仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2011.02.12
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カテゴリ: 教育
文部科学省では定員抑制方策をとってきた大学医学部の在り方について検討しているそうだ。資料によると、医学部における地元出身者の比率(所在する都道府県内の高校出身者の割合)は、平成22年度で全国で36.7%だそうだ。県別に拾うと


青森 42.9%
岩手 22.5
宮城 15.6
秋田 26.5
山形 16.8
福島 41.9

(低率の県)

滋賀 15.3
佐賀 19.8

(高率の県)
北海道 65.7
東京 49.3
愛知 57.8
三重 52.8
広島 52.1
鹿児島 71.0
沖縄 62.6
(以上、文部科学省医学教育課調べ。自治医科大学、防衛医科大学校は除く。)

厚生労働省が中心となって医師不足対策が論議されているが、養成機関の増設や地域バランスの再検討について、大学を所管する文部科学省でも動き出したというところだろうか。

まずは総数の議論があるだろう。そして地域の視点も必要だ。そこで、このような出身者のデータが出されているのだと思われる。

もちろん出身率が低いことが悪いわけでは全くないはずだが、医師数の足りない地域に医学部定員が増えるとすれば、一定程度は定着も進む可能性はある。ただし、受験生の動向や卒業後の進路は、決して距離だけではないのだから、認可庁である文科省としては数字だけにとらわれずに、大学の個性と品質(費用や立地場所などを含めて)が論議の本質であることは忘れないでもらいたい。

ところで、データに戻るが、東北で見ると、青森(弘前大)と福島(県立医科大)は全国平均より高い結果となっている。平成16年の数字(全国平均31.7%)と比較すると、青森は28.0から42.9へ、福島は38.8から41.9に、それぞれ上がっている。地元の医学部志望総数が増えたのか、或いは他県からの流入が減ったのかはこれだけでは判らない。

宮城(東北大)の15.6は、平16も12.9であり、構造的に低いのだろう。東北大学の吸収力はもちろんだが、よく言われるように宮城県の高校生の受験者絶対数が少ないことで(幾分か東北他県や首都圏方面に進学すると思われる)、定着した傾向だろう。



山形(山形大)は平16の24.0からやや下げて16.8となった。宮城、福島、関東からの流入だろうか。それにしても、これだけでは判らない。


医学部新設に名乗りを上げている学校法人等が出てきた。県内でも、仙台厚生病院が構想を発表した。東北の医師不足に貢献するという。臨床主義を打ち出して東北大とは別の特色を出すような雰囲気に思われた。

宮城県に東北大学とは別に医学部があれば、「入りやすい」し卒業生の定着も進むから望ましい、との意見もあるだろう。旧7帝大所在県で医学部が複数ないのは宮城県だけだし、などと。

大都市圏を除いて、複数の医学部を持つのは、福岡(4)、愛知(3)、北海道(3)、京都、石川、岡山 という辺りだ。栃木も複数だが、各県ごとに選抜され必ず出身県に戻る制度の自治医科大学は上記データに含めていない。

これらの場合を見ると、まず石川県は25.8%(平16は13.1%)でかなり低い方だ。金沢大学の吸引力と、私立金沢医科大学の受験層が広域にわたるのだろう。岡山県は25.0で、平16(33.7)は全国平均を超えていたが、平22では下がっている。

愛知や北海道は経済圏域の自己完結性の発露か。

いずれにしても、第2の医科大学を政策的に認めたとして、地元出身者の比率が上がるかどうかは、即断できない。大学の質によるはずだからだ。また、医師確保政策の立場からすれば、大学入学の比率よりも卒後の定着がとりあえずは重視されるべきだろう。東北大学の場合、地元高校生の入学比率は1割台でも、卒業後の残留は3割以上と言われている(新聞記事)。

東北人としては若者の進路の多様性重層性、また医療スタッフの向上と地域医療の充実につながるとするならば、大変嬉しいことだ。しかし、大学の定員や地域配置の論議はもちろん重要で、国家百年の大計でしっかり検討して欲しいけれども、医師不足対策の決定打とばかりに表面のデータ論議中心で決めつけるとすれば、それは良くないと思う。もちろん有識者個人が流されることはないとしても、マスコミの風ばかり気にする政策責任者(政治家)の風潮が、心配だ。





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最終更新日  2011.02.12 09:30:41
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