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カテゴリ: 映画の話
初めて「ピーターラビットのおはなし」を手に取ったのが幾つの頃だったか、その本を誰に買ってもらったのか、もう忘れてしまいました。

でも、今まで読んでいた絵本とは違う、手のひらで包み込めるような本の小ささと、描かれた絵の繊細さに
(なんだか、おとなっぽい)
…と思って、うれしかったのを覚えています。

冒険の末に母さんウサギに厳しくお仕置きをされる、ピーターのいたずらの顛末には、ちょっと驚かされましたが(お父さんウサギはパイにされてるし)。

その、一連の絵本の作者、ベアトリクス・ポターの半生を描いた伝記映画。



この作品のタイトルが、「ピーターラビットと私」というようなものではなく、 ミス ・ポター」 であることには、大きな意味合いがあるように感じました。

つまり、今から100年以上前のイギリスで、三十歳を過ぎた女性が未婚であること、かつ、上流階級にいながら仕事を持ち、収入を得ること。


物語の核となるのが、絵本の作者と出版者であったポターとウォレンのラブストーリーです。

世間一般の「標準規格」からちょっとはみ出た二人が、やっと、自分を受け入れてくれる存在を見つけた。
その喜びが、小さく火花をあげて弾けているような、クリスマスパーティーの夜のシーンが素敵。
ユアン・マクレガーのチャーミングな目の表情、ホロリと来てしまいました。

ポターを演じるレニー・ゼルヴィガーも、独身主義を貫く婚約者の姉役、エミリー・ワトソンも、こういう“微妙にブスい”女性を演じさせると天下一品、と再確認。

実際には、両親、特に母親との価値観の断絶は、もっとすさまじいものがあったのだろうし、ポターその人も、他人から見れば可愛げのない「わが道を行く」タイプの女性だったのかもしれない…と、思ったりもしましたが。
動物の物語を描いたのは、人間がうまく描けなかったからだ…という説もあるのですよね。

後に、彼女が印税で買い上げ、保存したイギリスの湖水地方の広大な土地は、ナショナル・トラストに遺贈されました。

映画の後半は、ロンドンを離れ、湖水地方の農場に居を構えてからの彼女が描かれます。
水と緑に囲まれた、穏やかで豊かな自然の美しさ。映像を見ながら、ため息が出るようでした。

ポター女史にとっては、この土地の保存に尽力したことは「世のため人のため」というよりは、自分にとっての魂の故郷を守りたい…という、ある意味、利己的な動機に基づくものだったかもしれない。


お金は、稼ぐより使い方が難しいんだ…と、誰かが言っていた言葉を思い出しました。

小品だけれど、俳優陣の好演もあり、映画それ自体がよく出来た大人向けの絵本のような、美しい一本でした。

この映画を撮ったクリス・ヌーナンが監督した「 ベイブ 」も大好きな映画で、何度見ても飽きず、何度見ても号泣してしまいます。

子ブタつながりで思い出しましたが、ポターが生みだした子ブタキャラ、ピグリンは、最近「サントリーDAKARA」のCMで活躍中ですね!





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最終更新日  2008.09.06 17:38:41
コメント(6) | コメントを書く


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Re:「ミス・ポター」を観た。(09/28)  
桃饅頭  さん
どこかで見たと思ったら、あの踊る豚はこれだったんですか。
着ぐるみがとてもしっくりできていて、
しかも本格的なバレエを踊るのが印象的でした。
(今、調べてみたら中に入っているのは有名な方だったんですね。よく着ぐるみに入ることを承知しましたねぇ。)

お金は稼ぐより使う方が難しい…
稼ぐこと自体が私にとっては充分難しいですが
ものすごく財をなす方ほど、その使い方に
人となりが顕著に表れるように思う今日この頃です。
(2007.09.29 15:21:58)

なるほど  
ポターさんの単純な伝記映画ではなかったんですね。微妙にブスい・・・笑ってしまうけど、世間の価値観とずれて生きている女性たちは、美しいといわれることもちやほやされることもないし、ブスい女性に入れられてしまうのかも。翻訳ものの小説で「老嬢」ということばがあったのを思い出しましたが、独身をつらぬいた女性たちのことだったのかしら? (2007.09.29 23:09:19)

上流階級  
まろ0301  さん
 ナイチンゲールの伝記を調べていて、心底びっくりしたのはその資産の莫大さでした。
 ロシア軍と戦っているイギリス兵士たちがろくな看護も受けていないと知った時に彼女は「私費」を投じてその改善にかかるのですが、その「私費」の莫大さ・・。
 そしてそんな階級に属する女性が「働く」ということへの驚愕・・。

 「ナショナルトラスト」を「社会的共通資本」の項で教えますから、この人のことと、トトロの森のことを取り上げるつもりでいます。 (2007.09.30 14:40:50)

踊るピグリン  
サリィ斉藤  さん
桃饅頭さん

>着ぐるみがとてもしっくりできていて、
>しかも本格的なバレエを踊るのが印象的でした。

私も最初のCMを目にしたときから、もうハートをわしづかみされてしまいました(笑)カラオケスナックでタンバリンを叩いているのも可愛かったですよね。
弘法は筆を選ばず、名ダンサーは衣装を選ばず…という感じでしょうか??

>ものすごく財をなす方ほど、その使い方に
>人となりが顕著に表れるように思う今日この頃です。

同感です。
昔だったら、それは「成金趣味」と蔑まれたものだよ…と言いたくなるようなお金持ち自慢が、テレビでもてはやされるような風潮はイヤですね。 (2007.10.02 10:17:16)

Re:なるほど(09/28)  
サリィ斉藤  さん
935うさちゃんさん

>微妙にブスい・・・笑ってしまうけど、世間の価値観とずれて生きている女性たちは、美しいといわれることもちやほやされることもないし、ブスい女性に入れられてしまうのかも。

そうですね。まさにご指摘のとおりで、映画の中では二人とも、既存の価値観にしばられたくない、と、不自由さや偏見と立ち向かい続ける女性を演じきっていたと思います。 (2007.10.02 10:19:10)

Re:上流階級(09/28)  
サリィ斉藤  さん
まろ0301さん

ノブレス・オブリージュという言葉について考えさせられますね。
日本にも、財ある篤志家の功績はたくさん残っているわけですが、最近は品のある金持ちをあんまり見ない気がします。

それにしても、イギリスという国の「階級」のあり方とその現在、知っているようで知らないんだなぁ…と思わされます。
「社会的共通資本」の授業、生徒さんたちの反応楽しみですね。 (2007.10.02 10:22:56)

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