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October 24, 2021
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カテゴリ: 教授の読書日記
竹田誠二という人の書いた『テイヤール・ド・シャルダン』という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう・・・と言いたかったのですが、残念ながら、これはそういうレベルの本ではありませんでした・・・。

 テイヤール・ド・シャルダンってのは、フランスのイエズス会士で、かつ考古学者であり、北京原人の発見者の一人(ウィキペディア)であり、ゆえに進化論者なんですな。実際、進化論者のジュリアン・ハクスリー(オルダス・ハクスリーの兄ちゃんであり、「ダーウィンの番犬」と呼ばれたトマス・ヘンリー・ハクスリーの孫)の友達だったそうだし。

 はい。この時点で面白い人物であるわけですよ。だってイエズス会士でありながら進化論者って・・・。聖書によれば、神は天地創造の時点で完璧な人間を創ったんじゃなかったの? 聖書を信じるなら、進化論はありえないし、進化論を信じるなら、神による天地創造はありえない。なのにその両方の信者であるって、どゆこと?

 ま、そのこと自体、超興味深いのですが、私としてはテイヤール・ド・シャルダンという人が「神秘主義的進化論」を奉じていたという点に関心があるんですな。と言うのも、「人間を含む宇宙は、神という収束点(彼自身の言葉を使うならば「オメガ点」)に向って進化している」という考え方って、アメリカ1970年代のニューエイジ進化論に近いものがあって、それがこの時代のアメリカ文化の中に彼の名が意外に浸透していることの理由なんじゃないか・・・なんてことを推測しているから。

 で、その謎を解くにはテイヤール自身が書いた『現象としての人間』を読めばいいんだろうし、そうするつもりではあるんだけど、その前に軽く予備知識を仕入れておこうと思ってこの本を読んじゃったのが運の尽きだった、っていう。

 そもそも本書の著者の竹田氏は、テイヤール・ド・シャルダンの研究者じゃない。東京農大(国立の東京農工大じゃないよ)を出た高校の生物の先生か何かで、いかなる意味であれ、著名な神学者/思想家の生涯を語る資格がない。

 でまた、小学生相手におとぎ話でもするのかというような書き出しから始まって、段々混迷を増し、ほとんど意味をなさない文章を羅列し出すありさまで、この人に本を書く能力がないということは火を見るより明らかなのね。

 例えば、本書に並べられた次のような文章から、読者は一体、どのような意味を汲み取ればいいというのでしょうか?:


〇そして数年後、カモシカの歯の裏に付着した一個の人間の歯が、中国に渡ったテイヤールによって発見されました。そのような関係で、ヨーロッパ各地の旧石器遺跡を広く調査していたテイヤールを、中国に招いたのです。



〇総合に向かう宇宙の形成は、盲目的なエネルギーの発展ではなく、複雑化と同時に起こる意識化を通じて、人格的なものに向かい、より人格的な完成を目指すものです。その潮流自体が達成されるのは、単に生命的なものにとどまらず、ある熱烈な信仰という熱エネルギーがどうしても必要となります。

〇創造と受肉の普遍性について、古生物学者としての東洋を経験したテイヤールは、西欧文化の中にあるダイナミズムのみが、究極的に想像と受肉によって、再臨に向かう前進を通しての超越と考えていました。キリスト教が、明日の宗教に変貌するために、このダイナミズムの根源を、よく見るように繰り返し強調しています。

〇人間の信仰をキリスト教化することは、宇宙の収斂する特性を明るみにすることです。このことは、テイヤールの「神の場」について、最も大きな啓示でした。このテイヤールの考えは、極めて独創的な仕事を問題にしていました。

〇神は、自己の存在を主張することによってこそ、三位一体の形で、自己に対して、相互的関係を持っています。自己中心でなく、自己の正反対の地点に、各種の対立を出現させないというのには、何の価値もないけれども、このものの結合作用を受容されるという潜在的な性質によって、存在の可能性があり、多数性多様性とについてのビジョンこそ、根本的なビジョンであるといいます。


 まあ、武士の情けでこれ以上は止めておきますが、上に挙げたような感じの、日本語ではないし、意味もなさない文章の羅列にどこまで耐えられるか、というのが、この本を読む読者に突きつけられたチャレンジなのであります。

 でまた、誤字・誤記を指摘し始めたらきりがなく、誤解の類も果てしがない。例えば、アメリカのグランドキャニオンのことを「ユダ州東部」などと書いていますが、「アリゾナ州北部」の誤りね。そもそも「ユダ州」なんて州はアメリカにはないし。イエス様にもゆかりの深い「ガリラヤ」なんて地名も、「ガラリヤ」なんて書いてある。人名もすごくて「オッペン・ハイマー」なんて書いてあるけど、これはひょっとして「ロバート・オッペンハイマー」のことなのか?? 

 構成もひどくて、全体でわずか170頁しかない小冊子であるにもかかわらず、「テイヤールがどこそこで生まれました」というバースデー・ストーリーが「7頁」と「138頁」と「152頁」の3回出てくる。つまり170頁の小冊子の中に、テイヤール・ド・シャルダンの伝記が3度繰り返されるのね。信じられないわ~。

 しかもね、テイヤールが古生物学者として、あるいは考古学者として「北京原人」の発見に寄与した、という話は、3回の伝記の中で一回も出てこないという・・・。そこ重要なのに~。

 で、そういう肝心な話は出てこないのに、自分が中国の万里の長城を訪れた時の話とか、そういうどうでもいい個人的な思い出話はちょくちょく出てくるっていう・・・。

 はあ~。こんな本を世に出すというのは、犯罪行為に近いと思う。読み始めて5分後にそのことに気が付いたものの、逆に、あまりにもひどいこの本の有様に興味が出てきて、どこまでひどい本なんだろうという関心から、最後まで読んじゃったけどね。まあ、自業自得とは言いながら、その時間、返して欲しいわ。

 ということで、秋の夜長、久しぶりにトンデモ本を読んでしまって、最悪の日曜の終わり方になってしまったのでした。もう、『鬼滅の刃』でも見て、気分直しでもしなくちゃやってられないわ~。



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Last updated  October 24, 2021 11:10:38 PM
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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