草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2020年07月06日
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えつこ曼荼羅つれづれ草 の続きである。

 例によって夢の中での諭しがあり、「太郎と花子の物語」と題する小話を作ってみるように指示され

た。

 それで、私は半分夢から覚めかけながら、これは是非とも傑作を物しなくては、と意気込んでいた。

 フィクションや創作詩は、悦子との思い出の中から、下手ではあっても、過去にいくつか創作してい

る。

 直接の体験やその時々の感懐などは、いくらでも質を問わなければ でかす 事は可能だ。

 が、それでは、この世で生きて、生(なま)の感情から生まれる狭い範囲の内容しか、実現できないこと

になってしまう。それでは、発展性にかけてしまう憾みがある。もっと、純粋に、生そのものから生まれ



 そこで、結果の良否は問わず、女神の「えつこ」に手を引かれて、とにかくもトライしてみよう。


 「 太郎 と 花子 の 物語 」 ―― 習作の 一


 太郎は健康で、明朗な男の子だ。今の所、日本列島の南に住んでいる。花子は活発で、頭の回転が速い

愛らしい少女である。住まいのあるのは、日本列島の北の静かな海辺の町である。

 太郎には二歳下の妹が居る。名前はスミレ、聡明で、おしとやかな女の子である。

 太郎は成人して、やがてふとしたきっかけから花子と出会い、そして徐々に恋に落ちる。そして、太郎

は一個の青年男子として、立派に成長していく。

 この兄太郎の変化を、太郎の直ぐ身近にいてじっと見守るスミレも、一人の魅力ある女性として、成熟

を遂げ、自らも彼女に相応しい生涯の伴侶を得て、幸せな結婚生活に入る。

 所が、スミレは彼女なりに兄太郎をこよなく愛していた。恋愛感情とは違う、妹としての深い情愛に裏

打ちされた感情で以て、である。



して周囲はもとより、スミレ本人も無意識のうちに自らを強く自己規制していたからこそ、恋愛以上の純

粋で、プラトニックと呼ぶに誠に相応しい愛情で、太陽のコロナの如く燃え上がっていた。

 これも、無理はなかった。太郎は誰よりもスミレに優しかった。そしてまた、純粋無垢な、豊かな愛情

で年下の幼い、愛らしい妹を愛するのを常としたのであるから。

 太郎の方では、花子に出会うまでは、身近な女性といえば母親と妹、それに近所に住み同じ学校に通う



十分であった。少なくとも、花子という女性に出会うまでは……。

 花子との不思議な恋愛体験を経てからも、妹スミレに対する太郎の感情は、少なくとも自身の認識では

余り変わらなかったし、それ故に、スミレが結婚するに相応しい相手を得て、両親や兄太郎に紹介した時

にも、直ぐに素直な気持ちで祝福する事が出来た。心の底から妹の幸福な未来を願った。それで何の問題

もなかった。

 しかし、ある時から、太郎のこの心の平安に微妙な不安定感が生まれていた。太郎自身、それに気づか

なかったくらいに、微妙なものであった。

 妹スミレと妻の花子は、見た目にも、当人同士の自覚からも、仲の良い義理の妹と兄嫁のそれであっ

た。当然である。太郎も、花子も、そしてスミレも人生における最高の伴侶を得て、順風満帆、幸せの絶

頂にある。

 スミレの夫良夫は万人が認める善人であり、仕事も、社交も、家庭での夫ぶりも万点であると言えた。

が、スミレには何故か、それゆえに何か物足りないものが感じられた。それは、非常にデリケートで微妙

な感情であったから、スミレ自身がそれを始め、はっきりとは自覚しない体のそれであった。

 最初にスミレの変調に気づいたのは、ほかならないほんのたまにしか顔を会わす機会が無くなった太郎

の方である。スミレは確かに幸福感で一杯の、輝くように美しい若妻に相違なかった。夫良夫とも上手く

行っている様子が、ひと目で分かる。それでいて、どこか本人も気づいていない軽いアンニュイの様な雰

囲気が、何処からともなく仄見えて来るのだった。

 それで太郎は軽い冗談のつもりで、「おや、おや、スミレ奥様は幸せ疲れなのでしょうか…」と、その

時に飲んでいたビールの酔が言わせた如くに、ややおどけた調子で口にした。

 スミレは一瞬ではあったが、不意を突かれたように、何とも名状しがたい表情を、美しい顔に浮かべ

た。そして言った、「あら、お兄さんこそ、幸福に疲れた、とんだ幸福長者様といった雰囲気を、周りの

人たちに見せびらかしていらっしゃるようですわ」と。

 何かがおかしいぞ、と太郎は心の中で感じたが、そんな感じは噯気(おくび)にも出さず、「御明察、さ

すがは私の自慢の妹御だけのことはある」と、全部冗談にして、切り返すしか手段がなかった。

 その場に居た誰もが、いつも仲の良い兄妹の軽いじゃれあいのやりとりと受取っていた、事実、そのセ

リフの交換が、その場を更に明るく盛り上げる効果を発揮した。

 しかし、太郎の新妻・花子はその時のスミレから、ある種殺気と言うか、挑戦状を突きつけられた如く

に感じた。そして、始めて義妹のスミレを同性のライバルとして、明瞭に自覚したのだ。

 長い間、太郎は花子とスミレの間に展開されていた、静かで、見かけは至極平穏であったが、その実、

猛火の様な激しい熱気を内側に孕んだ、不気味な女同士の戦いを全く知らずにいた。

 ある時に、花子の親しい女友達の睦羽から、「太郎兄さんは、今でも妹さんをとても可愛がっていらっ

しゃるそうですね。花子が思わず嫉妬してしまうくらいに」と言われた折に、何故か内心でギクリとした

ものだ。睦羽本人は何気なく花子の言葉を伝えただけだったのであろうが、それを親友に語った妻花子の

心には何か鋭い棘が感じられたから。

 花子は普通の女性で、特に嫉妬深い性質ではなかったし、スミレの事を口にする時には、決まって褒め

ていたし、その表現には極めて自然さが感じられていたのだった。

 花子が妹のスミレに 嫉妬 を感じるだって。それでも、その言葉が、太郎自身に面と向かって発せら

れたものであったならば、微笑を浮かべるくらいの反応で、何事もなくすんでしまったであろうに。事

実、幼い頃から太郎とスミレは近所でも評判の仲良し兄妹の仲だったのだから。

 以来、花子とスミレの間に、静かではあっても「凄まじい」女の戦いの火蓋が切って落とされたのであ

った。それは周囲の誰もが気づかない凄まじい 女の戦い となったのだ。

 では何故こんな事態になってしまったのか? 誰が一体悪いのであろうか? 誰も悪くはないのだ。た

だ、花子も、そしてスミレも、ひとりの「男性」太郎を普通以上にひたむきに愛してしまっただけなのだ

から。

 そして、花子もスミレもお互いに相手を一人の女性として敬愛し、尊敬さえしていたから、相手を互い

に「許せない」と感じてしまったのだ。

 相手が少しでも自分より劣っていたならば、これ程の熱い戦争が繰り広げられなかったに、相違ない。

 人間社会では往々にして、こういう確執が生じてしまうものだが、一見、何の問題も生じよう筈もない

女性達の間に、かくも凄まじい暗闘が勃発した本当の理由は、神ならぬ身の知る由もない事だが、ここで

作者が止むを得ずして想像を逞しくすれば、最低限、次の様な事を指摘できるであろうか。

 事は男女間の強い愛情に関するものである。普通の愛情であれば、誰が誰を愛そうと、仮令その対象が

同じ人物であっても、対立もなく、謂わば平和裡に共存は、易易と可能なのである。

 所が、ひと組の相思相愛のカップルに関しては、それは無理な相談という事になる。そうならなければ

どうしてもおさまらない。男女の、地上の愛には肉欲が必然的に伴う事になる。一人の女性を熱烈に愛し

た男は、相手の女性が己以外を愛情の対象とすることを、断じて許すわけにはいかない。女性の場合にも

全く同様の事が言える。

 愛するカップルは、永遠に二人きりであることを、少なくとも理念の上では、望むものだ。男の浮気性

と言う問題を考慮に入れても、この理想的恋愛の歓喜状態は、永遠を志向する。

 ここで、スミレの太郎に対する愛情の分析入らなければいけないだろう。

 この地上にあって異性を愛する者は、霊・肉共に強く結ばれたいと願う。しかし、近親者との肉の結合

は慣習として、つまり部族的な習俗や文化的な背景等によってタブーとされ、それは後の科学的、優生学

的な見地からも是とされ、ある種絶対的な権威として確立している。しかし、性愛欲は本能に準じる強烈

にして制止不可能な欲望である。

 スミレはこの殆ど絶対的なタブーの制止に遭って、身動きできない状態にある。しかし、兄太郎に対す

る愛情は熾烈極まりない。止むに止まれない。どうしたらよいか? どうすることも出来はしない。地獄

の業火に焼かれる如くに、スミレは呵責ない責め苦の下に置かれている。しかしながら、この強烈な苦し

みの中にも、激しい歓喜がある。喜悦が存在する。しかも、花子という兄太郎の正当な配偶者と言う、最

強のライバルも出現している。

 だからスミレは苦しみから逃れる為にも、又同時に、歓喜をいや増す目的の為にも、この「憎むべきラ

イバル」、宿命の敵対者と死闘を演じなければ、どうしてもいられない軛(くびき)を自ら買って出ても、

身に帯さなければならない宿命を負ってしまっている。

 さて、この三人の男女の愛欲の葛藤は果たして美しいのか、それとも醜いのか。作者は美しいと賛美す

ることも、醜いと非難することも可能だが、今の段階ではコメントを差し控えたいと思うのだ、

 この作者の態度は卑怯でありましょうか? それとも又……?

 次回まで、読者それぞれの御想像にお任せしたいと思うのです。何故なら、人生はエンジョイすること

に有り、何事もプロセスが最も大切なのでありますからね。





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最終更新日  2020年07月10日 10時43分10秒
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