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January 26, 2017
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カテゴリ: 教授の読書日記
 ティク・ナット・ハンの『〈気づき〉の奇跡』という本を読みましたので、心覚えをつけておきましょう。

 ティクさんというのは、ベトナム人の僧侶なんですが、ベトナム戦争当時に国外追放になり、フランスに逃げて、そこで「engaged Buddhist」(社会参画する仏教徒)として活動をした人。同じような境遇のダライ・ラマと同じように、今もなお世界的に影響力のある仏教指導者ですな。

 で、私としてはもちろん、今、自己啓発の一つの流派ともなっている「マインドフルネス」の一つの原点として読んだわけですけれども、なかなか面白かったです。

 で、この本読んでいると、やっぱり「瞑想」の重要性というのが説かれるわけですけれども、瞑想の入口は、これもやっぱり「呼吸」なんですな。人間、生きている限り呼吸はするわけですけれども、普段は何気なく呼吸しているわけで、それによって生かされているにもかかわらず、ろくに注意もしていない。

 だから、そういう無意識の呼吸ではなくて、息を吸う時は「今、自分は息を吸っているな」と気づきながら吸う。息を吐く時は「今、自分は息を吐いているな」と気づきながら吐く。そうやって、呼吸そのものに意識を持って行って、長く深い呼吸をする。これが、結局、瞑想の入口だと。

 で、その他の行為も同じ。例えば皿を洗うにしたって、普段、我々は面倒臭いなと思って皿を洗っているので、その時の意識は皿を洗うことには置いていない。「早くこれ済ませて、あれをやらなきゃ、これをやらなきゃ」って思いながら洗っているわけですよ。

 しかし、それでは、その人は、皿を洗っている「今、この時」を生きていない。

 それでいて、皿を洗い終わってから、次にやる作業を心を籠めてするかというと、そうでもない。明日朝早いから、早くお風呂入らなきゃ、ってなことになって、風呂に入っている今を十全に楽しむこともない。



 ティクさんは、「今、ここ」以外、人が生きる場所などないと言います。だから、今、やっていることを誠心誠意、真心込めてやりなさいと。

 皿を洗うのであれば、今洗っているのは、皿ではなく、生れたばかりのお釈迦様、あるいは生れたばかりのイエス様だと思って、これ以上大切なことはないと思いながら、一心に洗えと。洗うことを楽しめと。「今、ここ」を生きろと。それが、瞑想なんだよと。

 だから、瞑想というのは、特別なことではなくて、一日24時間、すべてが瞑想のチャンスだと。


 なるほどね。確かに、そうやってあらゆることを心を籠めてやりながら生きたら、人生って、ひょっとしてとてつもなく濃いものになるのかもね。


 それから、もう一つこの本を読んでいて感銘を受けたのは、「あるものと、それ以外のものの関係」という話。

 例えば一つのテーブルがあるとするでしょ。テーブルは、他のものから独立して、一つのテーブルであるように見える。すなわち、そのテーブルと、そのテーブル以外のもので、世界は構成されているように見える。

 だけど、そのテーブルが出来るまでのことを考えてみる。

 材料は木だとして、その木を植えた人がいる。その木を切った人がいる。それを製材した人がいる。材木を工場に運んだ人がいる。

 一方、テーブルを組み立てるのに使う釘のことを考えてみれば、その釘の材料たる鉄を含んだ鉄鉱石を掘った人がいる。鉄鉱石を製錬した人がいる。それで釘を作った人がいる。その釘を工場に運んだ人がいる。

 そうやってテーブルを作った人がいる。出来たテーブルをお店に運んだ人がいる。家具屋さんの店員がいる。



 さらに、テーブルの材料の木を育てるには、太陽が必要で、土が必要で、水が必要で・・・

 お母さんたちが生きるためには、食べ物が必要で、その食べ物を作る人がいて、運ぶ人がいて、調理する人がいて、売る人がいて・・・

 そう考えて行くと、一つのテーブルは、テーブル以外のあらゆるものと関わっているわけですな。その意味で、テーブルとテーブル以外のものは分断できない。テーブルは、テーブル以外のものが存在しなければ存在しないわけです。

 その理を飲み込めば、自分と宇宙というのが一つであることが理解されると。





 ま、そんな感じで、この本を読んでいると、色々、腑に落ちることが多いです。


 でも、そういうこともさることながら、私が非常に感銘を受けたのは、この本の後ろの方にある、ジェイムズ・フォレストという人が書いているティク・ナット・ハンの思い出エピソードでございます。

 それによると、ベトナム戦争当時、ティクさんがアメリカで反戦運動のアピールのための講演会みたいなことをやっていたというのですな。

 しかし、アメリカ人の中には理解のない人もいて、平和を訴えるティクさんに対して、「そんなに自分の国が心配なら、さっさとベトナムに帰って、怪我した人でも介抱したらどうなんだ」というような趣旨の暴言を吐きかけたというのです。

 その時、しばらく沈黙していたティクさんは、穏やかに、慈悲深く、「木に水をやるのに、葉っぱに水を掛ける人はいない。水をやるなら木の根っこにやるでしょう? 今、争いの根っこはアメリカにある。だから私はアメリカに来て、お話をしているのです」と、そう語った。そのティクさんの静かな返答で、会場の雰囲気は一変したそうですが、しかし、ティクさんはその後、少し話を切り上げて会場の外へ出てしまった。

 で、フォレストさんがティクさんを追いかけて外に出てみたら、そこでティクさんが道端で苦しそうに喘いでいたというのです。そして、こう言った。「あの人の発言はひとく自分を傷つけた。もう少しで怒りが爆発しそうになった。ゆっくりと深い呼吸に戻り、心を落ち着けて、相手への理解を示す方法を探したが、あまりにもゆっくりと深く息をし過ぎて息苦しくなってしまった」と。

 うーーん。素晴らしい。ティクさんは、呼吸を意識することで心の平和を取り戻そうとし、懸命に自分と闘ったわけですよ。瞑想ということを、本当にご自身の波乱万丈の日々の生活の中に取り入れて、自分も相手も、より良く生きられるように努力しているわけですな。

 時に、道端で喘ぐような人の話だからこそ、謹聴する価値があるってもんじゃないのかい?

 基本的に自己啓発思想というのは、アメリカとイギリス、それに日本でしか根付かないものなんですけれども、マインドフルネスだけはフランスでも結構人気がある。その理由が今まで分らなかったのですけれども、アレだね、多分、マインドフルネスの総本山のティク・ナット・ハンがフランスで活動していたからだね。

 というわけで、私には色々と勉強になる本でありました。教授のおすすめ!と言っておきましょうかね。







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Last updated  January 27, 2017 02:11:59 AM
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ゆりんいたりあ @ Re:スペイン優勝、そして早くもW杯ロス(07/20) 釈迦楽さん、 ご無沙汰しております。 お…
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