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July 3, 2025
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カテゴリ: 教授の読書日記
近藤康太郎さんが書いた『百冊で耕す』という本を読了したので、心覚えをつけておきましょう。

 ひと月くらい前だったか、同じ著者の『三行で撃つ』という本を読んだことをここで書きましたけど、今度読んだ本はその姉妹本。『三行で撃つ』が文章の書き方指南本だったのに対し、こちらの『百冊で耕す』は、本の読み方について論じてある。

 『三行で撃つ』も面白かったけど、個人的には『百冊で耕す』の方が好きかも。まあ文章の書き方というのは、人それぞれでね。近藤さんにとって「こうすればいい」というコツがあったとしても、それは私には通用しないことの方が多い気がする。一方、本の読み方となると、「その読み方はキライだ!」と思うような読み方なんか、ないからね。だから、共感できることの方が多いというか。

 で、本書のタイトルである『百冊で耕す』の意味ですけど、「耕す」の方は、「cultivate」の意味。農業的に言えば「耕す」だけど、文化的な意味では「啓発する」とか「修行する」に近いのかな? 自分の内面を耕して、肥やせと。

 じゃあ「百冊」とは何か。これはこの本のポイントとなる主張なんだけど、簡単に言えば、人生の友となる本百冊分の書棚を作れ、ということ。もちろんこれは単に「古今東西の古典百冊読め」という意味ではありません。そうではなくて、一生の友になるような本を100冊持てということね。そしてその100冊のメンツを、常に入れ替えろと。そうやって自分の血肉と化した本が100冊あれば、どんな状況であれ孤独にはならないし、幸福になれるよと。

 映画『イコライザー』で妻を失った主人公マッコールが、妻の愛読書100冊を順に読破していくという設定になっていたけど、あれをちょっと思い出しますな。

 まあ、でも、この提案はなかなかいいじゃない。

 人文系の研究なんかしていると、本は無限に読み続けなければならないんですけど、そういう仕事で読む本とは別に「これがオレの愛読書ベスト100」というのを決めて、書棚の一角をその100冊のために割き、時々メンツを入れ替えながら、常時100冊の相棒たちを自分のすぐそばに置いておくってのは、いいよ。



 あと、色々読んだ経験の果てに愛読書100冊をリストアップするのもいいけれど、場合によっては100冊の古典的名著を先にセレクトして、それを最初に書棚に置いちゃう、というのもアリだと近藤さんは言っております。で、それを片端から読んでいく。順序は逆になるけれど、先にセレクトした100冊の古典によって自分をそのレベルまで高めることができるよと。なるほど、それもいいアイディアかもね。

 で、近藤さんご自身の100冊も、本書の巻末にリストアップされているんですけど、本書ではそこへたどり着くまでに、近藤さん流の本の読み方、というのが縷々、披露されている。

 たとえば、まとまった読書の時間が取れないにしても、隙間時間の15分くらいはあるだろうと。ならばその15分を、スマホなんか見ないで本を読め!とかね。それも1冊の本をずっと読むのではなく、同時に4種類くらい読む。15分、洋物の古典文学を読んだら、次の隙間時間の15分には社会学的な本を読む。そして次には詩集を読む・・・みたいな感じで、性質の異なる本を常に4種類くらい読め、とか。

 あと、本の内容が分からなくても読むことが重要だ、とも近藤さんは言っています。難しい哲学の本とか、素人が手を出したって、わかるわけない。でも、読む。目を字面の上に這わせる。それで一ヵ所でもわかるところがあったらいいじゃないかと。そんな風にわからない本を、わからないなりに、適当な間隔で何度もトライしてみる。時には参考書の力も借りながら。そうしているうちに、やがてはその本が何を論じようとしているのかくらいは見当がついてくるし、少しは面白味も分かってきて、たとえば他人にその本を読んだ経験とか、自分が面白いと思ったところはどこかとか、少しは語れるようになる。その「語れるようになる」というのが重要なんだと。

 あと、できれば外国語の一つや二つ、ゆっくり本が読めるくらいにはマスターして、原語での読書に挑戦したり、あるいは日本の小説で他原語に翻訳されたものを読んでみたりするのも面白いよと。

 あるいは読書とは、つまるところ、本を読んだ痕跡を残すことだから、本に線を引いたり、耳を折ったりして、感動したり納得したところがどこなのかを記すことも重要と、近藤さんは言います。そしてできれば、ある程度時間を置いて、その本で一番感動したところを抜き書きし、その抜き書きのノートを作る。そうすると、その抜き書きノートが一生の宝になるよと。

 とまあ、そのほかにも色々、近藤さん流の読書術が書いてある。それはすべて近藤さんが実地にやっていることだから、説得力もあるし、採り入れたらいいんじゃないかなと思うようなことが随所にある。読書論としては相当説得力があります。

 だから、なかなかいいよ、この本。教授のおすすめ!と言っておきましょう。


これこれ!
 ↓
​
百冊で耕す <自由に、なる>ための読書術 [ 近藤康太郎 ]


 ただ・・・。

 前に『三行で撃つ』について書いた時も指摘したんだけど、近藤さんの文章がね、独特の外連味溢れるクセがあって、とても気になる。ハッキリ言ってキライ。

 どういうクセかというと、常に一言余計なのよ。常に。

 例を挙げると、

〇物語の筋とは関係のない、なんということのない一節だが、わたしはこの一節から離れられなかった。 救われた。

作法がある。

〇本は、たしかに大事なものだ。人類の宝だ。しかし、大事にしすぎると、本を読む意味はほとんどなくなる。 使われない名刀は錆びる。

〇深みのある本棚を最初に作ってしまえば、その人は、いずれ深い人間になる。美しい本棚の持ち主は、やがて美しい人になる。 本棚が人格を作る。

〇それが納得できない。 分からない。

 上の五例、どれも最後の一文は余計だと思う。こういう余計なしっぽのついた文を繰り返し読まされると、ホントに嫌になってくるんだなあ・・・。

 あとね、近藤さん、これだけの読書家でありながら、やっぱり自己啓発本をバカにするんだよね。これは、自己啓発本研究者としては、すごくガッカリする。でまた、そのバカに仕方が、例によって余計な一文付きなのよ。たとえば・・・

〇本棚ひとさおに収まるだけの本しか持たないと、まずは決めてしまう。そこに、自己啓発本やお手軽なビジネス書の入り込む隙間は、おそらくないんじゃないか。いや、買って読んでもいい。しかし、読んだら処分する。 古本屋に売る。

〇しかしそれだけでは満足できない。新刊本も、話題本もベストセラーも、たまには自己啓発書やタレント本だって、本は浴びるように読む。 読みたい。


 こういう文体は、近藤さんが意識的に作って来たものなんだろうけれども、私はもっとクセのない、水が流れるような文章が好きだな。

 ということで、この本、全体としてとてもいい本なんだけど、私の100冊には入らない本なのかもね。





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Last updated  July 3, 2025 07:06:58 PM
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ゆりんいたりあ @ Re:スペイン優勝、そして早くもW杯ロス(07/20) 釈迦楽さん、 ご無沙汰しております。 お…
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