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March 20, 2016
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カテゴリ: 教授の読書日記
 日本アメリカ文学会での先輩で私の兄事する本城誠二先生がこの度『Crossing Borders ジャズ/ノワール/アメリカ文化』(英宝社)という本を上梓されました。

 この本、本城先生が2008年から続けられている「越境と郷愁」というブログから生れた本でありまして、ブログに綴られた様々なトピックの中から特に先生のお好きな映画やジャズ、そしてもちろんアメリカやイギリスの小説、とりわけミステリーなどについて書かれたものを一冊にまとめられたもの。先生のお人柄のよく表れた穏やかな文体で綴られたエッセイ集ですが、実は相当年季の入った映画・ジャズ・文学の見巧者ならではの鋭い観察と、アメリカ文化の様々な側面を横断し、結びつける巧みな手腕が発揮された、素人から通まで等しく唸らせるアメリカ文化論となっております。

 私も長年ブログをやってきて、ブログを通じて何が出来るのか、自分はブログを書くことで何をやろうとしているのか、ということを意識してきましたし、実際、ブログに書いたことを本にしたこともありますが、この度、本城先生のこの本を読ませていただいて、先生が私とほぼ同じ感覚でブログを続けられていることを確信し、非常に面白かった。アマゾンでももう間もなく販売が始まるようですので、興味のある方は是非。教授のおすすめ!です。

 映画・ジャズ・アメリカ文学と、テーマ的にも私の好きなものばかり、そしてブログから生み出された本という点も興味津々。本城先生に負けず、私も頑張って、本にまとめてもおかしくないような内容のあるブログを作っていかないといけませんな。ますます、やる気が出て参りました。



 さてさて、「昭和の男」シリーズのつづきですが、今日は昭和40年代の新宿のお話。

 と言ってもね、「二丁目の青線地帯が・・・」とか、「ションベン横丁が・・・」とか、「西口地下広場でフォークゲリラが・・・」とか、そういうお話じゃないの。そういうのが出来るのは、団塊の世代以上なので、昭和40年代初頭にようやく幼稚園に行き始めた子どもの目には、そういうものは入ってこないのよ。

 1960年代半ば過ぎ、幼かった私の目に映った新宿というのは、小田急百貨店や京王百貨店がまだ真新しく、西口地下広場が完成したばかりの頃。西口と言えば、京王百貨店があるばかりで、その先にはまだ何もなかった。当然、高層ビルなんてのもなくて、京王プラザホテルの完成がようやく1971年、それから住友三角ビルが出来るのが1974年。そのあたりから徐々に、という感じでしたね。

 一方、東口側には既に色々ありましたが、我が家に関係するところと言えば、東口地下通路沿いの施設、例えば紀伊国屋書店であったり、中村屋であったり、三越であったり、伊勢丹であったりといったところ。伊勢丹より先は行ったことがなかった。要するに、小田急百貨店や京王百貨店や三越や伊勢丹など、大型デパートが沢山ある街、というのが新宿という町に対する私の最初の印象でございます。



 ま、とにかく子供の頃の私にとって新宿はデパートの街。それも、普通の買い物ならば町田で済むので、新宿のデパートに行くとなると、ちょっとスペシャルな感じが伴う。

 じゃ、スペシャルというのは何かと言いますと、例えばクリスマスの買い物とかね。

 今、街が一番盛り上がるのは、ひょっとしてハロウィンの渋谷、だったりするのかも知れませんが、昭和40年代って言ったら、やっぱりクリスマスだったんじゃないかと。

 今、クリスマスって、どうなんだろ。盛り上がっているのかなあ。一応、クリスマス・セールとかはあるのだろうけれども、街全体がハイになっている感じはありませんよね。

 だけど、私が子供の頃のクリスマスなんてのは、もう、誰も彼もみんな浮かれてましたよ。サラリーマンのお父さんが、会社のクリスマス宴会かなんかで酔っ払って、頭には円錐形の帽子をかぶって、手には寿司折かなんかを持って、千鳥足で歩いているという、漫画みたいな光景が実際にありましたからね。で、大きな街の繁華街はもとより、小さな街の商店街だって、ジングルベルの曲がけたたましく鳴り響いていて。

 高度経済成長期だったし、各家庭の懐具合も全般的に良かったんじゃないですかね。だから子どもにとっては、クリスマスってのは誕生日と並んで、欲しかったものがプレゼントされる一年でも最高の一日。

 で、釈迦楽家では当時、この日をどんな風に過ごしたかと申しますと、12月24日に家族揃って新宿のデパートに買い物に行くわけ。

 で、家族のメンバーそれぞれにプレゼントを買うのだけど、例えば父にプレゼントを買う時は、父に何処かで待っていてもらって、母と姉と私で父へのプレゼントを買いに行く。

 万事この調子で、母にプレゼントを買う時は、母に何処かで待っていてもらって、父と姉と私で母へのプレゼントを買う。姉へのプレゼントを買う時は、父と姉がどこかで待っていて、母と私で買いに行く。私へのプレゼントを買う時は、母と私がどこかで待っていて、父と姉で買いに行く。

 そうして家族分のプレゼントを買って帰るわけ。

 そうすると、どうなるかと申しますとね、もう楽しくて仕方がないのよ。父に何を買ってあげたか、私は知っているけど、父は知らない。母に何を買ってあげたか、私は知っているけど、母は知らない。姉に何を買ってあげたか、私は知っているけど、姉は知らない。その状況が可笑しくて仕方がないわけ。ついうっかり、手袋を買ったんだよ、とか、ブローチを買ったんだよ、とか、セーターを買ったんだよ、とかバラしたくなってしまうのだけど、それをじっと我慢するのがめちゃくちゃ楽しい。



 それでクリスマスの買い物を済ませた我が家一同は小田急線に乗って帰宅するんですけど、姉と私はクスクス笑ってばかりだし、父も母も楽しそうで。

 他愛ないクリスマスの一コマですけど、今から考えると、我が家のメンバー全員が一番屈託なく人生を楽しんでいたのは、この頃だったのかもしれません。

 とにかく、こういう家庭の幸せの背景にあったのが、新宿のデパート群だった。だからね、あれから幾星霜が過ぎましたけれども、私は新宿という町には、今でも愛着があるのでございます。

 だけど、その一方、例えば東口地下通路なんて、当時はもっと暗くて、あまりぞっとしないところでもありました。何せ通路の脇には、今で言うホームレス、当時で言えば乞食の皆さんがずらっと坐っていたり寝転んでいたりしましたからね。あと、クリスマスとか年末の頃になると、傷痍軍人が坐って募金を訴えていたり、救世軍が「社会鍋」と称してやはり募金を促していたり、あるいはまた懐かしい赤尾敏が辻説法をしていたりする。



 私にとっての昭和40年代の新宿というのは、そういう光と影の交錯する、魅惑の異空間だったのであります。





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Last updated  March 20, 2016 02:19:45 PM
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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