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サリィ斉藤

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テーマ: お勧めの本(7895)
カテゴリ: 本の話
私には、海水浴へ行った思い出があまりない。

夏に泳ぎに行くとしたら、圧倒的にプールでした。
そういえば、ビーチリゾートに行っても、どちらかというと海より、ホテルのプールで泳いでいることの方が多い気が…

よしもとばななさんは、子どもの頃から、夏になると家族で土肥の海に出かけ、そこで休日を過ごしていたのだといいます。
(そういえば、お父上が海で溺れたという事件もありましたね)

その、大事な思い出の地である海辺の町への思いを込めて書かれた小説。
元々は、讀賣新聞の土曜日の朝刊に連載されていたものです。

海のふた


私は、連載中から毎週、欠かさず愛読していました。
そして、少なからぬ回、朝から、新聞片手にあふれる涙を拭いていました。



普通は、主人公が様々な困難を乗り越えつつ夢を実現させようとする、そのプロセス自体がストーリーになりがちですが、この本の中では、種々の問題は「まあなんとかうまいこといって」あっという間にかき氷店はオープンし、やがて軌道に乗ってしまいます。

でも、その先に続く、彼女の過ごしたひと夏の日々は、淡々としていながらとても大切な事柄に満ちていて。

海水浴場なんて何年も行っていない私も、砂浜の暑さとか、海辺の旅館街の雰囲気とか、夕方の海の水のぬるさとか…その一つひとつをリアルに想い起こすことが出来る、それはやっぱり文章の力なのでしょうか。

物語の横糸を織り成すもう一人の登場人物が、ある日主人公の家へやってくる「はじめちゃん」。
主人公にとっては、母親の友人の娘である「はじめちゃん」は、ある事柄でボロボロに傷つき、心身を癒すべく海辺の町に送られてきて、主人公のかき氷店を手伝うことになるのですが…。

この「はじめちゃん」にまつわるいくつかのエピソードや設定に、私自身の体験と重なる部分があって、何度読んでも泣けてしまうのですけど。
だからこそ、ゆっくりと、でも着々と立ち直り、人生の扉を開けていく彼女たちの姿に励まされます。
う~んと若い、それこそ中学生くらいで出会えたらいい本かもしれないな、と思う。

あぁ、夏って人を成長させる季節なんだなぁ。…と、改めて実感させてくれる一冊です。
大げさな出来事は何もないし、主人公達も決して声高に何かを叫んだりはしないのだけれど、読後に残る爽やかな満足感が好きで、夏が巡ってくると手に取る本なのです。

名嘉睦稔さんの、美しい版画による挿絵の数々も素晴らしい。今度出た文庫版にも、表紙や本編にちゃんと収録されています。


“夏の終わり”の気分を表現するものとしては、この言葉、まさに「言い得て妙」ではないでしょうか。

【私が持っているのはこちらの単行本。発行元はロッキン・オン社】
海のふた 海のふた

以前の日記 で紹介した、行きつけのカフェの店主夫妻にこの本をお奨めしたところ、「とっても良かった」と喜んでくださいました。
「カキ氷、出したくなっちゃいましたよ~」と言ってくれたので、ぜひメニュー開発を!!とお願いしてしまった図々しい私(笑)





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最終更新日  2006.08.10 14:25:14
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