。」「うちは普通のドラッグストアなんだけど。きたこと無い?」「家・遠いですから。」なんでしょうか。この偉そうな態度は・・。「ああ。そう・・。きみさあ。」「はい。」「面白いね。」「はあ?」履歴書をじっと見て。店長らしきその人が言いました。「子犬みたいって。いわれない?」「いいえ?」「目が栗みたいに丸いって言われない?」「いいえ?なんですか?栗って。」栗って丸かったかしら?「きみの顔はお店に欲しかった。」?なんでしょう?「きみみたいな顔の男の子に。レジに立ってもらえたら女性の客が増える。」「はあ?」「ああ・言い忘れた。私は店長の秋野です。よろしく。」「はあ。」「採用するよ。」店長はぎゅううっと手を握ってきました。うっ・・とひきかけましたが・・我慢です。だって採用すると言うんですから。「店長。なにやってるんです?」黒いエプロンをした茶髪の男の子が寄ってきました。「ああ丁度いい。この子・春田 恭くん。新しいバイトね。」茶髪の子が店長の持っていた履歴書を見ています。肩にかかるその茶色い髪はシャギーがたくさん入っていて。その子の顔立ちを・よりシャープに見せています。「大学生ですか。失礼ですが。なんか・・かわいい顔してるんですね。」「な?目も栗みたいに丸くて。女性客に受けそうな、な?」店長が嬉しそうです。「恭くん。この子はきみの先輩になる蒼井夏至くん。なんでも聞くといいよ。 もちろん、僕も仕事を教えるけどね。」真正面から、夏至を見ました。細い顎。二重の目。髪からすけて見える左の耳に銀のピアスが光りました。この子が先輩。あ。そうなんだ・・。と恭は夏至におじぎをしました。「よろしくお願いします・・。」「こちらこそよろしく。春田さん。」恭が頭をあげたら。夏至はまだ頭を下げていました。「実は夏至くんはきみよりひとつ年下なんだよ?」あ。そうなんだ・・。「でも先輩だから頼ってやってね恭くん。頼むよ夏至。」恭と夏至の目が合いました。夏至がにこっと笑います。感じのいい・・爽やかな笑顔です。うまくやっていけたらいいな・・そんな期待を持ちました。
2006/04/28
絡めた指が互いを押すように絶え間なく動きます。「んっ・・ん・」慣れたもので、声を殺して。耳元へかすかな声を届けます。「はあ・あ・・・んっ」冬至の動きに委ねた真夏のか細い高い声が応えます。つつ・・と真夏の腿に液体が流れて。厨房の調理台から床に零れ落ちました。「んっんっ・・。」「・・アああっ・・。」上気した頬をのけぞらせて。「ん・・はあ。真夏ちゃん、」「はあ。はあ・・」「もう・がっこ・・行かなきゃ・。」「うん・。」冬至は真夏から抜いて肩で大きく息をして。「冬至。」「ん・?今日は行かなきゃだ駄目よ。新しい先生がくるんでしょ。」「冬至は。」「俺はここで真夏ちゃんに食べさせるケーキを作ります。今日はタルトね。 カスタードクリーム絞って・マンゴーを並べてあげる。いいマンゴーが手に入ったから。」真夏の鼻の頭をきゅっと押して。「むくれてないの。真夏ちゃん。いってらっしゃい、」冬至は笑って黒いギャルソンエプロンをつけました。「たまに潜り込んであげるから。」学校では職員室が騒然となっていました。黒い網タイツ。エナメルのハイヒール。真っ白いスーツ、もちろんミニスカ。しかもラメを頭からかけたような金髪の女性が乗り込んでいました。職員室の前を通る生徒は鼻を押さえます。強烈な香水の匂いです。「ここはホストクラブでもキャバクラでもありませんよ。」校長がたしなめても。女性はひるみません。シャネルのバックから辞令を出して、つきつけました。「私は今日からここの教師です。よ・ろ・し・く。」付けまつげが威圧感を増します。作り物なのか・溢れんばかりの胸。「私の受け持つクラスは?どこなの?」真夏が教室に入ると立秋が手を振ります。「おまえは隣のクラスだろ。」「おはよう真夏くん!いい知らせだよ。ここのクラスの担任は女性にしておいたからね。」「はあ。」「男では、また何が起きるかわかったものじゃない!将軍も言うことをきかない!」「はあ。なんでもいいよ別に。」「・・真夏くん・・。甘い匂いがするんだが・・。」「ケーキ食べてないけど?」「その匂いは・・うちのパテイシエの・・。」立秋が青ざめていると・・なにやら強烈な匂いが廊下から漂ってきました。「なに・・この匂い!」教室がざわつきます。がらり と入ってきたのは・・・キャバ嬢!?「うるさい!静かにしなさい!」「誰だよあんた。」勇気ある生徒が聞きました。「私は今日からここの担任。・・真夏って子いる?」「へ?」がんがんがん・と音を立てて、真夏に近寄るそのキャバ嬢。「ふーん、あなたが真夏!私がわかる?」値踏みするように真夏をじろじろ見ます。「知らないよあんたなんか。」迫力ある胸はまるで小玉西瓜をつめたよう。真夏は押され気味・・。「私は春暁の妻です!」「春暁・・?」「あ・な・た・の。このクラスの前の担任!!」妻が乗り込んできました・・!「先生の・・!?」「そーよ。もう・・!私はホストクラブに通って毎日面白おかしく過ごしたかったわけよ!なのに 突然・春暁を押付けられて!北極にも行かされて!」「俺とは関係ないでしょう!」「おおありよ。・・あなたの名前は春暁の寝言で何度も聞いたわよ。 予想より遥かに・・かわいいのね。」ラインストーンが輝く付け爪が真夏の口元をなぞります。「大いに楽しませてもらうわよ。」ぎゃーっと。わーっと。騒ぎ出す教室。固まる真夏。頭を抱える立秋。次の敵は 西瓜並みの巨乳です。 「真夏と果実」おしまい。
2006/04/28
夜も深まる時間に、隠れ家のような地下のカフェはカップルで賑わっています。店内の照明も深いオレンジ色。彼女の顔もさぞかしきれいに映ることでしょう・・。「かわいい・・。」「はあ?」「真夏くんはかわいいと言ったんだよ・何度でもささやこう!」「ぼっちゃん。真夏ちゃん どんびき ですよ。」一番奥に陣取った、男子3人組は。女性客の関心を一気に集めています。ソファに並んで座る茶髪の男子2人と向かい合って椅子に座る眼鏡男子。3人とも細くて。オレンジの照明に照らされてなんとも淫靡な雰囲気です。「立秋、先生はどうした?」真夏がメニューを見ながら。立秋の顔を見ずに聞きました。「あの淫行教師なら保釈して。今頃婚約者の親のところに行っているさ。結婚するんだから。」「へー。出してあげたんですか?」「更正だよ。さっさと結婚して所帯を持てばいいのさ。新婚旅行は北極だよ。」「へー。熊を狩に行かせるんですか。」「毛皮が欲しいからね。まあ、そこで熊に襲われでもしたら好都合だし。」助けたのか・地獄に落としたいのか。「なに、あの先生にそこまでしてやったの?立秋・・。」やっと真夏が立秋を見てくれました。「・・真夏くん。ああ・そのせつなげな表情を今一度みせてくれたまえよ・・。」「うざいよ・おまえは。もう。」メニューで、ばしっとたたかれて。・・嬉しそうですよ?「ああああ・・・。」「ぼっちゃん。ほんとにMですね。」「結婚式は明日だよ。」「へー。急によく取れましたね。」「仏滅だし、13日の金曜日だからね!縁起が悪くて・がら空きさ!」「花嫁さんは承知するのかな。」「ああ真夏くん!きみがドレスを着るのではないから大丈夫だよー。 押付ければ後はどうとでもなるさ。真夏くんのその思いやりがたまらないよ。 どうかその思いやりを僕・・」「ぼっちゃん。無駄遣いしすぎですよ。おかみさんに怒られますよ。」「わかりゃしないさ!」自信あふれる言葉ですね・・。「普通わかるでしょ。一体いくら使ったんだよ。」「気にしないでくれたまえ。真夏くん。きみに裁判で立たすわけにも行かないからね。 君を守るためなら、いくらでも。なぜなら僕」「ぼっちゃん。デザート食べます?」さっきから、がんがん割り込んで遮りますね。冬至は。「・・僕はいいよ。真夏くんは?」「あー。シフォンケーキ食べたい。」「クリームいっぱいつけてもらおうか。」「・・そこ。ふたり!くっつくな・・・・あれ?」遮っていないのに、急に黙って。冬至と真夏を見比べるようにきょろきょろします。「・どうした?立秋。」「ぼっちゃん。きもいよ?」「ふたり揃うと・・かわいいじゃないか!」「は?!」「・・・よし!決めたぞ。僕は!」頬を赤らめて、にやついています。「なに!?もう・きもいなー。」真夏が虫を追い払うように、しっしっと手を振りますがお構いなし。「しょーぐん!」「は・い?」「学校に通え!」「は?」「二人が制服を着ている姿が見たいんだ!」「俺1つ下ですよ。」「わかりゃしないさ!担任も新しいのがくることになっているから。丁度いい!紛れ込め!」「おまえ・むちゃくちゃ。」真夏が呆れていても立秋はかまわずに携帯を取り出して指示をだしています。「将軍の制服は・・サイズがわからないな。」「じゃあ俺は真夏ちゃんの借りますよ。」冬至が笑って言ったら。「それは許さん!」びしっときました。「真夏くんはときどきノーパンなんだ!その制服を・」「えー!なんで知ってるんだよ!」「えー!真夏ちゃん。いやらしすぎる!」 →次が ラストですー。もう少しお付き合いください・・。
2006/04/27
きみが伸ばした まっすぐの腕を掴み損ねて今をみつめて 生きていますきみが差し出した まっすぐの涙をぬぐい損ねて今を落とさないように 生きていますひととの出会いが わたしを強くしたり弱くしたりでも私は 誰かにいつかは 誰かにまっすぐに腕を 伸ばせる人でありたいと思うのですきみと出会えて よかったですきみと話せて一緒に 走って生きた時期があるから私は まっすぐに生きたいと思うのです
2006/04/26
すみません、昨日の分に続けてUPしました・・。少しエロなのですが・・甘いからいいかな?もう少し書き足したかったのですが、みなさんに どんびき されるといけない・・ので・・。エロも難しいですね。練習しなくちゃ。←つまりまだ・・書きたいのです。エロを・・。エロなしのBL小説を書こうと意気込んだものが1本、あったのですが、1度書くと、エロをただよわせてしまうものなのでしょうか・・。読み返してみたら、自分では くくっと避けたつもりの道がかなり無理のある書き方で。仕方ないから手直ししたら エロ になりました・・・・。ああ・・。もう少し手直しして、こちらにもUPしようか・・と思います。いろいろ遊ばせていただいています。テンションが違うので、今は「毒の華」を休んでいます・・。ひょこっとUPしたら、思い出してくださると嬉しいです・・。
2006/04/26
御飯を食べに外に出た二人の前に。立秋が立ちはだかりました。「どこへ行くんだい?将軍。・・おや真夏くん!その服は・・将軍のじゃないか! なんていやらしんだ!真夏くん!!・・でもよく似合うよ。素敵だ・・。」「なんなの・・。」数時間ぶりに会ったとはいえ、立秋の言動には・・疲れます。真夏は普通にシャツとジーンズを着ているだけですし。興奮するようなことはないはず。普通の人なら。「将軍の臭いがするじゃないか、その服!」「俺のですからね。」「・・!将軍!真夏くんの服はどうした? まさかおまえの箪笥の中にしまってあるんじゃないだろうね?」「服って・・制服なら今、部屋の中に干してありますよ。・・盗んじゃだめですよ?」「盗まないよ。ほかの私服を持っているからね。」「は?どういうことだよ!立秋!」おかしなことを言い始めましたよ、真夏も・もう黙っていられません。「いや・・先日。お家にお邪魔したときに。きみの部屋に無造作においてあったから、 いただいてしまったんだよ。」ストーカーの告白です・・またしても。「いい匂いがするものだから。僕のベッドに飾ってあるんだ。」「へー。それ添い寝っていうんじゃ?」冬至が聞いてしまいました。「冬至!理解を示すな!・・立秋、そんなキモいことは直ちにやめろ!お前も犯罪者なのか?」立秋は悲しそうに・・捨てられた子犬のように震えます。「真夏くん。ひどい言い草じゃないか。僕はただきみと寝てみたいと。 ただ1度でかまわない・・抱いて欲しいと願う・・ただ、恋に狂ったひとりの哀れな男だ。」「・・・もういい。そこをどけ!」真夏も別の意味で震えが止まりません。「真夏くん。冷たいじゃないか。どこへ行くんだい?送るよ。」振り回される立秋を、ぐいっと引き戻して。「あのー。ぼっちゃん。」「なんだい、将軍?」「悪いんですが。真夏ちゃんと離れたくないから。地球の裏側には行けません。」「なーにをいっているんだい。将軍。地球の裏側じゃなくても! 地球にはさまざまな国があるんだ。さあ、すきな国を言いたまえ。 ペンギンのいる寒い国か?象が走るサバンナか?そうだ、将軍。 僕は北極熊の毛皮が欲しいな!」「自分で狩に行ってくださいよ。俺は。ここに。真夏ちゃんと一緒です!」がくん・・・と立秋の力が抜けました・・。「あ?ぼっちゃん・・?」「冬至・・。おまえは・・。」「はい。」「僕を裏切ったんだな・・。なんてパティシエだ。ひどいじゃないか。」ああ。泣きそうですよ・・。「ぼっちゃん。すみません。・・御飯おごりますよ。」「それで済まそうと?」「だめですか?」「・・・あああ。なんてパティシエだ。」「ぼっちゃん。うるさいから。近所迷惑なんで。」
2006/04/26
ぐるぐる回る洗濯機の前で。冬至は白いシャツをボタンかけないまま羽織って、ぼーっとコーヒーを飲みます。ドラム式にしておいてよかった。あんまり音が響かない。まだベッドで寝ている真夏を気遣います。「・・真夏ちゃんがいるんだよね・・。」なんだか夢の続きでも見ているみたいです。「はー。起きたら おなかすいた っていわれるかな。」冷蔵庫には買い置きがありません。なにか食べに行けばいいかな。そんなまどろみを破壊するように。冬至の携帯から、雄大な着音が流れてきました。「・・あ。」<しょーぐん。どこにいるんだい・お前はー!>立秋です・・。ああ。もう。気分をすっかり破壊してくれます。「なんですか?ぼっちゃん。・・悪いんですけど。俺、風邪ひきかけてまして。」本当に鼻がぐすぐすしているのです。バスルームで・・気を失うようなことをするからです・・。<迎えに行くから。どこにいるか教えろ。>「何が迎えです?」<パスポートを持って。待ってろ!>ああ。本気だったのね。「・・誰?」真夏が目を覚ましました。「起こしちゃった・ごめんね?」「・・誰と話してた?」真夏も鼻声です・・。「気になるの、真夏ちゃん。」起き立ての真夏の髪を撫でて。「立秋?」「そう。ぼっちゃんたら・・俺をどうしても世界に羽ばたかせたいみたいなの。」「は?」「・・びっくりした?まあ・・出かける前に、真夏ちゃんに・・。」冬至が白い石の指輪を、真夏の目の前に差し出しました。「つけといて欲しかったんだけど!」「あれ・・。」「真夏ちゃんのシャツとか洗濯機に放り込んだら。からから 音がするからさ。 ポケットにいれっぱなしだったんでしょ。かなしーなー。」少しふざけていったのですが。「あ。ごめん。」真夏が本気で頭を下げたので、冬至はかえって慌てます。「真夏ちゃん。ごめん。顔をみせて?」「俺が悪いの。なんか。ほんとに。」「いいから!・・真夏ちゃん・。」冬至が真夏の唇を指でなぞります。「俺。すごく真夏ちゃんが好きなの。困らせたくないの。」「冬至。」「はめてくれる?この石ね・大事なひとを守ってくれるんだって。 本当は俺がずっと。守りたいんだけど・。 でも・ずっと真夏ちゃんの傍には いれないから。 そのときだけ。この石に真夏ちゃんを守らせるから。」傍に・・いてくれたらいいのですよ?ずっと傍に。かなわないのですか?「冬至がいてくれたらいい。」「うん・。」「この指輪も大事にするから。でも。俺は冬至といたいんだよ?」「・・あ。」「だめなの?冬至。」決死の覚悟みたいに真剣な顔で。空気はりつめさせておいて、自分は泣きそうじゃないの。もう。この真夏のお願いが無視できましょうか。「はあ、もう・・。」冬至はたまらなく真夏がいとしくなりました。まだ裸のままの真夏に小鳥がつつくようなキスをして。「もう・・。」「なに?・・くすぐったいよ・・。」「真夏ちゃんが好き。」「うん。」「真夏ちゃんにケーキを毎日作ってあげる。」「うん。」「それから、・・変な奴から守ってあげる。」「うん・。」「俺が。もう離れないからね?ひとりで歩かせないからね。」
2006/04/26
「どうして冬至は携帯にでないのかなー?」立秋が騒ぎ始めました。厨房のおじさんたちも落ち着きません。「いやーぼっちゃん。冬至・もうすぐ戻りますよ、きっと。」「本当にどこを寄り道してるんだか・・。」 「寄り道!そんなことをされては困るんだ!!」相手の出ない携帯に向って叫んでいます。「ぼっちゃん。まあ・・お茶でもどうですか?」「取り乱しても。将軍なら心配ないですよ、ぼっちゃんもご存知でしょう。 たとえ悪い奴にからまれたとしても!あいつはやるときはやる子ですから。」「・・!やっては困るんだ!」立秋の叫びはむなしく厨房に響きました・・。「ああ・・真夏くん。まさかまた一緒ではないだろうね・・。」「ぼっちゃん・・。」お湯を入れ始めたバスタブから湯気があがります。どくどく・・と流れる水の音を聞きながら。すっかり服を脱いだ二人ではすこし狭いバスタブで。「狭い・・。」「当たり前でしょ。・・」先に真夏が冬至に抱きついて、そのまま唇を吸いました。あ・・とちょっとびっくりしながらも、冬至は応えます。音が聞こえるくらいに探り合って。息が大きくなるほどに。「と・。」「ん、なに?」「頭が・・くらくらする・・。」「俺も。どうしようか・。」絡み合う足も腰も・隠す位にお湯がたまりました。湯気が凄くて。汗をかいて。冬至の首筋の汗をなぞって、たまらなくて真夏は言います。「好きみたい・・。」「へ?」突然の言葉に聞きなおします。「・・好きだから。」「・・ん?」意地悪ですね。ただの。「もう!おねがいだから!」真夏がむくれます。あはは、と冬至が笑って、その笑顔のまま。真夏の髪を撫でて。「俺もう、真夏ちゃんじゃないとだめみたい。」「は・?」「ねえ。困ったね?」ちゅっ と真夏の唇を吸って、ぎゅーっと抱きしめました。「はあ・。」真夏の声を聞きながら冬至が手を伸ばします。腰から下の丸みに沿ってゆっくり撫でます。その気持ちよさに真夏が膝を曲げてさらに冬至のもとに近付きます。「と・・。」もう声がかすれてきてしまって。そんな声では冬至も耐えれません。真夏のお尻を片手で少し持ち上げて、腰を支えて。引き寄せました。「・・ン!」びくん・と背中が揺れます。鋭いものが中に入りたがっています。冬至が真夏の腰をぐっと自分にくっつけます。・・・腰がぐぐっと動いて。「あ・・アッアッ・・!とうっ・じっ!」突き上げてくる振動に体がふらつきます。バスタブに背中を持たれかけて、振動を全身で受けます。「もうすこし、・・真夏ちゃん。」冬至の腰の動きでお湯の泡がぶくぶくっと絶え間なく続きます。「んんっ!・・はあっ。あアッ!・・」ばしゃんっと足でお湯に波を作ります。「ぐっ。」冬至も耐え切れずにバスタブの栓を抜きました。「ん。はあっ・・。」湯気にあてられて、それに真夏が近くて。もうすこし。もうすこし。「んんっ。」両手で真夏の腰を抱え込んで、ぐっと押し込みました。「ああっ!!・・あ。んっ・・。」ひくひく・・と痙攣する真夏の頬を撫でて。「加減・・できない!」「えっ!・・・ああああ!」真夏をバスタブの背にめり込ませるように、冬至が突き上げてきました。激しい息が真夏の髪にかかります。「アッ!!ああっ・・!いや、いやっ!」がくがく と揺らされる体は自分のものではないみたいに冬至に操られて。「はあっ!!」大きく吐いた息と共にせり出した上半身が冬至にぶつかります。「おいで、真夏ちゃんっ。」「あっ!・・」そのまま抱え込まれて、さらに激しく突いてきます。「ああああ・・!」振動にあわせるように、真夏の口から嗚咽がもれます。喉の奥から搾り出すような、細くて。強い声が。「ん・・はあ。」冬至も真夏を抱え込む力と突き出す力で、頭が朦朧としそうです。でも、離せません。このままじゃいや。もっと。もっと。と駆り立てると、応えるように真夏が高い声を漏らします。「はあっ、あ、あ、あ、」真夏が過呼吸のように息が苦しくなりました。とどめのようにぎゅぎゅっと絞ると。真夏が ぐっと背をそらして。一息吐いて・・がくん・・と冬至に倒れました。冬至も、肩で荒い息を吐きながら・・真夏を受け止めて。ぼおっと・・・。「真夏・ちゃん?」「・・なに・?」「だいじょうぶ?」「もう。・・溢れそう・。」
2006/04/25
声くらい聞かせてよ。そんなことを呟いて自分で驚いた。声が聞きたくなる。声だけでも なんて。そう思う人に 会ってしまったのかな。さっきまで一緒にいた。俺の名前を呼んで?とずっとせがまれた。どうしてだろう。気がついたら顔を見るのも照れくさい。どう 見ていいのか わかんない。ねえ。どうして。一人で夜の街をふらついて気がついた。声くらいきかせてよって。この指輪だけなんて。すごく寂しいんだけど。声が 聞きたい 傍にいたい手を伸ばして触りたい。↑ GOOさんのほうに出張してた真夏の独り言です。(すこし前の・・。) 真夏 と書かなければ普通の恋の詩で・・通りませんね。
2006/04/25
夕御飯の時間ですが、お兄ちゃんが帰ってきません。ずっと、パパと一緒にケーキを持って帰ってきてたのに。最近は・パパだけ帰ってくるの。「えー?またパパだけ?」「そんな言い方しないでよー鞠香ちゃん。ケーキが食べたかったのかい?」「お兄ちゃんよ!」「真夏?真夏ならそのうち帰ってくるよ。きっと。」パパは全然心配していないんだ。「パパつめたい!またお兄ちゃんが迎えにきてって電話してきたらどうするの!」「そう毎日は電話しないよ。お兄ちゃんは、ああ見えても・ちゃんと男の子だから。 心配ないから。」そう言いながら。パパも夕刊を持つ手が震えてきたじゃない。「最近お兄ちゃんは変なお友達と遊んでるの?」「知らないよ・・。」「うちに来た眼鏡のひととか!くちにピアスつけてるひととか!なんか変だよー?」「お父さんに言っても仕方ないでしょ。鞠香ちゃん。」「なんか最近のお兄ちゃんは・・変よ!」「鞠香ちゃん!・・もう静かにしなさい。」だって・・心配だもん・・。私の自慢のお兄ちゃん。友達はみんな「まりかのおにいちゃんかっこいい!」って言うもん。学校の制服をお尻が見えそうなくらいにずらして履いてたりするけど平気だもん。いつもやさしくて。たくさんケーキを食べても太らなくて。よく笑って。まりか、まりかって。いつも呼んでくれて。前は彼女とも一緒に御飯食べたのに。お兄ちゃんは最近・・どこかが違うの。なんだか寂しいの。パパが携帯を持ってどこかにかけてる!お兄ちゃんかな?どこにいるのかきいてよパパ。すぐに迎えに行ってよ。お兄ちゃんは今、どこにいるんだろう。「お兄ちゃんは男の子だからね・・。」パパがぶつぶつ言ってる。男の子でも・心配なの!大事なお兄ちゃんだから!
2006/04/25
将来の夢はありますそれとは違う仕事についていますけどきみが真剣な顔をしたので聞かなきゃよかった なんて思ってしまった将来の夢があるならいつかはここを出て行くんだよねきみと離れたくなくて聞かなきゃよかった なんて思ってしまったでもそれはなかなか募集がかからなくて困ったもんですきみが続けて そんなことを言った聞こえていたのかなこころの声がそれはすこし恥ずかしいなまだまだ一緒に働くんですよ ここできみは笑った期限付きってのもスリルがあって いいのかもあなたもここに いるんですよきみがまじめな顔を急にしたから聞こえていたなら恥ずかしいな こころの音が
2006/04/24
俺の知る限り。ぼっちゃんは喧嘩したことないはず。そんなの無理じゃん。勝てないじゃん。相手が誰かは知らないけれど。あのぼっちゃんが。俺に来るなって?地球の裏側にでも行けって?そんなの聞けるか。どうせ。真夏ちゃんがらみなんでしょ!「冬至。ぼっちゃんによろしくなー!」「殴られるなよ?将軍!」「だーいじょうぶだよ。冬至は強いんだから!」「いーや。ぼっちゃんにさ。たたかれるぞ?」「うるさいって。踏みつけてやるよ。」真夏ちゃんを守りたいのはわかる。よくわかるんだ。だけど、ぼっちゃん。その気持ちだけでは喧嘩には勝てません。「本当に冬至は怖いもの知らずだよ。」「世話になってるぼっちゃん踏んじゃうってか?」「もともと。ぼっちゃんより態度がでかいからね。あはは。」「しょーがないでしょ。同じひと、好きになったんだから。」「・・・お前ひけよ?冬至。」「・・・そーだよ。ぼっちゃんに悪いだろ!」「ぼっちゃんじゃ・守れないのよね。」ぼっちゃんには幸せになってもらいたい。だけどね。譲れないから言うこと聞かない。携帯にかけてみる。留守電にしてるよ、このひと。「冬至です。・・ぼっちゃん?そっちに行きますからね!」
2006/04/24
少し狭いバスルームは清潔感が保たれていました。「本当に一人暮らし?」真夏が疑います。「なんでよ・真夏ちゃん。俺・お掃除も好きなんだって。」冬至が真夏をバスルームの床に座らせます。「得意なのよ?」シャツを着たまま。ぬるめのシャワーをかけます。「・・ぷはっ?」「洗ってあげるよ。」「いいって。・・止めてよシャワー・・。」シャワーを置いて。冬至が真夏の唇を吸います。お互いの口の中に、ぬるいお湯の雫が入り込みました。「・・冬至。」「真夏ちゃん。ねえ・・・」雫も欲しいみたい。冬至の舌が掬うように真夏の舌を求めます。「んんっ・・。」お湯で濡れて肌に張り付くシャツが重くて。足元に絶えず流れるシャワーが、じわじわと暖めてきます。でも肩はかすかに震えます。「・・寒い?真夏ちゃん・・。」「シャツが重い・・。」「はーい・・。」冬至が真夏のシャツを脱がせて、そのまま下にも手を伸ばします。「と・・」思わず冬至の手を遮りました。「真夏ちゃん?」「今日は・・。その・・。」震えるのは寒いからだけではないのです。「怖い思いしてたのに。遅くなってごめんね。俺が・・全部消すから。」「え。」「真夏ちゃんは俺のことだけ考えてたらいいの。」「は・・」「ねえ。信じて?」床に流れ続けるぬるいシャワーが。じわじわと真夏の腰も暖めていました。とても変な感じです。「冬至。あのさ・。」冬至が真夏の両膝を持って、ぎゅっと抱っこして真夏を持ち上げました。「ん!?冬至?」「ね?俺って力もちでしょ?」「あ。歩けるから!ねえ・・。」冬至が真夏の髪に鼻を摺り寄せました。「・・真夏ちゃんの声。響いてる。」「え?」狭くてもバスルームですから・・。「ねえ。呼んで?俺を呼んでみてよ。」「え・・。」「呼んで?」はあ。とため息がでました。「ねえ。寒いって・。」「あーなんか。ここでしてもいい?真夏ちゃん?」「は?」「ここで。ね?」湯気に当たって、二人とも頬が赤いです。「たおれちゃうよ?」「倒れてくれるの?真夏ちゃん。」
2006/04/24
先生は真夏の嫌がる顔に興奮しているのです。真夏の名を呼びながら、自分の望みを遂げようとします。「・・離せ!」真夏が両の手を組んで先生の頭を殴りかかりますが・・。「は・・ああっ!!」真夏の自身が刺激を受けてしまって。力が入りません・・。「真夏・・。」「呼ぶな!」怒鳴りつけて。睨んで。「かわいいよ。真夏。あのガキより・よくしてやる。」「呼ぶなって言ってるだろ!」真夏が怒鳴っても容赦なく、先生は真夏をじっと見ています。「そんな声より・・。」「あ!・・・」先生が真夏の足を持ち上げたとき。真夏の視界に水しぶきがかかりました。「は・・?」顔に突然コップの水をかけられたみたい。息が苦しくてむせました。目の前の先生もずぶ濡れで、何が起きたかわかりません・・その隙に。先生は何者かに襟元を掴まれ・そのまま どさりと引き倒されました。「えっ。」真夏が軽くなった体を起こすと。その人は水浸しに膝を付いて、自分の顔を覗き込んできました。「もう大丈夫だからね。」先生にたたかれた頬をそっと撫でられました。「痛い・・?」息がかかる距離に、会いたかった冬至がいました。「ぼっちゃん。真夏ちゃんを頼みましたよ!」えっ?立秋?空になったバケツを振り回している立秋の姿が見えました。「よーしでかしたぞ!さすがうちのパティシエだ!来たことを許してやる!!」「・・なんだお前ら!またこのガキ!!」立ち上がろうとした先生の首を真っ黒いブーツがどん・と踏みつけました。「かはっ!・・!」「このまま殺しちゃいたいけど。そうもいかないのよね。」気道を抑えられて先生が苦しそうにじたばたしています。真夏は制服の乱れをあわてて直しながら。「冬至!」「はあい。真夏ちゃん?大丈夫?」冬至が笑顔で答えます。「それじゃ先生が・・。」立秋が真夏の制服についたどろをはらいながら言いました。「動かないようにしてるだけだから。あれでは死なないから大丈夫だよ。真夏くん。」「・・。」「警察を呼ぶから。」立秋の言葉に真夏の体がびくっと震えました。「・・ぼっちゃん。わかってますよね?」冬至が上からものを言います。「ああ。淫行は言わないさ。暴行で押し通して。あとは遠い国にでも行って貰うさ。」震えていた真夏の肩を、立秋はぎゅっと抱きます。「あんな怖い目にあわせないからね。真夏くん!」「・・あのさ。」「なんだい?真夏くん!」「ありがとね。」「ああ・・嬉しい!嬉しいよ真夏くん!きみも泥だらけだけど無事で!」感極まって・真夏をがばっと抱きしめました。「あのーぼっちゃん。早く警察呼んでくださいよ。死にますよ?」ふたりが見ていない隙に。冬至は先生の横腹をかかとで蹴りました。「こーんなもんじゃ済ませたくないのよ?ほんと。あんたのしたことは。」冬至が呟きます。「ちゃんと罰を受けてもらうからね。」警察に事情を話して、開放されたころにはもう夕方でした。真夏が泥だらけで。頬も赤くて。暴力を受けたことは明白でした。煙草臭い署内を出たら、冬至が待っていました。「お疲れさま。」いつもの白いシャツに、泥がはねていました。膝にもしっかり泥がついています。「冬至・。」にこにこして・真夏の手を握りました。「まーなつちゃん。まずはその泥を落とそうか?」「は?」「そのままじゃ。お家に帰れないでしょ。ね?」繋いだ手をぶらぶらゆすります。「べつに・・。」なんだか。まっすぐに冬至の顔が見れません・・。あんなことになって。自分が情けなくてたまりません。自分を見ようとしない真夏の指を絡めて。体温をはかるように引き寄せて。真夏は・ぎゅっと抱きしめられました。「そばにいてよ。・・心配なんだもん。」
2006/04/23
「ぼっちゃん?」携帯の着信に立秋の名前がありました。「なんなの、もう。」今日は2回かかってきて。1回目は「エクレアもってきて」2回目は「将軍は来なくていい」冬至はお仕事中なのです。迷惑です。はー・・とため息ついて。かけなおします。「・・・・ぼっちゃん。今度はなあに?」「冬至はいるかい?」さっき学校にきていたおじさんが厨房に帰ってきました。「おう。お疲れ。将軍ならまた電話中ー」おじさんは厨房でお皿を洗っているエプロン姿のおじさんに話しかけます。「なんか。ぼっちゃんが妙なことに首をつっこんでいてさ。」「ほう?」「冬至を使えばいいのに、そういったんだが。自分で探すーとか言っちゃって。」「どうしたのかね?やばいことかい?探すって、なんだい。」おじさんたちが騒ぎ始めました。「あ。ねえ。エクレア届けてくれた?ありがとね。」「おう冬至!お前電話中だろ?」「でないのよーぼっちゃん。」冬至が携帯をとんとんとつつきます。「あ。」おじさんたちは顔を見合わせます。「やばいんじゃないの?」「?やばいって?」冬至は携帯をおきました。「ぼっちゃんには ひいきにしてもらっているからな。 怪我でもされたら旦那に申し訳がたたない。」「だから。なあに?」「多分、ぼっちゃんでは怪我するんじゃないか?と思うんだよ。」「学校へ行けばいいのね?で?」「誰かを探すって。言ってたよ。」「はー・・。探すって・・。」探すって。「それじゃ、わかんないよな。」「いや。わかるよ。」冬至は慌てて手を洗ってエプロンを外しました。「行ってくれるか。将軍!」おじさんたちが喜びの声をあげました。みんな。立秋にひいきにしてもらっている職人さんなのです。「ぼっちゃんに怪我させるなよ!」「ぼっちゃんにも。真夏ちゃんにも怪我なんかさせないよ。」「まなつ・・?」「ああ、そうだ!そんな名前だった!あれ、その子は冬至の知り合い?」「・・。」答えに窮しました・・。そう。なんでしょうね。そこへ冬至の携帯が再び鳴りました。「はあい?・・ぼっちゃん。なあに。」<将軍!男を殴るときは、やはりお腹がきくのだろうか?>「なーに言ってるの。すぐ行くから。待っててよ。」<来なくていい>「は・・?」<将軍には地球の裏側にでも出張してもらおうと思うんだ。2.3年行ってきてくれ。>「ちょっとお・・。」<僕は頑張るよ!>「ぼっちゃん!」冬至は切れた携帯にすぐリターンしましたが、ちっとも立秋は出ません。イライラしてブーツでガンガン足を鳴らしています・・。「将軍うるさいよー。」おじさんが注意しても聞きません。「冬至。もう行け。」「そうだよ。ぼっちゃんを守ればそれでいいんだ。」「・・・地球の裏側に行けといわれたんだよ!もう!!」
2006/04/21
もう自分のことしかみえていない真夏は、いつも以上に隙だらけ。睨もうとなんだろうと。先生だって男です。お昼の時間には我慢の限界でした。立秋より先に真夏の腕を掴んで、引きずるように外へ連れ出しました。「痛いって!ちょっと!」真夏が力ずくで振り切っても、容赦なく制服をわしづかみにされて。「先生、なんなの?」もう彼女もひいています。「真夏。なにか悪い事でもしたの?」教室の中は騒然としています。「あれ?・・真夏くんは?」そこへのんびりと立秋がやってきました。お皿に山盛りのエクレアです。彼女が立秋を男と見込んで駆け寄ります。「真夏、先生に連れて行かれたんだけど!」「なんと!」立秋がエクレアのお皿を彼女に持たせて携帯を取り出します。「なにこれー?あーみんな。こんなのもらっちゃったよ。食べよー。」「・・待て!真夏くんの彼女!!」「ありがとねー。」「待ちたまえ!きみは真夏くんが心配じゃないのか?」「心配よ。真夏、朝だって出席簿で頭・ばーんって殴られてたし。あの先生、変じゃない?」「心配なら食べるのをやめたまえよ。大体それは真夏くんのだ!」騒ぐ立秋を横でみていた運転手のおじさんが、心配そうに。「ぼっちゃん。やっぱり将軍呼びますか?あいつなら腕っ節もいいですから・・。」「いや!いい。僕が探すから!」携帯をひっこめて。立秋は言い切りました。「あんた。かっこいいじゃん。」彼女がエクレアを持ちながらほめてくれました。「ありがとう、真夏くんの彼女。それは食べてもいいよ。許そう!」「・・何様?」「真夏。口もきかないつもりか?」陽のささない校舎の裏に押し込まれて。逃げようとしてつかまって、押し倒されました。真夏は自分の上に乗しかかった先生を睨みつけています。髪も制服もぐしゃぐしゃです。細い両手首は先生の左手に捕らわれています。土の冷たく湿った感触が気持ち悪いです。「お前は今・自分を見失っているんだ。たかが1度寝た相手を気にするなんて。 初めての奴かもしれないが。遊ばれたんだよ。」「・・・」「お前をもっと。良くしてやるよ。」先生が真夏の頬を撫でます。そのまま首筋を伝って、乱れたシャツの上から胸をゆっくり愛撫します。先生のほうが息が荒くなっていきます・・。「真夏・・あいつよりも。よくしてやる。」「・・いらないよ。」「?」ぴく・と手の動きが止まりました。「あの猫目がいいって?」「関係ないでしょ。」真夏は冷たく言い放ちました。でもそれがスイッチでした。先生が真夏の頬を打ちました。「つっ!」「真夏・・よくしてやるよ・・。さあ言うことをききなさい・・。」やけにやさしいものの言い方・・。真夏はぞっとしました。さっきより吸いつくような、ゆっくりとした指の動き。真夏のシャツをはだけて。あらわになった突起をゆっくりと撫で回します。「くうっ・・。」「さあ・・真夏・・。」「やめっ。やめて!」ばたばたと暴れますが、手首も自分の自由になりません。膝を曲げて先生をどかそうとしてもびくともしません。「いやだ!どけって!!」「真夏・・黙らせるぞ?・・」腰に手をかけられてずるりとおろされました。「1度やったんなら・・慣れてるもんな・・真夏?」「せ・・先生?」手首ははずされたものの・・先生の鈍く光る両目に捕らわれて。肩がかすかに震えます。「ほら。お前だって・・。」「ぐっ・・・?!」真夏の自身を捕まれて、真夏の肌が一気に紅潮します。「ほら・・。」ゆっくりと擦られます・・。「やめて・・やめて!」「なんだ?こうは・してもらえなかったのか?あの猫目に。」
2006/04/21
先を歩いているきみの姿を見かけてあのひとはだれですか?と ひとに聞きました「あの子は仕事ができるから。頼りになるのよ。」自信を持って仕事をしている姿に あのひとは凄いな と思いましたきみのようになりたいな。そう思って 背中を正しましたきみと組んで仕事をする機会がありました手際よくすすめて 予定より早く終わりました<凄いな> と感心していたらきみは笑って「凄いですね。」と言ってくれましたそれからきみと組む仕事が1日の中心になりましたきみのようになりたくてきみと仕事を組めていつまでも一緒にいられるように私は もっと上を目指そうときみが歩く位置まで 追いつこうと きみが私の 道しるべです
2006/04/21
2限目が終わったとき、立秋はこの世の春を知りました。「立秋!ちょっときて。」真夏が自分のクラスに入ってきたばかりか・・自分を呼んでいます。「なんだい?」もう何でも言ってくれ!なんでも聞くぞ!きみのためなら、と立秋はいそいそと近寄ります。しかしすぐに岸壁から突き落とされました。「冬至の携帯の番号教えて。」・・・そんなことを聞きますか。しかも頬がうっすら赤いじゃないですか。「本人に聞かなかったのかい?」「うん。聞きそびれた。」こく、と下を向きます。「かわいい・・。」惚れ直しましたか・・。「あ?」「かわいいといったのさ!真夏くん!」「うるさいよ!ほら、番号。・・教えて?」もう、怒鳴られたり。おねだりされたり。この小悪魔に翻弄されています。「・・すまない。今日は携帯を家においてきてしまったのさ。」意地悪をしたいのか?本当に忘れてきたのか?「使えねえ・・。」「そんな!真夏くん!ほ。ほらシュークリームがあるよ!」鞄から出しかけました。「おまえ・・。常温で放置してたのか?・・いらない。」「ああ!真夏くん!わかった!帰りに僕の家に・・。」「行かない。」「どうしたらいいんだ真夏くん・・ああそうか!持ってこさせるよ新しいのを。」「・・は。」ごそごそと上着のポケットから・・携帯を出しましたよ?「おまえー!持ってるじゃないか!」「まあ待ちたまえ。・・僕だ。至急、学校にエクレアを持ってきてくれ。」「なんでエクレア・・。」シュークリームじゃないのですね。「ああ、作れるだけでいい。なに?今日も将軍遅番なの?」おや?「おい・・誰と話してるんだ・・。」「じゃあ。待ってるからな!」「おいっ!」「・・なんだい真夏くん?」「冬至・・が来るの?」「仕方ないでしょう。」「まじで?」真夏は立秋を通り越して、見えない向こうを見ようとしているみたいです。もう、落ち着きを失っています。「なんだい・・その嬉しそうな顔は?真夏くん?」「ありがとね、立秋!」真夏が肩をそっと触って、教室を出て行きました。その感触に感激しながらも・・。すぐに携帯をかけなおさずにはいられませんでした。当然ですね・・。
2006/04/20
真夏の上着に仕込んだボールペン型のカメラと窓に隠したカメラを渋々外します。「いつのまに仕込んだんだよ・・。」真夏は呆れています。「好きな人をいつでも見ていたいと思うのは、ごく普通の事だろう?」いつでも・・が、おかしいですよ。「お前は普通じゃないよ。」「なんなのこいつ。うざーー!」彼女がおびえています。怖いでしょう、この人。冷静な真夏もおかしくなっているかもしれませんが。「きみには全く関係がないから!会話にも加わらないでくれたまえ!」なんでしょう。この強い態度は。あなたは隣のクラスですよ。「うざ!なにこいつ!!」「まったく。こういう人種は同じ言葉を繰り返すものなのかな?」「・・立秋、帰れ。」「ああ真夏くん。すまなかった。謝るよ。仮にもきみの彼女だったね。」一転、弱すぎます・・。「真夏くん機嫌を直してくれないか。今日はシュークリームを持ってきたんだ。」「は?・・・持ってきた・の?」ぴくっと。なにかに反応しました。シュークリーム・・の方ではないですね。「ああ!朝、うちの自慢のパティシエに作らせたのさ!」「あ。そう・・。」真夏は ぼーっと立秋を見ています。何か言いたそうです。聞きたいことがあるのです。「シュークリーム?私も食べたい!真夏!」「きみの分ではないよ!真夏くんのだ!」また二人が騒ぎますが、真夏はなんだかどきどきしてきました。「・・誰が作ったの?」「ん?うちのパティシエだよ?」「いや。だから。」「あの猫目って聞きたいのか。ああ?真夏!」先生が教室に来ていました。しかも話を聞いたようです。「猫目・・将軍のことですか?先生。」「学年2番は教室に戻れ!何時だと思ってるんだ。・・なんだそのカメラ・・。」「せんせー。こいつ真夏をこれで盗撮してたみたいですよー。」「変態だ!」先生が・ひいてどうします。「先生に言われたくありませんね。じゃ、真夏くん。またお昼に。」「待てよ!それ・・冬至なのか?!」思った以上に、大きな声で叫んでしまいました。少し声が上ずりました。心臓が どきどき と音が聞こえそうなくらいに鳴ります。「・・・違うよ?真夏くん。うちのお抱えのパティシエは他にもいるからね。」立秋が静かに答えました。「おまえ・・!」先生が持っていた出席簿で真夏の頭を ばんっ と叩きました。「いた!」「きゃー先生なにすんの!」「うるさいから!」なにそれー・・と彼女が呟きました。先生は・・悔しそうに真夏を見つめます。その意味がわかったのか、真夏は むっとにらみ返しました。「先生、意味の無い暴力奮うのやめてね。」「悪かった。」先生がため息をひとつついて。真夏から離れました。教壇に向かう背中を真夏は見ませんでした。先生が真夏をどう思おうと。今の真夏のこころの中には、誰かがいます。黒いブーツに白いシャツの。自分にいつも笑いかける、あの・・。「あ。」真夏は またどきどきしました・・。やっと自覚しました。<指輪・・・どこに入れたっけ・・。>・・はめていなかったのです。
2006/04/20
「おまえ。髪の毛ぼさぼさ。」きれいなお顔だちの少年は、むっとしてつぶやきます。「ええ?そおお?」首をかしげた女の子は、成程。強風にあおられたみたいにぼさぼさの髪です。「くしは。」「へ?」「くしを出せって言ってるの。持ってないのか?」あわててかばんをさぐる女の子。いらいらしている男の子。二人は中学生です。同じクラスです。そして席もお隣さんです。今日は服装検査の日です。委員長を任されている・この男の子はのんびりやさんな お隣さんが気になるようです。「ああ。アキちゃん。また一宮をかまっているよ。」のんきな声の主にきつい視線をぶつけます。「うるさい。こいつが悪いんだ。 女のくせに髪の毛ぼさぼさで学校にくるなんて。」「放っておけばいいのに。アキちゃん。」皆が口々に騒ぎます。「うるさいよ。」怒鳴るから皆、静まり返ります。「こいつが悪いの。こんな頭で、俺の隣に座っていてほしくないの。」「・・・だから。ほっておけよ。一宮のぼさぼさ髪はいつものことじゃん。」「今日は、服装検査だ。みっともないだろう。おい、一宮、まだか。 お前はくしも持っていないのか。」うう・・とおびえた女の子・・。「やっぱりな。もういい。俺のを貸してやる。さっさと直せ。」どうしてこんなに、この子にかまうのだろう。男の子は自分でも よく理解していませんでした。中学生の男の子と女の子の 恋? のお話です。ぐぐるからお引越しします。よろしくお願いします。
2006/04/19
ケーキの飾り付けが好き。きれいに仕上げてあげれると嬉しい。綺麗なものが好き。「将軍の彼女ってどんなひと?」「うーん・綺麗よ?」「モデルみたいな?」「そうかもね。」ああ 彼女が何をやっているのか知らないな、聞かないし。ただ・俺が部屋に帰ると「ケーキの臭いが充満する」と言って顔をしかめるな。あの顔が嫌かも。「そんなこと言って、もしかして別れた?」「うーん。そうかも。来ないし。」「自然消滅なの?」「俺。追わないし。めんどくさいの・いやなの。」「・・さみしくない?」「うーん。連れと遊ぶし。セフレもいるから処理できるし。」「ああ。そう・・。あれ?本気で彼女を好きじゃなかったとか。」「そうかもね。」彼女に対して・全部手に入れたいとか。俺のものじゃなきゃいや・とか、思ったことがないから。連れの言う独占欲みたいなの。よくわからなかった。気になったあの子に手を出して。触って。声を聞いて。ぎゅうっと抱きしめたものの感触が。初めての恋じゃないのに。あのかわいい子が。あの子が全部欲しくなったんだ。嫌がる声も。細い指も。こぼれた涙も。のけぞる背中も。あのかわいい子が俺の名前だけを 呼べばいいのに。ずっと きれいに。よくしてあげれるのに。「ねえ・・。」ねえ。聞こえて欲しいんだけど。俺なら真夏ちゃんを。冬至のお話です。真夏は寂しがっているんですけどね・・。と・すれ違ってます・・。将軍にわかるかしら。
2006/04/19
「真夏。どうした?」お父さんに迎えに来てもらいました。「悪いね。親父・。」「真夏・・?」お父さんは息子の顔を見てびっくりしました。「・・泣きそうな顔してるぞ。家に着くまでに直しなさい。 鞠香が心配するから。」「・・そうなんだ・・。」車の窓から夜の街を眺めます。映る自分の顔が、泣きそう だなんて気付きませんでした。「真夏。御飯食べたら早く寝なさい。」運転しながら・お父さんは真夏が心配です。「うん。」素直な返事に、またお父さんはびっくりです・・。部屋のベッドに沈んでも。体が重くてそのままどんどん沈んでいきそうな感覚。ずっと。鳴りもしない携帯が気になるのです・・。ずっと。聞けばよかった。と悔やんでいるのです。この気持ちはなんでしょう・・。「真夏がおかしい!」お父さんは年頃の娘を心配するかのようです。「ぱぱー。お兄ちゃんに何を食べさせたのよー!お兄ちゃん帰ってきたとき・ 顔が真っ青だったじゃないの!」「なんでお父さんのせいにするんだ鞠香ちゃん!!」「お酒のませたんでしょう!」「飲ませないよ。」「うそだあ。さっき・いつものお兄ちゃんの匂いとちがったもん!」「はあ?」そのやりとりが聞こえて、真夏は飛び起きました。「鞠香・・?」女の子は敏感ですよ・・。「なんかこう・・。変な匂いがした!」危ないですよ・・。鞠香ちゃん何を言い出すの?「・・・真夏!起きてるんだろう?お風呂に入りなさい。」お父さんが部屋のドア越しに言いました。ベッドの上で。正座して真夏は聞きました・・。翌朝。すっきりしない頭のまま、登校します。体は痛いところもありますが、昨日よりは体が軽いです。さすが男の子、1日寝たら。大丈夫です。「真夏ー!おはよ!!」彼女が飛んできました。「おはよー元気だねー。」「真夏さあ。昨日どうしたの、早退して。どっか悪いの?」「いーや。」「だって。担任が大慌てで真夏を探してたよ?」「はー・・。」うんざりですね・・。「なんかさあ。うちの担任最近おかしくない?」「はー?」「真夏にばっか。かまってない?」「はあ?」「おかしくない?」「おかしいでしょ!」思わず声が大きくなります。そう。そうなの・おかしいの。「なんかさあ。みんなも言ってるよ?真夏真夏って呼ぶし。おかしくない?」「もー・・。やだ。」「真夏どうしたの?やっぱどっか悪いの?」もう逃げたいです。でもここは。この彼女に盾になってもらわないといけませんね。「あのさ。こんど・・どっか遊びに行かない?」「ほんと!どこ行こうか!うれしい、真夏。」彼女が凄く嬉しそう・・だけど、真夏はなんだか寂しい気持ち・・。何かが違うのです、昨日とは。「真夏はケーキ食べたいから。おいしいケーキのある・・。」こんなに自分に気を回してくれる彼女には悪いけれど。何かが違うのです・・。教室の窓から外を眺めて、誰か来ないか探します。誰を探しているのですか・・。なにを期待しているのですか。「真夏くん?外になにかあるのかい?」「・・なにもないよ。」「!普通に会話してくれたね真夏くん!嬉しいよ・・。」立秋は大喜びです。「お前は隣のクラスだろう・。帰れ。」「そうはいくか真夏くん。きみのそのアンニュイな顔を見たらたまらなくて飛んできたんだ! 離れるものか!」「なんだって?・・おまえ。どうして俺の顔が見れるんだ、隣のクラスなのに!」「最近はとても小型のカメラがあるんだよ。知らないのかい?」「帰れ!カメラも外せ!!」
2006/04/18
指輪よりも、携帯のアドレスを教えて欲しかったな。そんなセンチなことが頭をよぎりました。びっくりです。送ってあげる。と言う冬至を断わって、ひとりふらふらと歩きます。夜の街の喧騒が耳に遠く聞こえます。ぼんやりしていますね。通り過ぎるコンビニの明るい照明がまぶしいです。はあ。とため息をつきました。無意識におなかのあたりを触っていました。お昼から何も食べていませんが、何か食べたい・・こともないのです。なんだろう、この感じは・・。<性欲が満たされないから食欲に走るんだ、お前は。>担任の声を思い出して。はっとしました・・。しばらくはまっすぐ歩けませんでした・・。「ぼっちゃん。なんでした?さっき電話くれたでしょ。」「・・・おまえ。どこにいるんだ!」冬至がかけなおした立秋の携帯番号に、くぐもった男の声がしました。「だれ?あんた。ぼっちゃんじゃないの。」「俺は真夏の担任だ!」ぷち。「あ!きりやがった。」「・・・生徒の携帯に黙って出るからですよ。しかしドアを開けないなあー。」「おい学年2番。本当にここが・あの猫目の住むマンションか?」「どうしてですか?」「人の声どころか。住んでる気配もないぞ?」ぴんぽーん。ぴんぽーん。「違うかも知れませんね?」「じゃあどこだ!」「知っていたら最初から案内していますよ。将軍また引越ししたのかな。」マンションのドアは開く気配がありません。「・・もういい。送ってやるから。乗れ。」「先生のことを信じたいところですが・・変なことだけはしないでください。」「絶対・しません。」夜の街は昼間とは違う顔です。しかも。「どこだっけ・・。」よく知らない街なら、なおさらです。「だから携帯の・・・。」知っていたらかけましたか。真夏は家に帰ることよりも、なによりも、・・心細くてなりませんでした。今もし携帯に冬至から連絡が入ったらどうしますか。なんでしょうか。この置き去られるような気持ちは。忘れられたら、嫌なのです。なのに、今一緒にいないのです。真夏は<不安>を初めて知りました。
2006/04/18
きれいな石を探してた。琥珀・・。翡翠・・。すこし違うな。自分の指に乗せたときに、石が主張してくれないと困るんだ。俺を守るんだから。何軒かみて回って。ようやくたどりついた石は白くて。黒い筋がうっすらと混じって。「日本人の肌にはあわないな。」ふふっと笑ってしまった。ごつめに指輪をオーダーして。出来上がったのをはめたら店員さんが。「このホワイトバッファローターコイズは、大事な人にあげるといいんですよ。」「へえ?」「そのひとを守ってくれるんですよ。」大事な人?そのひとができたら。ああ・でも。どうなの?俺が守るってのは、どうなの?またまた冬至ちゃんです。
2006/04/17
「おい学年2番・・。おまえの情報は正しいんだろうな?」「当然ですよ。淫行教師?」「なにが淫行だ。和姦だ。しかも未遂だ!」「ああー先生。もうすぐですよ、将軍の住むマンション。」真夏の担任と立秋が、冬至の住むマンションに車で近付きました。「その将軍てやつが、猫みたいな目の。」「はい。うちの・・・パティシエですよ。」「あのガキ・・。」「ひどい言葉遣いですね先生。教師たるもの美しい日本語を駆使しないでどうしますか! しかも将軍は僕と真夏くんより1つしか年が違わないのですよ。」「おまえ・どうして冷静なんだ?」「僕は真夏くんを抱きたいとは思いません。」「ほお?」「抱かれたいのです。」「もう降りろお前。」「さーあ!将軍に抱かれて力を根こそぎ抜かれた真夏くんのお顔を拝見といきましょう。」「おい。大丈夫か?」ぴんぽーん。ぴんぽーん。「でませんね。」「そりゃ。すぐにはでてこないだろ。しかしあのガキ、またしてもさらいやがって・・。」ぴんぽーん。「将軍。将軍。」ドアに向かって呼び始めました。「なんだ?携帯もでないか?かけてみろよ。」「ああ。うっかりしていました!」携帯をごそごそと出して。「・・・・なに。この曲?」「展覧会の絵。よくCMで流れてるでしょ。って。これぼっちゃんだ?」「は?立秋?」「うーん?でたくないな。」「いいの?おまえの ぼっちゃん だろ?」「あのね真夏ちゃん。・・・・こんなことしてなんだけど。」はー・・と髪をかきあげます。「今。なんて言ったらいいか。わかんないのよ。」「・・はあ・」「ぼっちゃんに。わーるいことしちゃったから。」冬至は左の薬指にしていた大きな白い石のついた指輪を外してじっと見ました。「まーなつちゃんを。ぼっちゃんは。」そして指輪にちゅっと唇を寄せて。「ぼっちゃんは真夏ちゃんが好きだからさ。」にこっと真夏に笑いかけます。「は?」「これ。お守りにはめてて。俺も真夏ちゃんが好きだから。」
2006/04/17
すれ違ったときに、いい香りがしたんだ。まるで果物のような。くすんだ茶色・・何て言うんだ、あの髪の色は。それに・・寝癖?・・ではないだろうな、あのはねさせた髪は。くしゅくしゅしてて。なんだ?隣のクラスの・・だれだ?「真夏ーおはよー。」む?女子の声。真夏?真夏というのか!なんだ・・?男子の癖に、なんて。かわいらしい顔をしているんだ!「・・これがすべての始まりさ。」「なにが始まったって?」「きみとの出会いだ。真夏くん。」「よく本人目の前にして語れるな?」「なんでも話したいんだ、真夏くん。きみとこうしていつまでも。 僕は・・間違っているかい?」「うざい。」ああ、またそっぽをむかれてしまった・・。でもその横顔も、シャープなラインがたまらなく愛おしいのだが。「立秋さあ。」「!なんだい真夏くん?」「もしかして俺が好きなの?」立秋のお話です。本編に入れる・・かもですが。
2006/04/15
ピアノを習っているなんて知らなかった。あの子が。「昨日びっくりしたよ。俺が先生のところでピアノ弾いていたら、 一宮が入ってきたんだ。あいつも先生に習ってたんだ。」アキが早口でまくしたてた。珍しい、この冷静な男が・・。一宮がからむと、普通じゃなくなる。「へえ?一宮が。あいつ上手いの?」「へたくそなベートーベンだった。面白いの、」思い出し笑いだ。これも珍しい。「月光・・だっけ?あの重い曲。一宮、あんなの弾いてるの。 しかも自分のペースで。先生怒っちゃってさ。」手をぱんぱんたたく。どうしちゃったの?「面白そうじゃん?」相槌。これがせいいっぱい。さえない女の子。これといって・・特別かわいいわけじゃない。なのに俺の親友は、この子が気になっているみたい。隣の席だから?それとも、昔・・・いじめたから?罪悪感なの?にしては・・・楽しそうで。俺はすこしさみしいんだけどなあ・・。「メゾピアノ」のサチのお話です・・。アキもサチも男子です・・。 今日は少し変わったものを続けてUPさせていただきました。
2006/04/15
「は。ロールケーキっすか?今から、学校に?」今日は遅番だから寝ていたかった朝8時。携帯がけたたましく鳴って、起こされた。うちの坊ちゃんは、最近おかしい。「将軍のバイクなら車より早いだろう?」「はいはい。ぼっちゃん。誰かにあげるの?」「真夏くんに食べさせようと思うんだ。」まなつ・・。取引先の企業の御曹司が自分より1つ年上で。よく厨房に来るようになったのは半年くらい前。「きみは痛くないのかい?その口のピアスは。」「ああ。ちょっと痛いかなあ?」「すみませんね坊ちゃん。こいつ、作業中もピアス外さなくて。」「外してどこかいっちゃったら困る。」「ふうううん。そういうものなんだね。」まじまじと見てくる育ちのよさそうな御曹司は、変わった趣味があった。よくデジカメの画像を見せてくれる。決まって、ひとりの男子だ。ぶれたりして、必死に撮ってる姿が見に浮かぶ。「名前・・なんて?」「知りたいかい将軍!この人は・・・真夏くんだ。」「まなつ?」名前もインパクトあるけれど。この子は、雑誌の表紙を飾りそうな・。「今は同じクラスの女子とお付き合いしているんだ。彼は甘いものが好きみたいで。」「ふううん?」「最近ようやく自宅もつきとめたんだ。」「へえええ?つけたの?」「お近づきになりたくて。」「へええええ。犯罪でしょ。」「どうしたら話しかけられるものだろうか。」「まず、その。つけるのやめてね?ぼっちゃん。」確かに言った。好きなものの話でもしてみろって。接点ないなら。昼時に偶然装えって。「ふううん。まなつちゃん、ね?」持って行けば、顔が見れたりするのかな?冬至ちゃんのお話です。土日はおとなしく更新です。←??
2006/04/15
どんなにこころを 伝えても分かり合えない人もいるだろうに。きみには直接 悩みひとつ話したこともないのにきみの前で泣いたことも一度もないのにきみは どうして 傍にいてくれるのだろう。一緒にいると 決めてくれたのだろう。僕の悲しみが わかっていたのかい。僕の悲しみを 背負うというのかい。そんな重いものを。 その頃の僕の家は、事業に失敗した親の借金の返済と祖父の入院が重なって。 皆がぴりぴりとしていた。 とてもくつろげるような家ではなかった。 親が僕をおいて、逃げ出したのも。仕方ないか、と思った。 電灯に光る廊下を毎日歩いて、鼻に管を入れた祖父の世話。 家に帰れば、なけなしのお金を振り込む作業。 誰だって、嫌になるんだ。 親がいなくなった。 僕は捜索願も出さなかった。 遠い町の役所から手紙がきた。 多分、親のことだろう と感じた。だから開封していない。 信じられるか と言うレベルではないんだ。 僕は ひとりで背負ったんだ。この荷物を。 誰にも打ち明けずに。僕はひとりで生きてみた。 必要のない笑顔を捨てて。こころを閉ざして。 きみに会うまで。 頬にあたった粉雪が 僕の体温でじわりと溶けた。風に舞った粉雪が 僕の髪につかまった。溶けないがんじがらめのこころは誰にでもあると。それでも、一緒にいるよ と。僕の髪から粉雪を逃がした きみの手が。すっかり冷えてしまって。このまま きみといられたら どんなに僕は救われるだろう。でも。僕は きみが好きだから。一緒にいたいけれど、僕の荷物を持たせるわけにはいかないんだ。そう強く感じたのに。気がついたんだ。あ、僕は きみが好きなんだ。「ほら。そのうち目に雪が入るよ?」きみが笑った。髪の毛をくしゃくしゃにしてきた。吐く息が真綿のように 僕を包んだ。短いお話を書きたかったのです。が、不慣れで。練習させてくださいね・・。
2006/04/15
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