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リチャード・マシスンのSF小説『地球最後の男 アイ・アム・レジェンド』の2度目の映画化。1度目は観ていないが1964年製作の『The Last Man on Earth』(地球最後の男)で主演:ヴィンセント・プライス、監督:シドニー・サルコウ。本邦未公開であった(DVDは出ている)。3度目は昨年公開されたウィル・スミス主演『アイ・アム・レジェンド』であることはご存知の通り。ストーリーは『アイ・アム・レジェンド』とほぼ同じだが、設定が若干異なる。『アイ・アム・レジェンド』では抗ガン剤にウィルスが混入し、それが世界中に感染した大規模な薬害であったが(だったよな。確か)、本作は中ソ戦争で使用された細菌兵器が原因。中ソの戦争なんて現在じゃイメージが湧かないかもしれないが、当時は軍事衝突を伴う国境紛争が勃発し、核戦争の可能性もあった非常事態であったのだ。それだけに本作は戦争・相互不信が溢れる現実世界に対するアイロニー、警鐘という点では『アイ・アム・レジェンド』以上のものがある。主人公ネビル博士(チャールトン・ヘストン)が好きな映画『ウッドストック』の台詞「町を歩くのを恐れたり、人に笑いかけるのを恐れたら、誰も生きてはいけません」が響いてくるのである。あと決定的に違うのは主人公たち以外に生き残っている「闇」の人たち、『アイ・アム・レジェンド』でいう「ダークシーカー」の描き方である。『アイ・アム・レジェンド』では完全にゾンビと化していたが、本作では単なる「光を浴びられない体質に変化した人」といった感じで、驚異的な身体能力や攻撃力は備わっておらず、生身の人間を食べたりもしない。ネビル博士の館を必死によじ登る姿は、なんだか哀れなほど。ネビル博士に機関銃で仲間を次々に射殺されても自分達は銃火器は使わない。使えば「愚かで残虐な人間と同じになってしまう」と思っているからだ。どちらが正しいのか、一瞬わからなくなる位だ(とはいえ、やっぱり異常)。このように、作品のテーマ性とか登場人物の描き方はいいと思うのだが、作品全体に流れるどうしようもないB級感。これは如何ともしがたい。同じヘストン主演作の『猿の惑星』や『ソイレント・グリーン』に比べてもちょっと厳しい。荒廃した街の光景などは『アイ・アム・レジェンド』にもひけをとらないのだが、やはり音楽が最大の原因か。あとオートバイ暴走シーンでの吹替えスタントマンもちょっと興醒め。その辺をあらかじめ承知しておけば、そこそこ楽しめる作品ではある。上記以外にも『アイ・アム・レジェンド』との違い多し。嫌われ役が多いアンソニー・ザーブが演じる(元)ジャーナリストはなかなか良い。またラストは『十戒』『ベン・ハー』といったキリスト教映画に関わってきたヘストンならではのものだが、ちょっとやりすぎか。監督:ボリス・セイガル 製作:ウォルター・セルツァー 原作:リチャード・マシスン 脚本:ジョイス・フーパー・コリントン 撮影:ラッセル・メティ 音楽:ロン・グレイナー1971年・アメリカ / 99分 / 評価:3.5点
Sep 14, 2008
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1970年代のハリウッドはパニック映画の時代であった。『ポセイドン・アドベンチャー』 『タワーリングインフェルノ』などの災害ものに始まり、『ジョーズ』『グリズリー』『スウォーム』といった動物ものや、エアポート・シリーズ等々まさに百花線乱の感があった。そして1970年代も後半になるとパニック要素を持ったサスペンス映画群が登場してくる。この中で私が「パニック・サスペンスの3大傑作」と思っているのが『パニック・イン・スタジアム』『ブラック・サンデー』、そしてこの『ジェットローラーコースター』だ。 ある晩、海岸にある遊園地でジェットコースターが脱線し死傷者が出る。政府の規格安全局検査官のハリー(ジョージ・シーガル)は清掃作業員の証言から事件性を嗅ぎ取るが、証拠は出ない。しかし後日、別の遊園地で発火騒ぎがあり、その直後全国各地の遊園地オーナー達が会合を開くという情報を得る。会合に割込んだハリーは一連の事件は同一犯が仕組んだものであり、オーナー達が脅迫されていることを知る・・・パニック要素としては『パニック・イン・スタジアム』『ブラック・サンデー』よりは劣り、パニックシーンも多くはない。しかし舞台が遊園地であることや、公開当時はセンサラウンド方式(『大地震』 『ミッドウェイ』に次ぐ)による迫力の音響効果だったので、パニック映画としての印象は強い。また犯人像は屈折したベトナム帰還兵を思わせるが、『ブラック・サンデー』ほど明確に描かれておらず、異常性という点でも『パニック・イン・スタジアム』の比ではない。それよりも、この作品で注目すべきはサスペンスとしての盛り上げ方の上手さ、構成の巧みさである。犯人への現金引渡しのシークエンスなんかは実に見事。脚本は「刑事コロンポ」シリーズを手がけた面々らしく、地味ながらツポを得た作りだ。 ヘンリー・フォンダ、ティモシー・ポトムズといった出演者も渋くて良いが、何と言ってもリチャード・ウィドマークだ。この人が出るといかにも「70年代のサスペンス映画」という感じが出てくる。ラロ・シフリンの音楽も素晴らしい。監督:ジェームズ・ゴールドストーン 製作:ジェニングス・ラング 脚本:リチャード・レヴィンソン/ウィリアム・リンク 撮影:デヴィッド・M・ウォルシュ 音楽:ラロ・シフリン 1977年・アメリカ / 119分 / 評価:4.0点
Sep 6, 2008
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