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January 20, 2017
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カテゴリ: 思わず納得!
 今、成績審査のため、先日提出された卒論を読んでいるのですけど、私の担当分の中に「太陽族」についての卒論がありまして。

 太陽族? ・・・って、まさか石原慎太郎の『太陽の季節』に影響された昔の若者の話?

 まさかと思ったら、そのまさかでした。

 なんで今更、と思いながら読んでいたのですけど、当然のことながら芥川賞を受賞した『太陽の季節』の話が出てくる。それで少し気になってウィキペディアなんかをチラ見しながら読んでいたんですけど、『太陽の季節』に関するウィキペディアの記述を見ていると、当時、芥川賞の選考に当たった大先生方のこの作品に対するコメントが載っていて、これがまた面白いんだ。以下、テキトーに引用しますと:


<賛成派>

伊藤整:「いやらしいもの、ばかばかしいもの、好きになれないものでありながら、それを読ませる力を持っている人は、後にのびる」

武田泰淳:「彼は小説家より大実業家になるかも知れない」

舟橋聖一:「この作品が私をとらえたのは、達者だとか手法が映画的だとかいうことではなくて、一番純粋な〈快楽〉と、素直に真っ正面から取り組んでいる点だった。彼の描く〈快楽〉は、戦後の〈無頼〉とは、異質のものだ」

井上靖:「その力倆と新鮮なみずみずしさに於て抜群だと思った。問題になるものを沢山含みながら、やはりその達者さと新鮮さには眼を瞑ることはできないといった作品であった」




滝井孝作:「小説の構成組立に、たくみすぎ、ひねりすぎの所もあるが、若々しい情熱には、惹かれるものがあった。これはしかし読後、“わるふざけ”というような、感じのわるいものがあったが、二月号の『文學界』の『奪われぬもの』というスポーツ小説は、少し筆は弱いけれど、まともに描いた小説で、これならまあよかろうと思った」

中村光夫:「未成品といえば一番ひどい未成品ですが、未完成がそのまま未知の生命力の激しさを感じさせる点で異彩を放っています。常識から云えば、この文脈もところどころ怪しい。〈丁度〉を〈調度〉と書くような学生に芥川賞をあたえることは、少なくも考えものでしょう。石原氏への授賞に賛成しながら、僕はなにかとりかえしのつかぬむごいことをしてしまったような、うしろめたさを一瞬感じました」

川端康成:「私は『太陽の季節』を推す選者に追随したし、このほかに推したい作品もなかった。第一に私は石原氏のような思い切り若い才能を推賞することが大好きである」


<反対派>

吉田健一:「体格は立派だが頭は痴呆の青年の生態を胸くそが悪くなるほど克明に描写した作品。ハード・ボイルド小説の下地がこの作品にはある。その方を伸ばして行けば、『オール讀物』新人杯位まで行くことは先づ請け合へると思ふ」

平野謙:「私などの老書生にはこういう世界を批評する資格がない」

丹羽文雄:「若さと新しさがあるというので、授賞となったが、若さと新しさに安心して、手放しで持ちあげるわけにはいかなかった。才能は十分にあるが、同時に欠点もとり上げなければ、無責任な気がする。プラス・マイナスで、結局推す気にはなれなかった。私には何となくこの作品の手の内が判るような気がする」

佐藤春夫:「反倫理的なのは必ずも排撃はしないが、こういう風俗小説一般を文芸として最も低級なものと見ている上、この作者の鋭敏げな時代感覚もジャナリストや興行者の域を出ず、決して文学者のものではないと思ったし、またこの作品から作者の美的節度の欠如を見て最も嫌悪を禁じ得なかった。これでもかこれでもかと厚かましく押しつけ説き立てる作者の態度を卑しいと思ったものである。そうして僕は芸術にあっては巧拙よりも作品の品格の高下を重大視している。僕にとって何の取柄もない『太陽の季節』を人々が当選させるという多数決に対して、僕にはそれに反対する多くの理由はあってもこれを阻止する権限も能力もない。僕はまたしても小谷剛を世に送るのかとその経過を傍観しながらも、これに感心したとあっては恥しいから僕は選者でもこの当選には連帯責任は負わないよと念を押し宣言して置いた」

宇野浩二:「読みつづけてゆくうちに、私の気もちは、しだいに、索然として来た、味気なくなって来た。仮に新奇な作品としても、しいて意地わるく云えば、一種の下らぬ通俗小説であり、又、作者が、あたかも時代に(あるいはジャナリズム)に迎合するように、(中略)〈拳闘〉を取り入れたり、ほしいままな〈性〉の遊戯を出来るだけ淫猥に露骨に、(中略)書きあらわしたり、しているからである」


 ま、ざっとこんな感じ。

 もちろん、これらの『太陽の季節』評で正しいことを述べているのは「反対派」の諸氏なんだけれども(爆!)、実は「賛成派」の人たちも、「消極的賛成派」の人たちも、ある意味、正しいことを述べているよね。正しいことというとちょっとおかしいけれど、間違いなく、それぞれ「らしいこと」を言っている。平野謙の「私などの老書生にはこういう世界を批評する資格がない」というのも面白いし、川端康成の「私は石原氏のような思い切り若い才能を推賞することが大好きである」なんてのも、バカっぽくて面白い。



 さてさて、昨日、今季の芥川賞が決まったようですけれども、誰がどんな思いで選んだのでしょうかね・・・。





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Last updated  January 20, 2017 09:55:55 PM
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