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池井戸潤さんの銀行もの。といえば、絶対におもしろくないわけがない。安心して手に取ることができますね。もちろんこの本もまた、引き込まれるおもしろさで、一日半ほどで読了しました。この作家のすごいところは、私のような経済オンチ、金融オンチでも、ちゃんと銀行内部の話が楽しめるところだと思います。もちろん、銀行やお金の動きが、全部完璧にわかったとは言いません。けど、だいたいの流れがわかり、それがものすごく大切かどうかぐらいはちゃんとわかります。そんなの当たり前と思われるかもしれませんが、それぐらいひどい経済オンチも世の中にはいっぱいいるんですよ。これは小説ですから、その世界(業界)のことを何も知らない人でも、おもしろいと感じさせなければならない。しかも、その業界にうんと詳しい人も、うんざりさせずに楽しませなければならない。この二つのことを、過不足なく満足させることって、すごく難しいと思います。これまで読んできたたくさんの本の中には、それができずに、やたら詳しく掘り下げた説明ばかりになってしまったり、この現象は、世界中で超優秀な研究者しかわからないのだ。難しいことはどうせわからないだろうから書かないのだ。などと、初めから説明を放棄してしまっている小説もありました。(これホントです)それに比べれば、これは本当に上質な小説です。同期入行の親友が巻き込まれた事件のために、銀行の暗部を暴こうとする若い行員。解決に近づいていくにつれて、目の前のもやもやが晴れていく感覚は、ミステリーの最高の楽しみですね。(優秀だった親友はもう帰ってこないという点だけが、とても残念ですが。)
2016.09.17
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文庫本の裏表紙にあるあらすじを見て、この本を買いました。かねがね、文庫本の裏表紙に書いてあることは宣伝文句なのであって、鵜呑みにしてはいけないと、いつも思っていたのですが、パニックものの好きなわたしは、おおいにそそられたわけです。ところが、アマゾンの書評を見てみると、評価はすごく低い!なんだかボロクソに書いてあります。それこそ、そのまんま鵜呑みにしてはいけないけど、あそこまで書かれていると、なんだか読む気が失せてしまいそうでした。が、読んでよかったですよ。おもしろかったです。冒頭のガボンに住む研究者夫婦の話題から始まって、一転北海道の石油掘削基地へ。こんなに大風呂敷広げちゃって、どうやって終結させるつもりだろう。この大惨事に対する解決策が本当にあるのかと、そればかり考えながら読みました。とはいえ、不満がないわけでもありません。ガボンで家族を亡くした富樫さんが、ガボンに渡った経緯についてもっと知りたいです。また、ガボンから命からがら戻ってきてから現在までの経緯も。それから、生物学者の弓削さんの描き方がちょっと・・・若くて美しいロングヘアの女性ってところからして、いかにもって感じでしょ。この女性、大切な交渉の場面で超個人的なことを持ち出して感情的になったり、机に伏して美しい肩をふるわせて泣いたり、まったくのステレオタイプ。そもそも気鋭の学者でありながら、自分の祖母のことを他人に話すとき「おばあちゃん」って呼ぶ。肉親をお母さんだのおばあちゃんだのって呼ぶのは、今どきは普通のことかもしれないけど、わたしとしてはものすごく違和感があるんですよね。これだけで、まず知的な印象は持てませんでした。それにしても、この作家はサラリーマンで、この小説が処女作だそうですよ。たいへんな力量だと思いました。
2016.09.14
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ミステリーには、「イヤミス」という分野があって、イヤミス作家の双璧は真梨幸子と湊かなえだと、友人から聞いたのは2年くらい前のことです。読んだあと、イヤ~な気持ちになるミステリーなのだそうです。わたしはこの二人のどちらも、2,3冊しか読んだことがないし、そこそこおもしろかったけど、そんなに大ファンというわけでもありません。しかし、イヤな気持ちになるとわかっていながら読みたくなるっていう心理は分かるような気がします。怖いけどジェットコースターが大好き。嫌いだけどお化け屋敷には入ってみたい。テレビで心霊写真を見てその夜後悔するのは、毎年のことです。ジェットコースターもお化け屋敷も絶対イヤだという人も、悲しい映画を見て涙を流した後って、スッキリするんじゃありませんか。さて、今回はイヤミスの女王二人の「サファイア」と「6月31日の同窓会」を続けて読んでみました。まず、「サファイア」の方は、どろどろのイヤミスを期待して読んだら正直言って、がっかりすると思いますよ。短編集の最後の2作は連作となっているんですが、その2編がいちばんおもしろかったです。というより、その2編以外はあまりおもしろくありません。ミステリーとしても中途半端で、一つ読み終えて早く次を読みたいという短編ならではの楽しさがありませんでした。次に手に取った「6月31日の同窓会」の方は、読み始めて半ページほどで、真梨幸子の勝ち~、勝負あった~という感じでした。どろどろのストーリー以前に、文章に粘りがあって、ち密にしてなめらか。文章が絡みついてくる感じがします。真梨幸子に比べたら、湊かなえの文章はさらっとしてます。ストーリももちろん。どろどろ度、半端ありません。登場人物が多いときは、整理するために相関図を書きながら読む私ですが、時間も前後し、一人称もころころ変わり、それが誰かがずうっとわからない状態が続くので、相関図を書くことすらできません。結局相関図はあきらめ、どろどろの中に浸かりつつ最後までいっちゃいました。もう、何が何だかわからなくなりつつも引っ張られていくのが、この本の楽しみ方なんですね、きっと。表紙も、ほらこの通り、真梨幸子の方がどろどろです。【中古】【書籍・コミック 新書・ノベルス】真梨 幸子 6月31日の同窓会【中古】afbサファイア (ハルキ文庫)/湊かなえ (著)角川春樹事務所【中古】
2016.09.05
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奥田英朗さんの「家日和」という短編集がありますが、この本はその続編、あるいは姉妹編というのが、いちばん分かりやすい説明かと思います。残念ながら、「家日和」の内容をほとんど覚えていないのですが、一番おもしろかったのは、ロハスにはまってしまった妻を描いたものでした。その感想は、こちらにあります。熱心にロハスに打ち込んでる奥さんのようすを、困ったヤツだと思いながらも優しく見守っている、包容力のあるご主人でした。その奥さんが、またもや登場します。ご主人が人気作家になったことにより、自分の生き方を路線変更せざるを得なくなる、人知れず苦労している奥さんです。彼女が、最後に行きついたのは、なんとマラソンでした。マラソンは、彼女を健康にしたばかりではなく、意外にも彼女の心を慰め、家族の再生にまでつながっていきます。東京マラソンに出場した彼女は、歩くような速度で、それでも健気に走ってゴール会場に戻って来ます。「よく頑張ったとしか言いようがない。胸を張って戻ってくればいい。」「おかあさーん、おかあさーん、こっち!こっち!」尊敬するおかあさんを、飛び跳ねて迎える子どもたち。ご主人が涙を我慢している前で、奥さんがゴールに向かって行くシーンで、小説はおしまい。さまざまな形態の家族が持つ、ありがちな、あるいは想像を超えた問題。深刻だったり、ほほえましかったりする問題。どの話も、終わり方がとてもすっきりしていて、結末がいい方に転ぶのかその反対なのか、ぎりぎり想像できるかどうかというところで、ストンと終わる。説明や余韻は一切なし、あとはご自分でどうぞ。みたいな終わり方が、とても気持ちがいいです。
2016.08.20
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この頃、年のせいか老眼が進んだせいか、あるいは読書から少し遠ざかっているせいか、あまり重くて深刻なものが読めなくなりました。だからといって、あまり軽いものは読みたくないしおもしろくない。わがままなわたしの好みを、十分に満足させてくれたのがこの本です。ネタバレしないように努力はしますが、してしまいそうな予感もするのでご注意を。物語は残虐極まりない殺人事件から始まります。そしてその現場に残された血の文字。それから、どうもあの事件の犯人らしい、でも確証はない、という人物が3人あらわれて、交互にその3人が描かれていきます。その3人には全くつながりがなく、何か隠したい過去を持っているという設定で、読めば読むほど一人一人が怪しくて、まさに推理小説を読む楽しさを満喫することができます。とてもおもしろくて目が離せないので、上下巻をほんの1日半ほどで読んでしまいました。ただちょっと不満な点もあって、まず3人の物語が目まぐるしく交代します。もう少し読み込みたい気がして、シーンが変わるたびにちょっと不満感を持ちました。また、全編を通してのテーマは「人を信じる」ということらしいんですが、最後のほうで触れられるだけで掘り下げ方が足りません。「人を信じる」ことについて描きたいのなら、最初の殺人の背景にも意味を持たせた方が効果的だったのではないかと思いました。そして、わたしが一番不満だったのは、最初の殺人現場に犯人が残した血の文字です。そこにはどんな事情や気持ちがあったのか、それが一切語られていません。この文字は最後の最後にもう一度出てきて、それが犯人逮捕の大きなきっかけになるのです。犯人の背後にもっと大きな理由があったような気がして、それを知りたいと思いました。文句ばかり言いましたが、この本はそれを差し引いてもとてもとてもおもしろい本です。映画化されるそうですので、そちらのほうも是非見たいと思います。3人の怪しい人たち(一人は犯人ですが)それをとりまく人々を、映画でもう一度見たいです。
2016.08.05
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中学高校時代は地味でパッとしない女の子だった糸井美幸は、短大に入って、色っぽい派手な女性に大変身。肉厚な唇と大きなバスト。その色気を武器にして、さまざまな男を手玉に取り、犯罪にも手を染めていく。そんな糸井美幸を、周辺から見て噂する人たちだけの視線で表していくという形の小説です。噂をしたり聞いたりしているだけだから、それが本当のことかどうかはわからない。最後のほうでは、彼女を追跡する刑事まで出てくるけど、それでも真偽のほどはわからないまま。その刑事も、美幸を追い続けるのかどうかもわからない。物語の結末も、はっきりしないし誰も真相を知らないまま終わってしまいます。色っぽく成長した女が、男を手玉に取り、愛人関係を結び、水商売で成功し・・・なんていうストーリーは、正直言って、珍しくもおもしろくもないです。実際に世の中にもたくさんあるでしょう。また、さらに愛人殺害までやったとしても、映画や小説の中なら、やっぱり陳腐な展開ですよね。それでも、この本がとてもおもしろく、一気読みしてしまった理由は、最初から最後まで、「うわさ」だけで語られたことと、真相を明らかにしないからだと思います。読書レビューを見ると、糸井美幸が「憎めない」とか「惹かれる」といった感想が多いですね。糸井美幸は、色っぽいだけじゃなく頭も良さそうだし、親切ないい人みたいなので、そんな感想が多いのもわかります。また、私はこの本の中に、地方都市の閉塞感がよく表現されているのもおもしろかった。考えてみれば、「うわさ」だけで語る物語は、大都市では成立しないでしょうね。私自身、地方の小さい市の「うわさ」飛び交う町に住んでいるので、その感覚がよくわかりました。 【中古】【書籍・コミック 新書・ノベルス】奥田 英朗 噂の女【中古】afb
2016.03.20
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文庫本の裏表紙解説によると、「働く女子の気持ちをあり得ないほど書き込んだ」短編集だそうです。大抜擢されて、30代で課長になった聖子。役職も収入も聖子より低いが、それを全く気にかけない夫のヒロくん。独身のままマンションを買うゆかり。マンション購入イコール一生独身?揺れる女心。バツイチで子育てをしながら、営業部の第一線で働く孝子。「子どもが待っている。1人で育てている。」と錦の御旗を掲げたくはなかったが、思わず口にしてしまった・・・新入社員の教育係を仰せつかった35歳の容子。ひと回り若い新入社員は、長身でハンサムで初々しい、全くの容子の好みだった。いろいろな立場の働く女性たち。著者は男性なのに、うまく網羅しているなあと思ったけれど、やっぱり読者(女子)にとっていちばんおもしろいのは、表題にもなっている「ガール」ではないでしょうか。32歳独身の常識派 由紀子が主人公。4年先輩の独身の光山晴美の、ぶっ飛んだキャラとノリ。みんなの度肝を抜くファッションと言動。テーマはズバリ!!女は何歳までガールでいられるのか。いてもいいのか。晴美は、ただの痛い中年?それとも永遠のガール?私から見れば、32歳も36歳もまだまだ若くきれいで、女ざかり恋愛盛りだけど、女はどの世代でも、自分の立ち位置を気にしながら生きている。現役ガールはもちろんのこと、中年ガールも、高齢ガールも、きっと楽しめる一冊でした。10500円以上お買い上げで送料無料【中古】afb_【単品】_ガール(講談社文庫)[Jan15,2009]奥田英朗
2016.03.19
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なんと、この読書の部屋では珍しい、文豪夏目漱石の「坊ちゃん」です。中学1年のときに読んで、特に感動もせず、特に感想も抱かず、そのまんま数十年が過ぎて、再会した坊ちゃん。読んでみると、出だしの数行だけが記憶にあったものの、他はまるで初めてのような気がしました。そして感想ですが、とにかくこの人は「正直」そのもの!屁理屈も言い逃れも嘘もごまかしも、一切できない不器用な正直者。「親譲りの無鉄砲で、子どものときから損ばかりしている。」有名な出だしの一文ですが、まさにそのとおりです。本当にそうだろうそだろうとうなずきながら読みました。松山での教員生活は、これが現代人の現実であれば、相当孤独でつまらないものでしょう。誰も味方となる人はいないし、学生との交流もありません。登場人物は嫌なヤツばっかりだ・・・と昔から思っていたのですが、今回読んでみて、いや、これって山嵐と坊ちゃんの友情物語じゃないの?と思えたのは、収穫でした。山嵐も、タイプは全然違うけど正直者であるところは坊ちゃんと同じです。でも、お互いに友情が芽生えたとか、その後付き合いがあったとか、そんなことは一切書かれていないんですけど。坊ちゃんには、味方となる人は一人もいないと書いたけど、1人いましたね。最初から最後まで、坊ちゃんの心にいた人はたった一人、下女の清だけです。清のことを最後に述べて、物語は終わります。人についても事件についても、あまり追ってまで書かれていない小説ですが、清のその後についてだけは、ぶっきらぼうでもその死後のことまで書かれているのが、主人公の清に対する気持ちだったんだなあって・・・ほらね、中学生が読むのとはずいぶん違った感想文が書けました。子どもの頃に読んだ本を、もう一度読むって、すごくおもしろいですよ。坊ちゃん /夏目漱石/角川文庫【中古】★送料無料!
2016.03.13
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本多勝一さん。1931年生まれのおじいさん。有名なジャーナリストらしい。この本は、本多勝一さんの子供の頃の食べ物に関する記憶と日記をもとに、マンガにしたものです。子どもの頃の記憶ってすごいですね。当時の村の様子、家業のお店の様子や両親の働きぶりが克明に描かれています。そして何より、野山を舞台に幼馴染と遊んだり食べたりする、楽しそうな様子!食べるものが乏しい時代だったということもあるでしょうが、当時の子供たちは、山の動植物のことを本当によく知っていた。そして、野山は今と比べ物にならないくらい豊かだったということがわかります。草花はもちろんのこと、木の葉、木の実、木の花、虫、幼虫、虫の卵、キノコ、何でもかんでも食べる食べる食べる・・・わたしの年でも、読んでいてわかるものもいくつかありましたが、名前も姿も見たことのないものがほとんどでした。じゃ、何がおもしろかったの?って言われそうですが、この本は、ただ昔の子どもが食べたものの記憶にとどまらない魅力があるのです。それは、環境問題を考えながら読んでも面白いと思うし、生物学的にも意味があると思う。それに、教育書としても読めるからです。書いたのは、1956年生まれの漫画家、堀田あきおさんと、その奥さんです。ちょうど親子ぐらいの年齢差でしょう?そうなんです。実は、ぱぐらはこの堀田あきおさんと同世代で、父は本多勝一さんと同世代なんです。ぱぐらの父は80代で、元は字を読んだり書いたりする職業の人でしたが、今ではすっかり年を取り、ストーリーの入り組んだ小説は読めなくなったそうです。マンガぐらいがちょうどいい。それも、あまりストーリーを追う必要のない、抒情的なマンガがいい。ということを聞いていたので、さっそくこの本をプレゼントしましたよ。懐かしいと思って読んでくれているでしょうか。【中古】 本多勝一のこんなものを食べてきた! 小学生の頃 小学生の頃 /堀田あきお(著者),堀田佳代(著者),本多勝一(その他) 【中古】afb
2016.03.13
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次に手に取ったのが、この本です。これも実におもしろかった。池井戸潤さんの本は、いつも骨太で男!って感じがしますが、わたしのようなビジネス関係に全く無縁のおばさんでも、全然違和感なく入っていけて夢中になれるところがすごいと思います。これが、同じビジネス小説でも、深田祐介や山崎豊子になると、私にはちょっと敷居が高い気がするんですよね。池井戸潤さんは、何年か前話題になった半沢直樹とその続編数冊や、その前の「下町ロケット」「空飛ぶタイヤ」、それに、「ルーズヴェルトゲーム」など、どれもはずれのない、飛び切りのおもしろさです。さて、この「シャイロックの子供たち」も、銀行が舞台の短編集なのですが、短編集のつもりで読んでいたら、あれれ?結末のない短編が・・・実はこの本は読み応えのある長編で、しかもビジネス小説でありながらミステリーの要素もありました。半沢直樹を読んだ時も同じ感想を書いたような気がするけれど、銀行ってほんとうに大変な世界。生半可な精神じゃやっていけなさそうです。そういえば、シャイロックって、小学生のころ読んだ「ベニスの商人」に出てくる強欲非道な金貸しのおじさんでしたよね。わたしの持っていた本の挿絵では、太って脂ぎったおじさんだったような。そっか~、銀行員のことをシャイロックの子供と呼ぶとは、まったく救いようのないたとえだわ。日本中の銀行員の皆さん、心と体の健康に、くれぐれもお気をつけてくださいね。 【中古】文庫 ≪日本文学≫ シャイロックの子供たち / 池井戸潤【02P11Mar16】【画】【中古】afb
2016.03.10
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皆さん、お久しぶりです。ぱぐらです。学校に勤めているぱぐらは、去年の4月からクラス担任を拝命し、大忙しな毎日を過ごしていました。やっとそれも終わりになり、後は残務整理を残すばかり。こうして、読書の部屋に戻ってこられて、うれしくてなりません。さて、この本「宿命」は、久しぶりの推理小説。それも硬すぎず柔らかすぎず、重すぎず軽すぎない、読みやすい小説でした。不思議な糸に操られていることを感じている女性と、その夫。初恋の男性、幼い日の思い出の女性。それらが、ある殺人事件にからんで明らかになっていく。そんなストーリーです。最後まで引き付けられますよ。ま、あり得ない話だし、あり得ない展開ばかりではあるんですけど、そんな堅苦しいことはいいじゃない、とってもおもしろいんだから。乗り物に乗る直前に、駅の書店で手軽に買っていくのに最適の本でした。合計5,000円以上のお買上げで送料無料!【中古】宿命 (講談社文庫) /東野圭吾
2016.03.10
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平安寿子さんは、いつも絶対おもしろい、ハズレのない作家だと思っていましたが、この本は、いつもよりちょっと弱かったかな・・・というのが感想です。文章は、荻原浩を思わせるような、さらっとしていて品のいい読み心地です。二十歳代の、まあまあの外見を持つ男性が主人公。彼は就職しても長続きしない、私などから見ればしょうがない男の子なんだけど、他の人にはない特技がありました。それは、女心をつかむビッグスマイルと、ぺらぺらぺらぺら調子のいいことがいくらでも言えて、ひたすら女性を認め持ち上げる話術です。その特技を生かして、寂しい女性の話し相手をするという新しい職業簡単に言えば、時間を切り売りして模擬デートをしてくれる若い男性というわけです。「話し相手がいないとき、ひとりぼっちでいたくない、あなたに。」という宣伝文句も、なかなかよく考えてあるし、何より男も女も、現代人はとても疲れているんだもの、誰かに聞いてほしい、認めてほしい、癒してほしい。それが若くて優しい男の人だったら、なおさらうれしいかも。優しい男の人に癒されたいって言ったって、そんな人、身の回りにもどこにもいるわけない。お金持ちのオバチャンがホストクラブへ行くような、そんなみっともないのはいや。主婦でもキャリアウーマンでも学生でも、満たされない気持ちの女の人には需要があるんじゃないかな。とはいえこの仕事、アイディアとしては悪くないとは思うけど、世の中いい人ばかりじゃないので、主人公も散々な目にあってしまいます。最後の75歳の満たされない主婦とクリスマスを過ごすエピソードはなかなか良かったけど、最後まで読んで、わたしは気がつきました。わたしはこの主人公みたいな、おしゃべりな男が嫌いなんだわと。でもこんな仕事を本当に始める男性がいたら、みなさん、ちょっと興味あるでしょう?
2015.12.10
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先日いただいたコメントから、ずっと前に読んだこの本を思い出しました。いえ、思い出したのは実は2週間ぐらい前で、読み返してみたいと思っていたところでした。わたしは某日本語学校で外国人留学生に日本語を教えていますが、年に一回学生たちと長崎市へ遠足に行きます。いつも原爆資料館を見てから、大浦天主堂を見学するというコースです。原爆資料館では、みんな真剣に一生懸命見ているのがわかるのですが、大浦天主堂は素通りしてしまう学生が多くて、いつも残念に思っていました。それで今年は、遠足の前の日、日本の風習としててるてる坊主を作らせた後、大浦天主堂の信徒発見の話をしたんです。話をしたとは言っても、まだまだ日本語が未熟な学生たちですし、わたしも詳しい説明ができるほど、覚えていません。それでも、長崎には隠れキリシタンと呼ばれる人がいたことと、「異人さまと同じ気持ちでございます。」「マリア様はどこ?」という感動的な場面を、かいつまんで説明しました。どこまで理解したのやら・・・と思っていましたが、遠足のあとで書かせた作文では、「マリア様を見た」と書いている学生がいたので、わたしは、小さなよろこびに浸りました。大浦天主堂の中は薄暗く、ひざまづいて祈っている人もいらっしゃいました。その敬虔な雰囲気を、学生たちも少しは感じてくれたでしょうか。そうそう、遠足の前日からひどい雨となり、当日朝も土砂降り。それが、みんながバスで出発する頃から雨が上がって、長崎に着いたら、日がさし始めました。暑くもなく寒くもなく、絶好の遠足日和です。みんなのてるてる坊主のおかげですねと、大喜びでした。
2015.11.26
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何年か前の林真理子さんの新書「野心のすすめ」はお読みになりましたでしょうか。あれはもう2年以上も前になるんですね。わたしはこんな感想文を残しています。さて、ちょっと時間の空いたある日、そんな日はお決まりの書店とブックオフ巡りをするんですが、この本の帯に引き寄せられました。そこには「この物語は私の小説版“野心のすすめ”です。」という惹句が。へー、そうなんだ。じゃ、読んでみようか。「野心のすすめ」が小説になったら、どんな女が主人公になるのかな。早速買って、スタバへ。そして、かなりのスピードで読みました。そして、がっかり。かなりのスピードで読めたということは、とても軽い筆致で読みやすいということもありますが、とにかく内容が浅はかで、ストーリーが上滑りしていくばかりです。これのどこが野心?!作家として成功して、地位も分別もあるはずの60代の女性が、若い女性に「野心のすすめ」などと言って、勧めていいわけ??主人公は23歳の女性で、弱小ブランドのデザイナー。いつか世界から認められたいと夢は大きいけれど、自分にその実力がないことは十分わかっています。彼女が、さまざまな男性と付き合いながら、自分の糧となるものを模索していく。これを林真理子さんは、野心と言いたいらしい。お金だけはたっぷり持っている40男が、才能ある若者の感性を育てるためだか何だか、きれいごとを並べては、高級レストランへ連れて行ったりブランドの服を与えたり・・・でも、それは、単なる援助交際であり、不倫でしょう。そんな簡単なことを見破ることもできないで、ほいほい浮かれている女性のどこが野心なんだ?売れないお笑い芸人との恋愛もからませて、このお笑い芸人に幕引きをさせているけれど、最後に主人公が、もっとひどい目にあってぺちゃんこになるところまで読ませてほしかったなと思います。ところで、この小説、MOREという雑誌に連載されたものだそうです。連載小説は、その雑誌の読者層に合わせて書かれるものだと思うけど、いったいMOREって、どんな雑誌??って、こっちの方まで疑ってしまいました。
2015.11.23
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この小説の舞台は、昭和58年、1983年です。もちろん、携帯電話やインターネットがあるわけもなく、古い新聞を見るためには、地元の新聞社か図書館を訪ねなければなりません。刑事さんの地道な捜査を堪能するには、絶対にこの時代ですね。JR(国鉄ですね)の時刻のトリックを考えるためには、時刻表を丹念に見なければなりません。著者本人も時刻表を見て考えたでしょうし、作中の刑事さんも何度も時刻表を確認します。細かい数字を見ながら読み進むのは、めんどくさいけど楽しい作業です。スマホで、何でも瞬時にわかってしまう生活は、便利だし今やそれなしではやっていけないのはわかっています。でも、ひょっとして、電車の時刻のトリックを考える作家がいなくなる?また、そんな作品をおもしろいと感じなくなるのでは・・・そう考えると、とてもさみしいですね。この小説は、読み終わった後も犯人のやりきれない体験が心に強く残りました。読んでいるさいちゅうから、まるで松本清張のようだと思いました。この小説で使われているトリックは、電車の時刻ともう一つ、溺死した被害者がどこでどうやって溺死させられたかという点です。ところが、実は私はこの謎が初めからわかっていました。というのは、何だったか忘れたけど、他の推理小説で同じトリックを読んだ記憶があったんです。そちらももう一度読んでみたいのですが、タイトルも著者も、きれいに忘れてしまいました。とても残念です。
2015.11.22
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数日前に書いた「いちばん長い夜に」は三部作の最後の編でしたが、この本は2冊目です。結局三部作を、後ろから順番に読むことになってしまいました。三部作の2冊目というのは、あたりまえですけど、物語の始まりと結果の間ですから、始まりはもうよく知っているし、結末を読んでしまっているので、心配したりハラハラすることもないし、安心しきって読んでしまいました。おもしろい本でしたが、ほんとうい残念な読み方をしました。では、1冊目はもう読まなくてもいい・・・とも思うのですが、やっぱり本好きとしては、一度気に入った本は、最初のきっかけも見届けたいのです。図書館に予約をしたので、それを読んでからまた感想があれば書きたいと思います。ところで、とある日本語学校の講師をしている私は、日頃のあまりの忙しさと余裕のなさに、好きな読書をスッパリ諦めて、仕事ばかりしておりました。7月25日から、たぶん学生よりも心待ちに待っていた夏休み。休みの第1日目から書店とブックオフと図書館に入りびたり、本のことばかり考える幸せな毎日を過ごしました。日頃手抜きばかりの主婦業は、夏休みも手抜きのままスルーです。夏休みの間に、9冊の本を読みましたが、残念ながら明日、17日からは新学期の始まりです。まるで雪国のような夏休みの短さですが、実はここは九州。ほんとうによく勉強する留学生の皆さんですね。次の長い休みは、12月19日からの冬休みです。それまで、もし本が読めたら、もし時間がとれたら、そして、もし心に余裕があったら、また感想を記録していきます。冬休みまで、しばしのお別れです。読書の部屋に鍵をかけ、明日からまたぱぐらは、本好きおばさんから、センセイになります。
2015.08.16
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静かで優しい気持ちにさせてくれる短編集。いかにも荻原浩さんだなあと思わせられる本でした。読んでいるうちに懐かしさを感じて、こんな経験したことあるような・・・とか、この話読んだことがあるかも・・・と、本のデジャヴを何度か感じました。どの短編も、それぞれが独特の雰囲気を持っているのですが、特にマジシャンだったおじいちゃんの話「上海租界の魔術師」が好きです。マジシャンじゃなくて手品師。手品師じゃなくて魔術師。浅草の舞台じゃなくて上海租界。おじいちゃんが愛したフーティエ。特に上海租界の描写はないけれど、雰囲気にひたることができました。「この話は他で読んだような・・・」といちばん思ったのは、タイトルにもなっている「月の上の観覧車」です。観覧車に乗ると死んだ人に会える。となりのゴンドラに乗っていた、若くして亡くなったお母さん。ゴンドラの上に座っていた障害のあった息子。落ちたかと思ったら、不器用なバタ足で夜空を泳いでいきました。そして、癌で死んだ最愛の妻は、同じゴンドラに乗っていっしょに息子を見つめます。読書家の方で、そんな本を他にご存知の方がいらっしゃったらお教えください。たった一つ、どんな切ない話になるかと期待しながら読んだけど、そうなる前に終わってしまった「ゴミ屋敷モノクローム」題名からして、何が書きたかったのかなって思いますよね。これだけが、ちょっと残念でした。
2015.08.10
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この本が出版されたとき、世の中は大騒ぎでしたよね。久しぶりの村上春樹さんの新刊で、前の日から人々が書店に並び、競争で買って競争で読んでいました。本なんて、どうせ十分にいきわたる量が作られているものだし、数日たってから読んでも腐るわけもないので、そのお祭り騒ぎをしている人の気持ちはわかりません。で、わたしは村上春樹さんのファンであるにもかかわらず、この本を読むことをすっかり忘れていて、今回偶然図書館の棚に並んでいるのを見て手に取りました。そうしたら、やっぱりおもしろい!やっぱり村上春樹ってすごい!やっぱりみんなが競争で読んだだけのことはある!と、「やっぱり」尽くしの大満足でした。宮本輝も好き。浅田次郎も大好き。でもね、村上春樹は全然違うんです。なんていうのかなあ、心の中にどんどん何か液体がしみ込んでくる感じです。ストーリーだけを追ってもおもしろいんだけど、読み始めて30ページぐらい、まだストーリーは何も動いていなくて、主人公とその友達の状況説明みたいな段階なのに、もう心が感動し始めていて、自分でもびっくりしました。いつもどおり、メタファーと音楽がいっぱい入っていて、メタファーは何か人間の大事なものを、きっと暗示しているのでしょう。でもそれは、一人ひとり好きなように読み解いていけばいいのでしょう。特に何も暗示していないと思って、好きなように読んでもいいのでしょう。色彩のない田崎つくるを、除外した色彩を持つ4人。「白」という色彩を持った女性がしたこと。彼女から逃げた「黒」という色彩を持った女性。考え始めたらきりがないほど、次から次へと、いろいろなことを感じることができます。これまでにもたくさんの村上春樹を読んだけど、わたしが好きな村上春樹は、いつもそんな具合でした。やっぱり村上春樹さんが大好きです。
2015.08.07
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前科のある二人の女性が、助け合いながら再生していくという物語で、とてもおもしろくていい本でした。表紙の絵は、胸に手を当てて目を閉じる女性。質素な服装に飾らない髪型のこの女性を見て、何か惹かれるものがありました。 そして、著者は乃南アサさん。直感的に、おもしろそうだ!と感じて選んだ本ですが、実はとても残念な気もしています。というのは、この本は3部作で、わたしはいきなり最後の本を読んでしまったらしいんです。最後の本だからといって、困ることは全然なくて、本当にいい本でした。でもわたしは、作家が書いた順番で読みたいと思います。その本のおもしろさは、作家が考えた順番で読むのが最高のはずでしょ。同じような失敗をしたのは、他にもあります。宮本輝さんと宮尾登美子さんの自伝的小説です。一つ一つが独立した作品として読めるものですから、どれから読んでもいいのかもしれませんが、やっぱり順番通りに読みたい・・・そういうこだわりを持ってる人は多いんじゃないでしょうか。タイトルにも、第1巻とか「続」とか全くないので、もしかしたら、続編があるのにも気づかない場合もあるかもしれません。表紙に「この本は実は前編があるので、そちらの方から読んだ方がおもしろいかもしれませんよ。」とか、「続きもあるよ」というような意味のことを、ちょっと書いておいてくれると、わたしのようなこだわる読者は、とっても助かるんですけど・・・さて、主人公の女性2人が再生していくきっかけは、東日本大震災だったのですが、アマゾンのレビューを見ると、この地震の扱いに不満を持っている人が多いです。地震の描写が長すぎるとか、趣旨がずれているという意見がありました。確かに、被災された方が読めば、そういう感想もあるだろうと思います。著者があとがきに書いていますが、主人公の1人が仙台で経験したことは、そのまま著者の経験だそうです。しかし、作家がそういう経験をした場合、それを作品に昇華させるのは宿命なのではないでしょうか。また、書き残す場所と才能を持っているのですから、経験を書くことは使命ともいえると思います。もっと単純に、書かずにいられなかったという作家の気持ちもあったと思います。取り返しのつかない過去を持つ主人公が地震の経験から生きなおすきっかけをつかむことは、十分に考えられることです。わたしはこの小説に、大きな☆5つをつけたいと思います。そして、大急ぎで、シリーズの1と2を買いたいと思います。
2015.08.05
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主人公は、40代のお母さん。ごく普通の夫、携帯電話を欲しがる中2の娘、気の置けない友達、パートタイムの仕事、退職後の人生を楽しむ実家の両親、同居を望むわがままな夫の母、自身は二人姉妹の姉で、しっかり者の妹との小さい軋轢、もうこれ以上はない!!というぐらいありふれすぎた主婦の、それでもなかなか一筋縄ではいかない人生模様・・・そんな内容の本です。おもしろくないことはない。読んでいて、あまりにも普通なので、退屈もする。でも、ぬるま湯的で居心地の良さも感じます。おもしろい本に飽きた人が、大作と大作のあいだに神経を休めるために読んだらいいんじゃないかな。この本を読んで、読書ってほんとにすばらしいわ・・・とはなりませんから。
2015.08.05
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本が増えて困っている。本を買っても、もう置く場所がない。本を売ろうか捨てようか。いや、そんなことできない。という悩みをかかえる本好きさんはたくさんいらっしゃるでしょう。しかし、本の収納場所を確保するために、妻子を殺す・・・そんな人がいるわけありません。でも、実際そんな事件があったとしたら・・・そんな話題から始まる小説です。この容疑者は、妻子を殺して堂々とそんな動機を口にしています。この時点で、「絶対に嘘だ。真実を隠しているのだろう」と思うのか。あるいは、「現代人の心の闇はここまで来てしまったのか」と慨嘆するのか。そして一人の小説家が、容疑者の過去をさぐっていきます。調べるにつれて、驚愕の真実が出て来ては、一歩ずつ容疑者の真の姿に近づいていくので、中盤からはもう、目が離せません。必死で読んでいきます。もうちょっとだ。もうちょっとで、今まで張り巡らされた伏線がつながり、すべてが明らかになる。手に汗握って、次々にページを繰っていった私でしたが、最後の最後に、ガーン!結局何もわからないまま、小説は終わってしまいました。どうしてくれるの、この気持ちを。なんでこんな小説を書いたの?貫井さん。どんな意図で?読者の気持ちはどうなるの?という、異常に肩すかしの結末でした。中盤がよかっただけに、とても残念でした。
2015.08.04
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妻子を一瞬の交通事故で亡くし、生きることを放棄しかけた主人公が、偶然会った少女の特異な能力にすがることに生きる意味を見出すという物語なんですが・・・主人公とその少女が思う、悩める人を助けたいという純粋なはずの気持ちが、どんどん新興宗教めいた団体に変貌していく恐ろしさが描かれていて、その点はおもしろいのです。しかし、主人公があまりにも優柔不断で、あまりにも普通の人すぎて、ストーリーが全然前へ進みません。彼の悩みはよくわかるけれど、読んでいてかなり退屈しました。とにかく冒険を嫌い、少女を守ること、人の役に立ちたいという不器用な気持ち、それだけで純粋に生きていけるほど、世の中はきれいでもないし、人々も素朴じゃありません。中年サラリーマンの主人公が、いくら家族を失った不幸な人だとはいえ、夢見る乙女みたいになっているところが、納得できません。新興宗教と呼ばれたくなくて必死になっている主人公が、哀れでもあり、滑稽でもありました。しかも、主人公の精神は崩壊していた。しかもかなり早い段階からだったという最後のどんでん返しには、「なーんだそんなことだったのか」と少々がっかりしました。新興宗教を話題にした小説なら、同じ貫井徳郎さんの「慟哭」の方を強くお勧めします。「慟哭」がどれだけおもしろかったかというと、これくらいおもしろかったです。
2015.07.31
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林真理子って、こんなおばさんになったんだ・・・って、いろんな本を読んで何度も思っていたけど、この本もまたそんな内容です。ブランドの服、おしゃれなワインパーティー、隠れ家的なレストラン、一緒に行くのはもちろん夫じゃない男性。そして、デートのまえはエステにネイル。この小説の主人公はまだ十分美しい40台の主婦で、夫は高校の教師です。特に資産家というわけでもなく、現実とあまりにかけ離れた状況設定に驚きました。著者自身がどんな生活を送っているか知らないけれど、小説家なんだから、現実をもっと見るべきでは?主人公がそれほどお金持ちじゃないということを表現するのに、「ブランドショップのバーゲンで買った服」その知り合いのお金持ちぶりを表現するのに、「バーゲンのとき、new arrival のコーナーにあった服」なんという視野の狭い表現なんでしょう。ひんやりとした静寂をイメージする「秋の森の奇跡」という美しいタイトルは、結局理想的な不倫の相手に巡り合ったということらしいです。母親の認知症など、深刻な話題も出てくるけど、結局美しい人妻の、「かわいそうな一面」をあらわすだけで、本当に表面的。それで奇跡の不倫相手が見つかって喜んでる、幼稚で自分勝手で薄っぺらい小説でした。
2015.07.26
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前回と同じことが起こってしまいました。書き上げた記事をアップしようとしたら、またもやフリーズ。すべて消えてしまったんです。こんな駄文とはいえ、それなりに時間をかけ、一生懸命書く記事です。読書感想なんて、消えてしまったからといって、気楽にもう一度なんて、書けるもんじゃないです。同じ感想は2度書けないものです。しょうがないので、もう一度書いてはみますが。(というのは、とても感動した本なので、やっぱり書き残しておきたいのです)宮本輝の小説については、今まで何冊か感想を書いています。この本は再読で、前に読んだのは4年前。そのときも、こちらに感想を書きました。その時も書いているように、この本はほんとうに「きれい系」で、実際にはあり得ないような、清く正しく美しい人々がたくさん出てきます。あえて言えば、一番きれい系じゃないのは、主人公の無職の青年だけじゃないかと思うぐらいです。この本には、主人公が二人いて、この無職の青年と、73歳の金貸し老人です。この老人は、理由を明かさずに青年を運転手として雇い、いろいろな知り合いに会わせながら、彼の成長を促すといった役なんですが、この知り合いたちが、実にいいんです。毎晩夜中にチェロの練習をする老人。200万円の借金を、少しずつ32年かけて完済した女性。自作のスパゲッティソースを青年に伝授する女性。1人1人が、もう若くはないけれど、懸命に生きるということを教えてくれます。私自身、今までの人生、世間だけじゃなくて自分にも恥ずかしくない生き方をしてきただろうか。これからの残りの人生も、自分に厳しくすがすがしく生きていけるだろうか。答えはNOだと思います。でも、そうやって考えさせてくれた、これはたいへん貴重な小説でした。先日、私と同じ読書好きの友達と会ったとき、彼女が宮本輝を読んだことがないというので、強く勧めました。そのとき、一番いいのは「錦繍」と言ったのですが、やっぱりこっちの方がよかったかもしれないです。しかもそのとき、まちがえて、「三十光年」を「二百光年」って言っちゃった。いくら数字に弱いぱぐらでも、こんなに大切な小説の題名を間違うなんて!「錦繍」については、8年も前ですが、こちらに感想を書いています。こちらもぜひ合わせてお読みくださったら、宮本輝さんのすばらしさを感じていただけるかも。
2015.03.22
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今、感動的な話だよって、力いっぱい感想を書き上げたとたん、なぜかフリーズしてしまい、すべて消えてしまいました。脱力。一度書いたものを思い出しながらもう一度書くって、なんだかマヌケ。それに、絶対に同じことは書けないし、それ以上の物も書けないと思います。とても悲しいし、2度書く気もしないけど、しょうがないので、さらっと書いてみます。感動的なシーンが多くて、わたしは何度も涙をふきました。といっても、読者を意図的に泣かせようとするあざとい感じというのはまったくなくて、ほんとうに主人公といっしょに、驚いたり笑ったり困ったりできて、とても気持ちの良い小説でした。どこかよくわからないけど、南の島が舞台で、そのせいもあるんでしょうか。南の島が舞台の小説って、ほかにいくつも読んだけど、どれも、作者がその島に魅せられているんだなあって、わかりますよね。しかし、アマゾンの書評を見ると、この本はあまり高評価じゃありません。それは、このストーリーに大きな欠点があるからです。!!!!!ネタバレ注意!!!!!主人公のまりあちゃんは、つるかめ助産院で暮らし、臨月を迎えるうちに、それまで背負っていた不幸な生い立ちから次第に解放され、再生していきます。しかし、肝心なまりあちゃんの夫、小野寺君について、何にも書いていないんです。小野寺君は冒頭に失踪したまま、最後にちらりと戻ってくるまで、まったく触れられません。しかし、妻をおいて失踪したのですから、相当な悩みや理由があったはずです。また、彼が何に導かれて、どのような心の変化を経て、まりあちゃんの元にもどったのか。どうやってまりあちゃんを探し出したのか。そういうことを書いてくれないと、読者としては、安心して読み終えることができません。夫婦なんだもの、妻だけが癒されました、復活しました、赤ちゃんが生まれました。それだけでめでたしめでたしになるわけないでしょう。どうして小川糸さんは、それを書いてくれなかったのかなあ。ちょっと不思議な終わり方だなあと感じました。感動できるいいお話ですが、私も星五つはあげられませんね。
2014.12.27
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前回の「神去なあなあ日常」の続編です。これも、とってもおもしろかったですよ。前作では山の面白さや怖さや敬虔さを、また山の仕事の厳しさを、勇気くんといっしょになって経験したような感じがしましたが、続編は趣がちょっと変わりました。前回同様、勇気くんが古いパソコンで日記のように書き綴るという形態ですが、前回の主人公は山。今回の主人公は、村に住む人々なんです。だから、続編を読んで拍子抜けした人もいるんじゃないかと思います。あちこちのレビューを見ても、パワーダウンとかがっかりしたみたいな意見の人もいますね。勇気くんは、前作では1年間限定の研修生でしたが、今作ではしっかり中村林業株式会社の正社員になりました。つまり、山の仕事やできごとにいちいち驚いている時期は過ぎたんですね。そのかわりに、村の人々との人間関係に関心が移っていくのは当然のことでしょう。私は、両方そろって一つの作品みたいな感じがして、さらに深く楽しめましたよ。あの自然児ヨキのことがよくわかったし、奥さんのみきさんもたくさん語ってくれました。お稲荷さんを畏怖する村人たち、愛想のなかった山根のおっちゃん。山根のおっちゃんの探し物が出てくる経緯には笑ってしまいました。なんとなく江戸時代のおとぎ話みたいです。それから最高におもしろいのは、「しわくちゃの饅頭の妖怪」みたいな繁ばあちゃんです。繁ばあちゃんは、足腰が弱っていて日がな一日座敷に座っている「ミイラの置物」だったはずなのに、いつのまにかパソコンの立ち上げ方を盗み見て覚え、勇気くんのパスワードを想像で割り出し、勇気くんの書くエッセイの続きを勝手に書いてしまいます。それがなんと、「あだると」な内容で・・・そのお茶目さ、精神の活発さ、すっかり繁ばあちゃんファンになってしまいました。わたしもこんなお婆さんになりたいな。三浦しをんさん、できれば、第3弾を書いてくださらないでしょうか。わたしはどうしても詳しく知りたい人がいるんです。それは、おやかたさんの精一さんのことです。立派で尊敬できるおやかたさんだというのはよくわかりますが、それにしても情報が少ない。そして、奥さんの祐子さんとの出会いも知りたいです。精一さんは東京の大学で祐子さんと出会い、祐子さんはこの神去村にお嫁に来ます。そして祐子さんの妹の直紀さんまで、精一さんにひかれてこの村へ。(勇気くんはこの直紀さんに片思い中で、この恋はなんとなくいい方向に向かっているようです。)ぜひぜひ精一さんのことを教えてください。
2014.10.25
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先日の旅行の際、飛行機の中で見た映画「WOOD JOB」がとてもおもしろかったので、原作を借りてきました。わたしは映画も読書も好きなので、その両方を味わってどっちが勝ち~なんて、よく考えて楽しみますが、この映画も本も、どちらもなかなかおもしろかったですよ。映画の方のキャッチコピー(というのかな)「爆笑と感動と衝撃のノンストップ大木エンタテインメント」って、よくぞここまでうまく言えたもんだと感心してしまいましたよ。まったく、嘘はありません。文庫本の裏表紙にある短い解説のいい加減さは、このコピーを見習うべきです。どちらも基本的なストーリーは同じです。都会の無気力な若者が林業の研修生として山に入り、いろいろなことを経験し、恋をし、たくましく成長していくさまがユーモラスに描かれています。だけど実は、根本的なところが全然違います。まず映画の主人公勇気くんは、大学には落ち、彼女にはふられてしまいます。高校の卒業式の後、級友とカラオケで盛り上がりますが、それが終わると急激に自分の情けなさが身に染みて・・・そんなとき、偶然見かけた林業研修プログラムのパンフレット。その表紙にははつらつとした笑顔の美女が。ダメ男勇気くんは、動機はともかく、曲がりなりにも自分からその研修に参加することを決めて、はるばる出かけていくのです。携帯電話も通じない、山奥のそのまた山奥へ。しかし、原作の方の勇気くんは、こうです。「高校を卒業したら、まあ適当にフリーターで食っていこうと思っていた。」つまり、大学受験はしていないんですね。挫折も味わっていないってことですね。「かといって、ちゃんと会社に就職するのも気が進まない。」就職活動で挫折したわけでもない。「でもさ、何十年もさきの将来なんて、全然ピンと来ないじゃん。だから、なるべく考えないようにしてた。」あらら、こりゃ筋金入りのチャランポラン男ですよ。そんな勇気くんに、高校の担任の先生が、「おう、先生が就職先を決めてきてやったぞ。」そしてお母さんまでが「着替えや身の回りの品は、紙去村に送っておいたから。」そうやって、本人の知らないところで先生とお母さんに、林業の研修制度に勝手に応募されて、出て行かざるを得ない状況に置かれてしまうのです。そして、先生に新幹線に押し込まれるように乗って、はるか西の山奥へ。ほらね、同じ林業の研修に向かうのでも、そのきっかけが全然違うでしょう?原作の方では、そんな経緯で林業をすることになった勇気くんの心の変化が、あまり詳しく書かれていないのです。チャランポラン男ですから、もっともっと泣いたりふて腐れたり投げやりになったり、いろいろな葛藤があったはずだと思いますが、それがあまり詳しく書かれていないのは正直、物足りません。しかし、もちろん原作の方が映画の何倍も見事に描かれているものがある。それは、自然の美しさ、荘厳さ、そして自然と共に生きることの厳しさ、いやこんな言葉じゃ言い足りない、山にいる神様との付き合い方とでも言ったらいいのかな。この本を読んだら山には絶対に神様がいるんだと、誰でも信じてしまいます。また、山に暮らす人々の人間関係がすばらしいです。もちろん、現実にはもっと汚いことやいやなこと山ほどあるのが人間てもんだと思うけど、もうほんとに体中の隅々まで洗い流されるようないい気持の人々でした。それから、犬好きの私は、この村で飼われている白い犬「ノコ」にも、ぐっと来てしまいましたよ。ノコに比べたら、うちのわがままな王ちゃま黒パグなんて、犬じゃないね、まったく。というわけで、続編の「神去なあなあ夜話」を読むのが楽しみです。
2014.10.13
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本好きの皆様に質問します。乗り物の中でも、観光地でもいいんですけど、旅先で読書することってありますか。いろいろな意見があるかと思います。ずっと昔、乗り物に乗ったら、何も食べず何も読まず、ひたすら車窓をながめて旅情にひたるべし、みたいなエッセイを読んだことがあります。車窓を見ないで本を読むなんて、もったいないって。また、私の尊敬する本好きの大先輩岡崎武志さんの「読書の腕前」には、見知らぬ土地で本を読む贅沢が紹介されています。わたしは旅先に本をたくさん持っていくタイプ。移動中はもちろんのこと、夜寝る前とか、時差のせいで眠れないとき、目が覚めてしまったとき、必ず本を読みます。そして、そういうときは、とてもスピードが出てどんどん読めます。私にとって、旅行に持っていく本を選ぶのも、旅の準備の一つです。さて、そんな私ですから、先月一週間カナダへでかけたときは、ちゃんと文庫本を用意していきました。私は旅先で読み終わった本は捨ててくるので、ブックオフで100円コーナーの文庫本を買います。持って行ったのは、荻原浩「誘拐ラプソディ」、乃南アサ「結婚詐欺師」、篠田節子「ハルモニア」「第4の神話」「聖域」の5冊です。飛行機の中でも読むし、ホテルでももちろん読みます。が、一番楽しみにしていたのは、カナディアンロッキー観光の中心地バンフで、雄大な山々に囲まれて、ポットに入れたコーヒーを飲みながら、公園のベンチで読書すること。せっかくの景色を見もしないで本を読むって、理解できませんか?でも、私にとっては2度とないであろう、最高のぜいたくです。幸い一週間のほとんどをバンフで過ごす旅程です。本を読む時間はじゅうぶん取れそうです。そして、飛行機を三つ乗り換え、バスに揺られ、到着したバンフは、雄大な山々、美しい川、広々とした公園、本を読むのにちょうどよさそうなベンチも随所に置かれ、夢のような読書環境です。しかし、私はホテル以外の場所で、全然本が読めませんでした。9月のはじめというのに、バンフは大雪で、ベンチは半ば埋もれていたんです。雪をかぶった山々はほんとうに美しく、雪道を歩いていると、エルクという鹿の家族が目の前を横切っていくというラッキーに出会いました。これはこれでとても楽しい経験でしたが、本が読めなかったことは残念でした。とはいえ、持って行った5冊のうち3冊は読了して、バンフのホテルで捨ててきましたが。この次の旅行でどこに行くのかは、まだわかりませんが、きっとこの次も文庫本をいっぱい持っていこう。できれば、乗り物の中でもたくさん読めるよう、遠いところがいいなあ・・・次の旅行の読書をたのしみにするぱぐらなのでした。
2014.10.07
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霊現象とか、超常現象とか、興味はおありでしょうか?霊能力はなくても、そんな写真を見るのは好きとか、そんな本を好んで読む、って人は多いことでしょう。かく言うぱぐらも、実はテレビで心霊写真が出てくると、四つん這いでそばまで行って、テレビにかじりついて見るほど、好きでした。好きでした…と過去形で言うのは、この頃テレビであまりしなくなったでしょ。自分でインターネットや書店で探してみるほどの興味はないので、見なくなったんです。パソコンやスマホで、いつだって検索して見ることはできるけど、ま、そこまでヒマじゃないわって感じです。ムダばなしが長いですが、今日ご紹介する「あなた」という本は、その心霊のお話なんです。とはいっても、乃南アサさんの長編小説ですから、そんじょそこらの心霊じゃありません。なにしろ、この小説、普通の人が、心霊のしわざを、外から眺めたり観察したり、被害にあったりという話じゃありません。心霊そのものが語る、一人称の小説なんです。人間にとりついた心霊自身が、なんでその人にとりついたか、どうしてこういう行動をとるかってことを、細かく説明してくれます。とりついた心霊と(正確にいうと生霊。最後に正体がわかります)とりつかれた人が主役です。とりつかれた若い男性は、人間としてとんでもないヤツなんだけど、そのうち男として大きく成長していく様が描かれます。すると、心霊もちょっとびっくりしたり、見直したり・・・と書くと、ユーモラスに感じられるかもしれませんけど、かなり深刻で怖い話なんですよ。最終的には解決したようで解決していないので、読み終わっても爽快感はありません。それに、終盤になってから登場してきた人が、とても優しいいい人なのに、ひどい目にあって死んじゃうので、この点もスッキリしませんねえ。好みの分かれる小説だと思いますが、わたしはわき目もふらず読み進めて、一日で読了でした。
2014.10.05
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何の脈絡もなく、2冊の本の題名を続けて書きました。この2冊が、今日の記事のタイトルです。実はこの2冊、最近偶然続けて読もうとして、どちらも挫折してしまった本です。本好きさんの中には、手に取った以上はどんなにつまらなくても最後まで必ず読むという人もいらっしゃるようですが、私は違います。つまらないと思ったら、我慢して読むのは時間の無駄のような気がするので、さっさとやめてしまいます。この「図書館戦争」はシリーズ化されているし、「高校入試」は人気作家湊かなえさんの小説です。どちらもドラマ化されているので、さぞかしおもしろいんだろうなと期待して手に取ったのですが、私の好みではありませんでした。まず、「図書館戦争」について私は本好きですから、もちろん図書館も書店もブックオフも大好きです。何時間でも本の間をさまよっていることができます。私の方から本を探すこともあれば、本が私を見つけて呼んでくれることもあります。本好きさんなら、この感覚わかりますよね。その大好きな図書館と戦争というものが、私にはどうしても結びつきません。本の冒頭に、「図書館の自由に関する宣言」というのが掲げられています。そして、「図書館の自由が侵されるとき、我々は団結して、あくまで自由を守る」とありますから、図書館の自由を守るための戦争をするのでしょう。しかし、戦争の必然性がはっきりしません。いったい誰と誰が戦争するのかもわかりません。図書館の自由を守ることは大切でしょうが、そのためになぜ軍隊を作って軍事訓練するのかもわかりません。しかも、軍事訓練を受ける人々は、中高生の部活よりもっと真剣みがなく、普通の学校の授業よりもっとくだけた雰囲気に思えます。最後まで読んだらすべて解決するのかもしれませんが、これ以上読む気になれなくて、リタイアしました。有川浩さんといえば、「三匹のおっさん」や「県庁おもてなし課」など、大好きな作品もあるんですが、この本にはなじめませんでした。次に「高校入試」です。これもドラマ化されているんですね。短い章ごとに語り手が目まぐるしく変わるので、読みづらい感はありますが、湊かなえさんの本にはよくある手法ですし、これはこれでいいんです。ただ、一人一人のキャラクターが弱すぎて、誰が話しているのか、すぐわからなくなります。一応相関図はありますが、名前と担当教科しかなくて不親切です。私は、登場人物がつかみにくいとき、自分でメモを取りながら読むんですが、この本はメモをとってもわかりにくかった。つまり、性格や人物の背景が何も書いていないんです。それじゃ、メモの取りようがありません。読み進むうちに訳が分からなくなったので、これもリタイアしてしまいました。湊かなえさんの小説は、「告白」のときが最高で(それも私はさほどにも思わなかったけど…)だんだんつまらなくなってきたような気がします。残念ながらリタイアが2冊も続くという、珍しいことになってしまいました。しょうがありませんね。次はおもしろい本に巡り合えますように。
2014.09.03
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こんなに気持ち悪くて怖くておもしろい本、初めて読みました。ていうか、この種の気持ち悪さや怖さって、ちょっと他にないでしょう。とにかく読み心地がすごい本でした。別に残酷なことが起こるわけでもないし、犯罪もない。未来の普通の人々が、たぶん普通の生き方をしているだけ。それが何とも気持ち悪いんです。一部ネタバレしますから、ご注意ください。でも、ネタバレしても、この本はおもしろいと思いますよ。未来のお話です。人間は感染すると不老不死になるというウイルスを発見します。そのおかげで、ほとんどの人々が不老不死の処置を受けて、人が死なない世の中を作りました。当然みんな、体力も外見も最高である20代のうちにその処置を受けますから、世の中の人がみんな20代の外見を持つようになってしまいます。これだけでも相当気持ち悪いと思いませんか。不老不死が現実になると、いいことみたいな気がしますが、よく考えてみると、いろんな矛盾が出てきます。80歳になっても90歳になっても生殖能力がありますから、何度でも子どもを作ることができます。子どもも成長したら処置を受けて不老不死となるわけですから、家族制度というものは壊れます。ある程度の年になれば、親がどうなったか知らない。自分の子供がどこで何をしているかも知らない。それからおもしろいことに、外見がみんな若くて平等だと、精神が成熟しにくい。成熟しないのに、老化はしていく。20代の外見でも、年を経るとなんらかの変化がでてくる。でも、不老不死だからといってみんなが永久に生きていたら困りますから、処置を受けてから100年たったら死ぬようにしよう。というのが百年法の趣旨です。ところが、不思議ですね。それに同意して処置を受け、それから100何十年生きてきたのに、やっぱり死ぬときになると、怖くてじたばたするんです。科学がこんなに進んでいても、ここらへんは変わらないです。それからもう一つ変わらないといえば、百年法を施行しなければならない政治家たちが、国のことより自分のことが大事。目先のことが大事。結局それが大変な事態を招くんですが、こういうのも今と変わりませんね。ほんとに生々しくて、嫌な感じと思いながら読みました。それで結論までひとっ飛びすると、不老不死は破たんするんです。その経緯は書きません。でも、やっぱり自然が一番、人間はそれぞれの寿命を生きるのが一番。そんな結論に至って、ほっとしました。なかなかおもしろい小説です。好き嫌いはあると思いますが。ところで、著者の山田宗樹さんは、あの「嫌われ松子の一生」の著者だったんですね。わたし、「嫌われ松子」を読んだとき、あまりおもしろくなくて、このブログに悪く書いたような記憶がありますが、「嫌われ松子」と「百年法」の共通点のなさに驚きました。作家ってすごいですね。ちょっと見直してしまいました。(なんて、上から目線ですみません。)
2014.08.29
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益田ミリさんのイラストは、おとなしくて不器用で、その割には心の核心をついてきますねえ。この人の絵と初めて出会ったのがいつかってことが、よくわからない。いつのまにかよく知っていて、なんか久しぶりね、元気~?って言いたくなる友達気分であったりします。この本も、偶然図書館で手に取って、なんか旧友に会ったみたいなうれしい気持ちになりました。「怒り」についての経験を書いた小さいエッセイ集です。その「怒り」も、だれでもちらっと経験したことあるような身近なものばかりです。ところで、「怒る」ってことを、この頃全然やってないような気がします。子育てもとっくに終わった50代主婦の私は、うちでも職場でもあまり怒らない。職場の若い同僚たちには、ぱぐらさんは優しい人だって誤解されているみたい。それはもちろん、大きな誤解です。学生の頃や結婚前の会社員だったころは、腹の立つことがたくさんあったし、同級生とか上司とか先輩とか、怒る対象に事欠かなかったような気がします。子育て中だってそう。子どもや姑に対しても、そんなに腹を立てなくても・・・と今なら思えることもたくさんありました。つまり年を取って、怒るだけの体力がなくなったんですね。年を取って人間が丸くなるっていうのは、こういうことなのかもしれません。とはいえ、今の私は腹の立つことが皆無かというと、そんなことはありません。今の職場にも感じの悪い同僚ってのもちゃんといて、彼女には不快な思いを、たくさんさせられました。彼女の失敗がいつのまにか私のせいにされていたり、私の工夫したことがいつのまにか彼女の手柄になっていたり・・・彼女は要するに、ものすごく口がうまいんです。そして、そのちょっと可愛い容姿とよく回る口に、周囲の人はすっかりだまされるんです。そんなとき怒ったかというと、私は怒らなかったんですよね。腹は立つけれど、怒るのはめんどくさい。それよりも、私は彼女と距離をおいて、仕事上必要最小限の接触だけすることにしました。毎日、挨拶だけは普通に交わしますが、それ以外はよほどの用事がない限り声をかけません。話がそれてしまいましたね。益田ミリさんの「怒り」のエッセイは、本気で怒るというほどの大きいものでもなく、でも素通りできるほど小さいものでもない。あーそうそう、そんなときあるよねえ、腹が立つよねえ と同感しながら読めるエッセイでした。そして、益田さんは若いなあ~と、怒れる彼女に一抹のうらやましさも感じたりしたのでした。
2014.08.23
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「三丁目の夕日」をご存知の方なら、戦後から立ち直りつつあった日本の熱気を覚えていらっしゃるでしょう。その熱気は、東京タワーを象徴として、国民一丸となった明るい希望そのものでした。そしてこの「オリンピックの身代金」は、三丁目から約5年後。復興を遂げた日本が、東京オリンピックを象徴に、今度は先進国として世界に打って出ようとした、さらに強い野望の時代の物語です。実際東京オリンピックは大成功で、日本は先進国として、また東京は世界第一の大都会として、周知されていくのですが…この小説は、しかし、オリンピックの成功の陰に隠された闇の部分。日本の貧しい人々 出稼ぎ労働者たちが、どんな悲惨な状況でオリンピックを支えたかという物語です。もちろん内容はフィクションですが、さもありなん。こんなこともたくさんあったのだろうと思わせられます。国家の繁栄のために、出稼ぎの労働者たちがどのような過酷な労働をしていたのか。その矛盾に気づいた、やはり貧しい東北の村出身の東大生が、オリンピックを人質に取り、政府から身代金を取ろうとダイナマイト爆破を繰り返します。彼の犯行は凶悪ともいえるのでしょうが、この本の読者はきっと一人残らず、彼に同情し彼の成功を(逆に言えばオリンピックの不成功を)心のどこかで願うことでしょう。そして何とかして彼を満足のいく方法でどこかに逃がしてやりたいと思うと思います。あの東京オリンピックから早50年。貧しい出稼ぎ労働者たちは、今はどうなっているのか。また、6年後の東京オリンピックのための土木工事は、誰の手によってされるのか。華々しく決定した次回のオリンピックにも、闇のようなものがあるのでしょうか。奥田英朗さんが、またびっくりするような小説を書いてくれないものかと、思いました。この小説は、おもしろくせつなく、きっと皆さん犯人を好きになるかも。とびきりの超おススメです。
2014.08.16
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中学生時代のクラスメイトが、クラス会で再会。アラサー女性3人の、仕事や悩みや家族や・・・といった身辺のあれこれが綴られた小説です。結婚して子育て中。友達がほしい孤独なお母さん。設計士として働いているが、母や兄とのつきあいに悩む人。仕事をやめて実家暮らし。仕事を探そうと思いつつも動けないでいる。こんな3人の話がつかず離れずで進んでいくんだけど・・・主人公3人の悩みは、誰もが経験したり聞いたりしていて、今さら・・・その今さら感を、覆してくれるような面白さがあるわけじゃなく、特に小説にしてまで読まなくても、現実のほうがよほどいろいろあって興味深いのに。どの人の悩みも底が浅く、陳腐。人に読ませようという気があるなら、もうちょっとちゃんと料理してよ。素材が新鮮じゃないうえに、凝った料理方法もなく、特にスパイスを効かすでもない、まあまあ食べられるけど、わざわざレストランでお金を払う料理じゃありません。それと、タイトルの「小さいおじさん」って、そんなに有名な人なんですか?ネットで検索したら、神社なんかにいる妖精(?)のようなものらしい。わたしはそんなの聞いたこともなかったし、もちろん見たこともない。でも、タイトルにするぐらいなら、もっと活躍させてほしかったな。不思議な力があるそうだし。でも、そうしたら小説の趣旨が全然違ってきますね。この本の中では、特に小さいおじさんは出てきません。
2014.08.09
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林真理子の本で、タイトルに「綺麗」という言葉がついていたら、ご自分の美容のお話?誰かから綺麗だと言われたか?メスを使う整形手術はしていない、やったのはプチ整形だというお話か?持ち物に、どれだけお金と意識を使っているかというお話?どこへ行った、何を食べたのセレブの生活か?それとも若々しくて愛らしい、人から好かれるその性格?一瞬のうちにあれこれ想像がふくらんでしまった私は、ほんとうに意地悪な読者ですね。嫌いなのに好き。読めば苦々しいのに、つい読んでしまう彼女のエッセイ。などと思いつつ読み始めたら、これはエッセイじゃなくて長編小説でした。小説ではあるけれど、前半は林真理子の世界全開のセレブっぷりです。主人公のアラサー女性は、有名整形外科クリニックで働いていて、彼女をとりまくのは女優、デザイナー、アイドル、モデル、という「綺麗」のためなら何だってする、いくらだってお金をかける人たち。彼女自身も、複雑な家庭だけどお金だけはたっぷりとかけられて育った人です。作られた「綺麗」な生活を、若い貧しい恋人とセレブな中年不倫相手との間で、ひらひらと生きていく主人公の世界を、これでもかと描いていく。なるほど、林真理子じゃないと書けない世界だなあと感心しつつも、セレブの世界にはたいして興味もないので、だらだら読み飛ばしていたら、半分終わるころからやっと話が動きました。(ネタバレします。ご注意を。)二人の恋人とうまくいかなくなった彼女の新しい恋人は、大学院の若き研究者であり、かつ完璧な美貌を持った人気モデルだった!しかも彼は、売り出し中のアイドルの恋人がいたのに、さっさとアラサーの主人公に乗り換えてきた!この辺に、林真理子の好みや妄想(?)が現れていて笑ってしまいましたが、とにかくそういうあり得ない展開になるのです。そしてそののち、彼の完璧な美貌は、交通事故のためにふた目と見られぬほど醜くなってしまいます。彼との恋に浮かれていた「綺麗」大好きな主人公の、あわてぶりがとてもおもしろい。やっと小説らしくなってきたぞ。さあて、本腰据えて向き合おうと思ったら、この小説は切り捨てたように終わってしまいました。林真理子さん、ここからが大事なところじゃないの?もっと読みたかったよ。主人公は、このまま虚構の「綺麗」の世界に戻って、またひらひらと生きるんだろうか。「中身を支えてくれるのは外見なんです。だから外見が変われば、中身も変わるんですよ。」美容クリニックの患者たちにいつも言っていたこのことばは、逆の意味で、醜くなった恋人にもあてはまった。この言葉にわたしは少々懐疑的だけど、(まったく否定はしないけど)事故によって、彼の心は劣等感やひがみといった、かつては微塵もなかった黒いものに覆われている・・・というところで、二人のその後を知りたいと、強く思いました。ネタバレついでに彼のその後にちょっと触れますが、その後のかれについては、イタリアに留学し、イタリア語に不自由がなくなった。ただそれだけしか触れていません。うーん、興味深い内容になってきたところでスパッと終わってしまうなんて、ほんとに残念な小説でしたよ。
2014.08.02
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天童荒太さんの本は、たいていいつも怖くて読みたくなくて、読むと苦しい。ひえ~、もうやめて。もういいよ、わかったから、やめてください。とひーひー言いながらも、必死で読んでしまう私。この本もそうでした。タイトルの通り、「家族」に関する重い話なんですが、私たち一人一人の中に、家族の犠牲でない人って存在するんだろうか。とまで感じてしまうぐらい、つらい話でした。そしてまた、全ての人は弱くて愚かであり、そんなすべての人が作る「家族」が、強く明るいわけないじゃないかと。登場人物は、みな家族のゆがみの犠牲者ばかりです。主役の3人も、またそうです。普通の社会人として生きるこの3人も、育った家族のゆえに、普通に生きられない人々です。これ以上は言いません。読みたい人は読んでね。しかし、心の健康に不安のある人、妊婦さん、子育て真っ最中の人は、読まないほうがいいです。あ、それから、今「家族狩り」テレビドラマでもやっていますけど、(文庫本には俳優たちの写真の帯もついてます)これは、内容がかなり違っています。登場人物の設定も違うし、ストーリーも相当手が入っていて、同じものとは思えないくらい。私は第1話で混乱して、わけがわからなくなりました。同時進行はしないほうがいいですよ。映像だと、残虐なシーンがより強調されているので、家族みんなで仲良く見たりしないほうがいいと思いますよ。
2014.07.15
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古くから読んでくださっている方はご存知のことですが、私は日本語の教師です。50代になってから突然思い立ち、勉強して資格を取りました。少々の苦労はしたけど、なってよかったなあと強く思っています。学生たちはほとんどがアジア人で、エネルギッシュでパワフルです。また、明るくて親切。単純でわかりやすい。ちょっといい話は山ほどある。もちろん、よくない話も山ほど。彼らの悩みは、基本的に日本は物価が高い。生活が苦しい。ということに集約されるようですが、それもパワーと明るさを損なうことはありません。今日もわたしは明日の授業の準備を、彼らのリアクションを想像しながら進めます。こう言えば、わかってくれるかな?このやり方で練習したら、楽しいかな?このジョークに笑ってくれるかな?大忙しの毎日ですが、これが私の仕事であり、私の幸せです。前置きがすごく長くなったけど、この本「ことり」は、私の生活とまったく対極にある物語です。音といえば小鳥のさえずりだけ。言葉といえばポーポー語だけ。毎日の仕事は十年一日のごとく変化なく、空気すらあまり動かない。物語といえるほどの動きがないまま、後半に入ると、小父さんの淡い初恋。川沿いの小道で知り合った奇妙な老人。子供連れ去り事件。少しずつ小父さんの身辺に動きがあったかと思ったら、最後にはおじさん一世一代の大立ち回り。そして、小父さんは死にます。美しい声のメジロ一羽を残して。小父さんの一生には何もなかったけれど、それでも小父さんは、幸せだったんだと感じます。幸せに完璧なものなんてない。それはわかっているけれど、それでも「ことりの小父さん」は完璧な幸せを全うした人なんじゃないかな。とにかく静かなこの物語。幸せな人にも不幸せな人にも、お勧めします。
2014.07.04
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皆様、ほんとうにお久しぶりです。仕事やら何やらが忙しくてなかなか本を手に取る時間がないんですが、やっぱり読書はやめられない。いちじは一か月に10も20も読んでた月もありましたが、今はほんの1,2冊。それも、感想文を書こうという余裕すらなく・・・・自分にそんな言い訳ばかりしているうちに、なんと楽天のパスワードも忘れてしまい、ログインすらできず。奇跡的にやっとの思いでログインしてみたら、あの頃、つまり毎日のように更新してコメントのやりとりをしていた頃のブログ友達も、やっぱり更新されていなかったり、ブログそのものがなくなっていたり・・・ブログの世界も栄枯盛衰。諸行無常を感じるのでした。皆さん、お元気かしら。お名前も知らず、この地球上のどこにお住まいかも知らず、このまま忘却の彼方に消え去るのみ・・・というのもまた、ブログの良さかもしれませんけれど。とりあえず、読んだ本の覚えている分だけ。それも題名だけ。記しておきます。「被害者は誰?」 貫井徳郎「霧の中のエリカ」 重松清「怖い絵で人間を読む」 中野京子「もう二度と食べたくない甘いもの」 川上弘美「なめらかで熱くて甘苦しくて」 川上弘美「一路」上下 浅田次郎「禁断の魔術」 東野圭吾「誰にも書ける一冊の本」 荻原浩「みんなのうた」 重松清「月の上の観覧車」 荻原浩「火のみち」 乃南アサ「小さいおうち」 中島京子「ロスジェネの逆襲」 池井戸潤「彗星物語」 宮本輝「白い夏の墓標」 帚木蓬生「アラスカ物語」 新田次郎「きみの友達」 重松清「きみはポラリス」 三浦しをん
2014.06.29
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「断捨離」ということばが生まれて久しいけれど、実はこのわたくし、「元祖断捨離おんな」と呼ぶにふさわしい女なんです。そのルーツをたどれば、30数年前の生まれて初めて社会に出た頃のこと。まだ心が柔らかで吸収力のあった頃に、尊敬できる上司に出会ったんですが、その人が、何でもポイポイ捨てる人でした。その上司の机の上は、いつも電話しかない。引き出しの中もからっぽ。いえ、別に閑職にいたわけではなくて、バリバリ頼れる中堅サラリーマンでした。彼があまり思い切りよく書類でも何でも捨てるので、どうしてそんなに捨てられるのか聞いたところ、「僕が持ってなくたって、会社のどこかに必ずあるんだよ。」とのこと。そっかあ。そうだよなあ。わたしなんかが持ってる必要ないよなあ・・・と、すっかり感化され、結婚以来、夫婦喧嘩の半分以上は捨てる捨てないの喧嘩だし、ものがなくなったら、「捨てただろ」と濡れ衣を着せられたことも数知れず。今は夫のものにはゼッタイ触れるなと、厳重注意を受けている身です。そんな私でしたが、ここしばらく捨て魔の自分を忘れていました。捨てる作業には少々のエネルギーが必要で、年のせいですね、エネルギーが枯渇していたみたいです。この本「わたしのウチにはなんにもない」を読んだら、まあ、すごいすごい。写真を見ると、高級マンションのモデルルームよりももっと物がないんです。この著者は「ゆるりまい」などと、いかにもまったり自然体みたいなペンネームをつけているけれど、だけどこの人は、ものすごいエネルギーとパワーの持ち主ですよ。だって、物を捨てるのはエネルギーがいるんです。買いたい物を買って、何も捨てないで物に囲まれて暮らすことが、いちばんラクチンなんです。それは、捨て魔だったわたしがよーく知っている。汚屋敷に生まれ育った彼女が、なぜ「捨て変態」に変身したか。そこには、2年前の震災の経験も影響していて、とても興味深かった。そしてわたしは、捨て魔だった頃の自分を思い出し、若き日の捨てエネルギーがふつふつと湧きかえって来ました。この著者も書いているけど、何もない部屋は気持ちいい。仕事も家事も、ていねいに美しく仕上げようという気持ちになれます。床が片付いていると、寝そべってお菓子を食べながらテレビを見ようという気にはあまりなりません。寝そべって美容体操の一つもしてみようか、という気にはなります。これ不思議だけど、ホントよ!整理整頓という名の「並べ替え」なんか、すぐに元の木阿弥だよ。「もったいない」の呪縛から逃れて、1回捨てたらもう買わない。物を死蔵しているほうが、よっぽど「もったいない」ですよ。(しかし、この著者のやってるのは、やりすぎ感もあるけどね。)
2013.09.18
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ドラマ「半沢直樹」がおもしろすぎて、原作本を2冊読んでしまったという、私としてはとても珍しい本との出会いでした。もちろん、原作もとてもおもしろい。胸がスカッとするシーンもちゃんとあります。しかし、あまり詳しく書けませんが、やっぱりドラマってどぎつく作ってあるんだなあというのが感想です。ドラマでは、直樹のお父さんのことから「復讐劇」の面が強調されていますが、原作ではその要素はあまりありません。また、大人気のおねえ言葉の検査官も、原作よりもかなりあくが強く描かれています。伊勢島ホテルの羽根専務もしかり。(倍賞美津子って、怪女優ですねえ)だから原作のほうがいい、と言う気はありません。それぞれにおもしろいし、テレビドラマってこういうふうに作るんだなってところも、とても興味深いです。ただねえ、こう感じてるのは私だけかもしれないけど・・・・直樹の奥さんの花さん。原作では、悪妻とまでは言わないけど賢妻とはけして言えない、まあ普通のちょっと愚かなところもある奥さんなんですね。それが、ドラマでは上戸彩という人気女優を持ってきて、妙に良妻に仕立ててあるところが、無理があるかな。ポンポンものを言って、ちょっと愚かな面もあるけど、ほんとは直樹のことを愛していて考え深い良妻。直樹も深く愛していて、頼りにしている。というようなドラマの設定は、実はありきたりすぎて、あまりおもしろくない。他に女性がほとんど出てこないドラマなので、(ダンミツは前半に端役で出たけど)テレビ的にはきれいな女優も必要だったのでしょうね。じゃ、原作はどんな奥さんなの?それは、原作を読んだ人だけのお楽しみです。そうそう、ドラマの半沢花さん、奥様会におはぎを作って持っていったのはいいけど、遅刻は厳禁ですよ!
2013.09.10
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あまり多くないけれど、ここ半年に読んだ本をご紹介します。3月 大好きな台湾に2週間滞在しました。午前中は語学学校に通い、午後は台北のあちこちをほっつき歩く毎日でした。楽しかったなあ・・・ 1.「ワーキングガールウォーズ」 柴田よしき 2.「終末のフール」 伊坂幸太郎 3.「極北」 マルセー4月 この月から、私は新しい日本語学校で働き始めました。これが、眼の回るような忙しさの始まりです。学校によって、雑務の量も違えば働き心地も違う。今はこの学校に入ったことをとても後悔しています。 4.「フォーディアライフ」 柴田よしき 5.「狭小邸宅」 新庄耕 6.「水の形 上下」 宮本輝 5月と6月は一冊も読まなかったようです。あるいは、読んでもメモする余裕がなかったのかもしれません。7月と8月 待ちに待った夏休み。仕事の方もすこし整理して、一息つきました。あしたの授業を気にすることなく、夜遅くまで本が読める幸せ。心の中に、きれいな水が湧いてきたような気分です。 7.「花のさくら通り」 荻原浩 8.「重力ピエロ」 伊坂幸太郎 9.「虚構の道化師」 東野圭吾 10.「ふくわらい」 西加奈子 11.「小暮荘」 三浦しをん 12.「野心のすすめ」 林真理子 13.「沈黙の町で」 奥田英朗 14.「女の絶望」 伊藤比呂美 15.「ハリーポッター シリーズ」 ローリング 16.「オレたちバブル入行組」池井戸潤 17.「オレたち花のバブル組」池井戸潤夏休み中は、とにかく時間を気にしないでひたすら読書できるヨロコビに浸りました。その結果、読みも読んだり、冊数にして29冊!精神を擦り切れさせるような仕事のしかたはいけませんね。ほどほどにしようと思います。さてと、次は何を読もうかな。
2013.09.01
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もうイヤというほど聞き飽きたとは思いますが、今年の夏は「暑い」の一言ですね。私の町も、約一か月間ほとんど休みなしに猛暑日が続きました。1度の違いなんて、ほとんど変わらないでしょうという人もいますが、36度と37度って、たった1度の違いとはいえ、大違いです。なぜなら、熱は必ず高い方から低い方へ移動しますから、気温が36度だったら、わずかながら体から熱が逃げていく。でも37度だったら、熱が体に入ってくるのです。屋外で仕事をする皆様のつらさ、想像するだに恐ろしい。ほんとうにご苦労様です。高知県では最高気温41度を記録して、41円のカキ氷を販売した人もいたそうですね。ものすごい暑さだったでしょうけど、暑さを楽しんでおいしいものに変えてしまった発想、感心しました。これは楽しいニュースでした。さてさて、夏休み前の数ヶ月間、忙しすぎてすりきれかかっていたぱぐらは、夏休み中はとにかく怠惰に過ごすぞ!という目標を立てました。ただし、怠惰に過ごすためにも健康は大切。朝、日の出前の涼しい時間に、犬と散歩することも忘れませんでしたよ。そして、日がな一日、ソファに寝そべったりベッドにもぐりこんだり、考え付く限りの「楽な姿勢」で、ひたすら寝たり読んだりしていました。それはそれは楽しい2週間でした。なんと、その間にハリーポッターの文庫本を全巻19冊、読んでしまいました。ほぼ1日1冊ですね。ハリーポッターは前から何度も読み返していて、多い巻は6,7回読んでると思います。それほど読んだわたしでも、やっぱりこの本は読み始めたらやめられないおもしろさです。ストーリーはもうしっかり把握しているので、今回は自然と言葉遣いを意識して読みました。この本は、普通の小説と違ってヴォルデモートやスネイプなどの独特の雰囲気や特殊な言い回しがあるし、英語を話す人しかわからないようなことばの遊びも多いと聞きました。ですから、その翻訳は並大抵の苦労ではなかっただろうと思います。この本を誤訳だと指摘する人が多いのは、翻訳の難しさと、雰囲気の表し方に個人差が大きいせいだろうと思うのですが、どうでしょうか。誤訳だと言ってる人の中には、一言ひとことの訳し方を冷静に指摘している人もいれば、あげつらいおもしろがってけなすのが目的のような人もいます。けれど、翻訳というのは、単語一つ一つの意味だけとりあげてつなぐものではないでしょう。たくさんのことばが影響しあって、オーケストラのように一つの雰囲気を醸し出す。こうして、読書する私たちは他では味わうことのできないハリーの物語を楽しむことができるのです。残念ながら私は英語がそこまでわかりません。ですが、この物語を愛し、登場人物を愛し、その勇気に感動することができます。そんな魅力的な本に仕上げてくれた訳者さんに、とても感謝しています。
2013.08.25
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伊藤比呂美さんは、本業は詩人だそうです。けど、私は、申し訳ないけど彼女の詩は読んだことがなくて、もっぱら人生相談の回答者としての彼女しか知らず、その人生相談の隠れファンだったりします。彼女の回答がなぜ好きかというと、誰も口に出してうまく言えないけど誰もが常識として認識していることを、簡潔に易しく教えてくれるからです。この本は、数ある相談の中から「女の悩み」に的を絞り、それらをテーマにしたエッセイです。「夫婦のセックス」「女の絶望」「子育て」「不倫」「嫉妬」「閉経」「介護」まで、これを読めば女の一生がわかる、というくらい、さまざまな女の悩みが渦巻いています。いえ、さまざまなと書いたけれど、実際のところ、女の悩みってほとんどみんな同じなんだなと、驚かされます。似たような悩みを抱えながら、似たような人生を(もちろん本人は、他人と似てるなんて思ってなくて、それぞれに深刻なんですけど)送るものなんですね。というような感想を持ったのは、きっとわたしが、そのたいていの「女の悩み」を通り抜けようとしている世代だからかもしれません。だから、わたしはこの本を、若くて美しい娘ざかり、恋愛盛りの人たちに読んでほしいなと思いました。あなたの歩いていく道のりには、こんなことが待っているんだよ。それは辛いときもあるけど、これが生きるってことなんだよって。しかし、たいていの娘盛り恋愛ざかりの女性たちは、(もちろんわたしもそうでしたが)そんなこと気づきもしませんね。今の美しさや楽しさや何もかもが、変わることなく続いていくんだって、何の根拠もなく信じています。そのノーテンキさも、若さの特権なんでしょうけど。「女の絶望」というタイトルの元になっている相談が、いちばん心に残りました。「男女平等というようなこと、社会でもだんだんそうなっているということは聞き及んでおりますが、どうしたら家の中でそれができるのか教えていただきたいのです。休日など2人でどこかへ出かけて、疲れて帰ってきたときに、自分が立ち上がってお茶を入れる奴隷根性に絶望しています。それをごくあたりまえのことのようにのほほんとしている夫のことも憎らしくてたまりません。」60代の主婦の方です。わかるわかる。その気持ち。自分に絶望するその気持ち。悩み、不満、不安、それらをまとめて表現したことば、それが「女の絶望」です。光文社文庫 い48-1【全品送料無料】女の絶望/伊藤比呂美
2013.07.29
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池井戸潤さんといえば、「空飛ぶタイヤ」や「下町ロケット」など、男臭い職場を舞台にした骨太エンタテインメントというイメージがありますよね。どちらも、無骨でありながらすがすがしい男性が主人公でした。この本もそうです。ただ、信念や勇気といった骨太さじゃなくて、おとなしくて存在感のうすい中年男性。けれど、実は家族を守る頼もしいお父さん。いや、このどこにでもいそうなくたびれたお父さんも、なかなかかっこいいんですよ。偶然電車で割り込みをしようとした若い男性に注意したことから、家を突き止められて、さまざまな嫌がらせを受ける。家族はそれに立ち向かいます。また職場では営業部長の不正があり、究明に乗り出したお父さんは危機に直面します。この二つの事件が同時進行で語られていきます。どちらの事件も、お父さんの頑張りでなんとか軟着陸するので、そのストーリーを追って読めば、けっこう楽しむことができます。ですが、私は前述の「空飛ぶタイヤ」や「下町ロケット」のすがすがしい面白さを十分に知っているので、どうもこの本に100%は満足できなかったんですよね。二つの事件は、絡むことなくばらばらに展開して、それぞれに収束するし、どちらも大団円ながら迫力に欠けます。それぞれが別々のストーリーにするには、弱すぎる。だから一緒にしてみたけど、溶け合うことはできなかった・・・という印象が残りました。最後まで家族の結束が乱れず、思いやりを忘れず協力していく姿には、感動しましたが。ところで、「半沢直樹」というドラマは、池井戸潤さんの小説が原作なのだそうです。ほとんどテレビドラマというものを見ない私も、これだけは楽しみに見ていますよ。もっとおもしろくなりそうですが、私には妻の花さんが、どうもいい妻に感じられません。直樹はほんとうにこの奥さんを愛しているのかなあ。疑問です。
2013.07.23
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ほんとうにお久しぶりです。前回の記事に書いた台湾旅行が、はるか昔のことに思えるぐらい、忙しい毎日を送っていました。あまりにも忙しく仕事に追いかけられてばかりいると、だんだん心が乾いて、何の感動もアイデアも笑いも怒りも湧き起こらなくなります。それでもまだがんばれる。途中でやめたりしたらかっこ悪いし。そんなバカなことを考えて、まだがんばっていました。あ、いけない。がんばりすぎることは、わたしにとってご法度。詳しいことは、ずうーっと以前の日記にあるかもしれないけど、もう忘れましょう。というわけで、ほぼ4ヶ月ぶりに、好きな読書でもと本を買ってみたのでした。林真理子と言う作家は私にとって同世代でもあり、そのデビューから長いお付き合いを経て、同時進行みたいな作家です。そのくせ、林真理子のことは、はっきり言って好きじゃない。というのも、小説はともかく、エッセイに垣間見られる彼女の性格といったら・・・!お金と地位を手に入れた、勘違い女でしかありません。このへんは、ここを訪れてくださるハヤシマリコ嫌いな多くの人々と、同感しているところです。しかし、先日見た「ぴったんこカンカン」のハヤシマリコには、驚いてしまいました。まず第一に無表情。唇だけを動かして、冷たい口調で、皮肉な目つき。これが、あの闊達な文章を書いた人??この人はこういう年の取り方をしたのか~・・・!!そして、この本「野心のすすめ」を読んでみて、もう一度びっくりでした。えらく読者のご機嫌を損ねないよう、気を遣って書いてます。こう反論されるだろうと予想しては、予防線を張っているところも数箇所。あれれ???いつもの、上から目線の勘違い女はどうしたの?同世代の主婦層にはえらく厳しく、ババッチイ集団などとのたまい、自分はそこにだけは入りたくないと豪語していたハヤシマリコは、この本で若い読者の反応をとても気にしているのです。どうせなら、おもいっきりいやな女のまま、60歳間近のハヤシマリコのさらなる野心も聞かせて欲しかった。それを読んだらわたしはきっとまた彼女が嫌いになり、あーだこーだ言うと思うんだけど、結局わたしはそれを期待していたみたいです。複雑な読者心ですね。でも、そんな人、たくさんいるように思いますが。
2013.07.20
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いつのまにか60歳目前となっている私。多いとは言えない残り時間に、ぜったいやっておきたいことって何?そう考えてみたら、「語学留学」これをぜひやっておきたい!と思い立った私は、語学留学と言うもおこがましい、わずか2週間の語学研修にでかけたのでした。中国語を始めて1年半ほどたちます。語学って、初めのうちは楽しいおもしろいもっと話したい!と思うけれど、しばらくすると難しさにやる気をなくしがちですね。私はちょうどそんな時期に来ていました。台北の学校の授業はマンツーマンだったため、幸い日本人の友達はできなかったし、授業全般中国語。文法説明は英語。毎日の電車での移動も3度の食事もすべて一人ですから、ほとんど日本語を話さない生活です。楽しく自由気まま、心細くて不安。その二つの矛盾した気持ちにもすっかり慣れて、台湾人と間違われるようになった頃、2週間は終わりました。台湾の歴史や観光名所の案内は他のサイトにお任せするとして、わたしがじかに感じた台湾人ってこんな感じです。☆★☆ 台北の人の服装って、かなり地味です。色もきれいな原色を見かけることは少なかったし、デザインも地味。日本で見かけるような、必死のおしゃれやお化粧もいないし、いかにも有能そうに見えるビジネスマン・ウーマンも見かけませんでした。大学生風の人たちでも、服装は質素。日本でみかける「今から夜のご出勤?」みたいな女子大生なんて皆無です。同時に、履いている靴もとても実用的です。ハイヒールの人はほとんど見ませんでした。みんな歩きやすそうなペタンコ靴かスニーカー。靴だけはなかなかかわいくてオシャレです。スニーカーでもいろんな原色や花柄とか、男性も女性もそれぞれにかわいいのをはいていて、好感が持てました。☆★☆ おしゃれなお店が集まる町も歩きました。阪急や三越のデパートもあるし、通りに面してグッチだの何だのというヨーロッパのブランドのお店が並んでいます。車道も広いし歩道もとても広い。そして、歩いている人はそんなに多くありません。だから歩きながら、きらびやかなウインドウを十分に楽しむことができます。日本じゃ人通りが多すぎて、ゆっくり見られませんよね。こういう点は、日本より台北の方がヨーロッパに近いんじゃないかという気がしましたよ。また、おしゃれなデパートやビルはそれぞれが独立していて、地下街でつながっているということがありません。その点はちょっと不便ですね。唯一(と思いますが)阪急の地下が地下鉄の駅とつながっていました。☆★☆ 台湾では、暑い日と暑くない日とが、3日おきくらいに交互にきました。暑い日は30℃ぐらい。暑くない日でも24℃ぐらいです。ところが、台湾人は暑い日でもけっこう分厚いコートを着ています。ブーツもはいています。中にはマフラーや手袋をしている人も。なんでだろう。暑くないんだろうか・・・学校の先生に聞いてみたら、「ただうっかり間違えただけよ。」と笑っています。昨日も今日も暑いのに間違えるかなあ。朝のニュースで天気予報だってやってるのに・・・そんな風に思っていましたが、だんだんわかってきました。台湾人って、ただ無頓着なだけなんですね。天気予報の気温を見て、着るものをこまめに変えようという気がないんでしょう。たぶん。2週間の滞在のうちに、だんだん暑い日が増えてきて、さすがの台湾人もいきなりTシャツになってりしていましたよ。愛すべき台湾の人たち。☆★☆ 台湾は夜市が有名ですが、私が泊まったホテルの近くにも屋台の通りがありました。ここは24時間やっていました。珍しいものがたくさんあるし、とにかくおいしくて安い。最初は喧騒の中で声をかけるのさえ気後れしましたが、慣れれば大丈夫。いろいろなものを試しました。食べながらふと気づいたんですが、屋台って当然だけど冷蔵庫がないんですよね。見れば、肉でも魚でも海老でも牡蠣でも、そこいらへんに無造作に並べてあります。昼は30℃近くになる気温ですよ、ちょっと心配になりました。次の日、学校の先生に聞いてみたら、「別にたいしたことじゃないわよ。見えないだけでレストランの厨房だって同じことよ。一度食べてお腹が痛くなったら、2度目からは大丈夫!」とおおらかな答えでした。☆★☆ 鼎泰豊という有名な小籠包のお店があります。いつも日本人の行列ができています。私も以前行ったことがありますが、とてもおいしいんですけれど期待しすぎていたせいか、拍子抜けの感がありました。それよりも、わたしはゼッタイ、地元の人がおいしいというお店を開拓することをおすすめします。わたしはホテルのフロントの人と学校の先生に聞きました。日本人は小籠包が大好きってことを知っているんでしょうね。親切に教えてくれましたよ。小さいお店でしたけど、他のお客さんともふれあいがあって楽しい思い出になりました。☆★☆ その小籠包ですけど、ガイドブックによっては、皮を破ってスープを味わえって書いてあります。でもわたしはそれはイケナイと思います。だって、職人さんが一生懸命包んだスープ、破ってしまったら失礼じゃありませんか?それに何より、パクッと食べた方が絶対においしいんですって。☆★☆ 台北の人は、とても親切ですね。いろんなところでずいぶんよくして頂きました。親日の国ですから日本人だから?とも思うのですが、それにしても見も知らぬ外人のためにそこまで・・・と恐縮してばかりです。と感激していたら、ある日本人が「わたしは優しくしてもらったこと一度もないわよ。」ですって。そうか。わたしはきっと、いかにも頼りなさそうにうろうろきょろきょろ歩いていたんでしょうね。それにしても、たくさんたくさん、ありがとうございました。☆★☆ ホテル近くの文房具屋さんで「がんばれ日本」の文字入りボールペンをみつけました。売り上げの一部が日本へ寄付されるそうです。震災からもう2年。それなのに、まだ気遣ってくれているのを目の当たりにして、温かい気持ちになりました。台湾の皆さん、ほんとうにありがとうございます。決して裕福とは言えない小さい国の大きな支援を、わたしたちは絶対に忘れてはいけませんね。折りしも、わたしが帰国して二日目に台中市で大きい地震がありました。台北でも、毎日乗った捷運(地下鉄)が一時不通になったとか。お世話になった方々のご無事を祈っています。
2013.03.29
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先日テレビを見ていたら、エッセイの名手阿川佐和子さんが、連載のネタが思い浮かばないときの苦労を話していました。何か起きないしら、病気にでもならないかしらって。結局病気になってしまったので、エッセイが書けたというオチでした。ほんと、毎週毎週エッセイを書く仕事ってたいへんでしょうね。もう一人のエッセイ名人林真理子さんのエッセイも、どこへ行った、何を食べた、ああ言われたこう言われたという、私的イベントの話題が多いですね(ここ最近読んでいないので、そうじゃなかったらすみません。)で、今日の本「サラダ好きのライオン」も、雑誌に連載されたエッセイ集です。が、さすがというべきなのか、私的イベントの話はまったくありませんでした。頭の中にきちんとファイルされたものじゃなくて、どのファイルに入れたらいいのかわからないけど、忘れてしまうには惜しい。しょうがないから、ちょっとしばらくその辺に置いとこう。というような話題が続きます。著者本人も前書きに書いていますが、「自分が面白いと感じることを、好きなように楽しくすらすら書いた」そうです。村上春樹さんの興味や知識が、ほんとうに広範囲にあるんだと思いながら、私もすごく楽しい気分で読みました。そして、ますますファンになりましたよ。村上春樹さんって、びっくりするくらい、率直でかろやかで感性も普通の人なんですね。そして、その感覚は私と(というより一般大衆と)同じものなんだなあって、身近に感じました。中に、カズオイシグロさんのことがほんの一言だけ出てくるんですが、イシグロさんもいい方みたいで、とてもうれしいです。サラダ好きのライオン 村上ラヂオ 3/村上春樹/大橋歩【Marathon05P02feb13】
2013.02.11
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ある日本語学校で、留学生に文学の読解を教えている私。先日、教材に辻仁成の「代筆屋」がありました。手紙を書くのを苦手とする人たちのために、作家の卵である筆者が手紙の代筆をして、依頼人の心を伝える手伝いをするといった内容の小説です。実際に読み始める前に、知識の活性化という名目で、学生たちの手紙に関する体験や知識などを話させる段階を踏むのですが、そこで、世代のズレというか断絶というかを、笑っちゃうほど感じたのでした。手紙をもらってうれしかった私自身の記憶といえば、外国暮らしの頃、日本の家族や友達からもらうエアメールのうれしかったこと。繰り返し繰り返し、大切に読んだものでした。私が今日本語を教える相手は、まさに異国に暮らす外人たち。彼らにとっての手紙ってどんなもの?ところが、彼らの口からは手紙のての字も出ず(ま、手紙を書く子はいないだろうとは、ある程度は予想していたけど)出るであろうと思っていたメールだの電話だのということばすら出ず、私の知らないことばの通信手段ばかりが出てきたのでした。ここに書きたいけど、なにしろ知識がないので聞いたそばから忘れてしまって書けません。パソコンを使えば顔を見ながら通話することもできるし、高い電話代を気にしながらタイムラグのある受話器にしがみつくこともない。いつだってお母さんや友達と長話できるんなら、全然さみしくないねと言ったら、「なんで寂しいのかわからない」というポカンとした顔をされてしまいました。それで、私は質問を変えて、「手紙を書いたことがあるの?もらったことは?」と聞いたら、それは経験があるとのこと。そして、「もし大怪我をして入院、ベッドから起きられないとき、何が欲しい?」と聞いたら、やっぱり手紙がいちばんうれしいそうです。しかし、外国暮らししながらそんなに気軽にちゃっちゃと自国と連絡がとれるなんて、まったく時代も変わったもんだなあ。しみじみ異国情緒や孤独を感じ、自国の今に思いをはせる、そんな感覚はもうないのかなあと、思わず教室の学生たちの顔を見渡しました。おばちゃん先生のそんな感慨に気づきもしないで、若い彼らは「先生は次に何を言うのかな」って授業に臨む前向きな、いい表情をしていました。それでは今月読んだ本です。1.「舟を編む」 美浦しをん ★★★★★2.「七夜物語」上下 川上弘美 ★★★★☆ 3.「アフターダーク」 村上春樹 ★★★★★4.「年下の男の子」 五十嵐貴久 ★★★★☆5.「ウェディングベル」 五十嵐貴久 ★★★☆☆6.「代筆屋」 辻仁成 ★★★☆☆7.「邪魔」上下 奥田英朗 ★★★★★8.「サヨナライツカ」 辻仁成 ★★☆☆☆9.「ナミヤ雑貨店の奇蹟」 東野圭吾 ★★★★★それぞれの感想は、こちらをどうぞ。
2013.01.31
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ほんとうに久しぶりの更新になりました。そのうちそのうちと思っているうちに、ひと月たちふた月たち・・・とうとう年末になってしまいましたね。言い訳するわけではないんですが、あまりの忙しさに、本もほとんど読んでないんです。12月は3冊だったかな。それも、題名をメモすることすら忘れていたので、うろ覚え・・・今年もいろいろありました。いいことも悪いことも。うれしかったこともその逆も。心がときめいたことも、真っ暗に落ち込んだことも。それもこれも、私にとって無駄ではなかったと、いつか思えますように。そして、誰かがぱぐらを忘れずに、ときどきのぞきに来てくださいますように。そして、ここに来てくださるブログ友達の皆さんに、輝かしい新年が訪れますように!
2012.12.26
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半年間楽しみに見ていたnhkの「梅ちゃん先生」が終わりましたね。ヒロインはかわいいし、お父さんはおもしろいし、最後まで楽しく見ました。が、実はひとつだけひっかかったことがあって・・・それは、夜寝る前にきれいに敷いたお布団の、掛け布団の上に正座して家族が話しているシーンです。半年間に何度かありました。梅ちゃんと松子お姉さんだったり、お母さんだったり、のぶくんだったり・・・けど、掛け布団の上に座るってお行儀悪くありませんか?わたしは子供のころから、上に座るどころか、踏んで通ることすらいけないことと教えられてきました。だから、部屋が狭くてふとんの周りを歩けないときには、掛け布団を折り返して通路を作り、ぐるっとまわって歩いていました。梅ちゃんの家庭はお父さんは大学教授だし(大学教授がみんなお行儀よくて立派とは思っていませんが)お母さんも上品だし、おばあさんを「おばあさま」と呼ぶほどのお行儀のいい家庭です。それでいて、掛け布団の上に正座はないだろうっていつも違和感を感じていました。見ていても、こっちのお尻がむずむずしてしまいます。ひょっとして、掛け布団を踏んではいけないのは、うちだけだったのか。よその家では踏んだり上に座ったり、普通にしていたんだろうか。誰か、わたしに正しい作法を教えてくださいませんか。1.「アンの愛情」モンゴメリ2.「まほろ駅前多田便利軒」三浦しをん3.「まほろ駅前番外地」三浦しをん4.「孤独の力を抱きしめて」落合恵子5.「よなかの散歩」角田光代6.「オール1の落ちこぼれ、教師になる」宮本延春7.「最果てアーケード」小川洋子感想は、いつものとおり、読書メーターのほうへお越しくださいね。
2012.10.09
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