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August 12, 2016
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カテゴリ: 教授の読書日記
諸富祥彦という人の書いた『トランスパーソナル心理学入門』という本を読んだので、心覚えを付けておきましょう。

 なんでこの本を読んだかと申しますと、やっぱり自己啓発本研究との絡みでありまして、心理学が追求する「人間、いかに生くべきか」的なモノってのは、もともと自己啓発の思想と重なる部分があるし、アブラハム・マズローの「人間性心理学」なんてのは、直接、自己啓発思想に包含されてしまうところもある。となると、その「人間性心理学」の延長線上にある「トランスパーソナル心理学」のことも、多少は知識として知っておいた方がいいんじゃないかなあと思い、差し当たり入門書でも読んでおこうと、本書を手にしたという次第。

 で、この本読んでみたら、大体、トランスパーソナル心理学の何たるかってのは、なんとなく掴めました。

 かいつまんで言いますと、人間ってのは、常に「本当の自分」を探しているわけね。本当の自分の幸福というものを掴みたいと。で、従来の心理学は、「それなら、自己実現しなさい」ってな回答を出していたわけ。だけど、じゃあ、自己実現すればそれで幸せになれんのかっていうと、意外にそうでもなかったと。自己実現ってのは、どこかにエゴイスティックな部分があるので、それを実現しちゃった後、「自分だけが幸せになれば、それでいいのか」的な疑問が生じてきたりして、結局、別の悩みを招いてしまったりする。パーソナルな幸福が実現しても、最終的には幸福になれないという矛盾があると。

 じゃあ、どうすればいいかとなった時に、もっと広い視野をとればいいと。宇宙的な視点ね。

 自分が存在しているのは、宇宙空間のただ一点、しかも長い時間の流れの中のただ一点なわけですよ。人間ってのは、宇宙の悠久の摂理の中の一つの構成要素、しかも絶対に欠くことのできない要素だと。

 だから、自分という個人には、宇宙の摂理の中でまかせられたある「使命」があるはずだと。だから、その使命を果たすことこそ、自分の生きる道だと考えればいい。

 そういう、自分を越えたもの、すなわち、「トランスパーソナル」なものに、自分の存在意義を委せるという視点。これが、トランスパーソナル心理学が、我々に提示しようとしているもの、らしいんです。諸富さんの言葉を直接引用するならば、「私たちの人生に働いている、私たち自身の意図を越えた力を自覚的に生きる」(191頁)ということ。

 また別な言い方をすれば、「私」が生きているのではなく、「いのちの働き」が先にあって、それがたまたま今は「私」の身体を通じて顕現しているのであって、そのことに気づくことこそ、今生の悩みから脱却する道であると。



 トランスパーソナル心理学もそうだし、チクセントミハイの唱導する「フロー」概念とかも完全に自己啓発。だって、「フロー」に乗った生き方をすれば、シンクロニシティの能力を高めることができるので、例えば会社を首になったその日に、別な会社からヘッドハントされるというようなことも頻繁に起るようになる、みたいなことを言っているらしいのですけど、これなんか、まさに自己啓発思想で言うところの「引き寄せの法則」とまるで変わらないじゃん? しかもフローでは、「クリントン大統領もフローを使っているらしい」的な言説を弄ぶらしいのですが、そういう実在の人物をいい加減な形で引き合いに出すあたりも、自己啓発そっくり。

 ま、とにかく、どうやらトランスパーソナル心理学ってのは、かなり明確に自己啓発系なんだ、ってことが分かったことが、私にとっては第一の収穫というか。

 その他、この本を読んで、アメリカでは特定の宗教を離れる人が多く、そういう人たちは、かといって唯物的に生きているわけでもなく、スピリチュアルに依存する傾向にあること、そしてその「スピリチュアル・レヴォリューション」は3つの波を経て進化していくのだけど、その第1の波が1960年代の「ヒューマン・ポテンシャル・ムーヴメント」(アブラハム・マズローとか、エサレン研究所とかが関係してくる)、第2の波が1980年代の「ニューエイジ・ムーヴメント」(チャネリングとかヒーリングとか、シャーリー・マクレーンが関係してくる)、そして第3の波が1990年代の「魂ブーム」(トーマス・ムーアとかジェイムズ・ヒルマンあたりが立役者)だったのだけど、このいずれのレベルにおいても、トランスパーソナル心理学が、その最も信頼できるバックボーンとして存在していたということ、なんてことも教わりました。

 あとね、トランスパーソナル心理学は、人間性心理学を母体として生まれるのだけど、そもそもその人間性心理学を生み出したアブラハム・マズローがどうやって、そういう方向に向ったか、なんてことも教わりました。それによると、従来の心理学が、精神に異常を来した人の研究を出発点にしているのに対し、マズローは、そうじゃなくて、むしろ自己実現をした幸福な人の精神状況ってのはどうなんだ?という、幸福の研究からスタートしたと。そしてその結果、自己実現をする人間に共通する特質というのは見えてきたのだけれど、マズローはそれだけで満足できず、そういう自己実現を既にしてしまった人がさらなる人間的成長を求めていったら、どこへ行き着くんだ?という疑問を抱いてさらに探求を続け、そうして個々人の枠を超えたところに自己の存在意義を求める心理学、すなわちトランスパーソナル心理学に行き着いたということ。また、そういうマズローの到達点から振り返ってみると、彼がLSDなどを使って志高体験を得させることを目指したエサレン研究所と関わったことの意味も分かってくるし、ウィリアム・ジェイムズあたりが、マズロー以前に「トランスパーソナル」とよく似た概念のことを言っているよね、的なことも分かってくると。

 さらにトランスパーソナル心理学の一番の大物は、ケン・ウィルバーと言う人だということ、日本でも話題になった『葉っぱのフレディ』なんて絵本は、このトランスパーソナル心理学の主概念を非常によく体現しているモノであると言うこと、さらに、トランスパーソナル心理学と隣接する様々なカウンセリングの手法(例えばフォーカシングとか、プロセス指向とか、ワールドワークとか、ハコミセラピーとか、そういう奴)も、その概要だけは何となく理解できましたかね。

 ってなわけで、この本、新書判の簡単に読めるものではあるのですが、結構な収穫はあったかな。

 ちなみに本書の著者である諸富さんという人、私と同い年のようですが、アマゾンとかで見るとめちゃめちゃ著書が多い。こういう系の心理学の畑の人って、特に諸富さんみたいにカウンセリングをする人ともなると、書こうと思えばいくらでも書けるみたいね。まあ、宇宙がらみの使命感をもって自己実現しちゃっているから当然か・・・。

 とにかく、私としては非常に勉強になりました。自己啓発について勉強している人は、読んでおいて損はないかもよ。

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Last updated  August 24, 2016 01:48:27 AM
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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