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April 1, 2025
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カテゴリ: 教授の読書日記
日髙敏隆先生が書かれた『世界を、こんなふうに見てごらん』という本を読了し、色々考えさせられました。

 日髙先生の本は、御著書も御訳書も全部面白いのですが、この本もとても面白かった。日髙先生が昆虫の行動をじっくり観察することで、素朴な「君(=虫)は何をしたいの?」という疑問への答えを探すことから、学問への道をたどり始めたという、冒頭のエッセイからしてとても楽しい。

 で、そういう軽やかな話から始まって、最後の方は、もう文明論ですよ。人間は真理を探究したがる動物だけれども、それをやりすぎて、真理を探し当てたなどと信じ始めると大変なことになる。真理などというものは、せいぜい幻(イリュージョン)程度のものだと思っていい加減にとらえておけばいいので、科学者がやるべき仕事は、せいぜい、よりましな(妥当な)イリュージョンを探すことだと。

 で、この本のキーワードの一つは「イリュージョン」なんですけど、その過程でこんな話が書いてある。

 木の上に棲むダニがいる。このダニは、人間など、動物が発する酪酸に反応するようにできていて、森の中を人間とかが歩いてくると、木の上からポトリと人間の上に落ちる。そして触覚をつかって毛の少ないところまで這って行くと、そこで肌を刺し、血を吸うと。

 つまり、このダニには、酪酸への嗅覚と、触覚くらいしかない。そういう状況で世界を見ていると。

 だから、このダニは、「今日は風が強いな」とか「天気がいいな」とか「鳥が鳴いているな」とか、そういうことはまったく感じていない。自分の持つ嗅覚と触覚でしか、世界を感じていないわけです。

 だから、同じこの地球上の環境の中に住んでいても、人間とこのダニでは環境の捉え方がまるで異なる。同じ場所にいても、まったく異なる世界を見ていると。

 ここまでは日髙先生のお話。ここからは私の考えたことね。



 たとえば男と女が付き合い出すとしましょう。

 男は、女の様子から見て、「どうやら、こいつは俺に気があるようだ」と思う。自分が言うことによく笑うし。自分が誘えば、食事にもつきあってくれるし。ところが女の方では男に対して「こいつ、あんまりタイプではないけど、ちゃんとした会社に勤めているし、結構出世しそうだし。まあ、ちょっとキープしておくか」と考えている。

 どちらもイリュージョンなわけですよ。で、このイリュージョンを信じて、結婚してしまう。

 ところが、後で、このイリュージョンに齟齬が出てくる。双方に「あれ、こんなはずではなかった」というのが、ボロボロと出てくる。結果、離婚。

 とまあ、そんなことはいくらでもある。

 だから、人間関係がどうしてうまくいかないかというと、「それぞれが別の世界を生きているから」というのが、一番、事態を言い当てているのではないか。

 同じ世界に生きているようで、ダニと人間では世界の捉え方が異なるように、人間同士も実は、一人一人、世界をまったく異なる形で捉えている。これが真相なのではないか。

 そう考えると、自己啓発思想でいう、「あなたの世界に住んでいるのは、実はあなただけ」という世界観は、実はすごく世界の実相に迫っているのではないか? 

 ・・・と、私は日髙先生のこと本を読んで考えたと。

 日髙先生のご専門は動物行動学、私はアメリカ文学・・・の中の自己啓発文学。だけど、突き詰めていくと、双方、歩み寄る地点があるのかもね。




これこれ!
 ↓

世界を、こんなふうに見てごらん (集英社文庫(日本)) [ 日高 敏隆 ]





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Last updated  April 1, 2025 01:20:09 PM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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