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June 19, 2021
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カテゴリ: 教授の読書日記
このところ続けざまに読んでいるポール・アダムの「ヴァイオリン職人シリーズ」第三弾、『ヴァイオリン職人と消えた北欧楽器』を読了しましたので、心覚えを漬けておきましょう。以下、ネタバレ注意ということで。

 これまでのこのシリーズ同様、本作で事件解決に走り回るのはヴァイオリン職人のジャンニと、その年少の友人にしてクレモナ警察の警察官グァスタフェステ。で、今回の事件は、二人の故郷にして世界中のヴァイオリン職人の聖地たるイタリアのクレモナに、北欧から若く有望なヴァイオリン職人のリカルドがやってくるところから始まります。

 実はリカルドは20年ほど前学生時代、クレモナのヴァイオリン製作学校でジャンニに教えを受けた教え子なんですな。学生時代のリカルドは北欧美男子の特権を活かした女たらしで、常に何人もの女性をとっかえひっかえしていたのですが、職人としての腕はなかなかのもので、卒業後は故郷のノルウェーはベルゲンという町に帰り、その地で職人として頭角を現しつつあった。

 で、今回、活躍中の職人ということで、リカルドは母校から招聘を受け、久しぶりにイタリア・クレモナにやってきて、そこで講演をすることになったんですな。もちろん、ジャンニは(前二作で付き合いの深まった)マルゲリータとジャンニと共にこの講演を聴きにいくことにする。

 講演でリカルドが取り上げたのは、ヴァイオリンによく似た北欧楽器の「ハルダンゲル・フィドル」についてのものだった。ノルウェーのお祭りなどで使われる民族楽器で、ヴァイオリンの名器のように高値で取引されることはないけれど、象嵌を施した装飾的なその楽器は、見ようによっては面白みのあるところがある。特にリカルドがわざわざノルウェーから持ってきた彼の愛用のハルダンゲル・フィドルは、ネックのところに愛らしい女性の頭が装飾として彫られていて、なかなか興味深いものではあった。しかも、フィドルの中にロケットを収める空洞があり、そのロケットには、ブロンドの髪がひと房入っている。何か曰くありげなものなんですな。とはいえ、リカルドはこのフィドルを入手はしたものの、その来歴を知らず、自分でもネットで調べているところ、とのこと。

 ところが、その講演のあった夜、リカルドは殺され、彼のフィドルが盗まれたことが判明する。

 そして事情を知る者として、高級ヴァイオリン・ディーラーで、リカルドの同国人であるイングヴァル・オーンダールが疑われるのですが、彼は市場がなく、ディーラーとしてはまったく旨味のないハルダンゲル・フィドルなど、自分が手を出すはずもないし、ましてや人を殺害してまで手に入れたいものではないと疑惑を否定、しかも十分なアリバイもあることが判明する。

 しかし、そのオーンダールも、帰国後、ノルウェーで何者かに殺害されてしまう。

 高級ヴァイオリン市場の観点から見るとほとんど無価値とすら言える民族楽器ハルダンゲル・フィドルにかかわった人物が次々と殺されるこの事件、一体、犯人は誰なのか、またその殺害の理由や動機は??? 殺されたリカルドの元先生であったジャンニは、リカルドの恨みを晴らせるのか??? ジャンニとマルゲリータ、そしてグァスタフェステは、事件の真相を探るため、太陽の国イタリアから、雨と寒さのノルウェーへと飛ぶ!



 まあ、今回もヴァイオリンがらみの話ですが、作者のポール・アダムは相変わらずその辺、よく調べていて、読んでいてそっち関係のことに詳しくなれます。今回は主たる舞台がノルウェーということで、ノルウェーの国民的作曲家グリーグとか、同じくノルウェーが生んだ天才ヴァイオリニスト、オーレ・ブルのことが、事件の進展とともに詳しく語られている。特にオーレ・ブルは、自身、美貌の人たらしであり、彼に泣かされた女性も多く、また彼の夢のような計画に騙されて被害にあった人々の数も少なくない。そんなオーレ・ブルの姿が、現代の女たらしのリカルドと重ねあわされていくところが、まあ、作者の腕の見せ所でありまして。

 また、本作で主人公のジャンニとマルゲリータの関係がいよいよ深まってきた(とはいえ、二人はともに60代ですから、若い恋人同士のような性急さはないのですが)ことに加え、前二作では女っ気のなかったグァスタフェステが、殺されたリカルドの妹であるアイナとちょっといい関係になりそうになるというところが見どころの一つで、果たしてこの二人はこの先、どうなるんだろうというのも、シリーズ物の読者としては気になるところ。

 ま、相変わらず面白い推理モノでした。

 だけど・・・ポール・アダムの作品を三冊立て続けに読んだため、彼の書くパターンが大分見通せる感じになってきて、ちょっと飽きてきたかな、というところもあるかな・・・。とはいえ、水準には達しているので、興味のある方はぜひ。でも、どうせ読むなら、最初の作品から順に読んだ方が面白いですよ。


これこれ!
 ↓

ヴァイオリン職人と消えた北欧楽器 (創元推理文庫) [ ポール・アダム ]





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Last updated  June 19, 2021 03:46:59 PM
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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