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2005/08/24
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テーマ: Jazz(2003)
カテゴリ: 音楽
 「鍵盤の皇帝」との異名を持つピアニストと言えば、オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson= 写真左上 Oscar Peterson

 ピーターソンと言えば、超絶のテクニックを持つ早弾きで知られる。あの小曽根真をして、「落雷に打たれたほど感動した」と驚嘆させたという人。ただし、昨今の早弾きピアニストに見られるような、メロディラインそっちのけの粗い早弾きではない。一音、一音の音がクリアに聞こえる(「粒がはっきりしている」という形容も)早弾きであるのが凄いところ。

 そして、ピーターソンのもう一つ特徴は、誰も真似できないスイング感。右手は単音よりも、ハーモニー(和音)で弾くことが多いが、そのハーモニーの動きが実になめらかにつながる。自由奔放に見せて、実は緻密な計算に満ちた演奏スタイルでもある。We Get Request

 ビル・エバンスが、僕にとってジャズ・ピアノとの出会いであり、「永遠の先生」であるとしたら、次に出会ったピーターソンは、僕がどんなに努力しても、たどり付けないところにいる「夢の巨匠」。オクターブ奏法で、あんな凄い16分音符や32分音符の連続は、僕はどんなに練習しても、死ぬまで絶対無理だろう。

 親日家のピーターソンは70~90年代にはよく来日して、テレビにもよく生出演してくれた。Night Trainそして、まだジャズにさほど興味のなかった僕も、時々、その超絶テクニックが繰り出される演奏を見て、「何であんなに指が早く動くの?」と目を丸くした記憶がある。

 僕が初めて出会ったピーターソンは、たぶん、他のジャズ好きの人もそうであったように、アルバム「プリーズ・リクエスト」(原題は「We Get Requests」。1964年発表= 写真右上 )。今ではジャズ入門者の定番アルバムにもなっているが、「酒とバラの日々」「マイ・ワン・アンド・オンリーワン」「イパネマの娘」などスタンダード・ナンバーの、聴きやすい名曲ばかり。Girl Talk

写真左中 )というアルバムでは、「バグズ・グルーブ」「Cジャム・ブルース」というブルースの名曲も聴かせるが、何と言ってもあの「ジョージア・オン・マイ・マインド」に魅せられた。今でも、「ジョージア…」のピアノ・トリオ演奏では僕は、このピーターソンのをNo1に挙げる。

 その後、1968年に発表したアルバム「ガール・トーク」( 写真右下 )は、2つのトリオによる名演を収めた素晴らしいアルバム。華麗なテクニックと、ノリノリのスイング感は、はや円熟の域に達している(62年に発表した「ウエストサイド・ストーリー」も今なお人気の名盤)。長いキャリアを持つピーターソンだけれど、僕はやはり、60年代が一番生き生きしていたかなぁ…という気がする。

 ピーターソンの演奏は冒頭にも書いたけれど、その技術的レベルからしても、ジャズ・ピアノ初級者の僕には手には負えない。A Night In Viennaエバンスのコピーには挑戦した僕だが、右手も左手も、和音が目白押しのピーターソンの真似は、ちょっと無理だとハナからあきらめている。

 ピーターソンは93年に脳溢血で倒れて、3年ほど演奏活動から遠ざかった。復帰後も、車椅子での弱々しい姿を見たので心配していたが、去年9月にはウイーンでのライブDVD( 写真左下 )を発売。さらに翌10月には、久々の来日公演もしてくれた(しかし、この来日ライブを見た人の話では、全盛期と比べるとパワーや指の動きの衰えは隠せず、見るのも少し辛かったという)。

 それでも、ピーターソンがジャズ音楽に残した功績は偉大で、不滅だ。ことし80歳で、体も不自由な彼に、もう過大な期待をするのは酷だと思う。ピーターソンのこれまでの功績を考えれば、もうゆっくり悠々自適の余生を送ってもらっても、僕は何の文句もないのだが…。





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Last updated  2005/08/24 12:45:59 AM コメント(16) | コメントを書く


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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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