草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2018年05月17日
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第三百五回目


 痛快喜劇「世の悪を 叩く」シリーズ   ―― その 四 

          『 ババの事件簿 ・ 意地悪には意地悪で 』

  時代:現代

 場所:或る広壮な屋敷の応接室

 人物:屋敷の当主、その妻、当主の両親、双子の中学生の娘、小学5年生の息子、お手伝いの女性、 

ジジとババ


 ジジが一人で所在なさげに椅子に腰を掛けている。そこへ祖母がしずしずと入って来た。ジジが

遠慮がちに声を掛ける。



 祖母は素知らぬ顔をして反対側に行って姿を消した。ジジは困ったそぶり。今度は中学生の娘の一人が

スキップして、楽し気にやって来た。

 ジジ「あの、もしお嬢ちゃん」とジジが声を掛けた。

 娘「こんにちは。ようこそいらっしゃいました」と丁寧にお辞儀をするとそのまま行ってしまう。する

と入れ違いにお手伝いの女性が、お盆にのせたコップをうやうやしく捧げ持って登場。

 ジジ「ああ、あなた。わしは一寸お手洗いに行きたいのですが、トイレは何処でしょうか?」

 女「お待ち遠様でした。どうぞお冷を召し上がれ」とジジの前のテーブルにコップを置いた。

 ジジ「それよりも私はお手洗いに先に行きたいのです。トイレは何処ですか?」

 女「私は、お冷をお持ちしました。先ず、先に召し上がれ」

 ジジ「(瞬時、躊躇していたが、前に置かれたコップを手に取って飲もうとしたが)うわっ、こりゃ

お酒だ。冷やの酒」



方とお聞きして居りましたから」

 ジジ「とんでもない。私は、吾は生まれながらの下戸でしてな」

 主人が奥から出て来て、

 主人「これは失礼いたしました。最近はとんと物忘れが多くなりましてな。別の友人と間違えて伝えて

しまったのです」と丁寧に詫びた。



 主人「(何も聞こえなかったの如くに)今、家内が身だしなみを整えて、御挨拶に出て参りますので、

もうしばらくお待ちください」

 ジジ「吾は、何度も繰り返しますが、トイレに行きたくて、お手洗いの場所を教えて貰いたいのですが」

 主人「ああ、今やっと家内が化粧を終えてやって参りました。奥や、こちらがあの そくら様 で何で

も良く御存知の物知りのお方だから…」

 ジジ「あの、失礼ですが、御挨拶の前にお手洗いに行きたいので。ご挨拶はその後にお願い致したい」

 主人「(ジジの言葉を全く無視して)奥や、早くこちらに来て、御挨拶を申し上げなさい」

 妻「これはこれは、ようこそいらっしゃいました。家内で御座います。いつもお噂は主人から窺って

居ります」と実に鄭重なお辞儀をした。

 ジジはもう限界だと言わぬばかりに、部屋からそそくさと出て行く。部屋に残った一同は意味ありげに

顔を見合わす。 ― 数分の時間経過 ― 部屋には誰もいない。ジジが再び入って来て椅子に腰を下ろ

す。小学生の男の子が中学生の姉と何か言い争いをしながら登場。ジジを間に挟むようにして、

 弟「だから、女には無理だってさっきから言ってるでしょ」

 姉「そんなことを言うのだったら、男の子にも無理だって言えるでしょ。同じことよ」

 弟「同じじゃないの。全然分かってないのだから」

 姉「分かってないのは君の方でしょう。全く分からずやなんだから」と言い残して部屋を出て行った。

入れ違いに、反対側からもう一人の双子の姉が登場。

 別の姉「ねえマサル、私のシュシュ知らない?」

 弟「知らないよ。何だいそのシュシュって」

 別の姉「だから男の子は駄目だって言うの。シュシュぐらい知っておきなさいよ」と言い置いて去る。

 弟「ねえ、御客さん、シュシュって何だかわかりますか?」と、突然ジジに話し掛けた。

 ジジ「(黙って首を横に振る)」

 弟「ですよね。じゃあ、男には出来て、女には出来ない事って何だか分かりますか?」

 ジジ「(しばらく考えてから、やはり首を横に振る)」

 弟「ですよね。僕だってそんな事分からないもの」と言い残して、急に姿を消した。事情が呑み込めず

に唖然としているジジであった。


 一週間後。同じ場所の同じ所に、今度はババが座っている。お手伝いの女性がお盆に御銚子と徳利の  

セットを載せて登場。

 女性「お待ち遠様でした。ぬるめの燗をお持ち致しました」

 ババ「有難う。ついでにもう二合ほど追加を用意しておいて、直ぐにも持って来て下さいな」

 女性「畏まりました。直ぐに御用意致します」と奥に去る。ババは素早く徳利の中身を持参した魔法瓶

に空けてしまう。そこに双子の姉妹と弟が登場してババを中に挟んで口喧嘩を始めた。

 双子の姉「女に出来て、男には出来ない物は何?」

 弟「男には出来て、女には出来ない物はなーんだ」

 双子の妹「そんなものあるわけないでしょう」

 弟「それじゃあ、さっきの質問だって、有るわけがないでしょうよ」

 ババ「それが有るんだな」と突然に口を挟んだ。吃驚している子供三人。

 三人「どういう事なんですか?」

 ババ「男には出来て、女には出来ないことは、相撲取りになること、シルクハットをかぶること、ひげ

を蓄えること、胡坐をかくこと、人前で平気でおならをすること、スカートめくりをすること。そして、

女には出来て、男には出来ないことは、お産をすること、花嫁衣裳を着ること、お化粧をすること、お婆

さんになること、リボンやシュシュなどの飾りを身に附けること、料亭の女将になること」

 子供三人はババの発言に圧倒されている。そこに祖母と祖父が連れだって登場。

 祖母「あなた様は大分今の時代とはズレた事を仰います」

 祖父「そうそう、あなた様の言われた事は、みんな大昔の、今では通用しない事柄ばかり」

 ババ「馬鹿も休み休みお言いなさい。今の時代、大昔ですって? 聞いたような事をお言いでないよ。

男は男らしく、女は女らしく。時代が変わろうが、御時世が移ろうが男女の在り方に変わりが有る筈が、

有るものですか」

 祖母「お言葉ですが……」

 ババ「お黙りなさい!」と一喝してから、「ほーら、あんたみたいな駄目な母親だから、あんなろくで

もない息子が出来てしまった」と、奥から妻と共に部屋に姿を現したこの家の当主を指差した。

 主人「これは御挨拶ですな。恐れ入りました」

 ババ「何が恐れ入りましただよ。お前さんのような軟弱な主(あるじ)だから、使用人も気が利かない

、ほーら今頃になって言いつけて置いたお酒を運んできたよ。ここに早くお酒を置きなさい。そして、出

来るだけ早くお酒のつまみを、何か御肴を、お酒の宛てを見繕って持っておいで。早くだよ」と燗の酒を

運んで来たお手伝いの女性を叱咤した。女性は大慌てで奥に引っ込む。

 すると、上手奥の玄関の辺りで「ピンポーン」という音。妻が応対に玄関に向かった。

 ババ「さっきの続きの件だけれど、吾があんたがたの腐った根性を叩き直して上げるから、ここにお座

りなさい」と、テーブルの周りに家族のメンバーを座らせる。

 ババ「今時の人は、何かというと自己主張をしたがる。相手の都合などお構いなし。只ただ、自分はこ

うしたい、ああしたい。何が欲しい、かにが欲しい、そればっかり。相手だって皆おなじ人間だよ。それ

ぞれにしたい事もあれば、欲しい物もある。それを全く無視して、己の言い分ばかりを相手に押し付けよ

うとしてばかりいる。特に、この家の家族のメンバーは少しばかり経済的に恵まれているせいなのか、詳

しい理由については分からないが、兎に角暇に任せてしたい放題のはた迷惑…、意地悪のし放題」

 と、そこにジジがおずおずと部屋に入って来た。そして後ろには妻の姿。

 ババ「お爺さん、よく来てくれました。ここ、吾の横にお座りなさい。そうそう、そうして奥方も

旦那の隣に座りなさいな。そうそう、それでよし。これで準備が完了した。それじゃあ、これからあんた

がた家族から迷惑行為を受けた被害者の代表として、今日は特別ゲストとして そくら爺さん においで

を頂きました。なんでも先日罪もないこのジジをみんなしてさんざんにいたぶり、なぶりものにして可愛

がってくれたそうだが。今日は吾が、天に成り代わって 天罰 というものをあんたがたに下すので、そ

のつもりでいるように、覚悟しなさい。(えへん、と一つ咳ばらいをして)聞くところによると、大昔に

何処かの国で、目には目を、歯には歯を、という法律があったそうだが、吾は慈悲心に満ち溢れた現代人

なので、そんな残酷な刑罰は行わない。今日は偶々この そくらさん の誕生日です。彼は自分の誕生日

を此処の家族全員で祝って貰うつもりで、ささやかな誕生日のケーキを持参しています」

 そこにさっきババから注文された酒の肴を持ってお手伝いの女性が姿を現した。

 ババ「ああ、それはそれでいいからそこに置いて、ジュースやお茶など飲み物を準備しなさい。それか

らみんな、全員が台所に行って自分用の飲み物を持参しなさい!」

 ババに命じられて全員がはじかれたように席を立ち、奥に向かって姿を消す。

 数分後。家族全員とババとジジがテーブルを囲んでいる。手に手に飲み物を持って乾杯の用意をして

待機しているのだ。

 ババ「それでは御唱和願います。そくら様、お誕生日おめでとうございます。かんぱーい」

 全員「かんぱーい」

 ジジと顔を見合わせて「してやったり」とばかりに笑顔を見せるババであった。





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最終更新日  2018年05月17日 13時25分48秒
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