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December 11, 2005
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カテゴリ: 今日もいい日だ

今日のこと、というより、昨日のことなんですが、昨日は所属する学会の読書会と忘年会が行なわれました。

まず読書会ですが、今年、読書会の対象となったのは、アメリカの女性批評家・作家で、昨年のちょうど今頃物故されたスーザン・ソンタグという人の書いた『反解釈』という本。ま、基本的には文学・演劇・映画などについての評論集で、1966年に出版された彼女の出世作です。

ところで、一般に著述家の出世作には、その人のモノの見方とか、スタイルの基本的な部分が一番よく反映されるものですが、この本の場合も、まさにその一般論がよく当てはまるところがあります。

特に顕著なのは、「芸術作品に向き合う時に人がとるべき態度」に関する彼女の基本的な考え方。ソンタグの(当時の)考えによれば、芸術作品というのは本来、その有り様(スタイル)を全的に体験すべきものである、というのですね。つまり「この作品は、結局、こういうことが言いたいのだ」というふうに、その「内容」を言語化しようとしてはいけない、と彼女は主張するんです。そうやって作品の「内容」を言語的に「解釈」しようとすることは、芸術作品への冒涜だ、というわけ。だからこそこの評論集のタイトルは『反解釈』なんですな。

というわけで、芸術作品を「あるがまま」に体験すること、これこそが芸術に対する正しい向き合い方である、というのが、まあ、ソンタグの主張であるわけですが、こういう考え方、日本人には割と受け容れ易いのではないでしょうか。実際読書会の中でも、その昔、わが国でも世阿弥が同じようなことを主張している、という指摘がありました。でも西欧思想の歴史の中で見ると、こういう考え方は比較的新しいものでもあるのです。

何しろ西欧思想の根本たるプラトンなんかのギリシャ思想からして、芸術は「何かの模倣」に過ぎない、というのですからね。ま、プラトンの場合、芸術作品どころか、この世のありとあらゆるものは「本質」の影絵に過ぎないというわけですが。つまり重要なのは、個々のモノ(例えば芸術作品)ではなく、それらの背後にある「本質的な何か」であるというのが、西欧思想の基本なんですね。ここには、西欧社会が伝統的に持つ「模倣芸術」への根源的な不信がある。

さらにもう少し近いところで言っても、19世紀末から20世紀初頭にかけて西欧では「精神分析」というものが流行したでしょう? あれは、「真実」は表には表れない、表面に見えているものの下、つまり「意識下」にこそあるのだ、という考え方です。つまり、目に見えているもの(形式) の裏側に隠されている真実(内容)を、言語化することこそが「解釈」だ、と考えられてきた歴史がある。これはマルクス主義なんかも同じですね。歴史の背後には必然がある、というのですから。

ですから芸術作品には「隠れた背後」なんかないという主張、すなわち芸術作品を味わうのに、それが「何についての作品であるか」を問うべきではない、というソンタグの主張は、伝統的な西欧の思想の流れからするとかなり反逆的な側面があるわけです。

もっとも、その反逆性は必ずしも突発的に新しいものではないんです。というのは、1910年代あたりから絵画・文学・音楽など様々な芸術分野で一斉に始まった「モダニズム」の運動というのは、そもそも「内容」よりも「形式」を重視する芸術運動ですから。すなわち近代という時代には、既に「何が表現されているか」ではなく、「いかに表現されているか」が芸術を見る上で重要なファクターになっていたんですね。



つまり、ソンタグの「反解釈」の主張というのは、伝統的な西欧思想の基本的な考え方へのアンチテーゼではあるものの、その一方でモダニズムの伝統や、それに根ざす1960年代のフランス哲学の伝統といった、西欧思想のもう一つの伝統に棹さすものではあったんですな。要するにソンタグの「反解釈」の主張も、結局こういう時代の流れの中で培われてきたものであるわけですよ。特にフランス実存主義思想から受けた影響は大きかったことは、『反解釈』の中でフランスの思想家・作家の作品が数多く扱われていることからも伺えます。そういえば昨日の読書会の中でも、アメリカの批評家なのにフランスの作品ばかり論じているのは如何なものか、という批判的な指摘もありました。

ちなみにフランスの実存主義哲学というのは、1960年代あたりの日本ではやたらに持て囃されましたよね。いや、1970年代あたりでもまだ、サルトルは偉い人、というイメージがかなり強く残っていたんじゃないでしょうか。子供時代の私ですら、その名前を知っていたわけですから。子供でも知っている偉い人だったからこそ、野坂昭如大先生も某洋酒メーカーのCMの中で、「ソ、ソ、ソクラテスかプラトンか。ニ、ニ、ニーチェかサルトルか。みーんな悩んで大きくなった! (大きいわ、大物よ・・・) 俺もお前も大物だぁ!!」と歌っていたわけですが。

でも今、日本でサルトルだ、実存主義だ、なんて話題になることないじゃないですか。今、モダンを越えたポスト・モダンの時代を生きる我々現代人からすると、実存主義なんてもう古い、という見方がある。それだけに、そうしたモダンな思想の上に乗っかったソンタグの「反解釈」の主張も、もはや古いかな、という感じは否めない・・・。古い、というより、懐かしい、という感じですかね。

その辺の古さ・時代性ゆえに、昨日の読書会の中でも、特に若い参加者の間からは、意外なほど辛辣なソンタグ批判の言葉が飛び交っていました。いや、ソンタグ批判というのは正確ではないか。ソンタグの初期著作に対する批判、というべきですね。ソンタグだってその後、時代の流れの中で随時思想的修正を図ってきたわけですから。

しかし、私の世代、あるいはそれより上の世代の先生方の間からは、そういう時代的な限界はともかくも、ソンタグが実際に文学作品や演劇・映画作品を評論する、その鮮やかな手腕、そして洞察力はやはり凄いではないか、という意見が数多く出されていました。それにまた彼女の文章というのが、これまた実にスマートですからね。大人組はソンタグのそういうところにまずやられてしまうわけですよ。

それに、ソンタグという人がまたいかにも知的で意志の強そうな颯爽とした美人でね。以前彼女が日本に来た時は、当時の日本の知識人は皆、そんな彼女の虜になってしまったところがある。となれば、昔惚れた女の悪口は言えないわけですわ。

とまあそんな感じで、短い時間でしたけれど、昨年亡くなったソンタグの初期評論集を読み直しつつ、彼女の業績と限界をあらためて認識できたという点で、また若い世代と年上の世代の、ソンタグに対する思いの違いが明らかになったという点で、それなりに意味のある読書会になったのではないかと思います。

ちなみに、数日前のブログに書いたように、今回の読書会では、新機軸として休憩時間の間にワインパーティーを催すという企画を立てたのですが、こちらの方もそれなりに喜んでいただけたのではないかな。つまみとして持ち込んだサブウェイ・サンドのパーティーセットも好評でしたし、何と言っても肝心のワインは、楽天ブログ仲間でもあるワイン通の Rokku 教授直々に教えていただいた銘柄を用意しましたから、もちろん好評でしたしね。

そして読書会が終わった後は、名古屋の繁華街の一つである伏見の「みその亭」というところに繰り出して、恒例の忘年会を行いました。ここは、元々老舗旅館だったというだけになかなか趣ある古風なお店で、「御園座」という名古屋の有名な演芸場に出演される芸能人の多くも利用するところらしいですけど、料理もなかなかおいしく、参加者の皆さんには割と好評だったようです。

で、ここでの忘年会がはねた後、さらに飲みに行くというアルコール組と、後はコーヒーでいいやというコーヒー組に分かれましたが、私はもちろんコーヒー組に参加。同じくコーヒー組に参加された学会仲間で才媛のTさんが一年ほど前にご結婚されたということで、その辺りの事情から始まって、かなりディープな恋愛話も含め、盛り上がりました。忘年会というのは、それそのものも面白いですが、その後、小さな集団に分散された後がさらに面白いというところがありますからね。

とまぁそんな感じで、昨日は色々と有意義な一日となりました。でも、何だかんだと気を回して疲れましたわ・・・。今日、日曜日は、骨休めの日ということにしましょう。それでは、また!





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Last updated  December 11, 2005 05:31:17 PM
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お疲れ様でした。釈迦楽さんのことですから、頭つかって気を遣わなかったんでないですか?

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