ミステリの部屋

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2007年06月15日

未完成：古処誠二

テーマ：ミステリはお好き？(1498)

カテゴリ：日本ミステリ（か行作家）

事態を完璧な秘密状態のまま解決するという難題に挑むのは防衛庁調査班の朝香二尉と相棒の野上三曹。
謎解きと小説の面白さが奇跡のように調和した傑作。

先日読んだ『UNKNOWN』（感想）の続編。朝香二尉と野上三曹にまた出会うことができました。

防衛部調査班・朝香二尉の今回の使命は、東シナ海に浮かぶ伊栗島の分屯基地で起きた小銃の消失事件を調査することです。
その助手として指名されたのが野上三曹、二人は船にゆられて、東シナ海に浮かぶ小さな島にやってきます。

前回、自衛隊の基地は近くの住人から白い目で見られることが多いという現状が語られていましたが、この伊栗島では、島に溶け込もうとする司令官の方針と、いざという時に頼るものは自衛隊しかないという特殊な立地条件から、島民との関係は良好です。

おかげで島の住人でない者がいたらすぐにわかってしまいます。

本土と沖縄の間に位置するこの島は防衛上重要な位置にあるのですが、よそからの侵入者を警戒するのにも都合がいいというわけです。

この作品は第一作に続き、自衛隊という特殊な世界をリアルに描き出しているというのが大きな特徴です。

謎解きは、自衛隊員や島民から聞き取った事実を積み重ねていき論理的に真相を導き出すという端正なものです。
けれども、作品には自衛隊と国に関わる大きな二つのテーマがあり、そちらの方が強い印象を残します。

この後、続編ではなく戦争小説を書いておられることからも、作者の思いの向きがわかる気がします。

今後も是非ミステリを書いて欲しいと思いますが、ミステリでなくても読んでみたいと思わせるものがありました。