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2019年04月24日
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第 四百二十八 回 目


   「 出世 景清 」 ―― セリフ劇の台本候補としての試作

 原作:近松 門左衛門  翻訳と構成:葉月 二十八


 前口上と粗筋

 これは江戸時代の浄瑠璃作者の近松門左衛門の出世作となった作品を、現代の人に分かりやすく

現代語訳し再構成したものであります。主人公の景清は源氏と平氏と激しく戦い結局源氏の勝利に帰した

た、有名な源平合戦に於いて、平氏の勇将として活躍した平 景清、又は藤原景清を言う。悪七兵衛と俗

に呼ばれるが、この悪とは非常に強い武士であることを意味している。能や歌舞伎その他、各地の

伝承や民話などにも数多く登場する民衆の英雄の一人であります。




阻止されてしまう。そして遂に源氏方に捕縛され首を刎ねられてしまう。が、景清が深く信仰する

観音菩薩が身代わりとなったのであった。景清は助命してくれた頼朝を、尚も敵として切ろうと

した自分を恥じて、自ら両の目を抉り出して詫び、九州の日向(ひゅうが)の国に蟄居する。


  熱田(現在の名古屋市)の大宮司の私邸

 景清「拙者、非常な御厚恩にあずかっていながら、誠に申し上げにくい事で御座いますが、お願

い致したき儀が御座いまして、本日お目通りを願いました」

 大宮司「これは婿殿、娘の小野の姫も無事息災に暮らして居りますので、私も満足して宮司の

勤めを安心して勤めることが、叶って居ります。して、お願いの儀とは如何なる事で御座居ましょ

うか」

 景清「はっ、御承知の如く拙者は右大将頼朝公を討ち果たし、平氏の恥を濯がんものと長年耐え

忍んで参りましたが、頼朝の家来重忠に邪魔されて、無念の涙を飲んで居りましたが、この度その



重忠を先ず退治して、その上で頼朝の首をも頂戴しようと心を決め申しました」

 大宮司「何と、左様であったか。宿年の本望無事に果たされるが宜しかろう」

 景清「早速の御承知、千万忝く存じまする」

  奥から大宮司の北の方と娘・小野の姫が登場。

 北の方「お預かり致して居りました銘刀・あざ丸、大事の仕事に携行致されますよう」と、景清



いる。


   奈良東大寺の復興工事の現場

  畠山重忠の奉行する中で大仏殿修復の儀式が盛大に行われている。その中で一人の大工と思し

き者が頬被りをしたまま通り過ぎようとした。家臣の頭・本田がその男に目を附けて、

 本田「これ、ちょっと待て。この様な晴れの場で頬被りは無礼であろう、それを外して挨拶を

致して通れ」と目敏く声をかけた。

 男「(小声で)礼儀作法も知らない者で御座いますので、失礼をお許しください」とそのままで

通り過ぎようとする。

 本田「こやつ、何処へ行く。頬被りを取らない限りは通してはならぬ」と手下の者達に命令し

た。配下の者達が男を取り囲んだ。この時に、大工の棟梁が本田に声を掛けた。

 大工の棟梁「本田殿、あいつは今日だけの日雇い人足です。分別もなく無礼を致したので、お見

逃しをお願い致します」

 本田「いや、そうではない。あの者は少し人に似ているので拙者が見とがめたのだ」

 棟梁「これは乱暴な。人が人に似ているのは当然のこと。(頬被りの男に向かって)こら、そこの

男。お前は賃金を多く貰いながらも、横着をして働かずにこのような事になった。頸にするので

早々にこの場を立ち去るがよい」

 男「へい、失礼を致しました」とその場を通り過ぎようとした。この一部始終を目撃していた

畠山重忠が言う。

 畠山「これ者共、あの男を逃がすな。あれは平家の落人の悪七兵衛景清に間違いない。この場は

目出度い清めの庭である、前にある野原に追い出して討ち果たしてしまえ」と下知した。

 命令を受けた大勢の侍たちが、たちまちに景清を追いつめる。

 景清「これ、侍ども、拙者は落ちぶれ果てた浪人者ではあるが、悪人呼ばわりされる覚えはな

い。しかし、近くに寄るならばこの銘刀・あざ丸に物を言わせてくれる」と、忽ちにして十四五

人を切って捨てた。そして尚も追撃する侍たちを相手に獅子奮迅の活躍を見せた後で、都を指して

逃亡した。


   京都の清水寺に近い遊女・阿古屋の庵

 庭先で母親の阿古屋が息子二人、長男弥石(いやいし)六歳と弟弥若(いやわか)四歳に弓と小

太刀の稽古をつけている。そこに景清が姿を現した。

 阿古屋「まあ、これはお珍しい景清さま。如何なされましたか」

 景清「我、平氏の御恩を報ぜん為に鎌倉殿を狙っていたが、その甲斐もなく三年程は熱田の大宮

司に匿われていた。この度、東大寺大仏殿再興の工事が行われ頼朝の家臣・畠山が奉行を勤めると

聞き、まず畠山から征伐しようと奈良に参ったが、無念にして仕損じてしまった。その場で自害し

ようと思ったが、汝や息子達の顔が見たさに、こうして参ったのじゃ」

 阿古屋「それは、さぞ御無念で御座いましたろう。ささ、先ずはあれへ」と景清を座敷に招じ入れる。

 景清「本当に、暫らく会わない間に子供達も大きく育ち、汝も女房振りが一段と増したようだ」

 阿古屋「まあ、お世辞の上手な事。聞けば小野の姫とやらと深い仲とか、それも無理からぬ事。

私は子持ちで卑しい遊女の身ゆえ」

 景清「いや、いや、それは誤解である。我はそなた一人を心に掛けている」と阿古屋の手を取

る。阿古屋も拒むことも出来ずに景清にしなだれ掛かった。



   翌日の同じ場所・座敷

 景清「我、久しく尾州に蟄居していて、観音様の参詣を怠っていたので、京都に居る間は参詣を

致したいが、日参するのでは人目もあって憚られる。そこで清水寺の坊にお籠りしてから、再び

帰参致す」と言い置いて、編み笠を被って外出した。弥石が門口まで見送りに出た。

  時間経過。阿古屋の兄の伊庭十蔵が北野神社参詣から帰って、妹に告げた。

 十蔵「これ妹、果報は寝て待てとはこれを言うのだ。実は、景清の情報を通報した者には、褒美

の品は望み次第という立て札が立てられた。景清は何処に居る、六波羅に通報して恩賞に預かろう

ではないか」

 その言葉を聞いて、阿古屋は暫らく涙に暮れていたが、

 阿古屋「ねえ、兄さん。あなたは本気でそう言うのですか。私は曲がりなりにも景清の妻、ここ

に居るのは甥御たちではありませんか。窮鳥懐に入らば猟師もこれを撃たずと言います、情けない

ことを言わないで下さいな」

 十蔵「(大声で笑い飛ばして)時代遅れな事を言うな。それにお前は夫よ、妻よと言っている

が、相手は大宮司の娘を恋慕して、お前の事など何とも思ってなどいない。女賢しくして牛売り損

なうとはお前の事を言うのだ」と飛び出そうとするのを押しとどめて、

 阿古屋「兄さん待ってください。大宮司の娘の件は他人の無責任な噂話にしか、過ぎません。

私にとって景清様は二世を誓った大事な夫です。どうしてもと言うのなら、私や子供達を殺して

からにして下さいな」と兄に縋り付いて泣く。すると丁度そこに熱田の大宮司からの飛脚が来て、

 飛脚「こちらは景清樣の宿で御座いましょうか?」

十蔵「いかにも左様で御ざる。只今は留守に致して居りますが、預かってお渡し致そう」と文を受け取っ

た。

 兄妹して文面を読んでみると、小野の姫からのもので、恋心と便りひとつ寄越さない冷淡を恨みに思う

気持ちとが綴られている。

 阿古屋「悔しい、兄さん」と泣きながら文を引き裂く。

十蔵「言わぬ事ではない、この上は六波羅に密告して鬱憤を晴らすばかりだ」と立ち上がった。その兄に

取りすがって妹は、健気にも止めようした。しかし、兄は妹を振り払って駆け出した。泣き崩れる阿古屋

であった。


            清水寺の景清が参籠する清水寺の坊(夜)

 景清が同宿の僧達と仲良く話などをしている。坊の外には大勢の六波羅の役人が幾重にも取り囲んでい

る。それを見咎めた荒法師の一人が声を掛けた。

 法師「此の寺は田村将軍以来の霊地なるに、狼藉は何事であるか」

 清水寺に所属する荒法師達がこれに応じ、景清を加勢しての激しい乱闘が開始される。

 常陸の栄範律師「慈悲第一を謳うこの寺で信者を討たせては、観世音のご利益は地に落ちてしまう。防

げよ、支えよ」と大声で仲間の僧たちに呼びかけた。

 この僧達の加勢もあって景清は助っ人の三十人と奮戦して、やがて六波羅の五百騎を劣勢に追い込んで

しまう。雪崩を打って退却する手引きの十蔵を始めとする役人達であった。

 それを目撃した大勢の人々は景清の人間離れのした活躍に対して、拍手と喝采を惜しまなかった。

 そして、景清は悠々と東国を指して落ち延びたのである。


       六波羅の新造の牢屋

 熱田の大宮司が押し込められている。

 梶原源太「汝は当家の大敵景清を婿に取っただけでなく、行方も知れないように逃亡させた。何処へ

逃がしたのか白状しなければ拷問にかけるぞ」

 大宮司「仰せの如くに景清とは縁を結びは致しましたが、行方については存じません」

 重忠「言い分は尤もである。仮に行方を知っていても婿の訴人は出来ないのが、人情というもので御座

ろう。しかし景清は仁義第一の勇士であるから、舅がこのように牢に捕らえられたと聞いたならば、必ず

此処に姿を現すであろう」


 数日の時間経過    梶原源太に伴われて旅姿でやつれた小野の姫が、乳母のお供で姿を現した。

 小野の姫「ああ、お労しやお父上様。私が身代わりになります」と源太に泣いて訴えた。

 源太「景清の行方を白状しろ。さもないと拷問にかけて白状をさせるぞ」

 小野の姫「水責め火責めに遭ったとしても、夫の行方は存じませぬ。どうか、父上をお助けて下さい」

と声を限りに泣きながら哀訴する。

 源太「ええいっ、この上は六条河原に引っ立てて、様々に拷問にかけてやろう」と手下に命じて小野

の姫を乱暴に引き連れて行った。





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最終更新日  2019年04月30日 08時57分27秒
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