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October 13, 2009
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カテゴリ: 教授の読書日記



 で、そこに立ち寄ってぶらぶら本を見ていた時、Peter Abrahams というサスペンス作家の『Nerve Damage』という本に店員の誰かさんの熱烈なポップが添えられていて、「読み始めたらyou can’t stop!」的なことが書いてあったので、どんなものかと思って買ってみたんですな。で、それを読み終えたので、ちょいと感想を一言(以下、ネタばれ注意)。

 この話の主人公は Roy Valois(多分、「ロイ・ヴァロワ」と発音するのではないかと・・・)という売れっ子オブジェ・アーティスト。自動車のラジエーターのスクラップなどを溶接してくっつけて巨大なオブジェを作ってしまうようなタイプのアーティストです。年齢は46歳、十数年前に最愛の妻Delia(多分、「ディーリア」と発音するのではないかと・・・)を亡くし、今はJen というガールフレンドと付き合ってはいるのですが、ディーリアへの思いが強すぎて再婚までは決意できない、という状態。

 ところでロイはアイス・ホッケーのアマチュア・チームに所属するほどの体育会系ではあるのですが、このところ妙に咳が出る。で、ちょっと不安になって医者に診てもらったんですが、なんとなんと、意外なことに肺に特殊な癌が見つかり、余命4か月とのこと。

 かくして突然自らの死を強く意識せざるを得ないことになったロイは、ふとした出気心からニューヨーク・タイムズのアーカイブにハッキングし、自分が死んだ時、どのような死亡記事が出るのかを見てしまうわけ。ロイのようにある程度名を成したアーティストですと、死んだ時にすぐ死亡記事が出せるよう、大新聞などではあらかじめある程度、死亡記事を準備しているんですな。で、ロイはそれを読んでみた、と。

 すると、自分の死亡記事自体はなかなかいい記事になっていて、それは満足したのですけれど、一箇所、死んだ妻のディーリアについての記述に間違いがあった。経済学者であった彼女は「ホッブズ・インスティテュート」というシンク・タンクに雇われており、ヴェネズエラの農業の活性化のため、パイナップル栽培を推進させようというプロジェクトに参加して活動していたのですが、現地視察をしていた際、ヘリコプターの墜落事故に巻き込まれて亡くなっていたんですな。ところがロイの死亡記事の中では、ディーリアは国連に勤務していたことになっていた、と。ん? 国連??

 そこでロイはその死亡記事を書いた記者に電話して間違いを指摘するのですが、その記者がまた変なことを言い出すわけ。曰く、ディーリアの国連勤務の件はちゃんとしたソースからの情報で、信憑性には自信がある。一応、調べ直してみるけれど、ロイの言う「ホッブズ・インスティテュート」とやらの方がおかしいのではないか、と。

 で、ロイとしてはびっくりするわけですよ。自分の妻が生前どこに勤めていたか、自分より他人の方が詳しい、なんてことがあるのか? ところが、もっとびっくりすることが生じます。ディーリアの勤務先のことを調べ直していた先ほどの記者が何者かに襲われ、殺されてしまうのです。

 かくして何かがおかしいと感づいたロイは、自分でもホッブズ・インスティテュートのことを調べ始めるのですが、かつて妻が勤め、自分でも何度か訪れたことのあるインスティテュートの建物を訪れると、もうそこはギリシャ大使館になっていて、大使館の人に聞いても以前からこの建物はギリシャ大使館だった、と言うばかり。さらにかつて妻の上司であり、ロイとも旧知の間柄であったトム・パリッシュなる人物を探し出して声をかけても、自分はトムという名ではないし、ホッブズ・インスティテュートなど聞いたこともないと答え、取り付く島もない。



 果たしてホッブズ・インスティテュートとは本当に実在したのか? 実在したとして、それは本当はどのような組織だったのか? そしてそこに勤めていたはずの彼の妻は、本当は何をやっていたのか?

 と言うか・・・そもそも本当に彼の妻ディーリアは十数年前に死んだのか??

 真相を探るロイは余命幾ばくもない身。果たしてロイは、残りわずかな時間の中で、最愛の妻の秘密を知ることができるのだろうか!!??

 ・・・というようなハナシです。ま、一番近しい(と思っていた)人が、実は一番謎めいた人だった、というのはゴシック・ロマンスの定番ストーリーでありまして、その系統を汲む王道サスペンスと言えますな。

 とまあ、ストーリーの展開自体はすごくサスペンスフルなんですけど、それがまた妙に牧歌的なノンビリした調子で語られるという、ある種アンバランスなところがあって、そこが何とも不思議な味がする。最初から最後までドキドキしっぱなしのジェフリー・ディーヴァーの作風とは随分趣が異なるサスペンスではあります。

 しかし・・・。(以下、くれぐれもネタばれ注意!)さらに読み進めていくと、実はこのことの背景には政治的なものがあった、という話になりまして、アメリカにとって最悪のテロリストみたいな奴をひそかに葬ってしまおうという極秘作戦があり、これが失敗してしまったことが、ディーリアをめぐる謎の背景にある、というような風になっていくんですけど、この辺まで話が進んでくると、ワタクシのようなヒネた読者としては「あーあ、またそういう話?」ということになって、すっかり熱が冷めてしまうんですけどね・・・。

 というわけで、全部読んでしまうと、「なーんだ」ということになってしまうわけですが、こういう話の展開に素直について行ける方には、それなりに面白いサスペンスなのかも知れません。ので、「教授のおすすめ!」とは言いませんが、興味のある方にはどうぞ、と言っておきましょう。ラティテュード33の店員のどなかたは、この本を熱烈に勧めているのですから、はまる人にははまる小説なのかも知れませんよ~。





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Last updated  October 14, 2009 01:44:07 AM コメント(5) | コメントを書く
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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