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April 7, 2021
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カテゴリ: 教授の読書日記
先日、家の近くで一昔前の新書版ベストセラー、即ち『人は見た目が9割』『バカの壁』『生物と無生物のあいだ』をそれぞれ110円でゲットし、前2冊については既に感想もブログに記したのですけれども、ついに3冊目の『生物と無生物のあいだ』も読んじゃった。

 で、読む前には、これは書下ろしの新書で、生物学者の福岡さんが、何か啓蒙的な意図をもって何等かの生命現象なり、新しい発見なりを解説している本なのかと思っていたのよ。でも、読んでみたら全然違いました。そもそもこの本は、講談社の販促雑誌である『本』に長期連載されていた生物学エッセイをまとめたものなんですな。だから、何か一つの意図をもって一直線に何かを解説しているというのではなく、福岡さんが生物学の最前線で仕事をしてきた、その仕事の内容やそれにまつわるエピソード、時にはその背景となる歴史的経緯などを、素人にも分かるように面白く語った随筆なわけ。その意味では、別に新書の体裁をしている必要はなく、むしろ単行本として出版されていてもいいくらい。

 それはともかく・・・

 先日読んだ『バカの壁』があまりにもレベルの低い内容であったのとは打って変わって、福岡さんの『生物と無生物のあいだ』は、名著でした。

 科学者の中にも文学的センスのある人はいて、例えば日本だと古くは寺田寅彦とか、その弟子の中谷宇吉郎とか、最近だと『春の数え方』を書いた日高敏隆さんとか、美しい随筆を書く人がいるわけですけど、この福岡伸一という人も明らかにその系譜。文章が美しい! 

 文章が美しいということは、世界をそれだけ深く観ているということでもあり、だからより一層、優れた科学者だということになるのだろうと思うのですが、福岡さんの筆にかかると、ロックフェラー研究所の静かな廊下も、ニューヨークの街の喧騒も、ボストンの静謐も、千葉の新興ベッドタウンの身替りの速さも、それぞれの趣の違いこそあれ、まざまざと、それこそ読者の目や耳や鼻に情景や音や匂いまで伝わってくるほどに、描き分けられてしまう。見事の一言。この人は文才あるわ~。

 で、そのおそるべき文才を縦横に使いながら、なぜ人は生物と無生物を瞬時に見分けるのか、という大きな問いへの答えを福岡さんなりに探っていく、そのうねうねとした道筋が描かれていく。その途上には、同じ問いへの答えをさぐらんとして奮闘した過去の科学者たちそれぞれの生き方も描かれ、あるいはまた科学の最前線でライバルよりも一足先に答えを出そうと日夜研究を続ける緊迫の実験競争の描写もあり、そしてまた生物や細胞の世にも不思議な生態の解説もありといった具合で、読者をまったく飽きさせない。

 で、最後の方で、とある実験が期待された成果が出ずに終わるのだけど、その失敗した実験によって、むしろ生命の驚くべきあり方に触れる、というところがあって、そこはちょっと感動的だったりもする。

 いやあ。これはちょっとビックリするほど面白い本でした。これは売れてしかるべきというか、大いに読まれるべき本でございます。科学者を目指す中学生くらいが読んでもいいし、科学とは無縁の文系の読書好きが読んでも絶対に面白い。この本のレベルを10とすると、『人は見た目が9割』はレベル2、『バカの壁』はマイナス30、っていう感じでございます。もちろん、教授のおすすめ!よ!



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【中古】生物と無生物のあいだ /講談社/福岡伸一(新書) ​​





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Last updated  April 7, 2021 03:57:59 PM
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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