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そこにいたのは、まるで過去からやってきた若き男。あの蠍組で若き涌井の中にいた、姿を見せる事のなかったMだ。仁美は、異次元で見たMを比較したがどう考えても若い。仁美:「し、信じられない、けど、面影はまさにあの、M、よねぇ?!」M:「なんだい、僕を見ているのか、なんかわからないけど、やはり僕は外にいるようだね」自分でもわかっていないこの状況に、仁美は理由はどうであれ、今目の前にMがいる事実はかわらなかった。Mは、普通の男性として、異次元のMと融合した。もうキレッパシではなく、100パーセントで仁美と共に愛を育むのだ。これが、Xによる最高で最後のパワーであり、行き届いた気持ちがこの2人にまでたどり着いたのだ。もちろん、この事がXの技だとは、ずっと後でわかることになる。Xの伝説として。やがて、涌井は新しい家族が出来、仁美はMと共に人生を歩み出した。さて、彩香は?卒業後も憧れだった音楽大学に入学しながらも、OBである弘美達がいるクレープ屋にわざわざ通い続けた。異次元の派遣としてMの裏方的存在だったiは、Xの効力が届いたのか、強く思いこがれた彩香達の母校である高校の教師となった。-----------------------------------------------------------------------------------------人はこう説明するだろう。「自分自身をリセットすれば叶う」と。その意味は、自らの体は朽ち果てても、心だけは必要な所へ行き渡る。そう、自分自身の体が無くなっても、思いさえ込めていれば、助けたい者、幸せにしたい者の心とリンクするというのだ。リセットしたい気持ちが自分自身にあるのなら、それでもいい。生まれ変わる気持ちで生きていけばよいのだ。世間よりも、環境よりも、自分自身をリセットする方が重要だ。人生がこううまくいくにはやはり、裏では犠牲になったり、戦いに敗れたりする人生が必ずある。そういう構成が何故出来上がるのか?全体が幸せになることはいけない事なのか?霊となって、見守っているとか言うが、それは、そう思いたい、そう信じたいという、自己暗示に過ぎないのではないか?RESET PART III---Through [THE END]
2007.09.06
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涌井は、慌てずゆっくりクレープ屋に近付く。すると、いきなり子供が飛び出してきた。びっくりした涌井は、子供をじっと見つめていた。子供も涌井を見ていた。そして、再び店の奥に入って行った時、子供:「おじいちゃんが来たよ!」涌井:[…!]いきなり子供に理解されているのかと思ったが、弘美:「やっと帰って来た、お帰りなさい、おじいちゃん10年後の弘美を見て涌井は、幸せ一杯でいてくれた事が嬉しかった。店主も現れ、店主:「ようこそ、お待ちしてましたよ」涌井:「この子がいきなりおじいちゃんって言ったのがびっくりしたけど」弘美:「歳を召した人を見かけたら、おじいちゃん来たよって教えてねって言ってたからね」涌井:「と、歳を?こいつ、年寄り扱いすんのか」笑顔をこぼしながら、涌井は人生最高の幸せを手に入れた。Xの力は、ペナルティーの力を利用して、更に拡散されていた。-------------------------------------------------------------------------------------彩香は、学校が終わり、帰ろうとした矢先、田中先生に呼び出され、田中先生:「放課後、追試を受けてもらうこと、忘れてないだろうな」すっかり忘れていた彩香は、彩香:「見逃してくれるって言ってたじゃん」iは、彩香の学力サポートが行き届かず、四苦八苦していた。i:[…なぜか、この職業、同姓はイマイチなんだよなあ…]iにXからの隠れた贈り物があった。異次元の任務の解除と同時に、現代の子供のサポートにあたる任務、というより、i本人が好きでやっていた。その成果によっては、この現代の人間として具現することが約束されていたのだ。そして、Mは…。仁美にとってかけがえのないMはカケラとなっていた。だが、ここに最大のサプライズが待っていた。Xは自分自身を全て現代に継承する者に力を分散していたのだ。特に、若きMを見たXに衝撃が走ったのは言うまでもない。その感動の強さはそのまま反映された。仁美は思いきり部活動をエンジョイしている。そんな仁美のよりどころとして、カケラでしか存在しないMに変化が起きた。有り得ない事だ。異次元にいるMの本体と、過去の若きMとの時間を越えたリンクが始まり、そして融合していったのだ。部活動が終わり、一息入れた仁美はある変化に気付く。仁美:[心が無くなった?Mがいなくなった?]慌てた仁美は、カケラだったMが溶けて無くなってしまったと思い、必死に探した。仁美:[部活し過ぎて溶けちゃったのかなあ!お願い、無事でいて!]思わず校庭に出て来た仁美の目の前に、1人の男性が立っていた。男性:「どうした?そんなに慌てて、なんでそこにいるの?」仁美はその姿を見て、信じられない顔をしていた。仁美:「あ、あなた、いつの間に!」
2007.09.05
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過去を切り取る禁断の技を使ったXに、究極のペナルティーが下ろうとしていた。この瞬間、Xに降るペナルティーが感覚でわかった。<再起不能>!予想はしていたXはもう覚悟は出来ていた。それに、更なるXにとって最高にして最後の能力を使う時でもあった。訪れるペナルティーの一部を利用しようというものだ。この世界で生きてきた者に降るペナルティーにはある特殊なパワーが込められているという。その力が作用して起こす現象とされていたのだ。X:[…どのみち、終わりなら、有効に使わなきゃな…]弘美:[さっきから何を言ってるの?]X:[…いやいや、こっちの話、単なる独り言さ…]Xからの声はそれが最後となった。弘美の中の救世主は、第一段階として声を失った。弘美:[X…さん…?]………………………涌井は心配になっていた。もう雨も止み、嘘のように晴れ渡っていた。すると、陽射しを浴びながら、2人の姿が見えた。涌井は、目をこらしてよく見直した、確かに2人いる。涌井:[弘美?横にいるのは?!]涌井は、笑顔になっていた。弘美も笑顔で涌井を見ていた。弘美:「久しぶり、ていうか、老けたね」涌井:「当たり前だ、本当にこうやって会うのは久しぶりだ、それに、よく来てくれたな、店主」店主:「店主なんてやめて下さいよ、知らない人じゃあるまいし」涌井:「え、君と会ったのは、未来でしか…」店主:「そうでしたね、そういう事にしておきましょう」意味深な言葉に涌井は、Xの仕業だとわかり、Xが残した栄冠は、2人の、いや、また違う所で幸せを育んだ。弘美と店主は、共にクレープ屋として出発するのだ。涌井の願いは、学校から正しい道への修正から、娘の幸せを実現すること。涌井:[任務は完了したぞ、X]そのうち、Xの気を感じなくなり、力が及ばなくなると、まもなく、涌井は未来へ強制転送される。若き娘との別れをし、再び会う事が最大の楽しみとなった涌井の心にようやくゆとりが芽生えた。涌井:「じゃ、後でな」弘美:「父さんも」店主も深く会釈し、涌井を送り出した。すっと、涌井の体は透けて、そして見えなくなった。2人は消えていった場所をいつまでも見つめていた。夢だったかのように、涌井が目を覚ました。あたりを見渡すと、周りの建物が違うが全く同じ場所にいた。涌井が気にしていた学校は、田中先生や柚木先生が中心となって、伝統を継承したプログラムで、現代っ子をサポートしていた。そして、その向こうに見えるのは、涌井:[クレープ屋…]
2007.09.04
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涌井の心に宿った若き頃の気持ちは、Mとの協力のもとで成り立つはずだった。しかし、涌井にも気付く事のない最大な違いがあった。歳を重ね、経験を積んだというのだろうか、今の涌井に宿ったのは、自分自身の純粋な心でしかなかった。娘とあらためて再会を実現するために、その一心でここに来た。Xと弘美は、涌井か待っている喫茶店へ向かった。弘美は、そのまえに、立ち寄りたい場所があった。学校前の文具店だ。校門を出てすぐ向かいにある文具店は、まだ開いていた。まるで弘美を待っているかのように。店に入ると、店主がそこにいない。狭い店内に隠れる場所もなく、弘美は外を見た。弘美:「どこへ行ったの!?」すると、Xが店に気になる事を見つけた。X:[…あんた確か毎日のようにここへ来たって言ってたよなぁ?…]弘美:[え?えぇ]…X:[…おそらく店主は、あんたが来るのを哀れに思って、あんたがよく来るこの時間を避けているのかもしれない…]弘美:[どうしてそんな必要があるの?]X:[…あんたが自殺するのではとハラハラしながら会ってあげないといけないというプレッシャーで、店主が深いウツにかかっている可能性がある…]弘美:[あたしのせい?]X:[…そういうわけじゃないが、心配していたのは事実だ…]弘美:[未来に何かあったのね!]X:[…それは言えない、ただ一つだけ言えるのは……]弘美は息を飲んだ。未来を知ってはいけない、でも、知る権利はある。X:[…将来この店はクレープ屋になること、それから、今日が、あんたが自殺した日だ…]弘美:[!……]弘美が毎日来て、相談も、辛かった事も一度も店主には話さなかった。しかし、店主に言った一言は、「クレープ屋さんならよかったのになあ」これだけの言葉に、店主は凄く重みを感じたのだ。毎日来る理由は悟っていた。そして毎日文具を買う理由も。そんな苦しい立場にいながらクレープを食べたいという言葉がけなげな弘美に大きな感情を店主の心に植え付けられたのだ。Xは、店主に宿った心は、XやMよりも、遥かにレベルの高い、純粋な物だと確信した。弘美:[お店の人、あたしが死ぬはずのこの日を知ってるの?]X:[…知るわけないさ、ただ、勘はいい方だと思う…]店に来てから2時間。店主はまだ帰って来ない。同じ時、涌井も弘美と会えるのを楽しみに待っていたが。
2007.08.29
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投げ飛ばされた生徒は、ぶるぶる震えながら、仲間の影に潜んだ。<なんでだってぇ?わからないのか、お前らのイキザマを見て>生徒:「な、何言ってんだかわかんねぇなあ」もうひとりが殴りかかってきたが、秒速な早さでかわした。そして生徒の腕を掴み、<お前ら、学校で何をしに来てんだ?人が苦しんでるのを楽しんでいるのか、それとも、馬鹿な奴らとツルんでバカをいばっていたいのか!>生徒:「どっちもだよ!」と言って、涌井の足を蹴飛ばした。すると、痛がったのは涌井ではなく、蹴った生徒の方だった。他の生徒がそれを見て、生徒:「こいつ、人間じゃねぇ!」と言って逃げようとした。しかし、蠍組にすでに取り囲まれていた。涌井:<このままじゃいけないって言ったはずだ、わかってんのか>弘美には父親の強さの秘密の理由がわからなかった。弘美にとっては、ただの仕事人間だと思っていたが、あの正義感というか、ヒーローぶりは、後の父親という想像をしていたら、別人に思えたのだ。あまりにも強すぎる若き涌井が、学校を守ろうとしている執念が直に伝わってくるのだ。弘美:[あんなに学校を思っていたなんて、伝統を重んじていたのか、いや、違う…]X:[…そう、彼らはただ、学舎として当たり前に考えてるだけだ、本来の学校の目的を守りたかった、生徒にとっても、教師にとってもだ…]弘美:[当たり前の事、常識…!]X:[…さすがは涌井の娘だけあるな、察しがいい…]Xは、あえて、若き涌井の強さには触れなかった。今はそんなことは弘美には関係ない、父親としての基本は、原点はここにあることが伝わる事が目的なのだ。弘美の心に、次第に芽生えてきた、父親の印象。事情はいくらでも抱えるのが人間、父親もその中の1人だ。生活するために仕事を選ぶ事が、涌井にとっての家族思いだったのだ。弘美:[こんなん母にも見せたかったなあ]X:[…そうだな、この場面を理解さえしてくれるといいんだがねぇ…]と言いながらも、Xはある場所を指さした。弘美はその先を見て、思わず涙が溢れてきた。涌井達の行動を見ていた女子高生がいたのだ。弘美:[お母さんでしょ!?]X:[…もう、これであんた達の家族は大丈夫だな…]高校時代には既に出会っていた2人、学校は違っていたが、カンペキな片思いがこの様子で伺えた。しかし、Xは、涌井が言っていた、異次元を知っていた事、会っていた事を仄めかしていた詳細がここにあるとは想像も出来なかった。そして、ようやくXは、その人間離れした様子を見ていてピンときた。X:[…ここにもう出会っていたんだな、M…]
2007.08.27
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真面目が取り柄だった学校にも陰りが出てきたのは涌井が卒業できるかどうかの審判が下された時だった。まわりの反応では、他校の悪行を成敗するという事で評価が高かったから、なんら卒業は問題ないと思われた。だが、1人の大人によって、卒業が微妙になっていったのだ。その大人は、恩師だった校長だった。蠍組のやり方に疑問を抱いていた校長が、現場をおさえたのだ。相手に恐怖感を与えて、相手の学校に通報したあと、恐喝マガイな約束をさせていたのだ。蠍組のやり方は、今度あったら、学校そのものを訴えるだけではなく、廃校に追い込む事まで忠告していたのだ。涌井の学校は、校長がその様子を1人の教師に相談した事がきっかけで、話しが広がり、噂する教師が続出した。蠍組のやり方はあまりにもいいやり方ではなかったが、真面目を貫く学校にしては、堂々とした権力も千恵もなく、決して考える学校ではなかったために、他校からの被害を受けている事を気付かない、または、知らないふりをしていたことが、涌井達には我慢出来なかったのだ。陰でやるしかなかった蠍組の運命は、学校のためにしていた事が、学校の教師によって解散する羽目になり、他校の悪質な行動が減少していたが、逆に、涌井の学校が鎖国状態になっていったのだ。学校を守ろうとしていた事が後になってからようやく認められて、卒業は出来た。だが、その後、学校は鎖国状態を解除せず、どんどんさびれていき、校内の管理までが散漫になっていった。そして今(過去だが)、他校よりもいじめや悪質行動が勃発するほどに落ちぶれ、あの蠍組の存在など吹き飛ばしてしまうほど、逆の立場となっていた。他校の意見もアドバイスを無視し、どうにかなる体質を崩さなかったことに、やはり生徒は気付くはずもなく、むしろ、その体系に甘んじていた。弘美も、その悪質行動の被害者から加害者になっていたものの、学校から受けていたのは被害ばかりだった。弘美:「こんな学校、リセットしたほうがよくない?」X:[…リセットするのは簡単だ、でも、未来が大きく変わってしまう…]弘美:[そういえば、先に未来をリセットしちゃったんだっけ?]X:[…そうなんだ、番狂わせっていうか、上手くいかないなあ…]未来を先に修復したために、過去をいじくるのは危険極まりない。弘美:[今こそ蠍組って奴、復活させるとかねぇ]X:[…!…]
2007.08.23
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涌井は、Xと離れてからもうすぐ1日が経とうとしていた。弘美と出会うためだけに過去に戻ってきたリスクは、このまま会っても弘美にリスクを背負わせてしまう可能性がある。涌井本人が父親として受けるべきと思っていたのだ。Xのケアを待つしかない。現代では、彩香と仁美も心配していた。彩香:「なんかさ、あのクレープ屋にいくたびに思うんだよね、娘さんの事。」仁美:「そうそう、なんか私達知り合っていたみたいに親近感が湧くというか、同じなんだなって思える」彩香:「うまくいくよね」仁美:「当たり前じゃん!」涌井とXの帰りを待つ2人にはもう、弘美と出会えるくらいに心が整っていた。涌井は、例の文具店に向かい、店員に話しを聴きに行った。情報では、1時間前に弘美が自殺している事になっていたからだ。学校からの報告は、当然店にも伝わっているはずだ。店が閉まっていた。情報がきたのか、昼間から閉まっているということは、文具店としてはもう開店しないという事だ。涌井:「ああっ、このまま変わらなかったら、俺は何のためにきたのかわからん!X、頼む…!」どこかにいるXに向かって声を張り上げた。弘美の耳がかすかに感じた。弘美:「今の耳鳴りかなあ?」X:[…いや違う、多分父親の声だ、きっとヤキモキしてるんだと思う…]弘美はそれを聞いて、涙を浮かべた。その間、弘美の心から取り出す事の出来なかった、恨みと辛さが消えていく。Xは、その現象に驚いた。血が通ってない親子だろうと、動かせる心がある。結婚や、親子を経験しないXにとって、この気持ちには勝てない。絶対に経験した者でしかわかり得ない絆があるからだ。時間が経つと、切れかかっていた親子の絆は深まる事がある。いつも顔を合わせている間は、ウザイだの、キモいだの言っている娘が、何らかの事で離れてしまい、何年もの間、会わなかった時期に、過去の記憶が甦る事がある。その記憶は、決してたいしたことはなく、日常の生活や、ウザったい時の事が、不思議と懐かしむ事で、全てがよき思い出となり、親子なんだと改めて感じる。絆とはそういうものなのだ。今、会う事が有り得なかった2人にとって、一番大事だったものを取り戻そうとしている。弘美とかつての親友、真紀や、一目惚れの男子生徒とも、仲が再び修復された。それも弘美自身の力と、真紀達の親友の絆を捨てずにいたおかげだった。みんな、Xには持っていない力でケアをしているのだ。X:[…これなら、俺の出る幕なさそうだな、涌井。ツイてるな…]親子関係を無惨にも引き裂いた理由の中に、やはり学校の態度にも問題があった。Xは、むしろ修正しなければならないのは学校側にあると考えた。今でもだいぶ修正された過去。この代償は必ずある。過去を修正するという行為自体、自然の流れに逆らっていることを深く心に刻まなければならない。未来に支障なく、達成も後悔も共に歴史は流れて出来ているからだ。
2007.08.21
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Xは、ようやく気がついた。Xは、既に弘美の中にいた。Xの頭の中に埋め込まれた記憶に、追加があった。地球外刺客の記した記憶だった。[…この子のケアはあなたが適任、わたしは通りすがりのあなたと同じ目的の派遣。でも、地球人には悪影響を及ぼしたようです。ケアどころか、憎しみを増幅するだけだった、だから痛んだ心を修復してくださいね…]X:[…丸投げかよ、でも、あんた、弘美をひとつだけ救っていたじゃないか…]弘美の中に入ったXに僅かに残る忌まわしい記憶をキャッチした。あの時、店員が話しかけた後、落ち着きを見せたのか、ホッとしたのか、生きる気力も真っ白になり、確かに学校の屋上から飛び降りた。その時に、派遣者は君臨し、弘美の中に入り、命を救っていた。その瞬間、突然弘美が豹変し、いじめからくる憎悪が増幅して復活したというのだ。それがあの最悪だった弘美だったのだ。その後も文具店に通い、シャーペンを買っては、いじめの凶器として使っていた。X:[情報は間違ってはいなかった、だが、過程が全く違う、こんなにも深いとはなあ…]更に、地球の外から来た刺客の記憶には、改めて来る、と付け加えていた。[…今度来る時には、いい状態なのでしょう…]X:[…たくぅ、やっぱ丸投げじゃん…]そのようなやり取りなど空気に包まれている間、弘美は、夢を見ていた。それは一目惚れの彼氏でもなく、友達でもない。目の前に立っていたのは、父親だった。弘美:[お父さん…]弘美が見ていた者は紛れも無く涌井だった。ぱっと目が覚めてから、気分が変わっていることに気付いた。空気はもういつもの流れに戻っていた。だが、いつもとは違う、何か懐かしい感じがする。弘美:「お父さん…」X:[…あ、俺の頭が割れそうに痛い、弘美、あんたは大丈夫か?…]弘美:[あなたは、あたしを知っているのね]X:[……]弘美:[だって、お父さんの香りがするもん]X:[…匂わないだろう、確かに俺の記憶にあんたの父親はいる。でも、このままでは会う事は出来ない。…]弘美:[わかってる、今までの事を真っさらにしないといけないよね]X:[…そのことはいい、あんた自身、父親に会う準備が出来ていない、母親との離婚の事であんたはさっきまで恨んでいたからだ…]弘美は、離婚の原因を知らされていない。弘美の勝手な判断で、女が出来たなどと悪い様に想像していたのだ。弘美がしなければならないのは、いじめ以前に、離婚以前に戻る必要がある。でなければ、今会っても悲しむだけ、後悔するだけ、それだけが永遠に心に刻まれてしまうのだ。
2007.08.20
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逃げ切った弘美達は、疲れがピークに達していた。男子生徒:「あいつ、大丈夫かなあ!?」弘美:「あの人はきっとやってくれる」と、根拠がないが、そう言わずにはいられなかった。男子生徒:「何でそんなこと…」弘美:「なんか、懐かしい香りがしたから」男子生徒:「……」Xは完全に空気の中に包まれた。だが、空気の中は、不思議な香りがした。お香のような、何とも言えない、心地のいい香りだ。Xの目の前に、人の影が迫ってきた。X:[…やはり、女か、でも、人間なのか?…]近づいてくる影は、人間の女性とわかるまでになった。X:[…あんたは一体?…]喋りかけたXの口をふさぐように、女は指をXの口元に宛がった。女:[……]X:[……?…]女:[…心を無にして聞いて下さい…]X:[……!…]女は口を開かずに、何かテレパシーのように語りかけた。それはソフトで高い声だった。女:[本当は違う、でもそうなってしまった、彼女が取り違えた、だからそうなってしまった…]X:[…意味がわからん…]女:[虐めたのは彼女の願望ではなかった、でも、そうさせたのは彼女なのです…]X:[…何?願望でなくて、でも、そうなるようになったって事?…]女:[…叶えるために来た、ここではない星から、彼女が呼んだ、不思議な力で…]X:[…あんたが地球以外だとは予測出来た、だが、その不思議な力とは何だ?どうやって来た?…]女は、黙ったまま、Xを見つめていた。お香の香りがどんどん強くなっていく。Xは次第にまぶたが重くなっていった。そこから、頭が真っ白になっていく。女は空気の中で、Xを抱えたまま移動を始めた。弘美の本当の心理を知っている謎の女。弘美の中に戻ってやらなければならない事があった。しかし、中に入った瞬間、弘美に異変が起きるというのだ。弘美は、仲間と別れた後、心配になって公園の方向に戻ろうとした。すると、そよ風が吹き、弘美を包んだ。弘美:「えっ?…」女:[…今のあなたには彼が相応しい。…]弘美の心の中に、Xを送り込んだ。女:[…あなたは、私の能力を越えた罪悪感を秘めています、今の私ではそれが増幅させてしまい、あなたはあなたではなくなるのです。…]X:[…うっ、その罪悪感というのは?…]女:[…憎しみ、いじめから来た仕返し…]X:[…何?!…]実は、本当にいじめられていたというのか!?
2007.08.16
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弘美と仲間が集まったところで、Xはすぐに、X:[…リセット!…]仲間とともに、弘美は心が無になった。ここで見た事から離れていく。その間をぐるぐる駆け巡る地球外派遣の行動はまさに、居場所を失っていた。Xは、無となった皆の心が、その流れで浄化することを願っていた。この一件の事は記憶から消えていくのである。だが、無にする時間は限られていると言われていた。だが、噂であり、実際この技を使った者はまだいないからそんな証言は確実ではない。何も情報がない。分かっていることは、まさに、今、この技の情報として記録される第一人者であることだ。地球外派遣と呼ぶこの者は、心に入る事が出来ず、矛先がXに向けられた。X:[…やっと俺に食いついてきたな、皆は今からここを離れて、掛け声と共に、心を戻す、だから今のうちに…]すると、皆は深く頷き、公園を離れていった。地球外派遣の矛先がXになってから数秒が経った。X:[…もうすぐ切れるな、後は奴が逃げるのか、それとも!…]間もなく、リセットが解かれた。Xは、公園がものすごく静かで穏やかさを感じた。消滅したのか?X:[…いやな静けさだ、何一つ反応がない、いるのか、奴は?…]これまでのタイプとは全く違うため、行動が読めない。気までも隠す言が出来た者はこれまで例がない。X:[いるならここに出てこい、この意気地無し!…]すると、空気の一部が揺れ動く反応がした。X:[…そこかあ!…]そこに目掛けて腕を伸ばした。その腕を掴まれ、物凄い力で左右に振り回した。Xよりもある力は、まさに人間を越えていた。X:[…イテッ、何なんだ、コイツ、言葉が通じてるようだが…]この反応を喜ぶかのように、Xはさらなる力を出していった。X:[…俺を見くびるなよ!…]すると、ようやく、その者:[…うう…]その声に性別はあるのか、X:[…お、女か!?…]弘美に付いていた謎の派遣者は、同性という特性を利用した方法で、女特有の誰にも持っている気持ちの中の最も質の悪い心理を引き出し、一番上の階層に置き換えていたのだ。だから、この気持ちが弘美の奥深く宿っていたとすれば、浄化のためのリセットでは、弘美のためにならないかもしれない。自分本心から動かなければ、このようなウイルス感染にも似た、異星人に取り付かれてしまうのだ。Xの腕に絡み付いた空気の渦は、少しずつ腕を飲み込んでいた。凄い吸引力で、一気に肩にまで達していた。X:[…こりゃすごすぎる、俺の力何てもんじゃない!…]瞬く間に、空気の中に入っていった。
2007.08.15
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こらえながら男子生徒を操るXは、X:[…おい、弘美を抑えて中身をえぐり出せ!…]男子生徒:「だ、誰だ!?」X:[…いいから言う事を聞け!…]男子生徒:「何言ってんのか意味わかんねぇ!」すると、弘美:「何ゴタゴタ言ってんだ、ホラァ!」シャーペンを持って手を上げる弘美。X:[…あんた、弘美の自由にしたくないんだろ、好きなんだろ!…]男子生徒:[…!]一瞬にして図星を突かれた男子生徒は、瞬時に弘美の腕を抑えて込み、逆手にひねって弘美をひざまずかせた。弘美:「イテッ、何だよその力は!」男子生徒:「弘美、もうヤメにするんだ、クダラネェ!」持っていたシャーペンを振りほどき、弘美の手を強く握った。弘美:「イテッ、離せ!」Xはその握った手から弘美の中身と心をリンクさせた。X:[…おい、出てきやがれ、変態野郎!…]男子生徒はずっと弘美の手を握り続けた。男子生徒:「お前、以前の弘美に戻って欲しいから、それだけを信じてきたつもりが、いつの間にかただの奴隷になっていた。でも、その原因は、ただお前の事が好きだったからなんだ、言う勇気がないままズルズルきちまった、ゴメン、もっと早く目覚めるべきだった」男子生徒は涙を浮かべて、心の底にあった言葉をすべて弘美に伝えた。その言葉が、弘美の中のカギを解除させた。弘美:[え、何?ここは、痛い、何、心が痛い」弘美の心に潜む謎の者は、男子生徒と目覚めた弘美の心との挟み打ちとなり、もがき始めた。X:[…今のうちに引き上げだ、変態!…]Xは、その者と入れ代わるように、その者を外に追い出した。すると、その者は、外で居場所を探していた。Xは、その光景を見て、X:[…まずい、新しい居場所を探して入ろうとしている、奴はこの星の者じゃない…]弘美に入ったXは、その者の行動を抑える方法は心を閉ざす事だと分かったが、他の生徒達にどう伝えたらいいか考えた。そこに弘美が、弘美:[何となくだけど分かって来た]現状を把握してきた弘美は、弘美:「みんな、そこから逃げて!」X:[…ただ逃げるだけじゃだめだ!…]弘美:[どうすればいいの!?]X:[…逆だ、皆をここに呼ぶんだ、急いであんたに近づけてくれ!…]弘美はXの言う通りに、弘美:「待って、あたしの方に来て!」男子生徒が、弘美の手を引っ張って、男子生徒:「こっちから行くぞ!」弘美:「…!」男子生徒:「そのほうが早いし、手を繋いでるから平気だ」弘美:「任せたわ」Xは、男子生徒を信じて、仲間達と接近、その前をさ迷う異星の者を追い越した。
2007.08.14
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Xは衝撃とともに震えを感じた。いじめている弘美が例の文房具屋に。それは、涌井がクレープ屋に話しを聞いた内容は確かに弘美が訪ねていることは間違いないようだが、違うのは、弘美がいじめに会っていたのではなく、いじめの加害者であることだ。弘美は、何やらシャーペンを買いにきたようだ。店主:「いつもありがとう、どうしていつも来てくれるのかな?」というと、弘美はその質問を無視して、店を出た。毎日のようにシャーペンやノートを買いにくるのは、弘美にとって、一体何をそうさせているのか、全く理解出来なかった。いじめに会い、文具を無くされたり、壊されるのならわかるが。Xは更に弘美を尾行した。しばらくすると、小さな公園に着いた。そこには何人か生徒が集まっていた。弘美が来たのを見たら、集まっていた生徒は、立ち上がり、その場所を去った。その集まっていた場所に1人、しゃがみ込んでいる生徒がいた。全身傷だらけで、制服も所々破れていた。X:[…なんだこれは!弘美に何か殺気を感じる…]弘美はその生徒に近づいていく。その場を去った生徒が、公園の草むらの陰に隠れながら様子を見ているのが分かったXは、その中から一人選んで心の中に潜入した。男子生徒でスラッとしている。Xはその男子生徒の体を思い切り締め付けながら、体を操り始めた。男子生徒:「うっ、何だよこれ、勝手に……!」締め付けた体は、Xの心とリンクして操作出来るように密着することで可能な特殊な技だった。他の生徒も、それを見て、「おい、弘美の邪魔すんなよ!」「そーだよ、後が大変なんだからー!」そんな声も聞いて分かっていながら、体がいうことをきかない。男子生徒:「そ、そんなの、俺にもワカンネェよ!」弘美にどんどん近づく男子。弘美:「何の真似だ?近寄るなんていい根性してんねぇ」男子生徒:「お、俺じゃねぇよ、違うんだよぉ!」すると、弘美は男子の方に向いて、弘美:「あんたがこの儀式、受けな!」と言ってすぐに、さっき買ったばかりのシャーペンを男子生徒の顔目掛けて突き出して来た。Xは、それを予測して、それを瞬時に避けた。男子生徒:「うっそぉ!?マジかよ、弘美のを避けたぞ!」興奮気味な男子生徒は、弘美を逆に見下すように、男子生徒:「テメェの儀式もこれまでだなぁ、こんな儀式は、弘美じゃなくてもいいんだよぉ!」
2007.08.13
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夏休みを控えた1学期末期。彩香達は、時間の歪みに耐えながら、何とか普通の生活を過ごしていた。仁美の中で何も出来ないでいたMも、今は時間と共に復帰しつつあった。仁美:[もう大分経って私もかなり人の事を考えられるようになったわ、あとはMの彼女として生きていけるといいんだけどな]M:[…1番難しい課題だね、現代と異次元が合併しなきゃ…]仁美の心を叶えるためのケアとしては、もうクリアしているはずだが、叶わない恋に落ちていた仁美の心に離れられない状況にあった。Mも、仁美の気持ちになって考えてきた。そして、彩香も。仁美:[彩香への気持ちも感じる、優しいからしょうがないんだけどね。]M:[…気のもちようかなと思うんだけど、彩香の人間性に心があるだけだと思ってる。これは恋愛とは全く違う気持ちなんだ…]仁美:[わかってるよ、それは私にも彩香との友情として見ているし、そんなんじゃないけど…]お互いわかっているからこそ、叶わない恋の壁を越えたい思いが、2人の強い気持ちで共同作業をしている事で、異次元と現代を結び付ける何かを、きっかけを探していた。彩香は、学校の過去を思い出そうとしていた。学校を浄化する代わりに一部の記憶を失っていた彩香は、当然あの騒動があった部分が消えている。仁美も、そして全校生徒や先生達も同様だった。Mとiにはその記憶は消える事はなかったが、一部の機能を失っている。それは、選ばれし者にはなれない事だ。失敗を覚悟で、大掛かりな作業をすると、失敗は許されず、再起不能となるが、成功したとしても、一部の機能は失う事がわかっている。Xの場合、既に選ばれし者となっているが、まだ失敗したらどうなるというデータがない。誰も失敗したことがないからだ。もし、Xが任務を失敗すれば、ただでは済まされない可能性がある。まして過去にいるだけでもかなりやばいはずだ。噂では、選ばれし者になれば怖いものはないとも言われているが、それは理想論に過ぎない。Xは、帰宅する弘美の後ををつけた。中身に悟られずにしなければならない。弘美が歩く先には、何やら見覚えのある場所だった。X:[…く、クレープ屋!…例の!?…]
2007.08.12
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Xはどう言っても辞めようとしない、使い走りや言われ放題の中に、真紀本来の思いがあった。ただいじめられているのではない、傷ついてほしくない、嫌われなくないという気持ちになっていた。X:[…これじゃ、真紀が飯を喰う暇なんてないじゃないか!?…]真紀:[そんなのどうって事ないじゃん!]X:[…そりゃあ違うな、あんたがやってる事は、弘美の為なんかじゃない、あんたがいじめられていることを認めたくないだけだ、弘美にも悪影響だし、あんたにも精神を削ってる事で、どうせ持たないぞ…]真紀は、その言葉に一瞬ピクっとしたが、それでも、真紀:[ほっといてよ、どっか行って!]と発言した瞬間、Xは叩き付けられるように、真紀の体外に追い出された。中に居られるのは、真紀の本心に委ねられるからだ。X:[まずいな、怒らせちまった、真紀の気持ちも判らんでもないが……]一方の弘美は、真紀を待つどころか、勝手に学食で食事を済ませていたのだ。弘美の中で操作している者、性格の悪さを極めている。しかも、的確に、シナリオ通りに、頭のいい知能を秘めていた。X:[…困ったもんだ、これじゃ仕事にならん、弘美を早く突き止めないと、あの中に何があるのか?!…]真紀は、買い物から戻り、弘美を学食で見つけた時にはもう、昼休みの時間は残されていなかった。弘美が真紀を見つけて、弘美:「遅かったから食べちゃったよ、それ、貰ってくね」真紀は、黙って、教室に戻り、平然と席に座った。極めて悪質な者が弘美を操る事から、弘美本来の意志はどこかに封印するだけの事をしなければ、あんなに悪質にはなれないはず。Xは、弘美の本心ではない状態で本体に潜んでいるために、未来には、何らかの食い違いで誤報となり、弘美がイジメられて自殺したとされてしまったと見ている。弘美がまた新たな展開に歩もうとしていた。人に物を盗ませようとしていたのだ。X:[…真紀以外にまだいる!…]Xは、真紀以外の対象になっている生徒を探した。イジメられている生徒を捜すのは苦難だった。自分からは絶対喋らないし、申告もしないからだ。心の奥深くその事を隠そうとする。表に出たら何をされるかわからないから、その恐ろしさに潰されそうになるのだ。それに耐えられるとしても、人間として生きて行く為に欠乏してしまう何かがある。それは人間関係そのものだ。1人では決して生きて行く事の出来ない人間から、交流を失ったら、まず先は長くない。真紀の行為は、友情を守るどころか、耐えるだけの精神力と、人間関係を結ぶ交流感を消耗していくのだ。
2007.08.09
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自分の子供ではない、でも救いたい。名付け親が違う、でも呼びたい。複雑なしがらみが涌井の脳裏を駆け巡る。弘美と名付けたのは、前の夫であり、その夫とは昔から知っている者だった。だが、仲のいい関係だったわけではなく、涌井がその者に虐められていたという過去があったのだ。時が経ってしまうと、虐めた側というのは本当にその事実の記憶を忘れるというが、まさにその通りであり、よりによって涌井より先に出会ってしまったのはその者だった。世界の狭さというか、偶然が、涌井にとって、弘美を通じて蘇る辛い記憶。それでも弘美を救いたかった。しがらみを乗り越えられずに妻とは結局離婚してしまったが、娘との繋がりだけは失いたくなかったのだ。涌井:[こんな身勝手なことは承知の上だ、今更どうにもならない自分自身の過去は、自分だけで背負う、けれど、娘には全く関係のない事。今更父親ぶるのもおかしいが、出来れば娘に認めてもらいたい]学校は昼休みに入り、真紀は、学食に向かおうとした時、後ろから、弘美:「さっきのは何なの?何のつもり?」真紀は返事する言葉が見つからず、ただ言われているだけだった。X:[…これじゃ、カモだな…]真紀には口では勝てない性格、そこに付け込まれて言いたいように言われていた。弘美:「何とかいいなよ、早くしないとお昼ご飯食べれなくなるじゃん」真紀:「そんなこと言われても…」弘美:「そのトロトロした言い方がムカつく!時間無くなるから、ご飯代わりに買ってきてよ、何でもいいからさ」といって、どこかに行ってしまった。X:[…あんた、親友思いが仇になってるんじゃないか?…]真紀:[そうかもしれない、けど、いつでも弘美が戻ってもいいようにしてなきゃ]X:[…それも大事だが、今は弘美の中を探るのが先決だ、もっと会話を引っ張ってくれ…]真紀は学食に行く前に、校外にある売店に行き、弘美の好きそうな食べ物を買った。そしてすぐに、弘美のいる、今朝居たあの隙間に入っていった。X:[…場所を知ってるということは、もうこの状況が長いって事だな…]弘美:「遅かったじゃん、何買った?」真紀は弘美が好むと思ったクレープパンとサラダを取り出した。弘美:「こんなの欲しいって言ったっけ?忘れちゃったんじゃないの?」真紀は、本当に大好きだったクレープパンを叩き投げ、またどこかへ行ってしまった。人のいい真紀はら再び買い直す事に。
2007.08.08
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涌井の恐れている事はXにはわかっていた。しかし、事実を知る事も重要であり、今の生き方を変えられるきっかけになるかもしれない。過去を消すという作業は、Xでなくとも、Mやiでも可能なイージーな技だった。ただリセットするのであるなら。Xは、実は、過去の一部分だけを消去する方法を知っていた。だが、この方法は誰も知らない、Xも使ったこともない、出来れば使いたくない方法。理由は、過去が変わる事、関係者は必ず記憶が消える、そして、消した本人は責任重大という事で死ぬより辛い事になると言われているのだ。その意味は、決して使ってはならないという裏付けがあり、人間として、一番卑怯で卑劣で非常識な行為だからだ。X達の異次元では、[3H]と称されているが、誰も口にすることはない。だから、過去にいながら過去の一部は消してはならなかった。自分に都合よく記憶を変えようという行為を悪用する者が必ず現れるかもしれないのだ。それを出来ると思わせてはいけない、その流れにしてはならない…。涌井はここで決断しなければならなかった。弘美の存在を知る事、父親としてすべき事。X:[…とにかく、大変なことだが、事実を話すしかない。もし、それを聞いて何か異変があったら、その動き方によっては俺が判断する。…]涌井:[ああ、そうだな、記憶がなくなるのはゴメンだ。]その前に、弘美を操っている者を探らなければ、真実を語るわけにはいかない。Xは真紀と共に再び学校へ向かう。真紀:[弘美を救う事は出来るの?]X:[…そのために来てるんだぜ、何もしなければ帰れないしな…]真紀:[弘美の中にいるのは貴方と違うって言ったけど、何がいるの?]X:[…よくわからないが、人間じゃないことは確かだ、弘美の人格を変えているのも奴の仕業だと思う。…]まだみたこともない生命体、Xにも何が起こるかわからない。だが、弘美から引き上げなければ救う道はないのだ。学校は何やら異様な雰囲気。イジメの事実を知っているのか知らないのか、職員にも、ただならない空気が漂っていた。X:[…これで普通か?…]真紀:[いつもこんなんだよ]X:[…だから気付かないんだ、ドンヨリしていて、はっきりしない、動作がまとまってないし、霞がかかっているようだ…]真紀のいる3年生のクラスは、ごく平凡な生徒ばかり。今は弘美とは別のクラスだが、2年生までは同じクラスだった。3年生になる進学期には既に弘美の人格は変わっていたという。
2007.08.07
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X:[…考えられん!…]娘の心に入ろうとしても入れない!娘は既に洗脳されている!X:[…どこの次元かわからない、別の者?いや、他に居るとは思えない!一体、誰だ!?…]娘を動かしていたのはまさにその心に潜む者が原因のようだ。数人の生徒が1人の生徒を押さえ込んでいた。その前に、娘が立ち、娘:「なあ、あんた、昨日、センコォにチクりに言っただろ?それに、あたしの名前出したよなあ?」X:[…弘美…というのか…]そういえば、涌井から名前を聞いてなかったが、何故だろう?一刻もできない状態で、Xは、急遽、攻められている女子生徒の心に潜入した。X:[この子は、親友のようだな、何故こんな目に?…]ひとまず、この場を何とかしなければならない。女子生徒:「正しい事してるのがいけないの、弘美!」意外な反撃に、弘美:「何?この世界に正しいも何もないんだよ!」と言った後、蹴り飛ばすと、X:[…避けろ!…]それに反応した女子生徒は、押さえ込んでいる生徒を力いっぱい払い上げ、その場から逃げた。弘美:「何かが違う」どうにか逃げ切った女子高生は、心に潜むXに問いかけた。生徒:[あんた、誰?何故助けるの?]Xは、この生徒の言葉がとても不思議なイントネーションだと気付き、X:[…あんた、今何されてるかわかってんのか?…]すると、生徒:[わかってるような口きかないでよ、イジメられてるのはあたしじゃないわ!]X:[…!…]生徒:[弘美に決まってんじゃん!]Xさえ読めないこの言葉の意味を、生徒は淡々と答えていった。生徒:[あんたも気付いてると思うけど、弘美の中にいるのは、弘美を操っているみたいなの、弘美の本心をイジメてるのよ!]そんなことがあっていいのだろうか?人の心を本心から操るとは、XやMには踏み込めない所に奴が潜んでいることになる。X:[…幸いとは言い難いが、弘美本人の意志ではないという事だな…]現時点では、この生徒がイジメられている形ではある。だが、本当に苦しんでいるのは、弘美の本心である。X:[…とても複雑で解決するのが困難だ、イジメを解くにはイジメをさせないこと]弘美を救うには、弘美の本心にいる何者かを解読すること。厄介ではあるが、Xは必ず解決させる重大な任務だ。X:[…あんたは問題ないようだな、真紀と呼んでいいな…]真紀:[名前を?あんたも奴と同類なの?]
2007.08.05
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何が娘にさせていたのか?何を考えていたのか?それから突き止めなければ、被害者も加害者も救う道はない。これは心と心の問題だった。些細な事から虐めが発生する事があるから、それぞれの心を見抜いた上で行動する必要がある。涌井:[とにかく、Xは今から娘の中に潜んでくれ、俺はそれによって相手の行動を見たい]X:[…いいんだな?娘さんのプライベートに入っても?…]涌井:[ああ、何か起きようとしたら、食い止めてかまわないから]Xは、涌井の苦しみをよそに、余裕を感じる娘にやる瀬ない思いと、怒りを覚えた。X:[…親を横目にして、あの光景には信じられない、早いとこ正してやらなけはれば、涌井の心が持たない…]涌井の痛んだ心と連動するかのように、現代の異変が変わっていく。iは、その異変を予測した。i:[…地震が起きるわ、微震だけど、涌井に何か変化があったみたい…]彩香:[変化って、いい意味なのかなあ?]i:[…わからない、けど、あまりいい内容ではないと思う…]彩香:[いい意味では異変を感じないからでしょ!?]i:[…そうね、もうじき揺れるわ!…]iの答えた後、すぐに地面がかすかに揺れた。彩香は、涌井に起こっている事が心配だった。同じ時に仁美も、Mと同じ気持ちになっていた。仁美:[何が起こっても、無事に会って欲しい]iは、もし次に異変が起きた時は、もっと大きな地震が来る事を予想していた。規模によっては、皆を避難させなければならない。でも、そこまでの判断が付かなかった。M:[…これ以上の災害が出る予想がたてられるなら、僕なら何とか出来るかもしれない…]i:[…この時代ならできること?…]M:[…そう、この時代であれば、特殊機能は使える、ただし、非常用だけどね…]非常用である以上、決して完璧に実行出来る可能性は保証されないが、今の段階では、他に手がない。M:[…出来れば何も起こって欲しくないが、あっちは大丈夫だろうか?…]Xは娘を尾行し、学校の昇降口の前まで来た。そして、中に入って行くと思ったら、その横に逸れて、脇に狭い空間があった。そこで何人か生徒がいた。誰かを囲んでいるようだ。Xはすぐにそれが虐めの現場だとわかり、急いで娘の心の中に突入しようとした。X:[…な、なんだ!これは!?…]
2007.08.02
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娘に近寄ろうとするX。だが、思いがけない光景に出くわした。携帯電話を持っていた…?しかも、誰かにメールしている。X:[…おかしいな、涌井の言っている事と違うな…]しかも、虐められているような雰囲気ではなく、むしろ、余裕すら見える。X:[…もしかして、虐めって…]事態は急変した。現代では、iと彩香のコンビが、保健室で柚木先生と佳代の姿を見て、彩香:「ねえ、今日おかしくなかった?」柚木先生:「日付の事かしら?」佳代:「あたしもさっき彩香に会ってなかったらどうしようと思ってさ」彩香:「佳代、あれから走ったの?」佳代:「走ってないよ、ちょっと考え事してたんだけど、気が付いたら校門にいたような…」i:[…歪みが発生した瞬間、彩香を越えて来たのよ…]彩香:「え、あたしには何も感じなかったけどな」i:[…だから個人差があるって言ったでしょ…]柚木先生:「iさんの言っている時間の歪みとやらの修正は効くのかしら?」i:[…おそらく、2人が帰ってくればね…]柚木先生:「あなたには無理って事?」i:[…何が言いたいの!?…]柚木先生は、佳代との会話の間に入ってきた事が気に入らない様子だった。彩香は、ひとまず保健室を出る事にした。i:[…あたしが何も出来ないと思われてるわね…]彩香:[気にすることないよ、割り込んだあたしが悪いのよ]i:[…だけど、あの2人意味深な会話をしていたのは確かよ、家庭の事情みたいな…]彩香:[わかったよ、でも、詮索はやめよう]iは、以前よりも大人になった彩香を見ているようだった。同じ頃、仁美とMは、教室で会話をしていた。仁美:[でも、異次元で見たMの姿は本当に私が描いてた通りでびっくりしたなあ]M:[…仁美が選んだ通りでよかった、自分はとくにイケメンではないし、こんなんでいいのかと心配したんだけどね…]仁美:[十分どころじゃないよ、はまりすぎだよ]お互いに、同じ場所に居ながら姿が見えない事がなによりもやるせなかった。仁美:[いっそ、異次元とくっついちゃえばいいのになあ]M:[……]彩香とi、そして、仁美とM。皆が待っていたXと涌井の情報は、思いがけない展開となっていく。涌井が助けようとしていた娘は、実は虐めの加害者だったのだ。X:[…しかしなぜ、死んだのかがわからん…]涌井:[例え加害者だとしても、突き止めなければならない、立場が逆になっただけだよ]Xは、涌井の心の思いきりダメージを受けた痛みを感じた。
2007.08.01
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過去を変えてはならないルールは、基本中の基本。少しでも変えれば、未来に大幅な変化が生まれるからだ。だが、極めて異例のルールは存在した。リセットした結果が最悪に終わった場合のみ、過去を変える事ができる。だが、これはリセットを失敗したと見なされ、そのリセットをかけた者が責任を問われるのだ。責任をとるにも、限界があり、Xのような特殊な技法を持たなければ、責任を背負い込む事になり、選ばれし者に依頼しなければ解決しない事件である。このケースの場合、仕掛けたMが責任者となるが、途中でお節介をした形となったXにも責任があった。状況が状況だけに、涌井の強い希望は、依頼先だったXが適任なのだ。X:[…これは特別な事だ、未来を変えてはならない掟は、娘を助けてから考えるとするか…]涌井:[そんな事可能なのか?]Xは、真剣な声で言う。X:[…いいか、娘さんを助けても、過去に修正を入れた時点で、未来は変わる。その状況がどうであれ、もう俺にも手がつかなくなる…]涌井:[それが、最悪の結果になろうとも、娘を助けるかどうかって言う事だな?]X:[…そうだ、禁断のルールとされている理由は、未来に保証がないからだ、こればかりはもう奥の手はない…]涌井は悩んだ。娘1人救うために、未来の全体にかかってくる可能性が、とても抱え切れない後悔となるのか?涌井:[見ているだけでは、とても辛い、だったら、何もしないで帰った方がいい]X:[…それは無理だ、触らないにしろ、結果を出さなければならない、命懸けで過去に来た理由がなければ、来ただけでも未来が変わるかもしれない…]涌井:[即ち、一部始終見ていなければならないって事か……]涌井は、背に腹は変えられないと思い、亡くなった娘に対して祈りを捧げた。涌井:[助けたい……]その思いはXに痛む程に伝わった。そして、救援決行を意味する。X:[…覚悟はづきたようだな…]涌井とXは、目の前に現れた娘を目撃し、涙を拭いて、自殺する手前に救うための方法を考えた。X:[…あれがそうか、かわいいじゃないか、危険性がなければ、どこかで落ち合う約束をしないとな、この時は……?…]涌井:[俺はまだサラリーマンしてるから、会社にいる事になってる]X:[…この日は、少し早く帰宅する事にして、待ち合わせの約束をしよう、娘さんに伝えるのは俺がやる…]涌井:[ああ、頼むよ]まだ携帯電話が普及し始めで、娘は出遅れていた。もうこの頃には既に虐められているとすれば、携帯電話持っていれば、虐めのネタになっていたかもしれない。
2007.07.31
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時間の歪みは約24時間のズレ。それも、土曜日が1日分早く来ているので、金曜日のデジャブが生じる可能性がある。起床する日の前日が木曜日、金曜日を飛ばして土曜日になっても、この歪みを感じたこの4人以外の人間は、おそらく、普通に過ごしていることになる。木曜日から土曜日になっても、それに合わせて時間を飛ばしているのだ。それは、この学校から始まった事から、学校に直接関係のない人達は、周辺と同じように成り行きで生きているのだ。彩香:「さっき見た光景が、僅かな金曜日の時間に反映することになる、それだけ他の人達が時間にルーズって事ね」彩香にも覚えがある時間のルーズさが、どれほど鈍らせているか、時間の大切さを感じさせられた。i:[…時間の歪みはそれほど問題ではないわ、むしろ、気をつけなければならないのは、元に戻る時よ…]彩香:[デジャブの事?]i:[…そうよ、一瞬でも金曜日の分がどうしても食い込んでくるから、その時に惑わされる人が出てくるかもしれない、だとすれば、その一瞬に事故でも起こしたら、その人は2度味わう事になるわ…]仁美:[いいことがあればそれも2回でしょ?]i:[…まあ、そうだけど、最悪を考えて言ったのよ…]その一瞬が何分あるのか?元に戻るまでの時間で決まる。歪みから約2時間、X達が過去に戻ってから約2時間経過している。iはその一瞬を見極めて、パニックにならないようにする重要な役目だ。過去の学校に戻ってきたX達は、まだ改名されていない事を確認した。涌井は必死に娘を探していた。涌井:[まだ間に合うといいんだが]X:[…おそらく改名する2週間前だ、娘の心を逆探知しているからおそらく大丈夫だろう…]まだ改名を考えているはずがないが、この時点でもし考えが出ているとすれば、統廃合の可能性を見越しているだけとなる。涌井[ここは1つ探りを入れるしかないだろう]X:[…待て、むやみに話し掛けない方がいい、最悪、元に戻る時に障害が起こるかもしれない、多分、今でもiのいる時間にはもう障害が起きてるはずだぜ…]ここで問題を起こせば、ここもそうだが、現代にどう影響するか予測できないのだ。X:[…ここは穏便に、確認のための探りだけで抑えてくれ、例え娘さんを目撃したとしてもだ…]涌井:[そんな…!]見ているだけで、結果を変えてはいけないのが過去に戻るためのルールだった。しかし、Xには分かっていた。涌井がこのまま引き下がるような男ではないという事を。
2007.07.30
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翌朝、彩香は、普段通りに起床し、パジャマ姿のまま、下の階のリビングにおりてきた。いつも朝ごはんを作っているはずの母が見当たらない。今までになかったことに、彩香は動揺した。iが、異変を感じて、i:[…なんか変ね…]慌てている彩香はその言葉を気にも止めずにいた。いつも起きてから10分くらいしかなく、もう学校に行く時間が来ていた。玄関にいくと、普段、父はもうとっくに出かけるはずなのに、まだ靴が置いてあった。彩香:[いるのか、まだ。]遅刻は免れない父を、彩香は起こしに戻ろうとしたが、自分もどうやら危ないので、そのまま家を出た。電車に乗って落ち着くと、ようやく、朝の事を思い出す。彩香:[どうしたんだろ?こんなことなかったのに]i:[…だから、聞いてないの?あたしの話、さっきから変だって…]彩香:[変かどうかまだわからないわよ]急いでいた彩香はまだ異変とまでとっていなかった。改札を出た後、佳代が歩いていた。少し様子が違った。彩香:「おはよ、珍しいじゃん、今日はいつもより遅いし」すると、ずっと下を向いていた佳代は、佳代:「あ、彩香、何と言ったらいいのか」深刻な顔をした佳代を見て、彩香:「ここで話したくなかったらいいから、無理しないで、この時間遅くてヤバイから、脚、早めた方がいいよ」と言って、早足になった彩香になかなか着いてこない佳代。彩香:「遅れちゃうんだよ、普通に歩いちゃあ!」いくら呼んでも、普通に下を向いて歩いている。どんどん離れていき、やがて見えなくなった時、仕方なく少し逆に戻ってみた。だが、不思議な事に、歩いているはずの佳代がいなくなっていた。彩香:「え、ウソォ!」あたりをキョロキョロしても、佳代はいなかったのだ。彩香:「まさか、出し抜いて先行ったかも!」そう思うのが普通だった。急いで学校に駆け付ける彩香は、3階の教室へと駆け上がり、ザッと扉を開けた。誰もいない………生徒も、教師も、来ていない!?彩香は、いない事よりも、自分だけが学校に来た事が、何だか不思議に感じていた。目をこすってカレンダーをよく見た。そうしたら、今日は金曜日のはずだった。急いで学校を出て、今日の正しい日付の情報を探した。校門を出て、少し歩くと、お店に設置してある電光掲示板の表示を見た。○月○日土曜日!彩香:「ウソォ、金曜日じゃ!?」彩香は自分が勘違いしているのか、気が動転していた。それはそうと、さっき見かけた佳代の事が気になった。土曜日で休みなら佳代は部活?いや、佳代の部活は文化系で土曜日にはないはず。彩香:「でも、間違いなく、あれは佳代だった!でもいなくなった、どういう事?」彩香は、学校に戻り、仕方なく自分の教室に行き、昨日洗濯に持ち帰るのを忘れた体育着を持って帰ろうとした。1階に降りて靴を履きかえようとしたら、人がいる気配がした。i:[…保健室?…]
2007.07.26
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そっと扉を開けた彩香は、以前と変わりなく机に向かって座っている柚木先生を見つけた。柚木先生:「どうした?まだいたの?」机に向かったまま話し掛けられた。彩香:「ちょっと疲れちゃってね、少しいいかな?」柚木先生:「疲れを取るなら自宅が1番よ」素っ気なく言われて、彩香は膨れた顔をした。すると、i:[…ね、もう起きてるんじゃない?…」]彩香:[何がよ?]i:[…だから、Xが言ってたやつ…]彩香:[え、まさか、どこに?]i:[…ここによ、先生何だか変じゃない?…]彩香は、柚木先生に少し近づきながら、彩香:「先生、どうしたん?」すると、柚木先生:「うるさいわね、彩香もあたしの事笑ってるのね!」彩香:「??」その時、iは柚木先生の心理を探り、事情を突き止めた。i:[…先生、続いてた不倫、やっと終わったんだ、ようやくまともになったんじゃん!…]破局と異変とはまったく無関係に思えるが、彩香:「そんなことないよ、今は苦しいかもしれないけど、これでよかったんだよ」慰めに徹した言葉に、柚木先生:「あなたたちがやっていた、リセットとかいうのがきっかけじゃないかと思ってね、彼、まともになったのかもしれないね」唯一リセットの事実を知っている柚木先生にとって、あのリセットを恨みと安心とを併せ持った気持ちで、身体疲れ切っていた。心のリセットはそう簡単なことではない。忘れてたくても忘れられない事、忘れてしまったことを思い出せない、単純なことではない事を意味する。不倫が悪いとかいいとかではなく、確かにあった心のよりどころが、消えるという方が深刻な悩みとなり、人間として、この先何かに縋っていかないことには生きていく自信がなかったりする。所詮1人きりでは成り立たないのが人間の生き方であり、自分に合ったライフスタイルを見つけるまでは時間を要する。でも、見つかって初めて本当の自分だけの生き方が動き出すのだ。柚木先生にとって、この時期を乗り越えるには、生徒の声や、周辺の人達との戯れで、生き方の方向を見つける事が大事である。iは、その内容を盛り込みながら、彼女の心に埋め込んであげた。一方、仁美はMと”ふたりきり”で教室にいた。まだまともに2人だけになったことがなく、何を話したらいいかわからなかった。M:[…無理に話す必要はないよ、あなたが浮かべる思いだけで十分伝わる。…]仁美:[それってあれよね、言っていいことと悪い事め両方を思った時点ですぐわかっちゃうのよね]M:[…その通りさ、でも、仁美が思う事全てが僕は聞き受けるのが好きでたまらないんだ、だから気にすることはないよ…]2人は、心を更に密接させていった。翌朝、異変は意外な場所で起きた。
2007.07.25
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その声は紛れもなく、引退したはずのXだった。彼は、特殊能力を持ち、異次元から他次元への接続を可能にしている。彩香達の会話もおそらく盗み聞きしたのだろう。涌井:[お前、話し聞こえたのか?]X:[…おかげさまでね、不可能な話しが聞こえてくると思えば、やはりあんた達だったって事さ…]Mはその時ムカついていたが、仁美の心に抑えられた。彩香:[涌井さんと一緒に行ってもいいよね?]X:[…ここは皆の協力が必要になる、だが、それは一緒に行く事じゃない…]彩香:[え、違うの?]X:[…実を言うと、過去に戻った事はあるが、まだリセットする前というのは初めてなんだ…]彩香:[えーっ!]涌井:[お前、それで自信満々で来たのか!?]X:[…やったことはない、けど、可能なのは間違いないんだ。だから後は実行するのみよ…]彩香:[なんか単純な発想ね、やっぱりXはXって事ね]彩香と仁美は、自信過剰なXを冷たい眼差しで見ていた。涌井:[それでもいい、実験台でいいから、俺を連れて行ってくれないか?]X:[…これは実験台なんかじゃない、任務だ…]涌井は涙を流して、Xに感謝していた。口は悪いが、気持ちがはっきりしていて優しい内面が、涌井には伝わっていた。X:[…リセット前に行くとなれば、きっとここにも何か異変が起こるかもしれない、それを君達に対処してもらう。どんな些細な事でもな…]M:[…僕らに出来る範囲なら…]X:[…何自信無くしてるんだよ、ここの次元ならスペシャリストなんだろ?…]嫌味な発言は、Mを通り越し、仁美に伝わり、仁美:[ゴタゴタ言ってないで早く行け!]彩香:「ひ、仁美!」i:[…面白い子ね…]X:[…フフフ、気に入ったよ、ネエチャン…]仁美:[何よ、]強気に出ていた仁美の心はかなりビビっていたのをMが感じて、M:[…仁美の気持ち、十分伝わったよ…な?]X:[…お前がわかってりゃそれでいいさ、じゃ、いくぞ…]Xは涌井の心に入り、準備体制に入った。[…じゃあな…]息つく間もなく、涌井は、この場から消えた。彩香と仁美は、これから何が起こるのかわからないまま、放課後の町を見回していた。M:[…とりあえず、校内に戻ろう…]i:[…気を落ち着かせてね…]彩香は、中にいるiにこっそりと伝えた。彩香:[ねえ、ふたりきりにさせようよ]i:[…気が利くわね、今がいいかもね…]彩香は、教室に戻る途中で、彩香:「仁美、先に行ってて、ちょっと保健室の様子見てくるわ」といって、すぐに仁美から離れた。仁美:「?……」すぐに降りて来て、彩香:[ちょっとわざとらしかったかなあ?]i:[…かなりねぇ…]そして、保健室の扉をノックした。「どうぞ」
2007.07.24
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過去に戻る手段は、リセットの後では、リセットした過去しかないという事は、学校の隠蔽もなかった事になる。しかし、以前の過去は完全に消滅したわけではなかった。それを証拠に、改名したままである事自体、改名したという過去が残っていることになる。いくつかの高校が統合し、総合高校となったとあるが、この情報には裏ある。どこに統合させるか論議となり、ちょうど同じ時期に、例の事件が起きている。隠蔽のために、お金を出してまで、この学校に統合を呼びかけ、改築と同時に、証拠隠滅を実行した。しかし、OBからの強い希望があり、仕方なく記念碑を設けるしかなかった。高いお金を払ってまで隠蔽をした割には、そうした石碑などの名残を残す形となって、話題にはしないように事件を知っている教師の間で囁かれていた。そして、時が経ち、その件を知らない教師だけとなり、改名の本当の理由も、石碑があるという事実も聞かされず、今日に至るのだ。涌井にはその事実を必ず探り、記事に公開すると誓い、娘のうかばれる場にした上で、ようやく報われると信じている。Mとiで合併し、仁美と彩香とで、過去への道標となる石碑の前に立っていた。彩香:[どうにもならない気もするんだけど、なんか解るの?]M:[…いや、わからないさ、というか、きっかけを見つければ、何かわかるかと思ったんだけどな…]i:[…こればかりは、あたしたちは、過去に戻る事が出来るのは、リセット後であり、しかも、十年は無理だと思うわ…]M:[…それでも戻ってみる価値ないと思うか?…]そう言われると、iも静かになり、沈黙した。彩香:[ていうか、それって、放課後でいいんなら一緒に行ってもいいよ]仁美:[行くなら行くよ、優柔不断なんだから]M:[…ありがとう、君達の迷惑にならないように、この同じ時に戻ればいいよね…]i:[…自信がついたようね、涌井さんはどうする?…]涌井:[過去に行くのは私だけにしてくれないか?]彩香・仁美:[……]M:[僕達は、1人に1人しか入れない、だけど、僕1人では過去に行けない。…]i:[…娘さんに会いたいのね…]涌井は、涙を浮かべながら、涌井:[そりゃあそうだ、ここに連れて来れないなら、自分が行った方がいいだろう、伝えたい事もあるしね]すると、[…困っているようだな…]彩香:[だ、誰、今の声?]涌井:[お、お前……]M:[…いつの間に…][…そういう仕事は皆には無理だ…]
2007.07.23
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禁断の手法をとった例は昔にあった。Mと同じ、他の次元の女の子と恋愛関係までになった派遣が、やっとの思いで任務完了したあと、かなりの能力を使ったために、あともう少しというところで、命を落とした。残りのかけら分の能力があれば、命は助かったといわれている。繋ぎ止める理由も同じ。いつまでもそばにいる、女の子に気付かせまいとする思い。仁美は、そのことに気付かないまま、いつもの時間を過ごした。すると、彩香:「なんかさあ、あの一件を思い出すたびに、Mがなんかしていると想像しちゃうんだよね」仁美:「それって、いつもと違うって事?」彩香:「いや、そんなんじゃなくて、なんか…」すると、なぜか、仁美は、仁美:「言うなあ!普通でいることが大事だって言ってたじゃん!」彩香:「え、ご、ゴメン、そんなムキにならなくても…」仁美:「彼がいるっていうだけで、事件が関係あるって思うなあ!」かなりの言い草だったが紛れも無く、愛がきっかけ。仁美にはMがまだそこにいる理由がわかっていた。任務が終わってないからだって事を。でも、ひとかけらのきっかけでもいいから、自分に向いて欲しいと思っていた。その、ひとかけらになろうとしているMは、もうすぐ異次元に戻らねばならない。涌井は、Mが戻らねばならない事をiからも伝えられ、この一件は、難しいながらも、iに挑戦してもらおうと考えた。涌井:[あんたはもう十分やってくれた、もう気にしないでいいから、自分の事を考えるんだな]M:[……]答える事が出来ないM。こうやって考えれば、いつまでも永遠に事件が発生する毎日、体1つでは決して解決には結びつかないケースだって多い。学校の一件は、Mにさえ不可能とさえ考えられる作法を取り入れなければならない。例え、iと共同しても、力の問題ではなかった。仁美が、Mが事務所に呼ばれていることを知ったら、やはり耐えられない気持ちになるはずだ。Mは決断した。自分は仕事、それ以上に守らなければならない存在を、例えカケラだけでも一緒にいたかった。iも、その思いに、i:[…いいんじゃない、その気持ち、大切にしたほうがいいし、後悔できるものじゃないから。異次元に戻れば、もうほぼ永久に会うことはできないはずよ…]M:[…わかるか?あんたにはこのなんともいえない気持ちが?…]i:[…わかるよ、女として見れば、やはり状況を考えたら後悔は最大の敵よ…]Mは、iの後押しで命の一部を仁美に委ねる事を決めた。それは、永遠の愛を誓うものであり、それと同時に身を削る意味でもあったのだ。
2007.07.22
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リセットした後の過去は、リセットされた過去。タイムマシンを使おうが、行きたい過去とは違う、なかった事になっている過去に過ぎなかった。Mや、他の派遣会社からも、過去にさかのぼってリセットする事は、特別扱いであり、許容範囲外な考えだった。つまり、事例がないという事だ。だから、リセットした後で、元の過去を探り当てる経験は持ち合わせていない。Mがこのまま過去に行ってリセットしたところで、隠蔽を更に上乗せするだけ無駄な行為となるだけだ。事実を知った以上、現在を生きる事に悔いが残る事になるが、知らない方がまだましだったのかもしれない。涌井は、この事実をおおやけにするつもりはなかった。だが、しらをきる学校を見て見ないふりをするのも考えものだと思っていた。この願いは、深く、そして遠く、電波の如く浸透していく。M、そして、仁美は、彩香と共に、叶わぬ希望を抱きながら、日々を過ごす事になった。いつものように学校へ行き、いつものようにクレープを食べ、そして、いつもより会話が交わされた。しかし、その日々も長くは続かなかった。Mには、最後の任務である、仁美の心のケアに関して、事務所側では、「もう既にクリアしているのでは?」という判断で、まもなく仁美の元を離れなければならなくなった。Mは、新たな件として、隠蔽クリアを提示したが、事例のない任務には承認されず、延期が認められない事態になってしまった。Mは、M:[じゃあ、僕が事例を作る]と言ったが、事務所:[君が優秀なのは変わらないが、やはりその一件までは首を突っ込むわけにはいかないだろう。]M:[しかし……]Mの言葉を打ち消すかのように、事務所:[君は、現代の任務に長く居すぎた。気持ちはわかるが、こちらでの活躍にまわってくれ]派遣に決定権を持てず、従うしかなかった。Mは、1つだけ仁美と希望を繋げる方法をとった。この方法は、異次元のこの業界では禁断の手法とされる方法であり、決して軽くはない違法行為だった。それは、仁美の心にMの能力の一部を切り取り、置いて行く方法だった。2人を繋ぎ止める唯一の手段だが、危険も伴うため、違法としているのだ。それは、Mの能力を低下させるだけでなく、M自身の命を脅かす原因にもなるのだ。Mのかけらを残す事は、仁美には内緒にしていた、それでもまだ仁美の中にいることになっているからだ。悲しむ仁美を見たくない、いつでもそばにいたい、そんな強い気持ちが、次元を越えた恋を築くきっかけとなると信じていた。事例のない恋、次元を越えて、作り出された願いは、はかなくも現実には至らないのか?人気blogランキングへ
2007.07.19
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自分の母校で、いじめの隠蔽があったことを初めて知った。しかも、後にも先にもその一件だけ。なぜそうなってしまったのか、なぜ防げなかったのか?涌井はその時、学校側は、判断に困ったあげく、学校の名前や、一部の教師を解雇させて、その場のがれ的な行為に出たとみていた。文房具を毎日買いに行き、クレープ屋を提案したのは、紛れも無く、涌井の娘だと断定できた。彩香:「娘さんのおかげなのね、ここで美味しいクレープが食べれるのは。でも、あまりにもやる瀬ないわ、このままじゃ」仁美:「そうよ、うちの学校で起きた事実が浮かばれないまま、これじゃあ、まるで教訓が活かされてないわ」涌井:「現に、仁美さんもそのような目に会ってるんだ、ある意味、彩香さんという、強い友情で学校がもってるだけかもしれないがね」仁美:「あと、この人」涌井:「ああ、そうだったね、M」Mやi、そしてXの存在で、今は普通の学校に戻っていたが、逆に、悼まれない過去を隠す手伝いをしたような形にもなってしまった。あの石碑を見ても誰にも記憶がないのも当然だった。しかし、そんな過去が残ったままリセットされるという事は、今のところ、完全なリセットではなかったという事か?トータル的なフルリセットならば、現在はもちろん、過去の出来事も再起動されるべきなのだ。M:[…よく考えたら、あの石碑、リセットの前にはあったのかな?…]彩香:「それって、元々なかったって事?」M:[…ああ、そうだ。考えても見ろ、仁美の件も外部にまで噂が流れた、隠蔽すら無理な状態だった。だけど、リセットの後に石碑が現れたって事は、また違う次元で起きたという事にはならないだろうか?…]涌井:[難しい事を言ってるなあ]仁美:「あれでしょ、現代、現次元とはまた違う過去」彩香:「要するに、もうひとつの過去っていう意味?」M:[…有り得ないが、考えられない訳でもない…]物語をこれ以上、複雑にするつもりはないが、リセットにバグがあったことを考慮すれば有り得る内容だった。あるはずのない過去。今では普通に動いている歴史は、違う次元の現代という事なのか?M:[…複雑な思いで、リセットした状態が悪かったのか、変わらないのに違ったリセットをしてしまったのか!?…]仁美:「今の現代じゃあまずいのかしら?」涌井:「まずいというより、知ってしまったというか、このまま穏便にするという事は、隠蔽と変わらないのではないか?」M:[…これはちょっと難しすぎる、今が元通りには変わりないからなあ…]彩香:[この現代から過去に戻ったらいいのにね]M:[…リセットすると、過去なんて物はもうないんだ、なかったことにするんだからね]
2007.07.18
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校門近くに来た彩香達の会話にあったクレープ屋がどうのこうのという内容は、まるで待ち伏せしていたかのように居た涌井に、邪魔したかと気付き、涌井:「どうだい?足止めさせてしまったお詫びに、君達がよく行くクレープ屋に連れて行ってくれないか?」彩香:「あ、知ってたん?」恥ずかしそうに答えた彩香の目は、期待に満ち溢れていた。涌井:「ご馳走するよ」彩香:[ビンゴ!]M:[…ヤレヤレだね…]彩香の案内で来たそのクレープ屋は、他の生徒達も群がっていた。涌井:[娘もきっと、ここへ来ていたのだろう…]そう思いながら、シンプルなバタークレープを頼み、彩香達にも好きなクレープをご馳走した。彩香:「いただきまあす!」仁美:「お言葉に甘えて」2人の風景は、ごく普通の事で、楽しかったはずの高校生活を、陰険ないじめによって破壊されてしまった涌井の娘。普通の生活すらすごせなかった娘の思いが、Mの胸に熱く伝わる。その熱い気持ちはすぐに仁美にも伝わっていた。笑顔でクレープを食べていた彩香の前で、仁美は涙を零していた。それを見た彩香は、彩香:[娘さんを思うその重みを、一生背負っていくのかなあ?]M:[…そうだね、その思いだけは、決してリセット出来ないからね…]いくらリセットを重ねても消える事のない記憶。人間には、必ず一つは持っているはずだ。学校では、そういう部分を生徒に伝える事が1番難しいとされている。だから、生徒と親との接点の時間をいかに上手く使うかが大きいのだ。涌井は、なかなか美味しいと思ったクレープ屋に、涌井:「ここはいつからやってるんだい?」店主:「ちょうど、10年目になりますね、あの学校が改名したとか何とかで、同じ4月にオープンしたんで、記念に提携させてもらってますよ」涌井:「なるほど、考えたな、じゃあ、改名する前はいなかったんだね?」すると、店主:「いやいや、その前からもいたんですがね、文房具屋やってたんだけど、デジタルだなんだで、売り上げが悪くなったんですよ、それも、あるきっかけで…」涌井:「あるきっかけ?」無理矢理口に押し込んだクレープをモゴモゴさせながら言った。店主は、店主:「大きな声では言えませんが、クレープ屋を始めた本当の理由は、1人のあの学校に通う学生さんだったんです、暗い顔しながら、クレープがこの町で食べれたらいいな、って、言ってたなあ」涌井:「学生、さん?」店主:「そう、その子、ほぼ毎日来てくれて、ノートやシャーペン買いに来ていたんですが、なんか変だと思いましたね」彩香:「そうそう、ノートとか毎日のように買いに来たっていうのが妙だわ」店主:「数日後、急にその子は、店に来なくなったんですよ、あんなに来ていたのに」涌井:「…!」涌井は、ツバを飲んだ。そして、Mは、[…そうきたかぁ…]Mは既に、まさかと思った。店主:「後で聞いたら、その子、自殺したらしいのです、学校側では事故と言ってましたけど、私はその時ピンと来ましたよ」涌井は、涙に溢れた目をこらえながら、涌井:「そ、そうでしたか、それでクレープ屋を?」店主:「少しでも報われるかと思ったのか、気がついたらクレープ屋やってましたね」
2007.07.17
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学校は以前の姿に戻っていた。いじめもなく、エリートという話題まるでなかったかのように、昔からの伝統を積み上げてきた学校になっていた。リセットの後、異次元に移動していた時から学校にいた彩香と仁美にだけ、片隅に記憶として残されていた。この事は、2人だけの秘密で終わるのだろうか。仁美の中にいるMが存在するという事は、まだ、大事な任務が残されていたからだった。涌井は、今の姿の学校を取材し、自分自身が通っていた頃と照らし合わせていた。涌井も、Xを依頼した者として、記憶を持つ人間の1人だが、Xが[選ばれし者]とまでは、さすがに知るよしもなかった。涌井:「任務を果たした事に礼をいいたかった。でも、いい記事にすれば、きっとその思いが伝わるかもしれない」涌井は、取材のため、校内を見回した。すると、少しだが、変化が見られたのだ。涌井:「はて、この石碑あったっけなあ?」見つけたのは校庭の反対側にあたる校舎の裏にあった石碑だ。よくみると、十年前に出来たものらしく、何に対して建てられたのか書いていない。涌井が卒業したのは、11年前だから、そのあとの事について調べればわかると思った。校内に戻って、田中先生や、柚木先生にも挨拶し、赤津先生も、相変わらずで、保健室を通っているらしい。赤津先生がこの学校に赴任したのが、ちょうど10年となるらしい。涌井:「裏にある石碑の事で尋ねたい」すると、赤津先生は、赤津先生:「え、何それ、そんなのあったっけ?」信用出来なさそうだったが、10年以上勤めている教師を捜すも、残されていたのは副校長位だった。副校長:「あれ、そんなものがありましたっけ?」涌井:「何なら見に行きませんか?」副校長:「そうっすねぇ」2人は、その石碑のある裏に行った。確かにそこには石碑があった。しかし、誰一人、その事に気が付かない、10年前の事を知らない。副校長:「確か、10年前は、この学校が、改名したころだと思いますが、それと関係あるのかもしれませんね」涌井:「改名?それは何のためにです?」副校長:「隣町にあった高校と合併したためです」涌井:「それは、吸収されたのは?」副校長:「こっちの方です」涌井は、ようやく、変わらなかったはずの母校に唯一、変わったことを知った。吸収されたという事は、おそらく、生徒の人数が足りなくなったか、経営に問題があったと思われるが、どうも、そんな事ではない感じがしていた。涌井:「誰にも知らない事実があったのは間違いないな」その件にターゲットを置きながら、母校の記事を特集することにした。
2007.07.12
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ウイルスは、現代には一切消滅し、学校が戻り、そして、学校の風潮も戻っていた。まさに、偉業を3項目も、瞬時にこなしたことになる。だが、比重はXの方が遥かにかかっていたために、Mの任務としての功績は薄いものとなっていた。Xは異次元にもどるとすぐに、ウイルスを体内で焼失させ、良性の空気として再生させた。この身体の構造は、鍛え抜いた筋肉の他に、伝説の薬物投与による内蔵の強化で、体内、外連動な免疫を備えた。その能力を使いこなすようになってから、多次元紀行が容易になったという。Xが、正真正銘、[選ばれし者]なのだ。人柄か、口が悪く、自分の事を表に出さない性格のため、他の派遣者と同等の任務に着いていた。だから誰も気が付かないし、自分自身も特別と思われたくなかった。今回の一件では、X:[仕方なかった、皆の前でやるのはな、でも、これでもう、普通ではここにはいられなくなっちゃったな]救えた事よりも、面倒臭いと思う方が強かったX。事務所からは高く評価されたが、それを拒否し、事務所を出る事を決めた。i:[これからどうするの?]X:[本当を言えば、ここにいるのが長すぎたようだな、選ばれし者はもう引退だ、2度とやらないだろう]i:[何故、そこまで!?]X:[あの一件のような事が起こらなければ、必要性のない技術だ、そんな能力なんか、リスクが多すぎて、ストレス貯まって、そっちで死んじまうよ、俺は生きたいから、もう忘れるんだ]i:[Mに残したあの事実のフォローはどうすんのよ?]X:[そんなの、俺がやることじゃあないだろう?あいつはあいつなりに考えて、任務こなしながら、近づけるものがあるだろうが]i:[…!?]X:[馬鹿だなあ、わからないのかあ?それは俺には出来ない事をやろうとしてんだぜ]Xに出来ない事?それは、シンプルで、最も身近なことだった。iも、何となくだが、これ以上聞いても変わらない事を悟り、わかった気がした。i:[これから何処に?]X:[そうだな、涌井と過ごすかな、あいつ、面白いぞ]そう答えたXは、派遣証と、事務所解除の証を机に置いて、事務所を去っていった。i:[Xの栄光は、あたしの記憶だけに留めておくわ]それから、Xの話題はしなくなった。彩香と仁美の所にいたMは、しばらく黙っていた。目の当たりにした[選ばれし者]の活躍ぶりは、まさに伝説そのものだった。身体を整え、鍛え、耐え抜く人に性格も見た目も関係ない事に、そのギャップに圧倒されたのだ。事務所を去ったXと、やる気のないM。女子高生との任務終了を前に、このまま終わってしまうのか?
2007.07.09
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学校から流出したウイルスを寄せ付け、自らを異次元に転送させる事で、悪性から良性に変換させる計画は、Xの身にも変化が起きる可能性があり、Mは、ここに来ている派遣者の中に、あの選ばれし者がいないか訪ねた。派遣者A:[あの事務所には、その伝説の人が出ているのは記録にないな]派遣者B:[あそこの事務所に1人いたらしいが、それが誰だかわからないし、今日だって、この件で来ているかどうか?]M:[派遣会社全体に呼びかけたのではないのか?]Mは、この一件の情報が一定に流れているか心配だった。もし偏りがあるなら改善した方がいいはずだ。1人、学校周辺を気によって取り囲むX。それを見守る事しか出来ないM達。学校の中では、教師達による、厳重な体制のもと、生徒達も、その様子を見ていた。その中に、異次元の彩香と仁美、田中先生や柚木先生、赤津先生も存在するが、エリートを設定していないため、菅野先生は存在しなかった。その部分だけは、現代の学校が強引に奨めてきた事で、表と裏の食い違いが生じているのだ。Xは、その食い違いから何かと変動が起こっている原因とも思われる中、裏工作という文字が頭に過ぎっていたのだ。X:[いくぞ]掛け声とともに、Xの身体にウイルスが寄せ付けられ、学校周辺からはウイルスが消え、現代の空気中に舞っている全てのウイルスがXに収まっていった。M:[あいつの身体に何分付けていられるかだ]まわりのウイルスはみるみるうちにXに吸収され、パニックを未然に防いだ。と、同時に、学校と共にXがスッと消えた。M:[な、なんだ?この能力は!?]そして、すかさず、また学校が現れたのだ。これは、まさしく、現代にあった学校だった。派遣者A:[あの現象、どこかで聞いた事のあるような……]派遣者B:[異次元と現代との転送、しかも瞬時入れ替え!]皆が注目していた現象。これはまさに、神業としか言いようがない。M:[ま、まさか、伝説の選ばれし者って……]そう思った瞬間、Mはその場で途方に暮れていた。あんな奴が、どうして?頭の中がからっぽになったように、ぼーっとしていると、[何かお悩みのようで]M:[…?…][そんなことでは、中に入れないんじゃないですかぁ?]M:[そ、その声は!…]学校の中から聞こえるその声は、強く、そして、優しかった。M:[…ひ、仁美!…]まっしぐらに、学校に向かっていったM。それを見ていた派遣者達は、派遣者A:[あれであのマスターなのかい?]派遣者B:[ああ見えても、一番人間に近いんだよな、心がさ]そう言って、異次元に戻っていった。残ったMにはまだ仕事が残っていた。
2007.07.08
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Xにしかない特殊な能力。彩香とMにかけていたあの忌ま忌ましい”飛ばす能力゛の事だ。気をためるのではなく、言葉にその役割をさせる異質な能力に、過去の使われ方が悪かったせいか、[悪]のレッテルを貼られていた。思いを寄せる彼氏の名前を呼んだ瞬間、思いと反する行動に出たり、許せない彼氏が忘れられないという思いを消去させるために、名前を言った瞬間、自動的に彼氏の記憶をリセットさせたり、[別れさせ屋]とした仕事が多かっただけに、決していい使われ方とは言い難いが、それが仕事の一環としてきたX。言葉変換するということは、Xがそうさせたい事をある違う言葉にかけて、相手にそれを言わせたり実行させるといった、相手の気持ちの意に反した内容に変えるのだ。嫌われても仕方のない内容だが、依頼が多いのも事実。それだけ、自分ではやりたくないが、人にやってもらうのなら、と思っている人はいくらでも存在するのだ。Xのような仕事は、やはりある程度の経験が必要で、間違った方法で実行することは許されない。言葉に反する事に発展させるのだから、言わせる方の立場はある程度放棄しているようなもの。それを、言わせている依頼者にも、受け入れる気持ちが必要であり、その気配りをXたる派遣が請け負う、それだけ、言葉の重要性を掴んでもらえる事が、この仕事の総仕上げといったところか。Xは、言葉の言えないウイルスに対して、役目を変換させる事を考えていた。悪質な反応から、異次元空間と同じ良性に変換させるというものだった。ただし、危険なのは、X自身に全てのウイルスを寄せ付けなくてはならなかった。その効果が現れる間に、悪性のまま取り込む形になるため、Mは、その方法には反対だった。X:[誰かがやるしかないんじゃないかあ?能力のある者がやった方が一番だと思うがな]M:[そんなことはわかってるよ、でも、決して名案とは思わないな]X:[と言ったって、他にないだろ?]M:[………]学校の中はほぼ全員の登校が済んで、授業をする予定だったが、現代にいる異次元の生徒が、落ち着いていられるわけがなかった。生徒A:「外に出たら死ぬぞ」生徒B:「オメェ、ちょっと外行って食い物買ってこいよ」といった生徒が後を絶たなくなって、それが本心で言っているのか、冗談かも区別が着かないくらいに、校内を飛び交っていた。M:[先にやって欲しいのはあの生徒達の言葉を冗談にして欲しいな]X:[冗談でも許せないぜ]Xは、どうしようもない事を口にする生徒達を助ける気にはならなかったが、現代の人々にまで伝染することはやはり許される事ではなかった。お互いの立場から、やはり転送するのが一番の策だ。X:[本当ならこいつら、リセットしたいよ]
2007.07.04
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M達は、次々に登校する生徒達に、M:[…みんな、校舎から一歩も出ないで下さい!今、この学校の周辺で大変な事が起こってます!…]それを聞いた異次元の田中先生は、田中先生:[なるほど、ウイルスの件ですね、噂では聞いていたが、本当だったんだな]田中先生や、他の教師も、そのウイルスについてのマニュアルは持っていた。ただ、異次元と現代の事については、架空の設定だったため、実際に起こっている事に、田中先生:[あのマニュアルのとおりだ、誰が作成したかわからないのに]マニュアルの項目に、異次元と現代でのウイルスの変化について論文が記載されていたのだ。全ては架空の事だったが、それに基づく理由が綴られている。このマニュアルを書いたのは、選ばれし者とされていた。学校から流出しているウイルスは、現代の空気中で、最も悪性である細菌に変化させていた。理由は、空気の質が全く異なっていたのだ。多標的で 多次元的な天然抗がん物質の開拓を研究していた選ばれし者が、自ら現代に行き、自分の体の変化を調べた。自分には変化がなく、異常もなかった。しかし、付着していた細菌を調べた結果、現代では、[がん細胞]に変化していた事を告げているのだ。これを応用すれば、現代に生きる人々にとって、ガンという病気が完全治療出来るのではないかとも言われていた。異次元で良性になる原因と、現代の空気中の成分を調べて、ワクチンを生み出せる可能性を秘めているといわれている。だが、現時点での一件にはまだそれは実現されていない。世間が大騒ぎになるまえに、このウイルスを食い止めなければならない。M:[…僕たちの身体にウイルスをなるべく寄せ付けるんだ!…]派遣:[…気で引き寄せるのか!?…]M:[…そうだ、それを一斉にやった直後に部分リセットを実行する…]派遣:[…そんな無茶苦茶な!…]M:[…ウイルスごと異次元に転送なんて絶対に無理だから、ここで消すしかないよ…]派遣:[…もし、それが少しでもズレたり、失敗でもしたら……]M:[…ああ、ここにいるだけ、僕たちにもガンが繁栄されるかもしれないな、なっちまったら多分、異次元に帰ってもガンは直せないだろう。ワクチンが出来ていれば、問題ないが……]すると、後ろから、聞き覚えのある声がした。[…俺の能力が必要のようだなあ…]M:[…Xか、呼んでおいて留守っていうのは気に入らないなあ…]X:[さっき、涌井に会っていた、事情を一応伝えなければならないんでね…]M:[…あんたの能力って、あれの事か?…]X:[…よく覚えてたな、ていうか、お前にそれをかけたんだもんなあ、彩香と。忘れるわけないよな…]M:[…こんな時にイヤミ言う暇があったら、急いでくれ…]Xも、依頼人のいるこの現代を見過ごすわけにはいかなかったのだ。
2007.07.03
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学校閉鎖が解除されるということは、学校に生徒が来るという事だ。しかも、閉鎖中、なにも改善されないまま、現代に移動していまい、なおかつ、その現代にとっては最悪のウイルスを載せていた。M達は、異次元からきた背景には、彩香達を守る義務があった。学校に充満するウイルスを撤去することより、彩香達を学校と共に元に戻す方法を考えていた。学校に次々に登校する異次元の生徒達は、学校が見当たらないが、校門前までは確実に来ていた。そのラインを越えるか越えないかの問題だった。彩香と仁美はそうとは知らずに、2人だけの教室を過ごしていた。異次元の生徒の1人が、「ここにあったよねぇ、校門」といって、ふざけ半分に、手を伸ばした。すると、不思議な事に、指先だけが、消えているのだ。気付いた生徒は、前進して、みるみる体が消えていった。それを見た他の生徒が、「おもしれぇ」と言う者と、「あたし、恐いわ」と言う者と分かれた。過半数は、消えて行くのを楽しむ生徒となり、次々と校門の前に出て消えていった。最初に入った生徒は、「これはいったい、何処なんだ?」と言って、戻ろうとした。しかし、さっきのように体が消える事もなく、逆に壁があるかのように跳ね返す感覚がした。そう、異次元の生徒は、現代の空間を抜けては逆に戻る事が出来なかったのだ。生徒が校内に入ると、窓の外で何かが起こっていることに気付いた。「戦争?事件?何か騒がしいぞ」校門をくぐって入って来た生徒は、その光景を校庭からも確認出来た。通り抜けるのを拒む生徒達は、消えていった生徒達を追い掛けるかどうか悩んでいたが、そこに教師もやってきて、「見えないけど、はいるぞ」と、普通のように喋った。「行くんですか?」「ああ、行くのを見ていたし、行った生徒を放ってはおけないだろ?」そう答えた教師は、異次元の田中先生だった。迷っている生徒の後押しをしながら校門を越えて行った。他の教師も到着し、田中先生に続いた。そして、やはり、田中先生達は、校庭で騒ぎが起きている光景を見たのだ。彩香と仁美はその光景に気がつかなかったのか?いや、そうではない。彩香達のいる学校とは違っていたのだ。異次元から来た者は、現代の学校への壁を抜けて、自分達のいた学校に転送されている、そう、今現代に移動してしまった異次元からの学校に行っていたのだ。
2007.07.02
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学校に戻れないでいた、彩香と仁美は、ここが異次元だということを知り、自分達が心の浮遊物になって悲しむどころか、Mとiの姿が見られるようになったことが、とても嬉しかった。特に仁美は、理想通りの彼の姿に改めて惚れなおしていた。しかし、どちらか一方はどうしても見えない存在になるため、叶わぬ恋であることには変わらなかった。現代に起こっている事件の事を知らずに、クレープを食べたいとか、陽気にしていたところに、M:[探したよ、君達。学校から出ちゃったんだね]彩香:[…だって遅いんだもん…]仁美:[…学校に戻れなくなっちゃったんだけど…]i:「相変わらず暢気ね、で、これからどうするの?」彩香と仁美は、いつもと違う2人の心理を読んでいた。彩香[………!…]仁美[…え、嘘だぁ!?…]M:[あ、僕の心を読んだんだね、2人とも。さすかは心のケアを知ってらっしゃる]i:「こんなときにふざけないでよ、で、現代に行けるの?…]M:[ああ、僕たちはね]仁美:[…Mに入って行くのは無理なの…?]M:[僕たちにはそれをすることが出来ない、許されてないんだ]Mは、現代の者を例え心に収めようとしても、他の次元に連れて行くことが出来なかった。選ばれた者以外は。彩香と仁美は、自分達の家に行くことを思い付いて、M:[この世界の家族に会うことも実際有り得ない事だから、会わないでほしい。でないと、混乱を招くから]i:「でも、現代から来た学校の生徒はみんな普通に帰宅していったのよね、明日の朝、学校が見つからなくなるのに」M:「中には、道の癖を知ってて、たどり着く生徒がいるかもしれない。だって、学校自体はそこにあるんだから」彩香と仁美には、お喋りしたり、道草したりで、通い慣れたつもりだった道の特徴を全く覚えていなかった。i:「いつも1人で通っている生徒の後を着いていけばいいんじゃない?」M:「そうだね、1つの問題さえなければね」彩香:[…何?それ…]仁美:[…その子が学校が見えない事に落ち着いていられるかって事かしら?…]M:[その通り、冷静でいられる方がおかしい、あとはたどり着いた時には、僕たちが言って後押しすればいい]仁美:[…さすが、私が見込んだ事だけのはある!…]M:………彩香とiは影で笑っていた。あくる日、学校に戻る事に。M:[しばらくかかるかもしれないが、学校の中にいれば帰れる可能性だってある、学校が唯一の現代の世界なんだからね]i:[コンタクトがとれるのもおそらく校内だけよ、他の生徒が来たら様子を聞いてみて]仁美:[…気掛かりなのは、家に帰った生徒がどうなったのかしら?…]i:[それはあたしが探索するわ、そのあとにMを追い掛ける]M:「iはやはりここに一緒にいてくれた方がいいかもね、異次元に1人でも知り合いがいないと不安だろ?」
2007.07.01
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異次元にあった学校は、現代の同じ場所にすれ違ったように間もなく現れ、何事もなかったように平然と建っていた。だが、建物の形は同じだが、鏡のように、やはり逆の構造となっていた。そして、下校時間はとうに過ぎていたため、校内には誰もいないと思われた。ところが、1人だけ、中に残っていた者がいたのだ。それは、保健室の柚木先生だった。Xは、見覚えのある先生とわかり、柚木先生に近づいた。すると、柚木先生は、柚木先生:[一体なんてことをしたんですか!異次元からきた普通の人間がどうなるか、あなたにはわからないの!?]Xは思い出した。異次元では何事でもない事が、他の次元では、大変な事に繋がることを。X:[俺の事を感じるって事は、あんたは俺と同じ空間にいた、もう一人の柚木先生ってことになるな、なんで学校にいた?]柚木先生:[そんなのしょっちゅうなの、泊まる事もあるし、たまたまだったらもっとツイテないって事ね]X:[中で今何をしていた?]柚木先生:[今学校で流行ってるウイルスの特定をしているところよ、普段良性だったはずのウイルスが突然変異で、学校を休む子が急増したの、今ちょうど学校閉鎖になっているところよ]X:[良性じゃないって事か、それが流行ってるのは学校だけか?」柚木先生:[そう、学校だけ、校外や周辺にも調べてみたら、ほかの地域には発生してないわ。]麻疹と似ているといわれる、異次元では極普通に浮遊している良性なウイルスは、時には身体の中で調子の悪い内臓を回復させるサポートをする役目を持っていた。選ばれた者になると、更にその空気中のウイルスを機械を使って収集:圧縮して、圧縮されたまま、ある液体に流され、中和させたものが、特殊な味のする薬品となって、その作用がかなりきついらしい。しかし、作用後には、他次元の行き来が自由になり、レベルの高い任務に就く。だが、選ばれた者の9割は、薬の作用に耐えられず、断念する。だから、任務に就いている者の身体は、神様と呼ばれる位に慕われたのだ。現在生存している、選ばれし特別任務者は過去にただ1人しかいない。彼もまた、第1次元空間、現代に飛んでいた。Mは、その男とは一度だけ会ったことがあった。まだマスターの地位になる前に、無謀にリセットを仕掛けていたMを怒鳴って、道を正した男が、その者だった。尊敬しているだけに、Mも現代に跳ぶことを考えていた。iは、i:「行くのはいいけど、あの2人を放っておいていいの?」しまったような顔で、M:「いけない!忘れていた、彩香と仁美にも伝えたほうがいいな」i:「あら、忘れてたなんて、あの2人も見放されたものね」
2007.06.27
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現代に起こっている事、おそらく全員が繰り出している以上、いい事件とは考えられなかった。そもそも、M達が、異次元に、しかも、学校ごと移動してしまった事も、その事件にタイミング的に関係がありそうだ。リセットした時、柚木先生の出現で、計算に狂いが生じたと考えられていた。しかし、その事件は、移動した時には既に始まっていた。という事は、このリセットには何か仕組まれたとも考えられる節がある。M:「予測していた!?」i:「事件が起きる事を!?」M:「誰がそれを?」i:「Xしかいないじゃない!?」M:「X!」連絡がとれないXにも何か起きているのか?事務所に一報が届いた。受付のLは、その記事を読んで驚愕した。受付L:「早く知らせなきゃ!」彩香と仁美は、M達を待ちきれずに、こんなときにクレープが食べたいと思い付いてしまった。仁美も、同じ事を考えていたと伝え、校門を出たのだ。校門を出てから、彩香:[…あ、いけね、あたし達、今見えないのを忘れてた、つい普通の行動をしてしまった!…]仁美:[…吊られてしまったわ、戻りましょ…]2人は学校に戻ろうとした。しかし、その場所に戻ったら、学校がそこから無くなっていた。彩香達は、彩香:[…確かにここにあったのに、校門!…]仁美:[…なんて事?何でクレープなんか…!…]彩香:[…ゴメン……]2人は仕方なく、M達を探しながら、異次元の街をさまよった。学校の周辺や、店、駅前、どれもうり二つだった。クレープ屋も。違っていたのは、鏡のように、逆になっている。まるで、夢に出てくる風景か、ゲームの裏モードのように、限りなく逆だったのだ。2人はついでにクレープ屋を覗いてみた。すると、微妙にメニューが違っていた。バターなのがマーガリンだったり、クリームなのが、カスタードだったりしていた。2人は摘んで食べようと企んだが、やはりそこは抑えこんだ。人間の心として。学校だけが現代からえぐり取ったように迷い込み、それが、外に出ると、何も見えなくなってしまう。不思議な事に、異次元にあるはずの学校さえ見当たらない。事務所に急いで戻ってきたM達は、アタフタしている受付に、M:「どうした、情報はどれだ!?」受付のLから情報の書いてある紙には、[Xからの伝言だ…お前達のリセットをした瞬間にエライ事が起きている…学校は戻ってきたが、その学校には、とてつもないウイルスが迷い込んでいた…そのウイルスは、第1次元空間にはない種類だが…我々には害のない種類だ…そのウイルスは、現代には最悪の………]情報はそこで途絶えていた。M:「Xが巻き添えになっているようだが、我々に害のないウイルスというのは、いわゆる、異次元、ここにある種類ということだ」i:「そのウイルスは確か、選ばれた者が修業に使う薬剤に含まれているとされる種類じゃないなしら?」M:「L、ここの学校で流行った最近のウイルスを調べてくれないか?」受付のLは、コンピュータで巧みな指先で調べていった。
2007.06.26
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Mは、Xを呼ぼうとコンタクトを試みたが、繋がらない。校門を出た瞬間、空気が変わった。M:[…あ、有り得ない…]iも校門の手前まで来たがMの反応が遮断された。i:[…え、確かにMは校門を出たはずだけど、何も感じないって事は…]Mと同じように、校門を出た。i:[…何、空気が違う?ここって!?…]2人がいるのは、まったくこの世の世界とは思えないものだったのだ。iはしきりにコンタクトをかけているMを見つけ、i:[…Xね、捕まらないの?…]M:[…ああ、捕まえるというか、繋がらない。僕たちは、どうやら違う世界にいるみたいだ…]学校の外がまったく違う世界だというのか。とすると、現実世界にあるこの学校はどうなっているのか?涌井ともXとも連絡が取れないというのは、おそらく涌井達は当然かもしれないが、現実世界にいるという事になる。せめてXだけでもコンタクトに繋がって欲しいところだ。Mはこの不思議な現象を検証するため、急遽、iと調べる必要があった。この場所こそ、Mやiが所属する事務所が存在する、異次元にほかならないのだ。M:[…彩香と仁美にも、そのうち特定の症状が起きるな…]急いで事務所に戻ると、中は受付以外誰もいない。M:「みんなどこへ行ってる?」受付L:「あらマスター、お帰り、っていうか、大変なことになってるみたいよ」M:「みんなで何か大変な事でも?」受付L:「違うわマスター、みんな第1次元空間に行ってるのよ、そこに大変な事が……」M:「第1次元って、現代か!」焦るM、そしてi。繋がらないのではなく、繋げられないのだ。しかし、いったい何が起こっているのか、まだデータが到着していたかった。M:「わかり次第、僕たちに連絡してくれ、ここの信号でいいぞ」受付L:「わ、わかった」この現実は全てあのリセットが引き金なのか?第1次元と呼ばれる現代とは、うりふたつですぐ裏側の存在だったが、現代で起きた過去のある一件がきっかけで、一種の鎖国状態にあったのだ。この空間を通過するのが規制され、困難なために、予約製として、出入り規制することになっていた。だから、今回のケースは有り得ない事であり、他の依頼も断っているはずだった。だが、全員が出払っている、しかも現代。何がおきたのか、未だに情報が流れてこない、それほど急だったということだ。彩香と仁美は、いま起こっている現実に追い付かないくらい混乱していた。彩香:[…あたし達って、Mみたいになったって事ね、ここでは人間じゃないってわけ…?]仁美:[…そういうことよね、まるで幽霊みたいに空中にさまよってしゃべってるのよね…]まさに、生き霊の如く。
2007.06.25
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彩香と仁美は、iとMの存在で、校門にいた影響と、ハプニングの間でリセットした影響はなく、皆無事だった。しかし、何を間違えたのか、唯一影響されている事がとても重要な事となった。彩香:「先生、今の、見た?」柚木先生:「今の、見たわよ…」仁美:「誰だった?」柚木先生:「あ、あたしにも知らないわよ」3人は、ここにいる男性が信じられないまま、ただ黙ってしまった。仁美:「まるで私の想像から抜け出したみたい!」Mはとうとう、焦りの頂点に達していた。彩香:「お姉さんも、どこから来たん?」iも負けずに焦っていた。M:[…声だけ聞こえる…この感じ、どこかで……]i:[…私も今言おうと思ったわ…]Mとiが感じたもの、それは彼らがよく知っている反応、異次元の香りだ。M:[異次元?間違いないか!?]異次元の世界。M達がそこからやってくるもう1つの現実。それが何故ここで反応するのか?校内は、以前のように静かで、生徒が普通に会話し、職員室にも、校長を交えた打ち合わせをしていた。涌井の思いは通じた事になり、はっきり言って、リセットは成功していた、しかし、何だかすっきりしない。この反応、異次元。何かが起きていた。当然と思えば当然の事だった。異次元に入った以上は、なにもかも逆転する。されずにスルーする方法もあるが、一般的ではなかった。その場合は、限られた者だけは、それをコントロールする能力を必要としていたが、かなりきつい修業と薬の効果等で始めは我慢出来ない程の苦痛を与えられるらしい。M達は限られた者ではなかった為、噂だけの話に納まっていた。そしてその者はある意味伝説となっていた。仁美は舞い上がり、理想の彼氏が目の前に現れたとなれば、気持ちが抑えられるわけがない。仁美:「あなたが、M…なんですね」M:[……そういう事になるかな…]彩香:「お姉さんがもしかして、i…さん?」i:[…そう、見られてしまったわね…]仁美:「こんなに素敵な方があたしの中にいるなんて、もう嬉しくてたまらないわ!」彩香も仁美の念願が叶った満面な笑顔を見て、嬉しい気持ちだった。M:[…喜んでくれるのはありがたい事だけど、考えて見て。…]仁美:「?…」彩香:「いったい何の事?」M:[…そのうち気がつくとは思うけど、今はっきりしといたほうがいい…]i:[…そうね、後でショック受けるよりいいかもね…]彩香と仁美は息を飲んだ。M:「あなた達の姿は見えない。今は唯一僕たちの心と話しが出来る事を」彩香&仁美:[…立場の逆転?!…]
2007.06.24
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騒ぎになりつつあった校門前。涌井は、Xに対して、涌井:[静めるには何が効果的だと思う?]X:[…そりゃ、あいつらも巻き添えにするのが手っ取り早いな、でも、それはあんたが望んでいる結果とは違うものになるかもな…]涌井:[それは一番簡単で一番難しいんじゃないのか!?」X:[…そうだ、それでこそ皆でやれば何とかなるんじゃないかあ?…]彩香と仁美に対して学校側としては迷惑な存在と判断していたことに、涌井は、涌井:「これはいじめ以上に異常な行動だ、スクープするネタにしては残酷で残念なものになる」金儲けにするだけなら簡単な事だった。しかし、彼にはそれよりも、これが現実に起きていることを深刻に取り上げる必要があると思い、スクープするより、正す道を選んだ。スクープは直した後でも出来る、いや、いい学校のネタにする方が他校に対してもいい影響になると思ったのだ。XからMとiにコンタクトし、決行を下した。もめている彩香と、それを止める仁美は、Mとiの判断に任せるかのように、自然体の状態でいた。X:[…今だ!…]と声をかけた瞬間、校門の脇から保健室の柚木先生が来て、柚木先生:「どうしたんですか、門前払いとはどういう……!…」涌井:「何!」M:[…ああ!…]i:[…そ、そうかあ!…]エリートとは関係なく常時配備する保健室の教師が存在していた事を見逃していたのだ。そんなことも空しく、かけ声と共に、風が舞い始め、ゆっくりと風速が早くなっていった。柚木先生は、言いかけた言葉を言わないまま、彩香と仁美は、教師達と対立しながら、どんどん風の威力が増していった。一面は白く、見えなくなり、光を放ちながら、風がスッと止んだ。静かになり、空気が澄んできた。M:[…リセットの効果は…!]i:[…実質、百パーセントよ…]校門には、教師達の姿はなかった。彩香と仁美、そして、柚木先生もそこにはいなかった。M:[…あれ、不思議だな、皆の姿が見えないなんて!…]i:[…これは奇跡というか、成功したの?…]彩香と仁美もそこからいなくなったが、彩香:「先生……?」仁美:「柚木先生……!」柚木先生:「今のは夢じゃないんだよね!?」Mとiは、声だけが聞こえるのが不思議だった。何故あの時点にいた柚木姿が見えないのに、声だけが聞こえる?既にこの学校はリセットされ、教師も生徒も元の状態に戻っていた。一番良かった頃の、母校と同じ体制に戻っていたのだ。繰り返される伝統をまた受け継ぎ始めたこの学校は、悩み、ハプニングは解決され、現在の教師と生徒が今ここにいた。何もなかった事にする、と思われた中、1つだけ、リセットした瞬間にミスが起こっていた。iが、何か反応を感じた。i:[…柚木先生から何か違うものを感じるけど、気のせいなのかなあ?…]柚木先生がそこにいた事と関係があるのだろうか??人気blogランキングへ
2007.06.21
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リセットしたい世の中に、とてももどかしい事が多い。自分が頭に浮かんだ瞬間、リセットされるようになったらどうだろう?おそらく1回だけでは済まされないだろう。上手くいかないたびにリセットされては、世の中が良くなるどころか、自分を見失うのではないだろうか?最近いいニュースを耳にしない。このままだと本当に頭がおかしくなるし、環境も悪くなる、最終的には地球全体が我を忘れる程おかしくなるにちがいない。鏡の裏側には違う世界があるように、現実の世界と同時に時間が流れているもうひとつの違った世界があるとすれば、やはり同じように環境が悪くなるのだろうか?学校は平然として、昔からあるような古臭さを感じる学校だった。授業も休み時間も、教師も、職員室の雰囲気も、全てが、昭和時代から受け継いだかのように、青春時代が流れていた。しかし、何かが違っていた。Mとiはやはり妙に懐かしむ気持ちは変わっていない。M:[…やはりおかしい、学校には異常は見られないけど…]彩香は、気分が悪そうな柚木先生を察して、保健室から出た。授業はもう終わっていたが、部活や他にも何人かが残っていた。他の生徒は普通に校門を出て帰宅していた。夕方になり、部活もまもなく終了する。バスケのキャプテンが復活していた仁美もまだ学校にいた。着替えが終わり、教室に戻ってくると、教壇に田中先生がぼーっと立っていた。仁美:「あれ、先生、何してん?」一緒にいたMは、田中先生の様子がやはりおかしいのを感じた。M:[…仁美、やっぱりおかしいよ、この学校。気のせいではなさそうだ…]仁美:[だけどリセットしたんでしょ、ちゃんと]M:[…そうなんだけど…]仁美は、田中先生の視線をたどって見た。教室の窓の外には、由香里先生ともうひとりの田中先生が肩を組んでベンチに座っているのが見えた。Mは、それを見て、M:[…妄想?願望?この症状は!?…]仁美:[人の願望が見えてるって事なの?]Mは突然思い付いたかのように、仁美から飛び出し、外に出てみた。仁美も急いでMに着いて行った。すれ違いに彩香が歩いてきた。彩香:「どうしたん、血相を変えて!」仁美:「Mが何かを見つけたみたい、田中先生の妄想がこの目で見えるようになったの!」彩香:「妄想?」2人で外に出てみた。ベンチには確かに田中先生と由香里先生が肩を並べて座っているのが見えた。iも、彩香を抜け出し、i:[…彩香、ちょっと様子を探りに行くから2人で学校で待ってて!…]そういって、iはMを追って行った。彩香:「やっぱりおかしくなってるんだ、今」仁美:「リセットしたのが原因よね?いけない事が起きていたって事?」Mとiが感じた異次元の香りが、学校中を覆っていた。人気blogランキングへ
2007.06.20
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恋愛という感情が一瞬にして消えていく事があるならば、それは、記憶を失うか、本人が死んでしまうかだ。ただ、喧嘩もなく仲が良いのに消えてしまう恋愛感情とは、必ず何かを犠牲にしなければ出来る事ではない。きっと心のどこかに封印しているはずだ。Mは、仁美が心を殺しながら、居場所を作っている事を感じ、これは学校のため、両親のためである事を優先にした決意だと信じていた。しかし、Mにでも届かない場所に封じ込めた恋愛感情は、それを呼び戻すだけの層にはなかった。むしろ、その中で永久に封印されるか、自然消滅する可能性もあるのだ。涌井は、明日決行すると言ったが、Mはまだ悩んでいた。それを見て、Xは、X:[…いくら考えても同じだよ、リセットするのに部分か完全かどちらかしかないんだ。…]M:[…確かにあんたの言うとおりだ…]X:[…じゃ、明日だ、いいな…]M:[…ああ…]涌井は、Mの感情に何かを感じた。涌井:「あのMとやらは、大変苦労しているようだが、プレッシャーかな?」彩香は、彩香:「それもあるけど、今は違うようです、仁美の反応がさっきまでと違うみたいなんだけど」仁美は彩香と普通に帰宅して、その日はゆっくり時間を過ごした。仁美は、中にいるMと沈黙を続けた。やるせないMは、M:[…君の気持ちはわかるよ、皆の未来がかかってるからね、でも……]仁美:[それ以上何も言わないで!気が散るから]M:[……]仁美は明らかにまだMへの感情を抱いていた。だが、その感情を出すのは一瞬だけ作る事が出来るらしい。彼女の可能性はその一瞬だけにあった。Mの力の源が仁美からの心となる。Mへの感情が一瞬向けられるだけでどのくらいのパワーを発揮するのかが心配だった。恋が実らない事実を知り、現実しか見なくなってしまった仁美。でも理想の彼氏には代わりはない。少しでも長く、Mに心を向けてくれたら、それだけMの効果は上がるのだ。恋愛感情が物凄いパワーを秘めている事、Mにはそれを呼び戻す事ができるのか?それが例え実らないとしても。人気blogランキングへ
2007.06.19
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哀しい話が続く中、彩香が言った、[MiX]は、ほのかに明るく面白い話題だった。涌井は、過去の事は決して忘れる事はない、しかし、前も見ないと過去に飲まれてしまう、と、ずっと思ってきた。涌井:[それではMiXの皆さん、それぞれの部署に着いて、君達が思い描くようなリセットを期待しているよ]3人は、意思の繋がりが重要とされる、完全リセットを実行する決意をするのだった。涌井:「作戦という程ではないが、Mに細かい事は任せるが、気をつけてもらうことは、中途半端は絶対ダメって事だ。以前にもあったが、ハンパなリセットは、不幸を招く。エリートもおそらくそうだ。名誉だろうと、履歴だろうと関係なしに、あの学校を元の学校に戻す、それだけだ。とにかく、この世界での完全が初めてというのであれば、初心に帰ったつもりでお願いしたい。」M:[…そうですね、いくら経験があるといっても、この世界じゃ初心者なんだよね、そのへん、よろしくね…]i:[…任せて…]X:[…初心者ぶるなよ…]そう言って、仁美にM、菅野先生の代理として、彩香にはi、そして、涌井にはXが入った。iは、i:[…何て居心地いいのかしら、彩香の心は並ではないわ…]M:[…でしょ?…]X:[…仁美、言い返なくていいのかよ…]仁美は、何となく、この時が来るのを恐れていた。顔は笑っていたが、やはり暗い気持ちだった。その暗い気持ちが、段々柔らかくなってきて、自然な気持ちに変わり始めていた。Mは、予想していた事が事実となった事のショックより、吹っ切れていく気持ちの方が大きくなっていた事に気付き、仁美を説得しようとした。すると、仁美のいつもの心はすっかりどこかに消えていた。Mに対する気持ちとはまったく変わり始めていた。[この世界の人間じゃない……]それが仁美の本音なのか、それとも、諦めなのか、Mでさえ掴み切れない程、仁美の心は今、とても濁っていた。割り切る気持ちが増加しつつある仁美の心は、Mにとっては皮肉にも空間を豊かにしていったのだ。心の部屋が広くなっている。広くなったスペースは恋愛感情が減った分だった。Mから心が離れている、というより、1つの任務という形に変わってきているのだ。仁美は彩香を選んだ、友達を選んだ、学校を選んだ、そして、家族を選んだのだ。M:[…僕は今、君の機械になったんだね…]人気blogランキングへ
2007.06.18
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かつて、メディアには流されなかったニュース、事件、トピックなど、数にしたらどれほどあるだろうか?視聴率がとれないとか、お金にならない情報は、決して明るみに出ない。そういう情報の中にも、人によってはとても重大な出来事がある。涌井には、その異次元の情報が記載されたレポート用紙を倉庫から引っ張り出した。だが、その情報源はどこから入ったのか、そんなことを考えもせずに、無我夢中で連絡をとった。異次元へのコンタクトは、なぜかケータイのメルアドに限られ、通話は出来ない。異次元からの返事が来るまで待機させられ、その時間は、1週間もかかった。M:[…異次元とは言っても、向こうにいけばここと環境は変わらない。違うとすれば、環境汚染がないことくらいかな…]涌井:[不思議なのは、会社でそのレポートを手に入れていたという事だ。]X:[…おそらく、異次元の依頼人が何らかの形で派遣者と繋がっていたという事になるな、でも、自分の悩みが解決した後に、このネタを持ち込んで金儲けしようとしたら、誰も見向きもされなかったっていう線だろ…]M:[…おそらくそうだね、人間の欲望って、変な所で出てくるからね…]涌井:[でも、そうだとしても、その人は何故繋がっていたのか?]X:[…今はそんなことより、異次元の情報はあまり流されたくないというのが本音だね…]M:[…まったくだね、本来は向こうでの活動なんだから…]仁美は、本来なら会うことのない出会いをしたと思っていた。会わない方がよかったかもしれないと感じたのである。どうせ叶わぬ恋に縋っているわけにはいかない、強くならなきゃいけないと、今気がついたのだ。仁美:「せっかくこの世界で異次元の最強の3人が揃ってるんだから、絶対成功させたいな」それを聞いて、彩香は、彩香:「そうだよ、異次元の事より、今どうするか決めようよ」i:[…わたしは優秀じゃないよ、この世界の知識はあるけどね…]iはリセットの評価は並だが、Mの知らない事をよく理解しているようだ。一方のXは、強情だが意見と、発想が豊かである事がウリのようだ。3人合わせた作戦で学校の徹底改造と、周辺の町を元の状態にすること。彩香:「3人揃って、MiX(ミックス)じゃん!」[……]涌井は、彼らに、この作戦をうまくやり遂げた後、異次元の情報や、依頼することを、金輪際、封印することを約束した。涌井:「それでいいね、皆さん?」仁美はその"封印"という言葉を少し予想していたが本当に当たってしまった。人気blogランキングへ
2007.06.17
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涌井の話しはかなり重く、そして哀しい。あれは、普通のサラリーマンをやっていたまだ幸福だった頃。夫婦と娘の3人で暮らしていた時。普通に真面目だが明るく自由だった涌井の母校に入学が決まり、大喜びしていた。しかし、その時の母校は、涌井が通っていた頃とは変わり始めていた時だった。自由という意味を取り違える生徒が増え、髪型、服装、遅刻、早退に至るまで自由奔放にするにまで堕落していたのだ。安心と信用がウリだっただけに、安心しきっていた教師の油断が招き、その事実を学校側の処置が遅れ、ますます悪化させてしまった。悪化させたあげくに、陰湿なストーカーや、いじめにまで発展していき、娘が餌食になっていたことに気が付かないまま、対応が出来ていなかったのだ。そして、楽しいはずだった高校生活に終止符を打つことになった。涌井:「自殺したんだよ」彩香・仁美・M・X:[…!……]皆が一斉に息を飲んだ。学校始まって以来初めての犠牲者は、さすがに学校側も本気になって、それ以来、自由奔放な体制を変更させ、校則や生活基準を厳しいものにした。だが、生徒達には厳しくする意味が通じていなかったのだ。学校側がちゃんと生徒と向き合っていなかった可能性があったからだ。取り違えた「自由」・・・・自由とは何か?それがわからないまま、ただ厳しくしても、弾かれてしまう。どんなに自由でも、楽しくても、基準というものがあることをしらしめて、ようやく元の学校に戻せたのに、もう8年は経過していた。浮かばれない娘の事件がきっかけで、幸福だった家庭も荒れて、離婚し、長年通っていた会社を辞め、今の新聞社に入った。その目的は、やはり、[真実の学校]。いろんな取材をしながら情報収集して、学校に近付く方法と、解決手段を見つけ、現在に至る。あの事件1回だけだが、涌井:「それを忘れて欲しくない、同じ繰り返しはゴメンだ、それを記事にして訴えていた事もあったけど、話題が地味だからメディアにも取り上げられないからネットにも引っ掛からない。若い奴らは新聞を読まないしから余計に伝わらない、もう限界かと思っていた」M:[…そこで、あなたは私達の情報を知った…]涌井:「情報とは、報道されない事がかなり隠されていて、僕は必死になってデータベースをあさった、そこで見つけたんだ、おかげでクビになっちゃったけどね」涌井は苦笑しながらも、フリーとして、収入よりも情報が最優先として、その価値を今、最大に活かす事。それが、娘に対する愛情だと信じてきたのだった。人気blogランキングへ
2007.06.14
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Mは仁美の中で順調に勘を取り戻していった。仁美は、仁美:[なんか考えてるでしょ?]M:[…ああ、新聞記事を書いてる人と会わなくてはならない…]仁美:[新聞記者?]M:[…そう、あの男、前にも会ったような気がしてさ…]Mは、あの男の名前を聞いたことがあると言っていたが、会ったこともある可能性もあるらしい。Mは、自分自身が見えない事と、面識の理由で、彩香と合流して、涌井に会うことにした。ある日の放課後、仁美は彩香を誘い、涌井のいる待ち合わせの喫茶店へ向かった。涌井:「やあ、こっちだ」涌井はトーストとコーヒーをオーダーしており、縦に切ったトーストを半分食べ終わったところだった。記者のきついイメージと思っていたより穏和で、むしろ優しそうな顔をしていた。仁美:「食事中だったんですね」涌井:「あ、構わないよ、いつ食べられるかわからないから」仁美:「はじめまして、彩香の親友で仁美です」涌井:「聞いてるよ、一緒に頼みます」涌井は、Mの本来の依頼人であるとわかった仁美に、涌井:「仁美さんは、Mと何を共に思ってるの?」仁美:「愛です、愛」涌井:「そうなんだ、それなら、かなりの信頼性だな」一番赤面していたのはMだった。M:[…本題に入りますが、あの学校をそれほどに狙うのは意味あるのですか?…]涌井:[ある、僕の母校だったからね、あのように変わるとなれば、戻したい気になるさ]M:[…で、戻せる手段が見つかったって事ですね…]X:[…あんたの経歴を見た、信じられないが、俺の上を行く功績ばかりだ、今でも、凄く期待ができる気力が見えるぞ…]M:[…そりゃどうも、こっちは体制整えて来てるからね…]横で彩香が、笑いながらも、ちょっと複雑な気持ちでいた。涌井:「で、あんたは独り身なのかい?」彩香:「ええっ?まだ高校生で結婚なんてしてないです!」涌井:「そうじゃなくて、あんたの心の事だよ」笑いながら話す涌井。彩香:「そっかあ、そうだよねぇ、そういう事になるんですかねぇ……」涌井は、笑ってごまかしている、単身な彩香に、ある思いが浮かんでいた。涌井:「僕には今ならちょうど彩香サンくらいの娘がいたんだけどね…」「……?!」彩香:「失礼ですけど、結婚なさって・たんですか?」涌井:「そう、ある事件が起きるまではね」学校を狙う涌井の真意が明かされる。人気blogランキングへ
2007.06.13
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仁美の体が受け付けるようになり、Mは明らかに強い意志と才能が宿りはじめ、ようやく本来の業務体系に入ってきた。Mのこれまでの履歴は、リセット回数8回、うち、完全オリジナルリセットは3回、5回は仲間との共同リセットで、優秀な功績を残す。Mと呼ばれるのは、優秀なことから、仲間からは[マスター]とも呼ばれていたせいだともいう。大体、派遣元である会社は、異次元に存在するらしく、そこには、そういった類の会社が多いとされる。仲間同志での共同リセットが通常の方法で、力を合わせ、ターゲットを狙う部分的リセットが一般的。しかし、彼のオリジナルリセットが、単独でマルチにリセットを遂げる優秀さと称えられる由縁だと言われ、完全なるフルリセット(全体を無かった事にする)を経験している。会社がこの世界に派遣されるようになったのは、あるきっかけがあった。会社の会長とされる人物が、環境改革のためにこの世界に訪問したことがある。異次元では、彼らがいなければ成り立たない位の場所、政治家から警察、他の会社の役員クラスなど、ほとんどの指揮管理を行っているのは彼らだった。それほど機動性を活発させないと通常の人間では成功しない環境だったのだ。しかし、改革のために来たこの世界は、異次元環境よりもまた違うジャンルで思わしくないとされ、逆に救援した方がいいと判断。環境汚染や犯罪の多さ、それに陰湿なものまで、異次元にはない出来事だった。そこから、派遣という形で営業に廻ったとされている。その効果は絶大で、ありとあらゆる環境に対応した彼らは、人のしがらみや隙間に入って治療の如くリセット解決を成功させていったのだ。システムは、特別なアドレスか、隠しバナーから入ってそこからフォームに依頼し、各内容と性格に合わせた派遣者を選択する仕組みになっているらしいが、Mは今回の派遣は初めてであり、しかもこの世界の人間に選ばれたというより、思いが繋がったように、作られた存在として派遣されたのだ。初めての世界で、初めて人間との共同リセットを果たしたが、自分がまだ把握しないうちに違う人間と組んでしまったために、状況を悪化させてしまったのは、Mにとって最初にして最大の汚点となった。本来は、選ばれた場所で起動するのがルールとされていた。彩香との出会いが、そのシステムを狂わせ、状況が変わってしまったことは否定出来なかった。しかし、Mは、彩香からいろんな事を教えられ、仁美への接し方にも繁栄されるようになったとされる。ただ、恋愛だけは、未だに難しい問題といわれていた。人気blogランキングへ
2007.06.12
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帰ってきた彩香に、変わった反応を感じたMだったが、今はその事より、あの新聞記者の事が気になっていた。菅野先生:「ごめんなさい、あたしの軽く言った事がこんな事になるなんで」菅野先生は、深く反省しながら、彩香の様子を伺っていた。彩香:「しょうがないよ、でも、もう少し強くなってくれるといいかな」i:[…それは人それぞれなんだから、いずれは強くなれるにしろ、時間がかかるわ…]iらしく返答した。彩香はとりあえず、学校の様子の変化を見届けて、帰宅しようとした時、後ろから田中先生が歩み寄ってきた。田中先生:「なあ、まずい事になってきちゃったぞ!」彩香:「ど、どうしたん?」疲れていたわけでも、暑かったわけでもなく、汗びっしょりな顔で、田中先生:「この学校、エリート以外、教師も生徒も切るように言われた」彩香:「なんだって?!」田中先生:「しかも、移動者リストが出来ているんだ」会議で決議される前にそのリストが出来上がっていたということは、ある陰謀が隠されているのだろうか。彩香:「そんな顔して、あたしがそのリストに入ってるって事でしょ!?」田中先生:「わかるか?」彩香:「わかりやすいっていうか、そんな顔してまでここに言いに来たんだもん」そこまでは、彩香の勘の中では、田中先生の真相を読むのはたやすかった。田中先生:「じゃ、その汗って、もしかして、あたしに気が合うからあ?」すると、急に真面目な顔になって、田中先生:「そのリストには、今までの成績が平均以下の生徒、成績アップに貢献していない教師が該当している」彩香:「それって…」彩香は、田中先生が汗をかいていた理由がやっとわかった。彩香:「先生…も…?」田中先生は、何度も頷いた。"学校のリストラ"が始まったのだ。しかも生徒合同で。彩香は、あの時のリセットした結果だと確信した。いじめに絞った中途半端なリセットのおかげて、かえって軽い障害ではなくなった。リセットの方向は、エリート校を生むきっかけになってしまった事が確実となった今、彩香としては、この学校をこのままの状態で出ていく事が無念だった。下校して、考えながら歩いていたら、いつの間にか、いつものクレープ屋に着いていた。クレープを買い、ゆっくりと口にいれながら、彩香:[冗談じゃないわ、このままじゃ]リセットは、そう簡単にするものではなく、状態を見極めて、慎重に行わなければいけない。小規模なリセットが一番簡単なわりにはリスクが大きい。部分的とはいえ、完璧ではない分、妙なタイミングが、別の事態を引き起こすのだ。クレープがだんだん無くなりかけていた時、M:[…君の思いにもいけない物が混じったようだね…]いきなり現れたMに、彩香:[どういう意味よ?]M:[…しらばっくれても、僕にはわかってる。持ってはいけない事を抱えると、逆にわかりやすくなっちゃうものさ…]彩香は隠しても無駄だとわかっていたが、認めたくない気持ちが、表に出てきている事が、仁美にだってわかるはずだ。彩香は、彩香:[この際、付き合おうか?]M:[…!…]突然の発言に、M:[…それは、冗談でも言えないよ、無理なんだから…]彩香:[そうじゃなくてさあ]と、彩香が、目を閉じて、真の心同士になって、心の感触だけで、強い意志を出して、Mを抱きしめた。M:[…ああ、なんか、目の前に彩香が抱きしめてるみたいだ…]人気blogランキングへ
2007.06.10
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あくる日、まだ学校が始まっていない時間に、教師達全員が集まって、この学校でエリートスタッフとして残留する教師を選抜する会議を行っていた。副校長:「きりのいい、2学期からの本格始動にあたり、残り夏休みの間に、選抜される先生には、準備をしていただきます。失礼ですが、この学校に相応しくない教師は、適正を見て、新たな学校に移ってもらいます。その人数の確保ですが…」途中で校長が立ち上がり、校長:「ま、早い話しが、移る学校先から、優秀な教師を招き入れるって事になりますかな」すると、田中先生は、田中先生:「それって、交換トレードって事じゃないですか!」校長:「そうはっきり言うものではないですよ、田中先生。」田中先生:「はっきりおっしゃったのは校長先生の方じゃないですか!」愛着がこもったこの学校を離れていく教師のリストはもう既に、テキストとなって手元に配られ、何も言わずに準備しろと言う意味があった。エリートに進む中、教師以外にも、生徒やその親御達にまで敵にまわしているこの学校に、例の記者が黙って見ているわけにはいかず、Xの行方を追っていた。依頼人に与えられているリモートコントロールは、Xだけに直通している、無線と操作を併せ持つもので、非常のアイテムとされていた。勿論、Mや彩香にもそれがあるが、もうすでに使用しており、Xの障害で混信していた。しかし、涌井記者の手元にあるのはバージョンが新しく、感度が上がっていた。最も、障害なのはX本人だから、元々コンタクトはとれる。涌井:[いつまでどこで何をしているか説明したまえ]X:[……]返事が返って来ない。おかしいと思い、コントローラーの強制ボタンを押したら、X:「…あ、悪い、寝ていた…]涌井:[だから、そこで何をしているか聞いているのだ]X:[…こっちこそ聞きたいね、出ようと思っても出られないんだ…]涌井:[そんなこと信じられるか、早く戻るんだ]X:[…それが出来ればこんな苦労してないさ…]涌井:[他に誰かいるのか!?]X:[…いや、いるわけが……]Xの声は微妙に揺れていたのに気付いた涌井。涌井:[隠していることがあるようだな。ある程度自由なやり方でいいと成約したが、この依頼内容に関係があるなら、私にいうべきだ。]すると、彩香:[誰かいるの?]Xの感情に気付いた彩香は、誰かと話しているのに気付いた。彩香:[あなたは、Xの依頼主ですか?]涌井:[いかにもそうだが]涌井は驚いた。依頼している者が依頼主以外の人間にいる、しかも、女の子と。涌井:[どういう事だ?あの学校の生徒かね?]彩香:[そ、そうだけど、あなたは?]涌井:[私は、この者の依頼主だ、新聞記事を書いてる。あの学校が妙な方向に行くのをほっとけなくてね]彩香:[……?]しばらく彩香は考えていた。こんな紳士な記者がこんな奴を派遣するとは信じられない、しかも、彩香達の邪魔をする存在があの学校をどうするというのか?彩香:[この野郎…に何をさせてるんですか?]涌井:[そいつは、私が選んだのだ、ガラは悪いが、私の依頼内容にピッタリなタイプでね、仕方ないんだ。]彩香:[そんなことはどうでもいいです、何をさせるの?]人気blogランキングへ
2007.06.06
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