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何ともふざけた邦題だが、中身はそのまんま。原題はBubba Ho-Tep で、Bubbaは米南部辺りの気のいい男を指し、Ho-Tepはミイラのこと。当然コメディか、と思いきや、一概にそうも言えない雰囲気。監督が『ファンタズム』シリーズのドン・コスカレリだからホラーの要素は強いし、不思議な作品である。テキサスの田舎町にある老人ホーム。そこに入所しているセバスチャン・ハフ(ブルース・キャンベル)は実はプレスリーの老いた姿だ。プレスリーは人気絶頂の頃、スターを演じ続けることに嫌気が差し、プレスリーものまね芸人ハフと入れ替わったのだった。ハフは死んだが、プレスリーはスターに戻ろうとせず、そのままセバスチャン・ハフとして生き、余生をこの老人ホームで過ごしていた。ところが最近、入所の老人の変死が相次ぐようになった。ハフも大きなスカラベ(昆虫)に襲われる。入居仲間のジャック(オジー・デイビス)と調べていくうちに、昔、近くで展示されていたミイラが何者かに盗まれていたことがわかった。ミイラが生き続けるには人間の生気が必要(生気を奪われた人間は当然死ぬ)。老人ホーム入居者の生気は新鮮ではないが、抵抗は弱いし、死んでもすぐ次の入居者が来るので餌には困らないのではないか、というのが二人の推理だ。そして、ついに二人とミイラの対決が始まる・・・コメディと思って観始めるが、映像は非常に醒めており軌道修正を迫られる。ハフもジャックも老齢から体が不自由なため、ハンデを負っての戦いには無情感すら漂っており、監督は異なるが、ジョン・カーペンターの世界に近い雰囲気もある。またミイラやスカラベなどが登場する老人ホーム内のシーンは『ファンタズム』(1作目)のような一種のクールさが感じられる。『ファンタズム』シリーズのレジー・ヴァニスターも出演ただ悪く言えば、コメディではないし、ホラーにしてはインバクトが弱すぎる(そもそも観客にショックを与えることを目的としていないと思われる)ので、中途半端な感じは否めない。この映画は約30年『ファンタズム』シリーズ以外はほとんど手がけなかったコスカレリ監督久々の作品と言うことで制作時から一部では話題となったが、我が国では公開されず。2006年になって、2週間限定かつ単館上映という極めて限定的な公開により、ようやく陽の目を見たのだった。観に行きたかったが、これでは到底無理。昨年『ファンタズム』シリーズ全作品と共にDVDがリリースされたので、ようやく観ることができた。90分ちょっとと短いので、気が向いた時にちょこっと観るには最適だが、一般的にはウケないだろうなあ。来年あたり続編の制作に入るらしい。監督:ドン・コスカレリ 製作:ドン・コスカレリ/ジェイソン・R・サヴェージ製作総指揮:ドン・コスカレリ 原作:ジョー・R・ランズデール 脚本:ドン・コスカレリ 撮影:アダム・ジャネイロ編集:ドナルド・ミルン/スコット・J・ギル 音楽:ブライアン・タイラー 2002年・アメリカ / 92分 / 評価:3.5点 / 子供:△
Jun 28, 2008
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1974年リリースのリック・ウェイクマンの初期代表作と、それから25年後に制作された続編。両方ともテーマはもちろんジュール・ヴェルヌの『地底探検』。ウェイクマンの子供の頃からの愛読書である。ロンドン交響楽団との共演であり、合唱隊を加えた極めて大掛かりな演奏である。また続編「Return」の方はゲストにオジー・オズボーンやジャスティン・ヘイワード、ボニー・タイラーが参加した豪華版であり、録音に手間暇かけているだけあってクオリティは相当に高い。しかしどちらがいいかとなると、やはりオリジナルの「地底探検」となってしまう。ウェイクマンの全盛期であったこともあるが、曲にメリハリがあり、スケール、物語性、神秘さなどどれをとっても一級品である。続編も悪くはないが、オリジナルほどのパワーが感じられないような気がする。どちらも名優によるナレーションが付く。「地底探検」は『欲望』や『ジャガーノート』『サスペリア2』で知られる故デビッド・ヘミングス、「リターン」は『スター・トレック(新シリーズ)』のピカード艦長でおなじみのパトリック・スチュアートだ。
Jun 17, 2008
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故ロバート・アルトマン監督がハリウッドを痛烈に皮肉った傑作。とある殺人事件が本筋だが、様々な映画ネタや多彩なゲストでブラック・コメディに仕上がっているのがミソ。ある映画会社の脚本担当重役グリフィン・ミル(ティム・ロビンス)はイライラしている。社長がライバルの20世紀フォックス社からプロデューサーのラリー・リーヴィー(ピーター・ガラハー)を企画担当役員として迎え、ナンバー2の地位が脅かされるようになったからだ。それに加えて匿名の脅迫状が頻繁に郵送されてくるのにも悩まされる。差出人は以前シナリオの採用を断った脚本家のデイヴィッド・ケヘイン(ヴィンセント・ドノフリオ)であろうと目星をつけたミルは単身ケヘインに会いに行く。ケヘインは脅迫状については否定したが、二人は口論となってしまい、勢い余ってミルはケヘインを殺してしまう。翌日、早速脅迫状が届いたが、ケヘイン殺害を見たことをほのめかす内容であった。ロス警察刑事(ウーピー・ゴールドバーグ)の捜査も始まり、焦るミルだが、ケヘインの同棲相手だったジューン(グレタ・スカッキ)に癒され、やがて愛し合うようになる。しかし事件を目撃したという女性が現れ、首実検にかけられることになるのだが・・・サスペンスものとしても十分通用し、警察の追及、それをかわすミルの攻防も面白い。ラストのオチも効いている。特に刑事達に嘲笑される警察署での尋問シーンは異様で、印象に残る。しかしそれよりも、ポイントは非情な映画界・ハリウッドを痛切に皮肉った点にあり、その趣旨に賛同してハリウッドスターが大挙出演したことである(規定の最低のギャラで応じた人が多い)。 ブルース・ウィリス、ジュリア・ロバーツ、ジェフ・ゴールドブラム、アンジェリカ・ヒューストン、シェール、ジョン・キューザック、スーザン・サランドン、パトリック・スウェイジ・・達に加え、オールド・スターでは、バート・レイノルズ、エリオット・グールド、ジャック・レモン、マルカム・マクダゥエル、ニック・ノルティ、ピーター・フォーク、そしてジェームズ・コバーン、ロッド・スタイガーにハリー・べラフォンテ、つい先日亡くなった監督のシドニー・ポラック等々・・何とも凄まじい顔ぶれである。アルトマン監督ならではだろう。 ほとんどはワンシーン程度の出演ではあるが、私は「オールスター競演」が大好きなので、一人一人探すのも楽しい。「オールスター競演」ものの金字塔は『名犬ウォントントン』(1976)であるが、それに劣らぬ豪華さである。本作にも出演しているロッド・スタイガーとジェームズ・コバーン(『夕陽のギャングたち』のコンビ!)が出ていた『ラブド・ワン』などハリウッド風刺ものは昔から数多いが、本作はその中でも最高の一本。口では芸術といいながら、大衆受けさえすれば何でもOKの映画会社。方や芸術性ばかりを追いかけて、ヒットや採算性など全く眼中にないライターたち。どちらも極端に描かれているが、そこに映画産業の本質を見る思いである。また、小ネタが面白く、脚本家がミルに売り込んでいる企画『卒業2』(ベンジャミンとエレンは結婚し、エレンの母ロビンソンを引き取って3人で暮らしているが、老齢のロビンソンが意地悪を始める)には笑ってしまう。冒頭の異常な長回しが有名だが、ラストの展開も非常に凝っていて、何でもハッピーエンドにしないと気が済まないハリウッド映画界を強烈に茶化している。様々な登場人物が絡み合う構成も見事。興をそぐので、とても詳細は書けないが、ぜひ一度ご覧頂きたいものである。監督:ロバート・アルトマン 製作:デヴィッド・ブラウン/マイケル・トルキン/ニック・ウェクスラー 製作総指揮:ケイリー・ブロコウ 原作:マイケル・トルキン 脚本:マイケル・トルキン 撮影:ジャン・ルピーヌ 音楽:トーマス・ニューマン 1992年・アメリカ / 124分 / 評価:4.5点 / 子供:×
Jun 13, 2008
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今年8月の『フジ・ロック・フェスティバル’08』にマイ・ブラッディ・ヴァレンタインが出演するとか。これには驚いたが、未発表演奏を含むCD4枚組のボックスセットが6月末に出ると聞いて更に驚き、すぐに注文したのが4月。結果は案の定「発売無期延期」であった。1991年の「Loveless」を最後にアルバムリリースが途絶え、時折新作の噂が出ては消えていたけれど、昨年辺りから活動(メンバー個人の)が活発になっていたようだったから、ちょっと期待はしていたのだが。でも「Loveless」があまりにも傑作なので、どうやってもこれを超える作品は出てこないような気がする。新作が却ってイメージダウンを招いてしまうリスクもあるだろう。それほど「Loveless」は素晴らしかった。ノイズに満ちたサウンドではあるが、過激さはなくメロディ自体はシンプルで優しい。ビリンダ・ブッチャーの脱力的なボーカルは、まるで海の中から聴こえてくるセイレーンの歌声のようで、不思議な魅力があり、結構癒される。ファーストアルバムの「イズント・エニシング」(1988)の方を高く評価する人も多いが、私は「Loveless」から入ったので、こちらがベスト。映画『ロスト・イン・トランスレーション』には「Loveless」の中の「Sometimes」が使われていたし、この映画のためにケヴィン・シールズが新作(ソロ)を提供。4曲がサントラ盤に収められているが、これも実に良かった。※【You Tube】にクリップあり → Sometimes / City Girl『フジ・ロック・フェス』を含むワールド・ツアーは6月20日のロンドン公演でスタート。これだけスケジュールが入っていれば来日中止はないだろう。ただアルバムは出そうにもないな・・。『フジ・ロック・フェス』にも行きたいが都合で不可能。残念である。 右:現在のケヴィン。経年相応です。
Jun 9, 2008
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このタイトルで主演ニック・ノルティとくれば、軽めの戦闘アクション映画のように思われてしまうが、中身はまるで趣が異なる。太平洋戦争中のボルネオ島(現カリンマンタン島)のジャングルに潜んでいた脱走米兵を主人公にしたフィクションであるが、監督ジョン・ミリアスの思想・嗜好が色濃く反映されている珍品である。太平洋戦争末期の1945年春。ボルネオ島北部のジャングルに英陸軍のフェアボーン大尉(ナイジェル・ヘイバース)と通信兵のテンガ(フランク・マックレー)が潜入した。目的は未開の現地住民を組織し日本軍にゲリラ攻撃を仕掛けること。二人は現地の部族に捕らわれ集落に連行されたが、そこにいた部族の王はなんとアメリカ人のリーロイド(ニック・ノルティ)であった。 リーロイドから王になった経緯を聴き、また彼が意外にも平和主義者であることを知ったフェアボーン大尉は王に興味を抱き、やがて尊敬するようになる。だが、それはフェアボーンの目的とは相容れないものであった。連合軍最高司令官マッカーサーから戦後の自由を保障する旨の一筆を取り付けたフェアボーンは王に報告。ついに王と部族は日本軍に戦いを挑むのだが・・・ この作品はコッポラの『地獄の黙示録』との関連で語られることが多い。『地獄の黙示録』の原作はコンラッドの「闇の奥」であるが、それを基に脚本を書いたのはミリアスであった。ミリアスはジョージ・ルーカスを監督にして映画化しようと考えたが実現せず、後に脚本の映画化権はコッポラに渡った。しかしコッポラは脚本に満足せず、大幅に改変したためミリアスは相当の不満を表明していた。本作の原作はピエール・ショーンドルフェールであるが、登場人物の配置は『地獄の黙示録』と酷似している。狂言回しの役は陸軍の大尉であり、主人公はジャングルの「王」になった脱走兵である。ただ本作では両者の間には友情が芽生えるが、『地獄の黙示録』では畏怖と敵対の関係である。だが逆に見れば、これこそが『地獄の黙示録』のオリジナルの形であったのかもしれない。文明社会を飛び出して王となり、戦い続ける男と、それに共感する男の友情物語として。 また、『アラビアのロレンス』の太平洋戦争版という見方もできるだろう。あらすじはソックリだし、戦後の挫折もよく似ている。ただ本作の結末はハッピーエンドに近いもので、ここだけはジョン・ブアマンの『エメラルド・フォレスト』のラストを彷彿とさせる。夕力派のミリアスは男の戦いだとか武器には格別の思い入れがあるようで(全米ライフル協会の重鎮でもある)、本作にも象徴的な場面がある。日本軍の三田村大佐が王に降伏した時に、日本刀を差出すシーンがそれ。日本軍による村民虐殺の場面などもあるが、三田村大佐個人は教養ある立派な軍人として描かれており、その象徴が日本刀であったのだ。思えばミリアスの名作『風とライオン』でも主人公ライズリ(ショーン・コネリー)と敵のドイツ軍大佐(アントワン・セント・ジョン)の対決は剣であった。故にライズリも敵にトドメを差さず、一分の敬意を表したのである。 そういえば、『風とライオン』には『王になろうとした男』を監督したジョン・ヒューストンも出演していた。またリーロイドがボルネオに漂着した時の海の大波や、ラストの波は『ビッグ・ウェンズデー』も思い出す。いろいろと他の作品との関連性が感じられて面白い。ただ予算の関係なのか、美術面などがイマイチなのが惜しい。現行のDVDでも、1989年の制作なのにこの画質はないだろう、と思う。集落のつくりも何だか真新しく、広場のトーテムポールも取って付けたようだ。この辺りはサスガに『地獄の黙示録』のカーツ王国の迫力にはかなわない。ほとんど触れられることのない作品であるが、ナカナカ興味深いのである。安っぽい邦題はどうにも頂けないが、もう少し顧みられてもいい作品ではないだろうか。 監督:ジョン・ミリアス 製作:アルバート・S・ラディ/アンドレ・モーガン 原作:ピエール・ショーンドルフェール 脚本:ジョン・ミリアス 撮影:ディーン・セムラー 音楽:ベイジル・ポールドゥリス 1989年・アメリカ / 117分 / 評価:4.0点 / 子供:○
Jun 6, 2008
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フリー系ながら1980年代にはCBSなどのメジャーレーベルにも結構な作品を残したアーサー・ブライス。キャノンボールを思わせるような躯体から噴出されるアルトは実に力強く、明快で、そんなところがウケたのかもしれない。でもやはりどこをどう取ってもロフトの音で、そこが魅力なのであった。そのCBS作品群は残念ながらCD化されておらず、現在聴けるのは権利が他所に移った数作くらいである。CBS第2作目となった本作はメンバーに有名どころを揃えた豪華版。盟友ボブ・スチュアート(チューバ)ももちろん参加している。1.Down San Diego Way2.Lenox Avenue Breakdown3.Slidin' Throug4.OdessaArthur Blythe (as)James Newton (fl) Bob Stewart (tb) James Blood Ulmer (g) Cecil McBee (b)Jack DeJohnette (ds) Guilherme Franco (perc)
Jun 2, 2008
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