Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2018/12/01
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 92.X・Y・Z

【現代の標準的なレシピ】
※ラム(20)、コアントロー(20)、レモン・ジュース(20)という等量のレシピもあります。 【スタイル】 シェイク

 誕生の正確な経緯は、残念ながらまったく不明ですが、1910~20年代のロンドンかニューヨークで「サイド・カー」のバリエーションの一つとして生まれたと言われています(出典:欧米のWeb専門サイト)。

 カクテル名の「X.Y.Z.」の由来もよく分かっていません。日本のカクテルブックでは、アルファべットの最後にくることから、俗語で、「もう後がない(=これ以上のものはない)」「おしまい」「最高の、究極の」という意味で使い、このカクテルも、そういうという意味で名付けられたと解説する文献が目立ちますが、その根拠は示されていません。

 しかし、カクテル研究家の石垣憲一氏は、その著書「カクテル ホントのうんちく話」(2008年、柴田書店刊)のなかで、「X・Y・Z」とは、「知られていない、あるいははっきりさせたくないもの(レシピは)ナ・イ・ショという意味である」と記していますが、石垣氏も、根拠となる資料について触れていないので、真偽のほどはよく分かりません。

 「X.Y.Z.」と言えば、現代では通常ラム・ベースですが、不思議なことに、20世紀前半にはジン・ベースとラム・ベースの2種類の「X.Y.Z.」が存在していたのです。しかもジン・ベースの「X.Y.Z.」のレシピは、明らかにマティーニのバリエーションです。

 欧米のカクテルブックで初めて「X.Y.Z.」という名前のカクテルが確認できるのは、1922年に米国で出版された「Cocktails: How to mix them」(Robert Vermeire著)です。しかし、そのレシピは「ジン3分の1、ドライ・ベルモット3分の1、スイート・ベルモット3分の1、レモン・ジュース4分の1個分、シロップ少々(シェイク)」となっていて、「(マティーニのバリエーションでもある)ブロンクスというカクテルのバリエーションである」と言及しています。

 ラム・ベースでの「X.Y.Z.」が初めて活字になるのは、その8年後に出版された「The Savoy Cocktail Book(サヴォイ・カクテルブック)」(1930年刊)です。そのレシピは「バカルディ・(ホワイト)ラム2分の1、コアントロー4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク)」とほぼ現代レシピと同じです。

 ご参考までに、1930年代~70年代の欧米のカクテルブックで「X.Y.Z.」がどのように紹介されているのか、簡単に振り返っておきましょう。

・「Cocktails」(Jimmy of the Ciro's著、1930年刊)
 ジン3分の1、ドライ・ベルモット3分の1、スイート・ベルモット3分の1、レモン・ジュース4分の1個分、シロップ少々(シェイク)

・「Café Royal Cocktail Book」(W.J. Tarling著、1930年刊)
  ホワイト・ラム2分の1、コアントロー4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク)

・「World Drinks and How To Mix Them」(William Boothby著、1934年刊)※ジン・ベース、ラム・ベースの2種類が収録されています。
 X.Y.Z. No1=ジン3分の1、ドライ・ベルモット3分の1、スイート・ベルモット3分の1、レモン・ジュース4分の1個分、シロップ少々(シェイク)
 X.Y.Z. No2=ホワイト・ラム2分の1、コアントロー4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク)

・「The Official Mixer's Manual」(Patrick G. Duffy著、1948年刊)
 ダーク・ラム2分の1(※ダークラム・ベースは極めて珍しいです)、コアントロー4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク)

・「Old Mr. Boston Official Bartender's Guide」(1953年版)
 ホワイト・ラム2分の1、トリプル・セック(ホワイト・キュラソー)4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク)

・「The Bartender's Standard Manual」(Fred Powell著、1979年刊)
 ダーク・ラム2分の1、コアントロー4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク)

 ちなみに近年はどうかと言えば、ベースを替えればほぼ同じカクテルとも言えるギムレットやサイドカー、バラライカの陰にかくれて、「X.Y.Z.」はあまり掲載されることは少ないのが現実です。探すのに苦労しましたが、何とか見つけたのが以下の一冊です。

・「New York Bartender Guide」(Sally Ann Berk著、1995年刊)
 ライト・ラム7分の4、ホワイト・キュラソー7分の2、レモン・ジュース7分の1(シェイク)

 「X.Y.Z.」は日本には、ジン・ベースのものは戦前に伝わっていますが、ラム・ベースのものが文献で紹介されるのは戦後の1950年代になってからです。ただし、現代の日本のバーでは、知名度がそれほどないためか、注文されることの少ない可哀想なカクテルになっています。

【確認できる日本初出資料】 「世界コクテール飲物事典」(佐藤紅霞著、1954年刊)。レシピは「ホワイト・ラム2分の1、コアントロー4分の1、レモン・ジュース4分の1(シェイク)」となっています。※日本では、1924年刊の前田米吉著「コクテール」に同名カクテルが登場しているのですが、ラム・ベースではなく、ジン・ベースです。


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うらんかんろ

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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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