教授のおすすめ!セレクトショップ

教授のおすすめ!セレクトショップ

PR

Profile

釈迦楽

釈迦楽

Keyword Search

▼キーワード検索

Shopping List

お買いものレビューがまだ書かれていません。
June 17, 2022
XML
カテゴリ: 教授の読書日記
今期、授業でヘミングウェイの短篇を読んでいるんだけど、やっぱりきちんと読むと、面白いんだよね、ヘミングウェイ。

 面白いっていうかね、ちゃんとしている。

 たとえばね、「医師とその妻」なんて名作短篇がある。で、この短篇の最後の方で、奥さんと喧嘩した医者がプイっと散歩に出るんだけど、散歩に出た先で息子に出あう。で、事前に奥さんに頼まれた通り、息子に向かって「おまえ、母さんが呼んでたぞ」って伝えるのよ。

 すると息子が、「僕、父さんと一緒に散歩に行くよ」っていうの。

 問題はその次の行。「彼(医師)は、息子のことを見下ろした」っていう一行が入る。

 で、行が変わって、医師が息子に向かって「じゃあ、一緒においで」っていう。

 この「見下ろした」の一行が素敵なのよ。 

 だって小説の進行から言えば、

「おまえ、お母さんが呼んでたぞ」

「じゃあ、一緒においで」

 で十分じゃない。だけど実際には、

「おまえ、お母さんが呼んでたぞ」
「僕、父さんと一緒に散歩に行くよ」
 彼は、息子のことを見下ろした。
「じゃあ、一緒においで」

 となっていて、「見下ろした」のところでワンクッションある。このワンクッションの意味ね。この一行で、医師の気持ちというのが全部、分かるようになっているじゃないの。

 こういう、決定的な一行があるのがヘミングウェイなわけよ。やっぱりすごい。

 最近、日本の小説の時評をやるようになったので、日本の新しい小説を読むんだけど、こういう、唸らせるような一行に出会ったことがないもんね。

 今時の日本の小説家って、わけもわからずに小説書いているんじゃないの? 何が小説を小説足らしめるかってことが分かってないんじゃないの??

 まあ、とにかく、ヘミングウェイはちゃんとしていますよ。大したもんだ。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  June 17, 2022 12:08:16 AM
コメントを書く
[教授の読書日記] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Calendar

Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: