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May 30, 2021
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カテゴリ: 教授の読書日記
昨日に引き続き、高橋和夫著『スウェーデンボルグの思想』の私的まとめをしていきます。

 さて、人間が霊界に行くとどうなるか、っつー辺りの続きなんですが、前回も言及したように、霊界では心の内部が直接、外部に流れ出て、そこに独自の環境を現出させてしまうと。で、それは取りも直さず、霊界では心の意図を隠せない、ということを意味するんですな。自然界だと、悪意があっても、良い行動によってそれを隠すことはできますが、霊界ではそれができない。意図と行動が一致してしまう世界なわけ。

 そこで、霊界に入った新参の霊は、少しずつ自分の本性を現わしてしまうことになる。

 じゃあ、人間の本性ってのはどうして決まるかと言うと、一番優勢な「愛」が何か、によると。

 スウェーデンボルグによれば、愛は四つに大別されるのだそうで、一番上が「神への愛」、以下、高級な方から順に「隣人愛」、「世俗愛」、「自己愛」がある。神を信じて神の戒めを守り、隣人愛を実践するのが神への愛であり、広く社会や国家、さらには人類に向けられた愛が隣人愛、富・名誉・地位への執着が世俗愛、そしてエゴイズムが自己愛であると。(110)

 で、自然界では表面的な善によって、どの愛が優勢かを隠せるわけですが、それが霊界に行くと、「剥奪」というプロセスによって化けの皮がはがれまして、本当の性格があらわになり、それにしたがって、霊界の中で一番居心地のいい場所に移動することになる。

 かくして剥奪によって優勢となった愛に突き動かされて、善人は天界へ、悪人は地獄へ向かうのですが、ここで重要なのは、それを誰か絶対者・審判者が決めるわけではなく、自分の自由意志でそれぞれ自分の居場所に向かう、ということですな。ただし、天界といい、地獄といっても、それは場所を指すのではなく、状態を指すのであるので、天界とか地獄のある場所があるわけではありません。善人や悪人は、それぞれそういう状態を自分の周囲に現出させてしまう、ということですな。

 で、天界に行った人達が、要するに天使なわけで、別に羽根が生えるわけではなく、普通の人間の形をし、そこで互いに相互扶助的にそれぞれ職業を持って生活している。天使といえども、時にエゴが顔を出し、憂鬱な状態に陥ることもあるが、たえざる努力による精神的向上があり、想像を絶する美に満ちた世界なんですと。ちなみに、天界に生きる天使たちは、一個の人体における個々の機能のように、別々であっても相互に関連し、助け合いながら天界を動かしていのだそうで。もちろん、彼らは同一言語を話すので、意志疎通もバッチリ!



 そこ、行きてぇ~! っていうか、ワタクシは絶対そこに行けると思う。自信ある。やった~。

 一方、ワタクシが行きそうもない地獄の方ですが、別にサタンがいるわけでも鬼がいるわけでもない。そりゃ、地獄に行く連中は、そこが自分たちにあっている、そこにいると居心地がいいと思っているからそっちに自主的に行っているわけですから、一応、彼らなりに楽しい世界らしい。ただ、そこにいる全員が、エゴイストで、自分さえよければいいと思っている連中で、そういう連中が社会を構成しているわけだから、やっぱり結果的には阿鼻叫喚の世界になってしまう。だから、傍から見たら、まさに地獄絵図になるみたいです。

 ちなみに自然界には、天界や地獄からの影響、すなわち「流入」が絶えず行われていて、自然界が地獄からの流入で悪人ばかりにならないように、天界も頑張っているらしい。ただ、天界からの流入は、自然界の個々の人間に刻印された善(進行・真理・仁愛など)に働きかけるので、そういうモノを持っていない人には、天界といえども、影響を与えることはできない。ただし、そういう悪人相手の場合でも「外なる拘束」をかけることはできる。つまり、外面を気にして、とか、名声を失うのを恐れて、とか、そういうよからぬ理由であれ、人間が善く生きられるように拘束をかけることは出来ると。

 なるほど! 本当は悪いことをしたいんだけど、人の目があるからそれをしないというのは、あれは悪人に対して天界が働きかけていたのか!

 ちなみに、受胎によって両親から枝分かれした新たな人間の霊魂は、一旦生まれると不滅であり、死後も生き続けるのだけれど、一度霊となった人間が自然界に逆戻りすることはないので、いわゆる「生まれ変わり」とか、「輪廻転生」と言う現象は存在しないんだそうで。ただ、何百年、何千年と生きている例が、何かの理由で自然界の人間の記憶に自分の記憶を送り込むということはあるので、前世の記憶を持つ人がいるというのは、それに起因するんですと。

 とまあ、ここまで述べてきたのが、スウェーデンボルグによるあの世の仕組みね。

 さて、それでは神学者となったスウェーデンボルグが一体何をしたか、っつー話の続きになるんですけど、前回も述べたように、彼は聖書研究をしたんですな。

 で、スウェーデンボルグは、聖書を「聖言」とそうでないものを厳密に区別します。

 「聖言」というのは、純粋な「照応」によって書かれた神的な宗教文書。つまりほんまもんであります。特に創世記の第十一章までは、原聖書と言うべき、最も古い啓示的文章としてスウェーデンボルグは重視するんですな。

 で、旧約聖書の中で聖言でないのは、「歴代誌」「エステル記」「ネヘミヤ記」それに「箴言」。一方、新約聖書の中で聖言と言えるのは、四福音書と黙示録だけで、あとは全部聖言とは言いかねる。

 で、聖言で書かれた文書は、純粋な照応で書かれており、字面の意味や歴史的意味の奥に、内的で霊的な意味が必ずある。



 創世記冒頭で、「神は天と地を作った」と書いてある。字面だけ読むとそういうことになるわけですが、はい、実は全然違いまーす。

 スウェーデンボルグによると、ここでいう「天」とは、「内的な人間」もしくは「霊的な心」を指し、「地」とは、「外なる人間・自然的な心」という意味に他ならない。内なる人間というのは、人間が先天的に持ってはいるけれども意識はされない宗教性のことですな。一方の外なる人間とは、霊性を欠く、粗野な自然状態の人間のこと。つまり、スウェーデンボルグによれば、人は人として生まれるのではなく、最初はダメダメだけど、段々、霊性を獲得して、ちゃんとした人間になっていく、そういうプロセスを踏む存在だ、と聖言が言っている、と、捉えているわけ。

 で、外なる人間は自己愛や世俗愛に満ちたダメダメな奴なので、それを聖言は、「地には形なく、むなしく、闇が淵のおもてにあった」と描写すると。

 で、第三節で聖言が「神は『光あれ』と言われた。すると光があった」と述べている、その「光」が照応(不連続な近接)によって表しているのは「知性・内なる照示・無意識の意識化」などであり、よって「光があった」というのは、つまり人間の内部に隠れていた霊性や宗教性が自覚され、この自覚が自己中心性や世俗性を後退させる、という意味であると。これによって、虚無の中にいた外なる人間に、救いの手が差し伸べられたというわけ。

 さて創造の二日目。「天によって水が上下に分けられた」ってなことが書いてあるわけですが、ここでいう「水」とは、「理解力・知性・知識」のことであり、「天」とは「合理的なるもの」を指すんですと。前回ちらっと書いたように、合理的なものは、自然的なものと霊的なものの中間にある啓発的側面であるわけですが、先程の光に照らされたことによって、合理性が活性化され、低次な自己と高次な自己を区別できるようになったと、まあ、そういうことが書いてあると。



 四日目。「大きい光と小さい光と星を作った」とあるわけですが、このうち「大きな光」というのは、内なる宇宙に輝く太陽、すなわち「愛」ですな。これによって人は、内なる愛に覚醒することになる。なお「小さい光」は「信仰」を、また「星」とは、宗教的知識全般を指すのだそうで。

 五日目。「水や地に住む生き物と鳥を作った」とあるのは、三日目に作られた青草よりもっとパワフルなものが目覚めたということ。魚は低次の自我に浸透してきた宗教的情愛を、爬虫類は感覚的思考を、鳥は知性を、それぞれ表すらしい。この時点で、外なる人間が生動的な生命を帯び始めた、ということですな。

 さて、六日目ですが、ここでいよいよ人間が登場する。これはつまり、照応的に言えば、人がようやく信仰や、さらには愛から真理を語り善を成す状態を指すんですと。つまり、ここにおいて霊的な人間が完成すると。なお、ここで男と女が登場しますが、「男」は理解力のこと、女とは「意志」のことを表すのだそうで、意志と理解力(または自由と合理性)は、スウェーデンボルグによると、人間の心の本質的な構成要素なんだとか。男と女が揃うこと、つまり、知的でかつ情緒的であることが完全な、霊的な人間であると。

 つまり創世記とは、自然的な人間から霊的な人間に至る漸次的再創造のプロセスを、実は、表していたと。これって、実は進化論なわけですよ。スウェーデンボルグはダーウィンに遥かに先立って、進化論を論じていたと。

 ま、とにかく、こんな具合に、スウェーデンボルグは聖書を読み直していくわけね。そして、聖書の本当の意味はこうなんだよと、世の人々に教えたわけよ。

 で、こんな具合に聖書の正しい読み方を提示しつつ、スウェーデンボルグは、聖書を誤ったやり方で読んできたことによって生じたキリスト教の弊害を断罪していくわけ。これがまた面白いんだけど、今日も大分長くなってしまったので、この続きはまた明日、ということにいたしましょう。





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Last updated  May 30, 2021 05:20:08 PM
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ゆりんいたりあ @ Re:スペイン優勝、そして早くもW杯ロス(07/20) 釈迦楽さん、 ご無沙汰しております。 お…
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