ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

May 28, 2007
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「♭シのないところに煙は立たぬ?」

 今日はピアノ五重奏の練習のはずだったのに、第1バイオリンのアリソンがドタキャン、結局ピアノ四重奏になってしまった。メンバーは僕(バイオリン)、ブライアン(ビオラ)、ピーター(チェロ)、セス(ピアノ)。

 もともと シューマンのP5 を練習する予定だったので、成り行きでやはり同じシューマンのカルテットが選ばれた。この曲は つい先月もビオラで練習したばかり だし、初見の曲よりはマシかと開き直るほかなかった。

*****

 ワイワイガヤガヤ言いながら練習を進めていき、美しい旋律が各パートを巡回する3楽章アンダンテカンタービレに突入。その中盤、ビオラに出番が回ったときに事件は起こった。



 どうゆうことかと言うと、この楽章、最後に低音の♭シがチェロに出てくる。通常、チェロの最低音はドの開放弦=C(ツェー)線なので、この♭シを弾くには、大胆にもC線を全音下げて♭シに調弦し直す必要がある。現にそうゆう指示がチェロのパートに書かれている。

47

 そして、僕らはこの♭シをめぐってひと悶着。

 ただでさえ大音量で調弦する傾向のあるピーターさん、ほかの奏者の邪魔にならないように密かに奥ゆかしく調弦していただきたい。せっかく自分の美音ソロに酔いしれて弾いてたブライアンもさすがにムッとしてた。あんなに堂々と隣で調弦されたら確かにたまらない。

 でも、そもそもチェリストが曲の真ん中で一瞬で調弦し直すなんて非現実的。

 ところでこの楽章、最後にピアノとビオラに出てくる音型がまた印象的。

47a

 この音型は次の楽章(4楽章)のテーマを匂わす架け橋。すなわち3楽章と4楽章はアタッカで(休むことなくいきなり)始めるべき、とのご意見が出された(by セス)。なるほど。

47b

 でも、そうなると今度は、♭シのままになってるチェロの弦をドに戻す時間がなくなる。
 別に本番の舞台で弾いてるわけじゃないし、遊んで弾くぶんにはどーでもいーことだけど、完ペキ主義者のセスさん、決して譲らない。

 この♭シひとつで、そこまで話が盛り上がるなんて予想してなかった。
 ちなみに、こうゆう一風変わった指示が楽譜に出てくるだけでいきなり興奮しちゃう人って、 マーラー好きのオケマン とかに多いかも。

泣く泣く無視 ということになった。本番でこの曲を弾く演奏家の方がたはどうやって対応してるのか、ちょっと気になる。

 最近知ったトリビアとしては、このように、本来は移調楽器ではない弦楽器に、敢えて異なった調弦で弾かせる手法を スコルダトゥーラ と呼ぶらしい。 モーツァルトの協奏交響曲 のビオラがいい例。サン=サーンスの「死の舞踏」のコンマスとかも。





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最終更新日  Jun 3, 2007 11:46:20 PM
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