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学校のエリート進出に対して、親御達から、転校を希望している者が出てきた。絶対にエリートにならなければこの学校にはいられないという規定に、うちの子供がついて来れないという事を理由だが、他校への紹介状が必要であり、頭を悩ませている親がいる。適正だと思い、選んで入学したはずの学校が、シーズン途中で規定を変えるとは信じがたい話しだ。しかも、退学も、転校も許されない、そのうえ、引き止めている割には、単位が足りない時は留年させるなど、短期間で頭を良くしろ、っと言っているようなものだ。リセットがもたらした結果は思わぬ展開となった。いじめや逆切れなどが無くなって、一切綺麗になったと思われたこの学校は、受験生に大きく影響を与え、脳の根本的機能をフル稼動させるまでになってしまった。どうやら、このリセットには、人間本来の能力を呼び覚ます作用があったようだ。それが場所によって効果的な機能だが、一方ではとんでもない展開になるのだ。リセットの効果に関する件は、Mの心に宿る別の思いと、iと菅野先生との相性、それに、Xの存在、不十分な問題を抱えていた事も影響の原因となっているはずだ。彩香への思いを絶たなければ、iの本領を発揮しなければ、そして、Xの野望を解読しなければ、この学校は救えないのだ。数日が経ち、彩香との連絡が途絶えたまま、Mと仁美は、中に入れないまま、空気のように会話をしてすごしていた。仁美の心は、ピュアで、いつでも受け入れできるのに、Mはまだその状況ではなかった。仁美:[ねえ、彩香に何も起こらないかなあ?]Mはしばらく経ってから、M:[…うん、彩香なら大丈夫、必ずなんとかする…]その一言一言が、自信のなさと、彩香への何かの思いが交差しているように感じた仁美は、やる瀬ない気持ちと、助けたい気持ちがやはり交差していた。そんな2人の複雑に絡む思いは、太い線となって、別の次元へと飛んでいった。その線は、友情と宿命と恋愛とが、やる瀬ない思いとなり、太く重い線になった。そして、次元を越えて、光となり、思いを寄せる人物に届いた。Xの存在を貫き、直接、それは彩香に届けられたのだ。眠っていた彩香には夢の中で、そのからんだ線を解いていく。Xがそれに気付いた時、既に彩香の目から涙が溢れていた。[宿命、友情、恋愛…]それを解いた時、彩香の心に新たに宿ったものは、3つの思いを再び結ぶ支えとなる4番目の思い、勇気だった。彩香は目を閉じたまま、ものすごい波動と共に、Xを外に跳ね飛ばした。X:[…何が起きてるのかわからん…]Xが叫び散らしている時、彩香はすっと目を開いて、彩香:[ここにいる場合じゃない!]夜遅かったが、彩香がここにいるのが我慢出来ないくらい、重く太く、そして強いものに引っ張られるように歩き出した。Xは慌てて、彩香を縛ろうとしたが、それを跳ね返すパワーで、Xに入り込む余地を与えなかった。Mは、仁美の前で、軽い頭痛を感じ、何かが訴えているように思えた。その頭痛は、太く強い線となって、Mの心に延びていた。そして間もなく、強い波動がMを震えさせた。M:[…こ、この力が……]人気blogランキングへ
2007.06.05
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難しい事になってきた。菅野先生にいるiと、現状フリーのMが、この先なすことは、乱れる学校の風習と、駆け巡る嘘と自己本位な校長。更には、Xの出現など、違うようでみな共通のカテゴリにある。彩香の安全と、仁美の苦しみ、それを差し置いたエリート転向の振る舞い。仁美の両親に回復の道を切り開くため、そして、学校の安全確保、生徒一人一人に行き届くピュアな心を伝える事。それらを踏まえた彩香の決断は、彩香:[M、リモートコントロールできるなら、今が潮時かな]X:[…今何を考えているのか、わかるぞ…]Xのノイズが入る。思いがツツヌケになっていて、そう簡単にはいかない。Mには、彩香の思いが伝わったが、同時に入ってくるXノイズの障害のほうが怖かった。リモートコントロールをすると、2人の位置が次元から違ったため、ネジレが生じる危険性もある。Xが一緒にいる以上は、X自身の考えに置き換えられる可能性もあった。Mがフリーであることは、力が半減することである。iが最も有利なのだが、この世界はおろか、自身の世界でもリセットを経験していない。Mは、菅野先生に聞いた。M:[…先生ならどう思う?この事態、リセットすべきか?…]菅野先生:「?」リセットを聞かれ、戸惑う菅野先生。iも、i:[…今は先生の気持ちも不安定だから、うまくいかないと思う…]iも不安を隠せない様子。i:[…Mが行ったリセットとはどんな状態を言ってるのか聞きたいんだけど…]iの率直な質問に、M:[…我々の最終手段、行っていい条件を満たした時、心の本体と1つの気持ちになって、念を入れると、一定時間にまわりの世界の時間が止まる。風によって、浄化させる。個人差があるが、記憶を失ったり、命を落とす者が出る可能性があり、これは最も非常策という能力。ま、マニュアルにはそう書いてあるけど、経験から言うと、リセットは、人を吹っ切れさせるということかな…]iは、難しいマニュアルを聞かされたあとのMの簡単な経験話しからはまったく想像出来ないでいた。i:[…記憶を失う事の重大さが、あなたからは伝わってこないわ…]M:[…だから、非常なんだ、記憶が無くなるのも覚悟しろということさ…]受験を控えた学生にとって、最も記憶というものが大切なのに、簡単にリセット出来る訳がない。iは、もっと違うやり方を提案することを希望した。リセットのマニュアルには、一番危険性の高い場所は゛学校゛と記されていた。人気blogランキングへ
2007.06.04
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Mにせよ、iにせよ、依頼された事はやり遂げるが、意志をそれぞれ持っている。Xにしても例外ではない。依頼人のわからない所で、自分自身の意志で判断することもある。Mの恋心も意志があるから生まれた感情だが、Xの行動は、どうやら単独でやっている可能性があった。記者である依頼人の知らない事を知っているし、依頼されていない行動も有り得るのだ。スパイであることを忘れて、それ以上の事までは依頼を望んでいない。菅野先生の抵抗は、ますます困難な状況になり、Xのスパイ活動は、更にエスカレートするのである。記者の涌井は、スパイと同時にスクープ記事を載せるための準備をしていた。あの学校を元に戻すには真実が必要だった。だから潜り込めない部分はXに任せていた。だが、依頼はしているが、どんなやり方までは決めていなかった。Xに任せているのだ。同じ頃、Mと彩香は、暑くもなく寒くもない、白い世界で、どうしたらいいのか、考えていた。だが、考える意味もわからず、何でここにいるのかも把握出来ていない。彩香:[ねえ、あたしたち、生きてるのかなあ?]M:[…僕がこうしているのは生きている証拠さ、もし僕がいなかったらわからなかったな…]Mがいる以上、命を奪われることはない、何故なら、現世の心に宿る者だからだ。彩香:[このままだと、お母さんもお父さんも、心配してるだろうなあ]消えかけていた記憶がだんだん出てきた。彩香:[菅野…先生…?]M:[…あ、そんな先生いたっけなあ…]時間が経つにつれて、菅野先生と何があったのかがはっきりしてきた。彩香:[消えてしまえば…とか言ってたような……]すると、M:[…彩香、すごいよ、その記憶力、確かにそう言った…]更に、Mは、M:[…彩香と来るその前にも飛ばされて……]同じ教室で、同じ教師に飛ばされた事を思い出した。だが、肝心なことを忘れていた。M:[…あの先生に飛ばされたんだよなあ…]彩香は、菅野先生を思い出し、彩香:[あの先生、確か、心がどうのって言ってたよ、エリート校に、何だっけ?]断片的な記憶は、他の事といっしょになってしまう。パズルのように紐解かなければならなかった。彩香:[そんなことよりも、どうやったら戻れるの?]M:[…それは多分、僕が君から離れて誰かを呼びに行かなきゃならないかな、でも、離れた瞬間、君の存在が危なくなるかもしれないんだ…]彩香:[それって、死んじゃうって事?]M:[…ああ、おそらくね…]彩香:[一緒に行くことは出来ないんだ?]M:[…ここはどうやら現世とあの世の境目らしいから、むやみに肉体が動けば、現世から跳ね返される恐れがあると聞いている…]彩香は、Mとの離脱を希望した。Mだけで現世に戻り、彩香を呼び出してもらえば、おそらく戻れる。しかし、Mでも初めての経験で、実際に戻せるかどうかは未知の事だった。人気blogランキングへ
2007.05.30
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Mを思う仁美に、もう1つ、思いが増えた。彩香だ。彩香と別れてからもうすぐ48時間が経とうとしていた。彩香の両親も警察に届けを出そうとしていた。仁美には彩香がいなくなる理由が全くつかめず、他の友達や先生に聞いても心あたりがない。菅野先生に聞いても、菅野先生:「わからないわ、何かわかったら連絡するわね」と、あの件に関しての記憶はなかった。Xは、菅野先生に逆切れされない事だけを考え、管理する必要があった。もし、外部からの会話から逆切れする内容になった場合、その間に何をすべきかを決めた。X:[…もし、今度、逆切れしそうになっただけでも、相手を消滅させるぞ…]菅野先生[好きなようにはさせないわ、あなたに指示される覚えはない]X:[…そんなこと言っていいのかなあ、あんた、他にも既に覚えがないものがあるんだからなあ…]菅野先生[わたしの記憶をどうしろと勝手だけど、他の人を傷つけるのはダメ!]X:[…じゃあ、おとなしくしてるんだな…]菅野先生[……]菅野先生はそれ以上言っても無駄だと思い、とりあえず、明るく振る舞った。エリート校に任命され、ますますハイテンションになってきた校長ら。校長:「さあ、もう後戻りは出来なくなった、ここまで来るのに苦労した甲斐があった」苦労した?頑張った?果たして校長は何を苦労したというのか?イジメを隠蔽する一貫として、エリートというイメージを強く打ち出した校長。隠蔽自体、教師として最も楽にして、最も悪質な行為だった。それについて、証拠を暴こうとしている1人の新聞記者がいた。刺客を依頼したのは、何を隠そう、その新聞記者のスパイだった。その記者の名前は、涌井という。彼は、この学校の卒業生で、昔は母校として自慢出来る良い学校だった。それが、校長が変わるたびに、体制が変わり、小子化になってきてから、生徒数が激減し、偏差値まで下がる一方だ。今では、スベリドメのイメージまでついたこの学校を何とか再生しようとしてきた校長の考えはことごとく失敗し、イメージダウン、更には、入学する生徒の質までがた落ちし、暴力やイジメなどが目だっていた。現在は、何人かの教師の協力もあり、暴力壊滅、イジメもかなり改善されてきたが、1回ついたイメージは、かなり根強かったのだ。涌井は、そんな痛ましいイメージを引きずった中で、エリートという企画に隠された、イジメ隠蔽を明らかにし、中味を一掃して、昔のような学校に戻る事を信じていた。だが、彼は、活性させるだけでは済まなくなっていたのだ。そこに、スパイを送った意味があった。人気blogランキングへ
2007.05.29
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彩香は白いだけの世界、生死の狭間に漂い、目を閉じていた。普通ならもう命はなく、存在さえしなかった。だが、彩香は1人ではなかったため、今でも存在してここにいる。Mが彩香に入ったままだからだ。Mも気を失っていたが、死ぬことはなかった。役目を果たしていないから。今は、彩香を生かすための存在、仁美のために、命を絶つことは許されなかったのだ。先に気がついたのはMだった。M:[…とんでもない事になった、彩香、起きてくれ…]学校では、校長の企みとは裏腹に、菅野先生の行動が今最も最悪だった。しかし、まわりには気が付くわけもなく、ただの先生としか見ていない。そこが最大の油断だった。[…さあ、そろそろ、エリートとかいうのを破壊しようか、一気になあ…]菅野先生:[それはいいけど、あなた本当に誰なの?][…名前はないよ、まあ、Xとでもしとこうか…]菅野先生:[どこから来たの?誰かの差し金とか?]X:[…今は言えない、学校を潰すのが目的としか言えないな…]学校を潰そうと考える者は、マスコミか、エリート以外の生徒か親?帰宅する菅野先生、それでも居座るX。家に入り、着替えから入浴に至るまでXがいると意識するとなにも出来なかった。菅野先生:[着替えたいんだけど]X:[…恥ずかしいか、俺はあんたの心にいる間は、あんたの身体の外は見えないぞ…]菅野先生:[そうだけど、心を裸に出来ない方が辛い]X:[…じゃ、外に出ようか?あんたの裸を見る事になるがな…]菅野先生:[向こう向いてて]X:[…俺が向こうに向くと信じられるか?姿が見えないのに…]菅野先生は気がおかしくなりそうだった。もうどうでもいいと思い、菅野先生:[やっぱり出て、見るなり見ないなり好きにして]X:[…!…]そう投げやりになった途端、Xの意志ではなく、体外に投げ飛ばされるかのような勢いで、外に出た。X:[…な、なんだ、今のは!…]慌てて入り直そうとしたが、彼女の意識が一変したこの瞬間、入る事が出来なかった。X:[…何て言う事だ、こいつ、逆切れしただけなのに、ガードしやがった…]だが、唯一の武器である事に菅野先生はガードしている事すらも気がつかなかった。逆切れ。これほど恐ろしい武器はない。自分自身が悪いのに、それを認めつつも、正当と置き換えようとする開き直り。これには、どんな人間でも対処することは困難だ。開き直るというのは2つある。立ち直るか、しらばっくれるかだ。それが逆切れを選択する者が多く、自分のした事を認めた時に起こす、回避手段。昔からあったと思うが、今はたいしたことない内容でも逆切れでカバーする者が多いのではなかろうか?人気blogランキングへ
2007.05.28
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田中先生は、今の状況の発端は仁美の家族が起こした火事から始まった。そこから彩香の熱意もあったが、彩香1人ではあそこまで人を思い続けることは至難だ。そこに、何かの存在に守られていたと仮定すると、彩香が動いていたことも不思議ではなくなる。つまり、心の支えがあったと推測したのだ。柚木先生:「ふーん、面白い設定ね、それなら、彩香と仁美の友情が、固く、濃く、心が通じ合うという事ね」柚木先生は面白半分に言った。田中先生:「まあ、君にそう言われると弱いけど、そんな気がするだけだ」柚木先生:「もしそうだとしても、今の状況変えられる根拠はあるの?」田中先生:「いや、ない。ただ、わかるのは、今の生徒一人一人の繋がりがエリートクラスのおかげで、遮断されている、それにくっついて行く生徒と、反発はしていても、強く主張出来ない生徒といる」どのみち、2人だけで行動しても突破口が見つからない。その時、喫茶店の前を仁美が通り掛かるのを目撃した。それを見つけた田中先生が飛び出し、仁美に声を掛けた。田中先生:「なあ、仁美なら、彩香の事何か知っているよね?」仁美:「え、はい、何が?」急に呼ばれて驚くが、すぐに落ち着いて、仁美:「だいたいの事は」田中先生と喫茶店に入り、中にいる柚木先生を見つけ、仁美:「ああ、そういう事」すかさず、柚木先生が、柚木先生:「ああ、昔ね、そんな事があったけど、今は教師として良き相談役ってとこかな」仁美は納得したが、仁美:「今でもいい感じじゃないですか、噂は聞いてますけど」柚木先生:「噂ね、やっぱりみんな噂が中心なのよね」田中先生:「その噂なんだけどさ、学校絡みで何か怪しい噂があるとかないとか、彩香の事とか、今話してたんだが、らちがあかなくてね、仁美なら知っているかと思ってね」すると、仁美は、仁美:「自分自身がそうだったから、噂なんてって言いたいけど、半分以上は事実だし、でも彩香だけはついてきてくれました。でも、私より彩香を選んだ人がいて、その人が彩香をバックアップしていたから、いろんな事に気が付くのかなって…」柚木先生:「誰かがそばにいるの?」田中先生:「やっぱりそうだ」柚木先生:「待って、まだ話しが見えないわ」仁美は、その人の事を話すのが恥ずかしかった、その半面、羨ましい気持ちも込み上げてくるのが嫌だった。仁美:「先生、彩香は、私のため、いや、学校のためにその人の協力で動いているの、だけど、2人とも、どこかへ行っちゃったみたいで、存在を感じないんです」そういえば、彩香がいつも一緒だったのに、見ていないことに今気付いた先生。田中先生:「これって、事件?」人気blogランキングへ
2007.05.27
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支配された菅野先生の心。どこからともなく、現れた刺客は、Mと同じ存在。必ず人間の何者かが依頼しなければ存在しない。この依頼人は、悪用か、それとも他の目的のために、何者かによって派遣された。自分の手を煩わすことなく、心理をついて犯罪を実行する、いわば、完全犯罪が可能だ。しかし、理想の相手をサポートする前提なはずが、また違った方式で動いている事は、Mが所属している会社とはまた別ルートかもしれない。菅野先生は、彩香が消滅した事実を記憶から消され、何事も起こらなかったように、落ち着いた状態だった。消滅した彩香達はいったいどこへ行ってしまったのか?仁美は、何だか孤立したような感覚に陥り、学校にいるのに、1人部屋にいるような存在になっていた。校長の差し金で、話し掛ける事も、手伝う事も、仁美に対しては、一切断絶することを命じたのだ。これは、学校絡みのイジメに値する、最悪の事態となった。仁美を学校に来てもらえるために仕方なくエリートに推薦した田中先生も、この学校には相応しくないとされ、近日中に左遷の話しも出てきている。校長室では、副校長と密接な打ち合わせをしていた。校長:「エリート拡張に障害のあるものは全て廃除する、まずは、頭っからつかえている、両親放火事件について絡みがあってはならない。」副校長:「と、言いますと?」校長:「あのエリートクラスに1人、相応しくない生徒、それに、それを奨めた教員を、この学校から外して戴かなければならない。」そういう目論みで、有り得ない陰険かつ大規模な追放策を考えた。菅野先生の思いは、刺客によって縛られた、学校はエリート拡張で仁美をいたぶる、小数の反対派教師は左遷の危機、そして、彩香とMの行方は?最悪が絡みあい、どうすることも出来ない状態の中、田中先生と柚木先生は、学校の体制の変貌に呆れて、自ら学校を去ろうとしたが、やはり、今のまま去るにはいかなかった。ある喫茶店で落ち合い、学校では言えない内容を話し合う。田中先生:「やはり、生徒を救うべきだろう」柚木先生:「わかってるけど、どうやって?」田中先生:「何気に聞いた話しだけど、彩香が何者かとつるんでるっていうのを誰かから聞いたんだ」柚木先生:「それってただの噂なんでしょ、それが本当だとしても、どうって事ないんじゃない」田中先生:「いや、そんな単純な事じゃないんだ。心を読むとかさあ」柚木先生:「何それ?」田中先生:「聞いたのは佳代だ、なんか帰り道でクレープ食べてた時に独り言みたいな事を言ったと思えば、急に帰るとか言ったらしい、これっておかしくないか?」柚木先生:「おかしいっちゃおかしいけど、人間、そういうときってあるんじゃない?」だが、田中先生の頭の中に、その独り言は独り言ではなかったのでは、と推測していた。人気blogランキングへ
2007.05.24
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飛ばされたMは、危ない所に、買い物に出掛けていた彩香と遭遇し、入り込んだ。彩香:[う、いきなりなによ]M:[…まずい事になった…]彩香:[何がどうしたって?あ、邪魔が入ったっていうの?]M:[…そうだ、しかも手強いやつだ…]彩香はMの想像を読み出して、かなりヤバイ事がわかった。つまり、協力してもらうはずの菅野先生に刺客が入って、気持ちも通じなくなった。わかってる事は、その刺客を知っていることだ。M:[奴がここにいるという事は……]Mは難しい事を考えていた。彩香にはそれが理解出来なかったが、ヤバイ事だけはわかった。彩香:[菅野先生の中に入った者がヤバイって事ね、それってあなたの仲間じゃないの?]M:[…そう言うと思ったよ、種類は同じだけど、タイプが違う。彼は、まったく逆の能力を持っている。例えば、言う事に反発する、叶えたくない希望にしか動かない…]彩香:[でも、本体の意思なしじゃ…]M:[そこなんだよ、菅野先生の心は純粋だけに、少しでも逸れた事でも考えたら大変な事が起きる…]彩香は、放っておけないと思い、彩香:[あたしと行くのよ、先生ん所に!]買い物途中で急いで店を出た。学校まではさほど遠くはなかったが、発想と実行のスピードには敵わない。Mは妙な事を言った。M:[…奴が実行することは、本体をどんな事でも納得させてしまう勧誘力を持つタイプだ、だったら……]彩香:[だったら、先生に思わせないようにすればいいんだよねぇ]そう言って間もなく学校に着いた。急いで階段を駆け上がり、エリートクラスの教室に入った。その瞬間、菅野先生:[…いなければいいのに]と菅野先生が思った瞬間だった。教室から彩香が消えた。Mは、彩香と共に消滅した。意思の刺客:[…なんてタイミングのいい事だ…]菅野先生:[あなた、来るのを知ってて思わせたんでしょ。人を大切に思う人の邪魔をするような者はこの世にいなければいいのにって!]意思の刺客:[それはどうかな、でも、いなくなった理由ってなんだろね…]菅野先生は、自分が思った事に対して彩香が消えた事が気になり、菅野先生:[逆転…?]意思の刺客:[…やっとわかったようだな、そう、あんたの思惑に反対するのさ…]菅野先生は完全に心を支配された。更に、菅野先生から、消した人間の記憶まで奪ってしまい、何事もなかった状態に。これが、このタイプの性質の全てであり、Mの恐れていた存在だった。一体、どこから来たのか、それは、Mと同じ、心を汲み取る派遣として、必ず人間の依頼がなければ現れる事のない存在。根っからの悪ではないが、気まぐれな方法で心を操ることのあるタチの悪い派遣。人気blogランキングへ
2007.05.23
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エリートの確立によって、普通授業との両立はますます困難になってきた。学校側のマスコミに対するコメントは依然、エリート高校の転向を強く押している。そのため、普通レベルの生徒は、着いて来れない生徒を別の高校に斡旋する対策を考えていた。いわゆる、天下り状態だ。これに対して、親御達が無責任過ぎると批判的な意見がでてきている。エリート高校に賛成な教員と、普通授業続行派とはほぼ二分しており、当然ながら、親御達との共存を結んだ。もしエリート高校が実現すると、彩香と仁美は離ればなれになってしまう。そんな中、仁美にエリートをやらせてエリートクラスを汚していると掲げたマスコミがいた。それは、放火した親と子供のイジメを持ち上げた内容で、やはり緻密な情報が流れていることになる。仁美自身、エリートを続けていく自信がなかったので、その話題には気にしなかったが、エリート賛成派の教員はそれを一切無視し、今の状態を続けていった。しかし、これが、仁美の事がきっかけで、学校全体が危機に陥ることになる。マスコミがグループとなり、話題にして金儲けしたあげく、この学校を潰す計画を企てたのだ。意地になっている学校を面白半分に取り上げ、タイミングを見計らって、どん底に落とそうというのだ。Mは記事を見て、これを止める方法はただひとつ、でもそれは、彩香を巻き添いにするものだった。iは、この問題に対応する手段に、i:[…菅野先生にやってもらうわ…]M:[…どういう事だよ…]i:[…私はあの子を長年みてきたけど、心には凄い物を秘めてるの、それに気付かせるのは、M、あなたよ…]M:[…そんな無茶な…]同姓では上手くいかなかった過去のデータから考えれば男性と女性の方が相性率が高いようだ。Mは、すぐにとは言えなかったが、よく考えてみれば、彩香との相性もあり、そのほうが無難な対策だった。菅野先生の休憩時間に、M:[…ちょっとゴメンね、あいつの考えなんだけど、聞いてくれるかな?…]菅野先生:[突然、誰?]M:[…あなたにいたiの知り合いで、Mと呼ばれている、同じ目的で来ている…]菅野先生は、ここまでにしてくれたiに感謝していたが、はっきり言って、自分の思いとはまったく逆の事をしていることにずっと不満を抱いていた。Mも、その気持ちを知った上で、敢えて来たのだ。M:[…本題を言うと、この学校、生徒を助けるという事なんだけど、菅野先生は、今までは、iに無理矢理仕込まれた才能に決着をつけてもらおうと言うのが、本音だ。…]菅野先生:[何をすればいいの?]心の準備が早い菅野先生に、M:[…ウワサ通りだね…]人気blogランキングへ
2007.05.20
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人間は、生きていくために働いている。もし、働かなくても生きていけるとしたら、やはり働かなくなるのであろうか?彩香の父親は、先の見えない迷路の中で、明日はどうなるか解らない世界にいた。母親も彩香も怜も、同じ船に乗っている。それでも学校へ行く必要もあるし、家のローンも払う必要もある。でも、独身貴族だろうが、どんな人でも、職場では同じように扱われ、会社のための人間とされてしまう。会社が傾けば、以前まで必要だった人間を解雇するとまでになってしまった事が空しくなるが、会社を守るために家族が犠牲になるというのはまた別問題として扱われるかどうかだ。Mは、iと合流し、学校を含め、現代社会についての話しになった。そういう背景を何件も見ている事を考えた上で、悩める人の支えとしてきたが、もう何をやっても無理な兆しもある。M:[…リセットするタイミングが難しすぎる、どう対応すればいい?…]Mは、iに派遣らしからぬ質問をした。i:[…あなた、少し入り過ぎたよね…]M:[…どういうこと?…]i:[…彩香って子によ…]M:[…そうかもしれない、あんなに感情的になったのは初めてだ…]Mは正直に話した。といっても、お互い、心の中で呟いてもわかるくらいのだが。i:[…あなたをそこまでにさせるのは何かな?…]M:[…それは、どんな事があろうと、正直で、ピュアな心を持った人がいたって事さ…]基本的にピュアな人にしか入れない2人にとって、減少しつつあるピュアな人を救いたい。休憩時間、彩香は仁美を待つ。エリートクラスから5分遅れてようやく仁美が出てきた。声をかけた彩香だったが、仁美はなんだか疲れている様子だった。彩香:「仁美、お疲れ様、今日はどうする?」少し考えてから、仁美:「今日は疲れちゃったから、中で」彩香:「そうしよ」いつもは外に出て弁当を食べていたが、仁美の希望で、ロビーで食事することに。彩香:[仁美、何だか大変みたい、こんなの毎日だったらきついなあ]と思った瞬間、仁美:「言っていいんだよ、大変だって。そのほうが嬉しいし、気が楽になるから」彩香は、Mがいなくても、仁美にはお見通しのようだ。仁美:「私は大丈夫なんだけどね、先生の方が心配なの」彩香:「先生?」仁美:「エリート要員で新しく来た人、何だかエリートっぽくなくてさあ」明るく振る舞う仁美を見て、彩香:[お父さんにもそういう笑顔見せられたら、楽になるのかなあ…]すると、[そういうもんだよ]彩香:「え、仁美、今の?!」心の中から聞こえてきた仁美の声は、何だか澄み切った綺麗な声をしていたように感じた。人気blogランキングへ
2007.05.17
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菅野先生の見守る中、仁美は、エリート校での授業を受けていた。地域中で、エリート制の噂が広まり、市、そして都道府県という規模までになった。ただし、学校を讃える内容よりも、そのエリートクラスで勉強している仁美に注目が集まっていた。マスコミが騒ぐ中、エリートクラスを評価される可能性を狙う学校側。それと同時に、何かと付き纏う火事の件が必ず仁美の印象を悪くしていたのだ。iは、菅野先生を通して、エリート生徒の気持ちを聞いていた。有名になりたい生徒が過半数を占め、学者や教授希望、後は先生からの推薦、成り行きである。この学校がエリートクラスを提案して、他校にも勧めていく方針だが、生徒重視ではないことは見え見えだ。こんな事のために派遣されたわけではなかったiにとっては、Mとの掛け合いでリセットの準備を急がねばならない。仁美は、エリートクラスの授業には何とか追い付いて来ているようだが、勉強している反面で、やはり、両親の事も気になっていた。時々入ってくるMからも、両親の状況は聞いていた。仁美にも、あまりにも見えっ張りな父親を酷く当たっていたこともあって、実はとても弱い人だと悟った時は、涙が出そうになる。きっとその心境は、面会室で泣いた母と同じであろう。彩香は、仁美の事を気にしながら、自分の授業に向かっていた。彩香:[あーあ、この学校、どうなるんだろ、エリートだけの学校になっちゃうような気がするしぃ]彩香が通う高校は、平均偏差値が52で、ごく普通のレベルだ。学校側の意向次第では、エリート学校に転向するかもしれないのだ。そんな学校が母校とは思えないくらい、変貌するに違いない。i:[…菅野先生、ちょっと出るけど、大丈夫だよね…]菅野先生:[う、うん、何とかね、Mさんでしょ?]i:[…ま、そんなとこね、じゃっ…]そういって、iは、いそいそと菅野先生を抜けた。平気だと言っていた菅野先生だが、実は、1人で教壇に立つのは初めてだった。仁美は、落ち着かない様子の菅野先生を見ていた。仁美:[あの様子の変わり様は何?]他の生徒からみれば、ただふざけていると思うほうが少なかった。仁美:「先生、大丈夫?」声をかけたのは仁美だった。他の生徒は見て笑っているか、見て見ぬフリをしている。人間はやはり、自分の事しか考えていない方が多いせいか、影でしか人の事が言えない。そこから誤解が生じて、悪い方向にばかり繋がっていく。菅野先生:「ありがとう、少し気分がよくなかっただけ、でももう平気みたい」声をかけられただけで、不安が少し解き離れたようだ。人気blogランキングへ
2007.05.16
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不景気が続き、社会が紛れも無く悲鳴を挙げていた。それに連動するように、生活環境にも大きな波が押し寄せている。技術の進歩だけは着実に伸びている過程で、便利になっていく関係もあり、給料が増えなくなれば、一人で生活する手段を選べることから、食生活の変化にも関係し、体質の変化も目まぐるしく、結婚や出産の確率も低下するのも頷ける。富豪だった家庭が普通になるより、平凡な家族にはどの程度の影響があるだろうか?もちろん、その波は彩香の家庭にも押し寄せてきたのだ。かつて何でもありなバブル時代にあった中小企業レベルのデザイン会社は、紙の値上がりや、新聞折込減少の中、印刷分野が傾きかけて来た影響で、デザイン部門にも多大なる経費節減を呼びかけるようになった。給料が比較的割増だった派遣や契約社員はことごとく、解雇の声が挙がり、社員の負担を少しでも軽減する事、高年齢な社員を解雇していく流れの中で、彩香の父にもその声が挙がっていた。中堅の位置にいたが、仕事の流れから一歩離れた内容だったために、他の社員と共に解雇されようとしていたのだ。しかし、父のまわりにいる社員は不思議な事に、既婚者でも独身でも、子供を持たない人が多く、とても相談にのれるような者はいなかった。おまけに、解雇を提示してきた上司までも子供がいない。そんな人に言われたくない気持ちが込み上げていた父は、家庭を持つ、子供を持つという意味では、普通だったはずの家庭が、今では羨ましい部類に入るらしいのだ。それを、子供のいる事の意味を知らない人に裁かれる事に、胸が痛くなる辛さに耐えてきた父。子供を持たない上司に、いい歳して、とか、子供がいるんだろ?という発言は、ある意味、すごいプレッシャーと、圧力がかかる。「何がわかる……」共稼ぎの両親に迫る金銭問題を子供達に押し付ける事ではないが、親として、親子間での最低のルールはあっても、子供の目指したい事を阻む権利はない。それを不景気や犯罪などが奪う事がやるせない。むしろ、子供も勉学と共に、こういったご時世と向き合っていくことも大事な時代になったかもしれない。母も毎月を凌げるほどの生活維持のため、働く毎日。彩香は、妹の怜と夕飯を食べながら、今親の代わりに出来る事をやるしかないと思っている。彩香:[仁美はきっと、全部、親がやってたんだろうな、自分からやりたいと思った事ないのかなあ]そんな独り言を言うと、M:[…勝手な想像は、いい結果を出さないよ、悪い噂と同じさ…]彩香:[そうだね、反省!]人気blogランキングへ
2007.05.15
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父親は、あれだけ豪華で幸せな時を過ごせたのが、今ここまで落ちぶれるとは夢にも思わなかった。しかも、いい生活を少しでもしていたい願望が強かったので、お金がないはずなのに、豪華にして見せていた父親自身が嫌になっていたのだ。仁美には、破綻したことを黙っていた。だから、幸せなふりをしていた。結局、富豪の世界でしか生きてなかったから、こんな事しか出来ない、不器用な性格だった。それがあまりにも娯楽で、あまりにも精神を削っていた事を、仁美には悟られないようにしていたことが、父親としての最後の親心だった。田中先生:「これを聞いたら、仁美泣くだろな」由香里先生:「何故仁美に真実を伝えないのですか?」由香里先生はやはり真剣だった。由香里先生:「これで本当にいいと思いますか?仁美さんが幸せだと思いますか」母親は、母親:「仁美は何と?」由香里先生は率直に答えた。由香里先生:「はっきり言って、避けています、嫌っているようです、ただ、本心からではないと思います。」由香里先生は、仁美を連れてくるべきだったと後悔していた。このような話し、二度と言えるものではない。田中先生:「では、しゃべる必要はないですから、今時点の気持ちだけ伝えておきましょう。多くを語らなかったと…」母親:「でも、ただ抱きしめたかったと伝えてください」由香里先生:「その言葉、確かにお伝えしますが、とても重い言葉ですので、今更的に言われても仕方ないですから」田中先生:「おい、そんなこというなよ、気にするだろ」由香里先生:「いいの、これくらい言わないと、言われるだけでも重い記憶が残るわ」母親は後で虚ろな目をして立っている父親に視線を向けながら、涙を浮かべていた。----------------------------------------------------------------------------------------バブル崩壊後、日本は急激な落胆と共に、生活水準まで影響した。あんなに安心だった会社が、あんなに大手の会社が、瞬く間に傾き、消えていく。栄えていた時が普通だった事から考えれば、当然、悪くなる景気に対応できない企業も出てくる。世の中の流れに対応した対策が重要なら、伝統を守る事も大事。それをどう両立するかで日夜論議する会社もあるのだ。プライドを捨てるか、守るか?仁美の両親に挨拶をしたあと、田中先生と由香里先生は、警察署を後にした。田中先生:「プライドというのは確かに大事な事だけど、このご時世にそれを続けていく事が、以前は普通のことだったのに、今はそのプライドが邪魔をしているなんて」由香里先生:「やっぱり、不器用なんだと思うわ、人間ってね」あれから、仁美の母は、しばらく泣いていたという。「・・・こんな親でごめんなさい…」人気blogランキングへ
2007.05.14
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多くを語らない性格の田中先生が何故生徒には熱心に助言するのか、由香里先生は何となくわかっていた。過去の記憶がそうさせているというのだ。思えば、2人はもう15年くらいになる。お互いが違う学校にいたのは大学の4年間のみ。その4年の間にも、ちょうど恋人同士だった。そしてお互いに教員の資格を取得した後には、田中先生の奥手に辛くなり、違う学校で教師を始めた頃には由香里先生の感情は覚めかけていた。そこに、赤津先生のいるここが最初の学校だったのだ。後から偶然配属された田中先生は、驚いたのもつかの間、もう既に由香里先生にその感情がないことを悟るのだった。田中先生:「俺達は今の方がいい、友達としては皆には負けない、だから、由香里がいいと思えばそれが一番いい道だと思ってるんだ」由香里先生:「それには感謝するけど、そんな考え方じゃ、一生女性を幸せに出来ないよ」田中先生:「それが俺なんだろうな」幼なじみという過去を断ち切りたい気持ちで田中先生は、田中先生:「この件が収まったら、とっとと結婚しちまえ」由香里先生はその言い草に、由香里先生:「そうしよっかなあ」と、笑いながら頷いた。しばらくして、警官に呼ばれた2人は、面会室へ入った。ガラスごしに写る2人は、既に教員としての顔になっていた。ドアが開き、両親が入って来た。母親は軽く会釈をしたが、父親はどこか違う場所を見ていた。引っ張りながら来た様子だった。両親が座ると、田中先生:「よろしくお願いします、早速なんですが、うちで仁美さんが大変なことに巻き込まれているのをご存知ですか?」すると、母親が、母親:「大半は聞いております、どれもこれも私達の責任です」涙が込み上げてきた母親は必死に語った。由香里先生は、すかさず、由香里先生:「ご主人なんですが、何かを言いたいのではないですか?」そう聞くと、母親:「倒産が決まるとたんに、何かが吹っ切れたように急に暴れ狂い、蹴るや殴るの連続で、私と仁美は逃げ回っていました。その後、私達が寝静まった時に、突然火の手が上がっていて、逃げようとしていたら、主人が火の中で笑いながら踊っていたんです。」田中先生:「そんな状況でよくそうしていましたね」田中先生がそう答えると、由香里先生:「その様子はお祭りみたいな感じでしたか?」母親:「お祭りかどうかはわかりませんが、楽しそうにしていたのは間違いないです」父親の異常ぶりは聞くに耐えない事だが、打ち明けている母親の方がもっと辛いはずだ。母親は、母親:「1つだけ主人にも親心がある部分がありました。それは、仁美を学校に行かせてから火を付けた」その時だけ、正気だったというのか?由香里先生は、その事でピンときた。由香里先生:「旦那さん、その時は正気だったんですよ、正気のままじゃ火は付けられなかった、だからわざと狂ったふりをしていたんだと思います。でも今は火災の影響で本当に…」田中先生:「し、正気だったって!」
2007.05.14
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エリートクラスで持ち切りだった学校は、マスコミの強い圧力で、かなり切羽詰まる状況となっていた。笑いが止まらないのはエリート反対派の赤津先生だ。赤津先生:「エリートなんかにウツツ抜かしてるからいけないんだ」校長はすぐに、仁美のいるクラスに行き、校長:「あの記事について聞きたいことがある」と言って、仁美を呼び出した。田中先生と校長室に入り、校長:「知ってのとおり、あなたのご両親を悪く言っている人がいる。それを突き止めたいのですが、どうしたらよいのか訪ねたい。」すると、仁美は、仁美:「マスコミが許せない、だけど、両親はもっと許せません!」強い声で主張した。田中先生は、田中先生:「それじゃ、誰がご両親を助けてあげるんだ?」仁美:「好き放題してきた親に、あたしの気持ちはわからないわ」泣きながら答えた。校長:「ふむ、じゃあこうしようか、私達がご両親を見るから、あなたは、エリートクラスに入りなさい。あそこならマスコミが入って来れない区域だし、あなたは元々エリート級の成績だ。どうだろう?」仁美は悩んだ。彩香とのクラスでいたかったのに、突然のエリート宣告。しかし、普通のクラスにいれば、また予期せぬ噂が流れ、元の嫌なクラスに逆戻りする可能性があった。------------------------------------------------------------------教室に戻ってきた仁美に、彩香:「仁美、どうしたん?」仁美:「あたし、彩香と一緒のクラスにいたい、でもね…」彩香:「あ、わかった、仁美は入ってしばらく様子を見たほうがいいよ、わたしがなんとかするから、このクラス」仁美:「本当?」彩香:「約束するよ、そのかわり、ちゃんと戻ってくるんだよ」仁美:「う、うん、わかった、待っててね」同じ学校なのに、まるで転校するかのように、2人は、約束を交わした。校長は、教員2人を呼んで、仁美の両親に会いに行くように伝えた。それはただ会いに行くのではなく、マスコミの前で家族としての謝罪と、火事に対しての潔白を訴えるためだ。選ばれた教員は、担任の田中先生と保健の由香里先生だ。実はこの2人、元恋人だったが、しばらく付き合い、その後、由香里先生が赤津先生を選んだ為に、譲った形で別れたらしい。教育面で生徒としてはとても熱心だが、女性としてはとても奥手な田中先生には愛想尽きたようだ。それでも2人は小学生からの幼なじみという事もあり、持ちつ持たれつな関係が続いていた。仁美の両親がいる警察署に向かい、はっきりさせられる様願った。面会手続きを済ませ、しばらくベンチで待っている2人。ただ無言のまま、沈黙が耳鳴りに聞こえた。口を開けたのは、由香里先生だ。由香里先生:「ホントに相変わらず何もしゃべらないんだね」人気blogランキングへ
2007.05.10
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iは、決して菅野先生との相性はいいわけではなく、iの性格がきつく、菅野先生自体は穏和だった。菅野先生:「確かに、ここまでやってこれたのは、iのおかげなんだけど、なんか達成感はあるといったら嘘になるかなあ」Mは、彼女の言うことに、M:[…同情するよ…]Mは、彼女には入る事が出来ないため、断念しようとした。しかし、菅野先生:[あなたの考えていた事がわかる、好きな女の子がいるんでしょ?」M:[…あ、そっちの話題ね…]すると、すかさず、iが、i:[…その子を救うために、他の女性を探していたって事ね…]M:[…ああ、そしたら偶然…]i:[…お気の毒様、でも、協力してやってもいいけどね…]M:[…気に入らない言い方…]Mは、iとはやはり相性が合わないようだ。同類にそう会えるものではない。菅野先生:「私は協力したいなあ、Mさんの」菅野先生が答えた。M:[…それがあなたの本心なら仕方ないけどね…]i:「これは本音よ、今まで人のためになったことないから」本心である以上、iは動くしかなかった。心の中でしかいられない存在上、本体の意志に従う事が本来の定めなのだ。iはおおよその見当はついていた。--------------------------------------------------------------------------------------彩香は、エリートクラスの中が気になっていた。勉強優先が確立してから、部活動も縮小され、バスケも週に5回から3回にされた。仁美自身は、ほぼ毎日あった部活動が削られ、仁美:「そこまでやるなんておかしくない?」彩香:「そうだよね、うまく両立するのがよかったのに」更に、キャプテンとしての立場も、あまり意味がなくなりつつあった。練習が減り、試合回数も無くなり、ただの同好会と化していた。そこに、一報が入ってきた。仁美の両親が退院したというのだ。しかし、教員室でその電話をとったのは、赤津先生だった。前からエリートクラスを反対していた赤津先生は、この情報を利用して外面のいいこの学校を陥れようと考えた。校内にはその内容を伏せて、マスコミに持ち掛けたのだ。[富豪家族、火事騒動からの生還!事業失態からの無理心中か!?」と報じられ、世間に漏らした。日本規模での展開は、仁美の通う学校の位置に来れば既に世間的に知られ、火事からの事件の記憶が完全復活する。彩香の自宅で、Mが、M:[…遅かった、マスコミに告げるスパイがいたようだ…]彩香は、[そんなことする人って、相当仁美を嫌っているのかなあ]M:[…いや、そうじゃない、仁美の件はたまたまだ、誰でもいいから騒動を起こすきっかけが欲しかっただけだよ…]彩香は、人の足元を見てネタにする人間が許せないと怒りをあらわにした。人気blogランキングへ
2007.05.09
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リセットがあってから1週間経過し、エリートエリートクラスとそれ以外の生徒とは、かなりの壁が出来てしまった。Mは、菅野先生の心にコンタクトをとってみた。すると、意外な返事が帰ってきた。菅野先生の心:[…あなたは、派遣で来ている人ね、何故単身なの?…]M:[…え、知ってる?あんた何者?…]すると、菅野先生の心:[…この学校にいたとはね、義務を果たしてないようだから来てみたけど、あなたの主はどうしたの?…]痛い所をついてくる所が、菅野先生の狙いを定めている売りの1つだ。しかし、どう考えても、Mの存在を知っているようだ。M:[…あんた、まさか…]菅野先生の心:[…そう、あなたと同じよ…]Mと同じということは、菅野先生の心にも、Mのような派遣がいる。菅野先生の心:[…この女は、1人では何も出来ない、けれど、家柄が大学の教授でね、エリートが当たり前の家庭でつまはじきになっていたの、そこに、依頼がきたわけ…]M:[…彼女は至って普通だ、とても清らかな性格で、上ばかり見ている家族とは反発心はあっても、反抗が出来なかった。…]菅野先生の心[…そうよ、しかも、依頼したのは両親…]M:[…そうか、親の決まりが邪魔しているわけか、しかも、恋愛出来ないように、あえて女性を依頼するとはね…]菅野先生の心:[…邪魔呼ばわりはないでしょ、だけど、彼女はケアするために依頼されていない事だけは確かね…]ケアすることが本職だが、両親の強引な依頼で心を契約させられたばかりに、彼女を自由に出来なかった。菅野先生が、授業を終えた後に、Mと合流して、相談をし始めた。菅野先生(本人):[菅野です、で、私の中にいるのは…]菅野先生の心:[…iと呼ばれてるわ…]話しは大体聞いたが、エリートに昇りつめるまで、自分を殺してきた、でも自分を越える心にはならなかった。両親が、心の中でケアをする派遣の話しをどこからか入手し、本来は自分の悩みを解決するために自分自身が呼ぶはずが、父親が強引に呼び出して、父親の心から彼女に転送したのだ。理想の彼でもなく、しかも父親の好みと思われる女性。自由もなく、恋もない、ただエリートになるためだけの派遣。菅野先生自体は、綺麗系のお姉さん風だったが、見た目だけで、中身は彩香に程近い、普通でちょっぴり幼い気持ちを持っていた。
2007.05.09
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怒涛に迷う学校。ごく普通のこの学校に、とんでもない転換期が来るとはまだ予測不可能だった。まだエリートに対応が出来ず、逆にその英才生徒を抑える考えだった。しかし、半信半疑だった学校に判断を下した結果は、英才生徒を落第させるという安易な考えだった。校長の独断な思い付きにより、外部からの講師が招かれ、エリートクラスが新設される事になったのだ。このクラスに入るために、ある試験を行う。英才化した生徒に無理難題を出題し、落第させて元のクラスに落ち着かすための第一段階、合格した生徒に、講師からの難しくて厳しい授業を受けてもらい、絶望感を与える第二段階。それでも食らい付く生徒には、人数によっては、ようやく名門大学への手引きをしようという内容だ。学校としても、これだけでかなりの費用をかけていたため、これで落ち着けば、委員会からいい言葉が頂けると確信している。だが、そうはうまくいかなかった。難題になればなるほど、講師が厳しくなればなるほど、生徒はますますレベルを上げていったのだ。そして、結果は、エリート化した生徒約80人、全員クリアしてしまったのだ。副校長は、とんでもない事態に、エリートクラスをもう1つ用意しなければならなくなったのだ。更に費用がかかり、赤字にまでなった予算に、委員会も、ショックを受けたが、80人もの生徒をイッペンに大学斡旋は厳しいとされ、特別講師も追加となり、2クラス体制で続ける事になった。そして事態は、予想もできない展開になっていった。彩香達クラスにも数人エリートに行っていた。その中に、亜子と佳代も加わっていた。「最近どうしただろうね、すっかり会わなくなっちゃったし」「同じ学校にいるのにおかしいね、引越しちゃったみたいでさあ」そんな噂が聞こえてきた。彩香と仁美は、学校がだんだん意地になっているように思えた。Mは、今エリートクラスに忍び込んでいた。この中でとてもピュアで力強い心を持った者がいたのだ。それは、生徒ではなく、特別講師として2クラス目に新しく配属された、菅野先生という、厳しく学びながら、確実にトップを目指している中、安らぎというエッセンスを交えた新しい学習法を取り入れた第一人者だった。彼女は、本も出版しており、エリートの中の安らぎを訴えている。厳しいだけでは子供は延びない。教えるだけでは身につかない、与えるべき物は全て与えるべき、という内容だ。芸をした後に餌を与えるペットのようだと批判も出ていたが、効果は絶大で、どんな形で生活をおくってきた生徒にも備わっている気持ちがあれば、必ず目的の単位をとることができたのだ。Mはこの菅野先生の心にトライすることにしたのだ。エリートクラス以外の生徒は、今までの勉強が足りなかったという判断だ。だが、普通とされた彼等にも、かなり変化している者がいた。全くしていなかった生徒でさえ普通のレベルにまで上昇し、自分自身でも驚いているらしい。彩香は、心の中で、彩香:[こんなもん、学校じゃないっしょ!]
2007.05.08
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Mはずっと思い悩んでいた。仁美はそれを察して、仁美:[彩香ん所より居心地悪いかなあ?]M:[…わかってたんだ、でも、落ち着くよ、ここは。…]仁美が勉強し過ぎて自分に余裕がなかった分、今はMとのひと時をすごせる事が一番うれしかった。M:[…仁美は、僕に今してほしい事ない?…]突然の質問に、仁美:[決まってるじゃない、でもそれは無理じゃん、どう考えても]Mは仁美の思いはわかっていた。しかし、仁美は、その質問の後に、何となく、彩香の姿が映ったような気がした。何日か経って、学校の雰囲気が変わってきていた。学校側は、本校の平均成績が上昇気味であることがわかった。最初は学校のイメージ的にも好感度が上がるなど、喜んでいた。だが、喜んでいられたのはほんの僅かだった。勉強に走る生徒達は、次第に学校に不満を抱くようになっていたのだ。しかも、登校拒否をする者が増加していた。急遽、学校側は対策委員会を起てて、調査に入っていた。校内でもアンケート調査に協力してもらい、外部調査と統計をとった。その結果、[学校で学ぶ範囲が狭い、また、遅れている][優秀な教師がここには存在しない][生徒が落ち着いて学べる部屋がない][冗談をいう先生はいらない]という内容だった。冗談さえ通らなくなった生徒達の考えはどの方向に向かっているのか、学校側にも不明なままで、遊ぶ暇がないほど、偉くなりたいのか、リラックスすら惜しむほど切羽詰まっているのか、誰一人相談すらない。完全に学校を否定的に見ていたのだ。彩香にも変化は見られたが、普通に勉強するようになった程度で、他の生徒の親からも、不思議がる電話がかかってくる。彩香の母は、「親にもわからないなんて、どうやってもわからないよ」「でも、元から英才受けてる子は、それ以上の変化はないみたいだよ」そこが一番のカギだった。彩香は、早速Mにこの状態を修復する方法を聞き出した。Mの様子がおかしい。いったい何が起きてるのか、事情を探り出した。その結果、Mに自信を喪失っていたのだ。それともう1つ、もっとも深刻な事が。Mは、仁美の心にいながら、彩香の事を考えているのだ。彩香:[あいつ、やっぱり、冗談なんかじゃなかったんだ!]仁美の中にいるのに、もし仁美に気付かれたら、大変なことになる。仁美を心から救えなくなる、Mの任務は永久に終わらない、そして、Mは結局どう転んでも恋愛は不可能なのだ。
2007.05.07
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彩香は、仁美に対するMの気持ちを察したが、やはり、そのままの気持ちが通用するはずがない。ある日、Mが再び彩香の心にいた。どうやら、任務に煮詰まる事以外に、悩みを抱えている様子は、彩香にもすぐ察知した。[…最低だ、こんなはずじゃなかったのに…][一つ言える事は、まず、がり勉どもには被害がない、普段勉強してない人に変化が見られ、その子が登校拒否に走っていると、それを対処する方法は何か、それともうひとつ…][…言わなくてもわかるよ…][いや、言わせてもらうよ、私に対する感情は捨てるべきよ、でないと、あんたも、私も、仁美を失うことになるわ!][…わかってる、これじゃ派遣失格だね…][だからぁ、あんたは何しにきたか、あんたの立場考えなよ、生身の人間じゃないんだよ、そんなの、始めから無理に決まってるのに、馬鹿じゃないの!]彩香は思いきり冷たくあたった。でもそれは、見破られるかもしれない、Mに嫌われるための手段だった。Mは、それでも充分、彩香のやりたい事が伝わっていた。にわかがり勉に対策の手段は、学校でも話しが出ていた。「この際、本当に優秀な講師を呼ぶしかないのかもしれないな、特設だが、優秀クラスとして別の教室を設けるんだ」「でも、それをやるのに、委員会が許諾するかどうか」「それには一つだけ手がある」副校長は、強気な発言をして、講師派遣の方向で会議を終えた。赤津先生は、副校長のやり方が気になっていた。校長も知らない事を多く知っているという情報が何者かによって、入って来ていたのだ。Mがスランプに陥っている間に、生徒が気が付かない程度に学校の内部から異常が見え隠れしていた。仁美は、さっきから、彩香の事を考えていた。あの時、かすかに彩香が見えた…この先、Mが来るようになっても、嬉しいより不安になることが多かった。外にいる時、Mは、[…仁美が気付きだそうとしている、このままでは、本当にここにいられなくなる…]彩香に相談すべきか、それとも、他の生徒に乗り移るか?あくる朝、いつものように、登校する彩香と仁美。それよりも先に学校に来ていたM。[…心のピュアな子じゃなければ…]校内で新しい生徒を待っていた。Mは以前にも同じ作業をしたことがあるが、性格が一致することなく、見つからなかった事があるので、余計に気を使っていた。最初に来た生徒からじっくりと観察しながら、彩香の心と比べていた。[…いかんいかん、まだ頭が動いてないのかな…]頭のせいにしたが、まったく問題なかった。Mが、[…あっいた!…]と思った瞬間、彩香達が入って来たのだ。やはり居なかった、彩香以外は。
2007.04.27
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一度も経験したことのない、もうひとつの現実に、彩香は、普通に暮らす事がどれだけ大切なものか、改めて思った。駆け引きもなく、疑いもない、そのままの生活。貧乏だって普通に生活していれば、どんなに幸せなことだろう。あくる朝、学校へ向かう途中で、[うちはうちでよかった]と、呟いた。仁美にも、居候の狭い部屋が気に入っていた。どんなに広い家で、どんなに広い部屋があっても、魅力がなければただの箱。自分の生き方を見つければ、おのずと周りが見えてくる。こんなんじゃない。学校に着くと、クラスメイトの数人が、仁美の噂に加え、彩香の事まで話題になっていた。もう、これ以上増えれば、リセットせざるをえない。しかし、慎重な判断が必要だった。一人一人のレベルでは済まされないからだ。彩香は、自分の噂だったら我慢しようと思ったが、仁美の事までは許せなかった。[どうすればいい?]彩香はまたもや戸惑った。[…普通に考えるって、駆け引きも何もない、思った通りに動けばいいのに、それが難しいものになってきている。普通の事なのに…]Mが優しい声で彩香を勇気付けた。リセットの副作用は何と言っても記憶障害。気苦労が多い人ほど、記憶が消える割合が高いといわれている。逆に言えば、普通にしている人程ダメージが少ない、今はそれを信じるしかない。[違う方へ、難しい方へと考えていっちゃうんだよね、普通にしていればどうって事ないんだよね]ゆったりしながら、言われていることを抵抗なく聞き入れながら、目を閉じて、息を止めた。…………………………まもなくして、彩香は突然、全身が風になびくように、髪が舞い上がり、教室も風に包まれ、その風は、廊下をつたって、全体に行き届いた。[…この感覚だ…]Mは人間が発動したリセットを初めて見た。ゆっくりとその風は、校舎を出て、周辺までに到達、Mの想像より広範囲に広がったのだ。しばらくして、学校内は一瞬のどよめきもなくなり、静寂していった。まるで誰もいないかのように、学校、その周辺の町が静かに音のない世界となった。彩香は、自分自身に負担を感じていなかった。逆に、清々しいと思っていた。[今のがリセット?これだけで?][…やはりそうか、個人差で記憶が飛んでいる、下手すると、受験に影響する恐れがある…]Mは、リセットを受けたダメージの大きい生徒のピックアップをしていた。その人数は、3名、そのうち、亜子と佳代も含まれていた。彩香はそのことを知り、[どう対処すればいいの!?]Mは、しばらく考えた。[…問題は受験だとすれば…]
2007.04.27
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彩香の心に潜んでいる以上、彩香には、Mの気持ちがわかってしまった。彩香はそれでも気付かないように振る舞うようにした。何故なら、仁美の為に来ているのに、それはいけない事だと思っているから。Mもまた、心に潜む立場上、彩香の気持ちを察した。そう、こうしている場合ではない、この疑惑を放っておくと大変な展開になることを、2人は、暗黙でも感じられた。噂は、犯罪のカギともなり、それは、マスコミも巻き込んでいく、最大にして最悪のアイテムと化していくのだ。日本中どころか、世界規模に知れ渡り、ネットのつまらぬカキコミで最速にネタをばらまかれる。そんなネタがベストセラーにでもなれば、書いた者のいいようにされて、書かれた本人は表に一生出られなくなる。笑う者が居れば、苦しんでいる者がいる。それがきっかけで物騒な事を思い付いたりするのだ。人間とは、人の欠点や悪口を言うケースは2通りある。1つは、影で言われるタイプ。目の前に居る時はいい顔して話しているが、いなくなると、突然に言えなかったことを噂する人って必ずいる。どちらかといえば、こちらは大人、いわゆる、会社内でのケースで、目の前だと大人げなく感じるからなのだろう。もう1つは、子供や学生で多くある、目の前ではっきり悪口を叩く、言いたい放題なケースだ。こちらはいじめに等しい感じはする、でも内容にもよるが、居る時に言われるほうがまだましな場合もあり、影で何を言われているのか不安になったりする事があるだろう。自分の悪い部分が直せるのであれば、目の前で言って欲しい事も、親切な行為だと思うが、その考え方、捉え方も様々だ。噂とは、影で正しく伝わる保証がない。何故なら、人それぞれ考え方、捉え方が微妙に違うからだ。彩香は、噂というものが個人個人が知らぬうちに起こしている最大の集団いじめだと思っている。言われている立場を考えていれば、必ず言えない、暴力もできないはずだ。Mはまた、そんな風に思っている彩香を助けよう、そして、仁美だけではなく、他にも同じ目にあっている人達を救いたい気持ちで一杯になっていた。今日はいつもより客が少なかった。でも、Mがいたので退屈にはならなかった。Mは、[…君のような性格の人がたくさん居ればいいのにな、そしたら、いちいち僕のような者が来る必要もないんだよ…]彩香:[何矛盾なこと言ってるの?こういう性格がいなかったら、中に入れなくなるんじゃない][…それもそうだね、でも、困ってる人って必ずいると思う。だって、完璧な人ってこの世にはいないんだから…]そのためにMがいる、そのために恋愛をすることは許されなかった。人気blogランキングへ
2007.04.26
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Mの希望とは真逆に向かっていた。噂を流し回っているのは彩香という事になっていた。仁美にもまだ嫌がらせが静まっていないうちに、その発端が彩香になっているのだ。2人の生活環境は確かに真逆で、仁美は見下していたことに腹がたっていじめに走った彩香という筋書きだ。Mはその裏を暴いて解決する任務があったが、不便なことに、Mとは違う世界では、人を利用しなければならなかった。しかも、清らかな心を持った人でなければならない。彩香がその対象者なのだが、その彩香が危険な立場にいる。もし彩香がその事を気にする事が深くなればなるほど、Mの入る余地はなくなってしまう。しかも対象する彩香を捜しだすまでどれだけ時間がかかったか、Mには彩香だけが頼りだった。M:[…今入って食い止めるしかない…]後は彩香の心理次第ということに。彩香は今日は早く下校していた。アルバイトをするためだ。某レンタルビデオショップで二年働いている。アルバイトとしてはベテランだ。Mは一生懸命働く姿をしばらく見ていた。自分のため、家族のために、少しでも余分に稼ぐ事が大事だと思っているのだ。仁美にはアルバイトの経験がなかった、というかさせてもらえなかった。親のプライドが、仁美を固く縛っていたのだ。裕福だが自由がきかない、貧困だが、のびのびしていた、その違いはあまりにも大きすぎる。ある意味、哀れに感じていたのは彩香の方で、仁美が苦しんだ分も気持ちに添えていた。アルバイトをしている彩香を見ているうちに、何だか接客してもらいたいと思ったMは、店にいる客からインサートできる人を探しだし、心に潜入した。客は自分が欲しいビデオを持った瞬間、他にも借りたいビデオがあったが、すぐにレジに向かわせ、彩香の前にたどり着いた。彩香:「いらっしゃいませ、1点でよろしいですか?カードお願いします」働く姿が清々しい、働いている顔はかっこいい。Mは、仁美の理想から抜擢されたはずだった。しかし、予想もしていなかった気持ちが芽生えていた。仁美の任務を果たすためなのに、仁美に入れないでいたMの心は、完全に彩香に向けられていたのだ。M:[…何やってるんだろ…]我に帰ったように、客の心から抜け出した。客はキョロキョロしながらも、気にせず、店を出ていった。彩香は棚に向かい、整理をし始めると、彩香:[なんだ、いたの]M:[…ああ、さっきからね…]Mは、さっきの事が気になって、思うように喋れなかった。彩香:[どうしたの?いつもとノリが違うじゃん、仁美の事?それとも…]M:[…いや、仁美は今は大丈夫だ、ただ、噂がおかしい方向に…]彩香:[わかってるよ、あたしでしょ]彩香は自分で感じていた。だが根に持つタイプではなく、楽観的な性格だったのが幸いしていた。M:[…でも、このままでいいわけないよ…]人気blogランキングへ
2007.04.24
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親友であり、尊敬する人にもし裏切られるとしたら、きっと頭がおかしくなるに決まっている。世界が180度回転したかのように、動転するはず。仁美はそんなはずはないと心に誓いたかった。だが、一瞬でも発生した疑惑はそう簡単に消せるものではなかった。次に彩香に会った時に普通に顔を合わせる事が出来るのだろうか?夢で会ったMが、仁美にとっては最も頼れるも、実在しない、仁美が作り上げた理想の彼氏。しかも、心の障害が癒えないと入って来れない状態が続いていた。夢を見るまで相談も出来ないと思う仁美は、まだケアが必要だった。仁美に入れないMはこの様子を見ていた。声は紛れも無く彩香だが、どうも様子がおかしいと感じ、保健室を密着していた。仁美の帰宅する時、後から彩香が来るのではと思い、遅く歩いていたが、この日彩香は現れることはなかった。噂を消し去るために動いてくれている彩香を疑うのはとても辛い。どうして一度思ってしまうと、それを打ち消す事が出来ないんだろう、と苦悩する仁美には、周りで噂している声は届かなかった。狭い部屋で宿題を終え、おじさんに挨拶をしたあと、布団に入ってしばらく考えていた。父と母は私をどう思って育てていたんだろう?と咄嗟に考えていた。大して遊んでくれた記憶もなく、不自由ではなかったが、季節感がないというか、変化を感じなかった生活。大人になったらわかると言われ、その時は考えもしなかった事を今どういうわけか、それがどういう事かわかったような気がした。現実の厳しさが、火事を産んだ、これは運命だと仁美は甘んじていた生活を後悔した。[…あの声は彩香じゃないよ、保健室の先生と仲のいい生徒であることは間違いない、けど、君にそれを教える事は出来ない、君には疑惑の心が肥大する癖があるから…]はっとして気が付いた。いつの間にか熟睡していた仁美にMが語っていた事を思い出していた。仁美:[彩香じゃなかったんだ、でも、彩香の声そっくりだった。それに私、人をすぐ疑うという悪い癖があったのね]そんな嫌な部分を消したかった、その願望が作り出した彼氏、M。一報では、彩香そっくりの声の持ち主を探していたM、周辺を廻っていたら、また新たな展開に気付いた。周辺の噂を流している根源は彩香だというのだ。それがその保健室にいた生徒だとすると、やはり情報の元は、やはり保健室からという事か?たくさんの生徒が相談に訪れる保健室。それが今、疑惑の拠点になっている事が事実なら、噂の犯人は、複数いる可能性が高い。それとも…。人気blogランキングへ
2007.04.23
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2人はお互いに気持ちを確かめ合いながら、学校への道のりを繋いだ。学校では皆が仁美をじろじろしている生徒が目立つ。それでも仁美は頑張って教室までたどり着いた。すると、クラスメイトから熱い視線もなく、普通にしていた。1人が、「あ、仁美、おはよ」と言ってくれたり、「がんばろ」と応援とも聞こえる言葉も飛んできた。彩香はクラスメイトの心に偽りがないことに安心した。偽りがないというより、学校の方針が絡んでいることを察知した。クラスメイトが普通にしているのには、これから始まる一大事業に、学校側は何かに賭けていることと関係がありそうなのだ。だが、いじめられていたという事実はどこかに潜んでいたままだ。だから、以前いじめていたのにも関わらず、開き直るような状態なのだ。仁美自身、さっきまでいじめていたクラスメイトに応援される事が、歯痒くもあり、複雑な心境だった。「朝から国語の時間だね」赤津先生が入ってきた。そしてすぐにこの教室が違う空気である事に気付いた。赤津先生:「仁美、元気だったかあ?皆から続きを教えてもらってるかな?」仁美:「は、はい、大丈夫です」赤津先生:「そっか、じゃあ、授業をやるぞ、昨日の続きだから、52ページな…」普通に振る舞う赤津先生の心に集中していた彩香。彩香:[あれ、いつもの感じなんだけどなあ?]反応は無しだ。Mの言っていたのは勘違いだったのか?授業は普通に進行し、チャイムが鳴った。すると、赤津先生:「仁美、後で遅れている場所をノートにとってほしいから、来て」仁美:「は、はあ」何の疑いもないまま、先生は教室を出た。彩香にも心配の気持ちがなくなり、Mに何て言おうか考えていた。仁美は放課後、職員室に行ったが、赤津先生がいなかった。他の先生に聞いてみたら、「頭痛いとか言ってたから、保健室行ったんじゃないか?」はっきりしない言い方だったが、とりあえず保健室に行ってみることに。生徒は殆ど帰宅したようで、静まり返る校内。暗い廊下の奥から光り輝く保健室に着いた。扉を開けようとした時、何やら話し声が。よく聞くと、女性の声が2人。仁美:[あれ、赤津先生ここじゃなかったのかな?]と思い、戻ろうとしたら、「拡大させて、もっと注目させなきゃだめだよ」少しトーンが上がった声が聞こえた。[!]仁美は、その言葉が何を指しているのかがわかりかけた、仁美:[拡大するってって、何の事?]更に、「この街に近寄せてはダメ、ホントに頼りないんだから」確かにこの声は、仁美:[あ、彩香!?]人気blogランキングへ
2007.04.22
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次の日、朝の目覚める前に夢を見た仁美。彩香から少し離れ、仁美にはまだ入れないが、ささやくだけのことは出来る。少しだけ癒えた体の中でMが少しの間、仁美に伝えたい事があった。M:[…彩香は頑張ってくれている、君が元気に学校に来てくれるのを楽しみにしているよ、だから、これだけは言いたくて。学校に行く途中、何があっても、彩香に会う事だけを考えて、もちろん、僕にもね…]そう言い残して、夢から覚めた。人を危めるのは簡単だが、癒すまでにいくのはかなりの時間を要する。Mは、彩香があそこまでしてくれなかったら、仁美に夢を見せる事すら出来なかっただろう。彩香の自宅には、母が心配して彩香が目覚めるのを待っていた。母:「何も言わないからこの子。」保健室の先生からは、具合が悪かったのは軽い貧血という事になっていた。だが、知っていながら母に嘘の連絡をしているのだ。先生にもあの一件の事を知っていた。それは、あの赤津先生が情報流しているからだ。赤津先生の秘密とは?そしてその目的は一体何か?目が覚めた彩香は、目の前にいた母を見つけ、彩香:「何してんの?びっくりするじゃん」母:「先生が心配していらっしゃってたよ、大丈夫かって」彩香:「そんなん、大丈夫に決まってるじゃん、変なの」彩香は、理解出来ないまま、いつものように、パンを加えながら玄関を出た。母は、何故か、貧血の事が言えなかった。彩香が貧血なんて今までなかったからだ。それに、貧血なんてありえないと思い、その時は気も止めずに母:「ま、大丈夫っしょ」と、仕事に行く準備をしていた。彩香は、学校のある駅に降りる時、改札口を出る仁美を見つけた。彩香:[彩香、出てきたンだ]話し掛けようとした時、仁美の様子が違っていた。何やら耳障りな仕草をしながら、俯き加減で歩いていた。そっと、仁美の肩を叩いて、彩香:「おはよ」すると、仁美:「淋しかった…」と言って、彩香を抱きしめた。彩香:「どした?なんかあった?」仁美:「え、ええ…」彩香:「ああ、わかったわかった、頑張ったね」仁美:「?」仁美は何も言ってないのに、彩香の反応が妙に思ったが、すぐに安心した気持ちになって、肩を並べて学校に向かった。彩香は、仁美にやはりろくでもない噂が立ち並んでいたことを知ったのだ。それを仁美に言わせまいとしたのだ。Mがついてから、人の心が読めるようになって、1週間が経過した。使い方にも慣れ、相手を傷つけない程度の受け答えも出来るようになった。辛いのはやはり、知りたくない心も知ってしまう事。知られたくない気持ちは誰にだってある。それを思うだけなら何も怨まれない。それを口にしただけで、どうなるかなんて誰にもわからない。人気blogランキングへ
2007.04.19
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赤津先生とは、高校1年生の時の担任だった。彩香達は現在新3年生となり、国語の授業も3年目を迎える。赤津先生はとても生徒の気持ちに熱心で気を使っている方だった。だから生徒からは、信頼性の高い部類に入っている。むしろ、偉い先生ほど信頼性が薄く、校長の話しなどほとんど耳に入っていないかもしれないくらいだ。中で信頼性の低い、副校長には、「簡単ではありますが…」と言っておきながら校長より長い話しをする事と、セクハラ疑惑が噂されていたのだ。しかしながら、噂でしかないので、これといった証拠もなく、証言もない。噂とは、気に入るか気に入らないかで決まってしまう可能性もあるので、それだけで判断される、人間が決められてしまう、ある意味、恐るべき武器なのだ。彩香は、彼の言葉をすぐに信じるわけにはいかなかった。即効な先入観だけで人を判断したら、単なる悪い噂の発端に成り兼ねないし、それだけで人を失うかもしれない。彼の能力が、人の心に入るという事は、確かに噂と一致するのかもしれないが、思っている事が悪い事なら、それを実際に行動にするかしないかの判断はつくはずだ。地球上にいる全ての人間の心の中には必ず悪い事が芽生えているから、だれでも罪を犯すチャンスはあると思うが、ただそういうケースを思うだけで実行しない方がほとんどである。こうしたら結果が見えている人、それに対して、先が見えていない人。その違いが犯罪を生む事になるのだ。彩香も彼も、[噂]自体、罪だと考えていた。彼が彩香を選択したのもそれが理由だった。しばらくすると、彼は、[…やはりこの事態は、リセットに踏み込むしかなさそうだね…]彩香:[何、前もそんなこと言ってたわね][…ああ、そうだったね、それには覚悟も必要だとも言ったっけ?…]彩香:[ええと、そうだったかな?]彩香はごまかしながら話していたが、[…あんた、僕を誰だと思う?…]彩香:[何急に?][…仁美が作り出した人間って言ったが、本当は選ばれたんだ…]彩香:[どこかから来たって事?][…そう、でも、理想の彼氏にはかわりはないよ…]彩香:[仁美が作り出したわけじゃないんだ?][…いや、作り出してくれないと現れないんだ…]彩香:[ややこしいけど、派遣みたいなものね][…ああ、その言い方でいいよ、ある意味、任務見たいなものだからね…]彼の任務とは、当然ながら、仁美の心をケアすることだ。仁美に悩みがあり、それから逃れたい、何かに縋りたい気持ちが発生した時、派遣ではないが、指令のスイッチが入り、仁美の思い描いた、「心の友」を呼んでいた。彩香:[名前はあるの?][…ないけど、皆が、Mと呼んでた…]皆とは?そしてMとはどういう意味か?人気blogランキングへ
2007.04.18
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彩香は、ひそかに仁美にメールを送っていた。だが、返事がまだない。彩香:「この噂、どうやって食い止めればいいのかなあ?」そう思いながら、とりあえず、教師達を探ってみることに。そういえば、声の彼が最近彩香にいなくなっている。すると、突然、仁美からメールが届いた。仁美:[ゴメンね、あたし、自信喪失になっちゃって、何もしたくなかったの、でも、さっき、あたしの心の中でささやいてくれた人がいたの、信じてもらわなくてもいいけど、なんか勇気をもらったような気がして]メールはそこで終わっていた。彩香にはわかっていた、あの彼は、入りにくくなっていた仁美に何とかわかるように、伝えられたんだと。仁美の心が少し治まったのはいいが、地区で広まった噂をどうするか?保健室の柚木先生は、生徒の心のケアを診察する精神的分野の医師免許を持っていた。相談に来る生徒を一人一人診断して、その場でアドバイスをしてくれる、とても生徒から信頼を受けている。仁美も相談をしていた1人で、他の生徒より多く診てもらっていた。柚木先生は、仁美の事を心配して、その後の対策を考えていたのだ。彩香も力になろうと先生に持ち掛けたが、柚木先生:「たとえ親友でも、踏み込めない場所があるわ、先生としては、その部分と接触するのは危険だと思ってる。」彩香:「触れない程度にやるから」柚木先生:「触れなくても勘が働くものよ、だから、あなたの気持ちだけで充分よ」彩香:「……」彩香はがっかりした、が、仁美のためだと思い、影で応援することに。ふとした時、M:[…やあ、またしばらく…]彩香:[仁美はどうしたの?]M:[…知ってたか、仁美はとりあえず大丈夫、ただ問題がある…]彩香:[何?]M:[…仁美はあの保健室に何回か通ったみたいだけど、怪しいんだよね…]彩香:[どういう事よ?]M:[…さっきあんたに入る直前に感じた事があってね、昨日、保健室にいったでしょ?…]確かに昨日は気分が悪くて保健室に行っていた。M:[…あんとき僕が入ってたらすぐにわかったんだけどなあ。残念だ…]彩香:[意味がわかんないよ、いたら何がわかったの?]M:[…噂をもらしている犯人さ…]彩香:[何だって?!]彩香は彼を真っ先に疑い、耳を、心を閉ざした。保健室の先生というより、会いに来た赤津先生が怪しいと判断していたのだ。彼を信じるか、それとも、先生を信じるか?少なくとも、仁美が作り出した幻想を信じられるかどうかだった。人気blogランキングへ
2007.04.17
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数日後、急に仁美が学校に来なくなった。学校中に広まっている仁美の噂は更に悪い方向に向かっていたのだ。全校に広まっている噂は、とうとう学校以外にまで発展していたのだ。家から出ると、親どうしで会話しているのを見つけた。その噂は、やはり多人数で、ないことまで話しが進んでいたのだ。自殺未遂した親の子供とか、火事で野宿しているとか、ひどいのは、自分が悪いのに仁美達の責任にする人まで現れ、人間の悪い所が出てしまっている。悪い部分を数えればきりがないのが人間。良い事を10回やっても、悪い事が1回でもあればおしまいだ。何故噂が増殖していくのか、学校側も深刻に考え、街に調査を始め、いろんな角度から噂の根源を探ろうとしていた。彩香は、学校中の噂がまる聞こえだったが、根源はどうやってもあばけない。次第に頭が痛くなってきて、吐き気がするようになってきた。彩香:「先生、ちょっと気分が悪くて…」と言って、保健室へ行くことに。1階の片隅にある保健室に向かう。ノックをすると、「どうぞ」という先生の声。彩香:「失礼します、あの…」保健の先生:「わかってるわよ、早くここで休みなさい」彩香:「?」言わなくてもわかるのは、やはり彼の言っていた能力からきているものか。ベッドに横になり、カーテンを閉めた。しばらくすると、もう1人、保健室を尋ねて来た人がいた。「失礼、どうだい、調子は?」彩香:[これは国語の赤津先生だ。何の用なんだろ?][………]会話が途切れて、聞こえてこない、一体どういう事だ?彩香が頑張っても聞こえて来ない会話があるのか、不安げにカーテンの隙間から覗いてみると、2人はさりげなくキスを交わしていたのだ。彩香:[なるほど、そういう事ね]と、納得した彩香は、再び頭痛がしてきたので、もう一度横になった。ところが、このあとに、不思議な事が起きたのだ。彩香が気が付かない方法でこの先生達、何やら秘密の会話が交わされていたのだ。この一件、どうも学校内部も視野に入れなければならないと気が付いていたのは、あの彼だ。彼は自分の体を元から持っていないために、心を通じて誰かの協力がなければ実行出来なかった。彩香が立ち直るのを待つしかなかったのだ。保健室での密会は、仁美の件を含め、更なる事件への引き金となっていくのである。人気blogランキングへ
2007.04.16
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仁美だけが素のままだった。人の心を盗むようなことも、憎むこともなかった。[今あたしは仁美を助けるはずなんだけど、何だか仁美の表も裏も素直なんだよなあ]ギャップはあるものの、どちらも仁美そのものだった。それが性格であり、彼女を作り出していた。すると、[…しばらくだね…][あ]仁美が様子を伺い、「どした?」「いや、何でもないよ」[どっちが監視されてるんだか…]突然戻ってきたあの彼は、[…仁美の両親を見て来たが、どうやら自殺未遂と放火では捕まらないようだよ…]彩香はそれを聞いて、病院側が下した結果となると、無罪にはなるけど、通院する可能性があるって事が理解できた。彩香:「仁美って今そういえば、今どこにいるの?」仁美:「叔母さんちだよ、あの商店街の八百屋の叔母さんち。知ってるでしょ?」彩香:「ああ、わかった、あの2階の部屋でしょ、昔遊んだとこ」仁美:「そう、昔のまんまだよ」仁美は笑いながら、「そこに住むなんて夢にも思わなかったよ…」目には涙が溜まっていた。[…彼女、かなり参ってるようだね…]謎の声は一体何なのか、何処から来たのか?彩香は今度こそ聞き出そうとした。[…今は仁美が相手…]といって、逃げていた。思いやっている仁美の心には、なぜか窮屈なものを感じる。常に無理してるって事なのだろうか。クレープを食べ終わり、改札へ向かい、またいつものように、仁美:「また明日ね」と、反対方向に歩き出した。しばらくすると、あの声が、[…実は、僕、仁美が作り出した彼氏像なんだ、思い続けているうちに、仁美の心の中で、知らないうちに意志を持つようになった。そしたら、急に仁美の体に居づらくなった。それで、外に出て見たら、ずっと仁美の心しか判らなかったのが、突然、人の心が見えるようになった。しかも複数がイッペンに。…]彩香はそれを聞いて、思わず吹き出した。[あんたが仁美が理想している彼だってぇ?笑っちゃうなあ][…馬鹿、笑ってる場合じゃない、僕がここにいるって意味がわかるかい?…][何よ?][…彼氏がいないって事さ…]彩香は納得していた。[…あれ、怒るかと思ったのに、意外と強いんだね…][そういうの強いって言わないでしょ、ということは…][…?…]彩香は勿体ぶった言い方で、彼を困らせた。彩香には好きな男性がいたがまるっきり片思いだった。しかも違う学校だったため、会う事も少ない。[あたしが理想の男性を思えば、あんたは消えちゃうのかな?][…消える場合は、実在しない理想を立てた時、でもあんたは、実在する彼氏を思っているから消えないんだ…][それを知ってて来たわけ?][…そうかもね、でも勘違いしないでね、消えるというよりは、変わると言ったほうが正しいかな…]彼は声だけでもかなりのパフォーマンスぶりを見せていた。人気blogランキングへ
2007.04.12
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自分自身は救えない、それは一体どういうことか?彩香にとって謎めいた事が起きている。外部では火事の件、噂話しの流れや、友達の意味。そして謎の声の存在だ。一体、どこから、どうやって、なぜ彩香なのか?[この前言ってた、リセットとかで仁美を救えるって事?][…そのはずだったけど、今となっては数が多過ぎるな…][あんときやっとけばまだ2人、今は……え、全校!?][…仁美一人を救うために、あんたも全校を敵にまわすか、それとも…]言いかけた声は突然消えた。[何処?どうして黙るのよ]不安になってきた彩香は、リセットする意味を考え直していた。人間の表と裏、どちらも同じにしている人は少ない。妬む人、憎む人をリセットしたら、本当に仁美は助かるのか?リセットされた人はどうなるのか?授業にも気が入らない中で、彩香はぎくしゃくしながらもクラスメイトにしがみつき、浮かないように、目立たないようにしているはずだった。だが、意識すればするほど気配を感じ、視線を感じ、勉強をするという感じではなかった。その状況は、仁美にも同じ感覚に曝されていることを彩香は視野に入れておかなければならない。[なんか、丸裸にされたみたいな…]噂と視線が行き交う教室で、彩香は、[リセット・・・・]を初めて意識しだしていた。彼が言っていたことを思い出そうとしたが、ここでは全てをアピールすることになる。放課後を待ち、我慢しながら授業を受けるしかない。彩香の気持ちは仁美の気持ち、それは、表向きと裏側のギャップの大きさをしらしめるバロメータで、頭に強く焼き付くくらいの濃度で表示されている。まるで監視するかのように。[仁美はこのことに気付いているのかな]どう思っても仁美とは会話が出来ない、つまり、対象には直接手が出ないって事なのか?放課後になって、彩香は仁美に話しかけた。彩香:「ねぇ、クレープ食べに行かない?」仁美:「あそこのだったら行かないわ」彩香:「え、じゃあ、裏側の所は?」仁美:「そこならいいかな」仁美は例のクレープ屋には佳代と亜子が行きつけであることを知っていた。歩きながら彩香は、仁美の気持ちを探っていた。それに気付いていないにも関わらず、タイミングよく、仁美:「あたしさあ、学校辞めるかもしれないな」彩香:「え、急に何?」彩香がびっくりしたのは、発言したことより、読めなかった事だ。そんな事を考えていたとは思えない。仁美:「嘘だよ、びっくりした?」[!?]人気blogランキングへ
2007.04.11
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[一体、仁美に何が起きているの?][…あの火事は、仁美が出掛けた後に発生したって言ってたよね、あれ、無理心中だったんだ…][え、何で、どうして!][…本当は、あの家庭はとっくに事業を失敗してた、けど、お金持ちというプライドが捨てきれずに、無理矢理セレブな生活を続けていたばっかりに、とうとう底を着いてきたんだ…][詳しく知りたい、もっと][…いいけど、これ以上知ると、同情か、イイキミか、後で面倒くさい事になるかもしれないよ…]彩香は、深呼吸してから、[いいわ、あたしは絶対仁美の味方だから!][…それを口にして安心していいかな…][何よ、疑ってるの?][…だから、あんたの中に居て、出任せは効かないんだよ…]「そうだったぁ!」また周りの人に注目された。家に戻ると、平凡な家庭である彩香の家は、両親が働いていたため、夕飯は彩香が作る。妹の怜はまだ小学生なので、面倒を見る必要もあったので、高校生の段階で既に家事、養育等の経験をしていた。彩香:「今日はコロッケだよ、怜」怜:「え、こないだもコロッケだったよ」彩香:「うるさい、食べれるだけましでしょ」彩香はまだ料理のレパートリーが少なく、どうしても揚げ物や、冷食中心となってしまう。便利になってきた調理でも、逆にマイナスになる点が多く、好きな食べ物ばかり傾いてしまいがちな栄養のバランスや、調理しなくてもいい冷食などで、ますます料理が作れない人が増加している。経験を積むしかないが、やはり最終的には母親の怠慢とされてしまう。彩香は、自分のため、俊のために働いているんだと胸に込めて、小さな家庭に貢献していた。[…皆がその気持ちでいたら素晴らしいだろうな…][何関心してるのよ、いつでも必死なんだからね][…そうだったね、やはりあんたを選んで正解だったよ…][選んだ?また訳判らないこと言ってるし]彩香は謎の声との会話も慣れ、普通に生活を熟すようになった。ある日、学校に仁美が現れた。皆が様々な噂をしている中をくぐり抜けながら、彩香のいる教室へと向かう。職員室で挨拶を済ませ、礼儀正しいいつもの仁美をアピールした。しかし、その行為が、火事の一件で、ますます悪い印象へと発展していった。[…まずいな、このままじゃ、あの子、耐えられなくなるぞ…][確かに、まわりのブーイングが倍増しているみたい][…ここまでくると、からかうのも、同情するのも同じになっちゃう、だから、あの時やっとけば……][え、あたしのせい!?][…友達だからって気持ちはわかるけど、友達を失うより辛い目に合っているのは仁美のほうだよ、ああやって無理して振る舞っているのを放っておけるかい?…][じゃあ、どうして仁美ん中に行かなかったのよ]謎の声は、渋々答えた。[…自分の中で自分は助けられないんだ…]
2007.04.10
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いったい、仁美は誰のために我慢していたのか?[…あの子、家系が家系だから、家族に認めてもらおうと必死だった、家族の中では一番落ちこぼれだった自分が、そこまでやる理由は、家族の中で何か問題があったようだね…][何でそこまで知ってるの?っていうか、あんた誰?]すると、突然声が聞こえなくなった。すぐに、後ろから、「彩香、何してるん、帰る?」亜子と佳代だった。彩香はすぐにさっき聞いた噂話しが頭を過ぎった。彩香:「う、うん、いこっか」仲良くしているが、本当は何を考えているのか、疑うようになった。そんな気持ちでこれから付き合っていくのかと思えば、何だかぎこちない気もしたが、彩香はそれを乗り越えようと思った。駅前のクレープ屋で好きなクレープを買い、駅構内にあるベンチで一休み。すると、亜子が、亜子:「ねえ、仁美って今どうしてるん?」彩香:「えっ、さあ」佳代が、「何だ、かわいそうなんじゃん、こっちがなんかしたほうがいいんじゃない?」急に、彩香の心を読むように喋りだした佳代。すると、亜子:「え、仁美はそんなことまで考えてた?嘘みたい」次々と明かされる仁美の情報。彩香はようやく気付いた、仁美の話題が心で相手とリンクしたとたん、お互いの思いがスルー(表に抜ける)になることを。逆に、彩香:「佳代って、仁美にひどい事考えてない?」佳代:「急に何言い出すのよ、そんなこと思ってもいないよ」佳代が嘘をついた瞬間だった。彩香の頭に名前が表示され、[佳代…心の罪…重罪][?!]不思議に感じた彩香は次の項目に進ませたら、[判定…リセット…決断は彩香]リセット?彩香にはさっぱりわからなかった。[あいつ、あたしを何だと思ってんだ?]すると、佳代:「彩香、どうしたん?そんな怖い顔しちゃってさ」亜子:「そうだよ、仁美の事が心配なんだよね、きっと」彩香は話題を変えたくて仕方なかった。打ち消せば、元に戻るだろうと思った。亜子:「ね、今から仁美に電話してみようよ、こっちも心配だからさあ」するとまたあの表示が。[亜子…心の罪…重罪…判定……[もう、いらいらする!]変えたくても変わらない話題にいらついた彩香は、彩香:「このクレープあげるから、ちょっと用事思い出したあ、またね!」と、逃げ出すようにその場を去った。訳がわからなかった彩香に、またあの声が、[…逃げ出すくらい辛かったようだね、ちゃんと説明しなきゃ…]「なんなの?このままじゃ、友達無くすどころか、人間不信になっちゃうよぅ」思わず声に出してしまった。まわりの人が彩香を一斉に見た。[ああ、やだ!こんなの!][…頼むから落ち着いてくれよ…][落ち着けるわけないじゃん、消えろ!]怒りが頂点に達した彩香は、とっとと改札を抜けた。[…仁美なんだけど…][!]
2007.04.09
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彩香は、間違いなく声を聞いた。これは耳鳴りなんかじゃない。[授業中なんだから話し掛けないでよ]心の中で呟いてみた。すると、[…わかった、1つだけ、皆はあんたの考えが見えるんだ、今はね。じゃ、後でね…][何それ]心に思っただけで会話が出来る。しかし、謎の声とのやり取りには気付かない。彩香の気持ちだけのようだ。ところが、彩香にも信じられない能力がうまれた。[何?このざわめき!さっきまで静かだったのに]突然、何やら人の噂話しのような言葉が耳に入ってきた。まるで、わざと聞こえるように喋っているようだ。その中で、仁美の悪口らしき噂が入ってきた。[家庭円満に限ってあんな事件が起こるのよね][金持ちなんだからすぐに立て直せるじゃん][なんか同情できねぇなあ、いい君だぜ]間違いなく、仁美は敵を作っていたようだ。普段は大人しいが、成績は優秀だし、代表者に選ばれたり、部活動ではメインのレギュラーになったり、極めてトップに立つケースが多かったが、大人しくしているわりに、そんな待遇でどうしても目立ってしまうのは仕方なかった。だから、羨む人、讃える人もいたが、中にはよく思ってない人も少なくない。噂というものは、真実も嘘も全てその人の話題だから、複数の人が1人の事を話すという事がどれだけ重苦しいか、仁美は感じていたのだろうか。[悪口を言ってる奴は誰だあ?]彩香がそう思った瞬間、頭の中にその人達がリストアップされた。[え、何、この頭?!おかしくない?]そう思っている間に、なんと80名ほどの名前が挙げられた。別のクラスからも、そしてこのクラスにも当然いたが、もっとも親しいはずの佳代や、亜子まで入っていた。[こりゃああんまりだよ、あの2人がそんなこと…信じられない!]彩香はこんな能力いらない、早く元に戻してほしかった。授業が終わり、部活動のない日だった。帰宅しようとしたら、[…やあ!…]あの声だ。[何の用?あの能力を消してくれるの!?][…スループットか?それは僕のせいだけど、聞こえるのはあんたのせいだよ…][どういう事よ?][…それは、あんたが聞きたがっているからさ…][!]彩香は何も言えなかった。確かに仁美のことを言っている内容を気にしていたことは事実だ。でも、あんな悪口まで聞こえてくるのは予想外だった。[…結局、皆からどう思われても動じないのが、本当の意味での代表者であり、慕われる。彼女はただ躍らされていただけって事さ…][ひどい言い方ね、ちゃんとやってるじゃん!][…やってるさ、そりゃあ、言われた事も、嫌いな事もね、でもね、あの子は、自分のためにやってたんじゃないよ…]人気blogランキングへ
2007.04.08
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仁美の家の火災事件は、学校でも公表され、同情するものとしないものが必ずしも現れる。当然ながら、同情しないのは自分の事しか考えていない者の特徴である。"自分は大丈夫、関係ない。"仁美は、耳に入ってくる応援の言葉と、耳打ちする内容との対比に驚き、人間は外観だけでは難しいと思っていた。副校長に報告したあと、担任である田中先生と共にクルマで家へ向かった。仁美:「先生、うちね、本当は上手くいってなかったの」田中先生:「何突然、どういう事?」仁美は自然に話していた。まるで、被っていたものを削ぎ落としたかのように。仁美:「実はね、表向きは仲がいいと思われているのが辛くて……」田中先生:「どうしたあ?」涙をこらえながら、仁美:「本当は夫婦の中が最悪で、毎日喧嘩や暴力でひどかった。私には何もなかったけど、それより、父と母が対立しているのを見ているだけで辛かった。」溢れ出している涙が、仁美の顔を濡らし、どうしようもなくグシャグシャになっていた。田中先生は、外面のいい、調子にのっている親を何人もみてきたが、ここまで極端なのはおそらく始めてだ。大体の親は、少なくとも表裏はあるが、それは、礼儀とした基準や、その場の空気にも依ることもあり、決して見せ掛けの範囲ではなく、最低限のマナーとして考えれば普通の行動と言える。仁美のように、仲がよいと噂されていただけに、そのギャップに潰されそうになって、精神的苦痛に喘いでいた、被害者は子供の方にある。田中先生は、火災の一件の発端が何となくわかってきた。それでも何故、仁美が出掛けた後に発生したかはまだ謎だ。ハンカチを渡して、田中先生:「よくうち明けたね、それで拭け、ここはしっかりしなきゃ」田中先生は、カーオーディオに電源を入れた。---------------------------------------------------------------------------------------------5時間目の授業、彩香は、仁美の事ばかり考えていた。見つめられた時のあの目を思い出し、何かを訴えていたような気がした。そこへ、[…その思いはきっと正しいよ…]またあの声が聞こえた。今度は周りに友達がいる、だけど、聞いたことのない、甘い男性の声。彩香:「そんなカッコイイ声、ここにいないしなあ…」と独り言を言っていると、「彩香、彩香!」「え!」「前、前!」睨みつけている英語の由香里先生にようやく目に入った。彩香:「何でしたっけ?」由香里先生は、「何でしたっけじゃあないよぉ、仁美の事が気になるのはみんな一緒だよ、あんたが深刻になったってどうしようもないじゃん」なんでわかったんだ?考えていたことが。[…教えてあげようか…]人気blogランキングへ
2007.04.05
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仁美を捜しに行こうと、戻ろうとした時、目の前に仁美が現れた。仁美:「おっはよ、どうしたん?」彩香:「えっ、仁美知らないのぉ?!」仁美:「何が?」すると先生が、「お前の家が火事だって連絡が来たんだ、お前んとこに電話入らなかったのか?」仁美:「マジで!?そんなん、ええっ!?」動揺する仁美を支えて彩香は、彩香:「何かの間違いだよ、こんなに幸せな仁美がそんな目に合うわけないよ!」すると、仁美はその言葉に反応するかのように、仁美:「彩香って、やっぱりそんな目で私を見ていたんだ」彩香:「!?…」彩香は何が何だかわからなかった。彩香を振り切って、家に帰ろうとした時、先生:「今戻ってもしょうがない、連絡を待つんだ」仁美:「ほっとけって事!?」先生:「そうじゃない、お前が今行っても怪我されたら困るからだ」仁美:「それは違うね、困るのは先生の方でしょう!」仁美は涙を吹き飛ばしながら、先生にあたった。彩香:「仁美、なんか気に触るような事言ってゴメン、お願いだから一緒にいよう」すると、仁美は、仁美:「どうせ、イイキミだと思ってるでしょ」彩香:「なんでそんなこと言うの?」彩香は、仁美より動揺している中、仁美からそんな言葉を発する事が信じられなかった。しかし、その動揺した心のどこかで、羨む気持ちが悪いように表に出ていたのかと思えば、そう言われるのも無理ないとも思った。表向きとはいったいなんだろう?仁美の言葉は、仁美自身が彩香に対する意識そのものだった。人が切羽詰まっている時、相手の気持ちが読める一瞬がある。被害妄想が作り出す言葉とは相手の気持ちより自分自身がどう思うかで変わってくるのだ。ふだんは大人しくて優しいのに、本当は恐ろしい事を考えているとか、相手にそれが判ってしまう隙を見せてしまうのが被害妄想なのだ。意外にも冷静だった仁美は、先生に、仁美:「このままじゃ授業受けても頭に入らないよ、何をどうしたら…」先生:「そうだな、よし、副校長と掛け合って見るか」彩香も、「アタシにも何か協力したい」と仁美に声をかけた。仁美:「ありがとう、彩香、でも、私だけで大丈夫だよ」彩香:「そっか」そう言って仁美は先生と一緒に教員室へと向かった。この時だった、彩香の中で変わり始めていた。[…ねえ、あんた、今とても寂しいと思っただろ…]「え、何?」彩香に聞こえた謎の声。甘い感じの男性の声だった気がした。周りを見ても校庭には誰もいなかった。彩香は耳鳴りだと思い、聞き流した。それは、この章の最大のテーマに繋がる一歩にすぎない。人気blogランキングへ
2007.04.04
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たわいもない会話が続く中、彩香は、必ずしも一度は仁美の生活感らしき言葉を耳にする。仁美:「うちはさあ、いつも朝ごはんはパン食で、たまには和食なんかもいいんじゃないって家庭で議論になったりするの、変だよねぇ」彩香:「えっ、いいことなんじゃないかなあ、それって大事だよ、うちだって、ああじゃないこうじゃないって、うるさいもん」というパターンが多く、彩香はそれが普通の家庭なんだと思いでつい見栄を張って嘘を言ってしまう。本当は、両親なんかひとりも起きやしないのに。でも、そうさせていると自分を責めていた彩香は、はらがたつとまではいかないまでも、このままでも困らないし、両親に朝くらいは楽にさせたいと、言い聞かせていた。駅が近づくと、改札を抜けて、仁美:「じゃーね、また明日」彩香:「バイバイ」2人は逆方向に分かれた。仁美は、自然が好きだという父が決めた山が近い場所に住んでいた。そのために、家のまわりの環境には恵まれ、親が設計したセンスのいい家だという。家庭にも恵まれ、一流とまでにはいかないが、ちょっとしたいい企業に勤めているらしい。家族は兄と弟がいて、母は専業主婦。生活用品、映像機材、外車からゲーム機も一通り持っていた。ただ1つ不便なのは、家が遠い事。6時から家に着く頃には8時過ぎで、それでも皆と食事をするというから、彩香にとっては完璧であり、参考にしたい事ばかりだった。彩香:「あーあ、なんでこんなに違うのかなあ、同い年で、同じ学校に行き、同じ日本人で…どこから違うんだろ?」彩香は仁美を羨ましいと思いながらも、どこかで負けたくないという意志が働いていた。そういう意味でも、失いたくない親友でいたかった。しかし、彩香の思いは、やがて、ある事件がきっかけで、とんでもない事が起ころうとしていた。ある月曜日、いつものように学校へ向かう彩香。学校の近くまで来た時、校門から先生が駆け寄り、先生:「彩香、お前、仁美の事知ってるよな?」彩香:「どうしたんですかあ、いきなり?」先生:「さっき、電話があってな、仁美の家が火事になったって報告が入ったんだ!」彩香:「う、うそぉ!」彩香はびっくりして耳を疑った。先生:「どうも、仁美が学校に出かけた後みたいなんだ、だから、あいつ知らないよなあって」彩香:「ケータイに連絡してみたら?」彩香は、学校どころではないというくらい、焦りと胸の高鳴りを感じた。「幸せな家庭が…!」
2007.04.03
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朝ごはんを食べる事の重要さをどれだけの人間が知っているか?おそらく、大体の人は知っていること。でも、知りつつも朝ごはんを抜くというのは、時間がないからという理由が大半だろう。家庭の生活リズムの種類は、それこそ数え切れないパターンがあると思われる。彩香は、いつもと変わらない生活感に何となく興味を持つようになる。しかし、その何となく興味を抱くきっかけがはっきりしていない。「同じ行動っていうのは、変える必要がないって事かなあ?」学校に向かっている途中、きっかけもなく、ただいきなりそんなことを考えていた。「何考えてんだろ、どうでもいいよねぇ」土壇場で考えるのを止めた。授業が始まり、朝礼のあと、親友の仁美に、「今日さあ、朝ごはん食べたらマズくって、話しになんないよぉ、彩香んちはおいしいの?」彩香は、「えっ?ええ、まあ」「いいやねぇ、ていうか、母さんがマズイの作っちゃあおしまいだよぉ、うち最悪!」「朝ごはんかあ…」彩香は朝ごはんを食べる習慣がなかった。それでも昔はちゃんと食べていたこともあったが。「そういえば、いつから食べなくなったのかなあ…」彩香の家族は、母、父、妹の4人構成。父は中小企業の印刷会社の中にあるデザイン部門に勤め、給料は安定はしているものの、横線状態が数年続いていた。子供が大きくなるに連れて、進学などで資金がかかるようになり、母もパートで働くようになっていた。「それからかあ」彩香は、朝ごはんを食べなくなった原因を思い出した。「あたしのせいだね…」稼ぐために働く、その言葉の中身には、とても大切な事が隠されている。生活感は今のままに普通でいられること、つまり、普通を保つために働くという意味であり、安定、教育、そして、家族の幸せを願う事が隠されているのだ。彩香は母に頼り過ぎていたのかもしれない、仕事の疲れから朝ごはんが作れなかったことを恨む前に自分自身はどうなのか確認すべきだろう。放課後、彩香は、仁美と帰るために教室で1人待っていた。仁美が部活から戻るのはだいたい6時過ぎる事もあったくらい、バスケ部ではレギュラーでもあり中心格だった。彩香はというと、スポーツは苦手でテニスを何ヶ月かやったが続かず、結局暇つぶし的に写真部に付いていた。ようやく仁美が部活から帰って来ると、「まったあ!?じゃあ帰ろっか」「う、うん」いつも通っている学校と駅までの間。かなりの距離があったが、2人でお菓子を食べながら話しをするにはちょうどよかった。
2007.04.02
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テレビドラマを見て、あなたはその生活ぶりに憧れるだろうか?既にドラマのような絵に書いたような家庭かもしれない。それなりに幸せな日々をおくっているのかもしれない。世間一般には、家庭の事情、世間体とか、家柄、外観からではわからない事情が家庭内には様々な形として受け継がれ、それはしきたりだったり、家訓だったり、厳しい家庭もあれば暗黙の了解な家庭もある。産まれてくる子供がどの家庭に巡り会うのか、これは最初にして最大の運命の分かれ道。もし、貧困の差があり、勝ち組と負け組が歴然とする世の中であるならば、一体どちらに産まれて来るのが幸せなのだろうか?そして、もし、家庭の状態が悪化した所で子供が産まれてしまった時、それを乗り越えていけるか、それとも、なかった事にするのか……。ここでは、ある平凡な家庭に産まれた、1人の女子高生を追っていく。世間で騒がれている、イジメや虐待、事件を起こす学生の内情など、時代が作り出した現象をたどる。家庭によって、どれほどの決まりや生活感が違うのか、違いによって、生き方がどう変わってきているか。女子高生の身の回りに不思議な現象が次々と起こる、現実と出会い、幻想とも出会うことも。---------------------------------------------------------------いつものように、朝が来た。彩香は、寝起きが悪く、毎日母に起こされていた。「早くしないと遅刻するわよ!」モソモソしていた彩香は10分くらい経ってようやく布団を捲くり上げた。「うーん…チェッ、もうこんな時間かあ…」仕方ない気持ちで起き上がる。そうしている間にもう3分経ち、着替え終わったら、更に5分。「チッなんで朝って時間が経つのが早いんだぁ?さっき起きたばかりじゃん」彩香は毎日毎朝同じような行動をしている。感覚がマンネリ化していたのだ。人間の慣れていうのは、2通りある。行動を縮めて時間を作り出す事。やり方さえ覚えれば、自分なりの動きが出来るから、僅かな時間の中でも数多く熟す事が出来る。しかし、もう一つの慣れがある。時間を縮める感覚を作り出す事。いつも決まった行動が遅くても、それが普通の感覚で動いている。だが時間だけは何処へ行っても動くペースは変わらない。その人の行動パターンによって、1分になり、10分にもなるのだ。彩香の場合は、後者となり、「いけね、遅れちゃう!じゃ行ってくる!」となる。朝ご飯を食べない習慣が付いてしまった家庭が増えてきているが、それも家庭によって理由がマチマチなのだ。人気blogランキングへ
2007.04.02
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