草加の爺の親世代へ対するボヤキ

草加の爺の親世代へ対するボヤキ

PR

プロフィール

草加の爺(じじ)

草加の爺(じじ)

サイド自由欄

カレンダー

フリーページ

2025年06月25日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
さて承れば伊駒の宿祢めが検非違使と偽って、却って検非違使に見付けられて逃げうせたると承

る。たとえ如何に逃げたとしても、當国の内であれば、牢に入っているのと同じで、何時でも彼の

首は我らが物で候と、言うのを聞いて籠共にそろりそろりとゐざり退く。

 百嶋はきっと見つけて彼奴を脅し、狂い死にさせてやると思い、たとえ敵が東の道へ逃げようと

もこの道には某の手の者を置いているので、死にに行くのも同然であるよ。御心安かれとよそ事の

如くに申したのだ。それで百嶋は元の方へと這い戻ったのだ。

 いや、申し、この先には勝舟が支え候えば敵が寄ることは不可能である。そう脅せば忽ちに脅さ

れてうごうごと又脇道へとゐざり入った。

 この道には御家中の討っ手の者達に待ち伏せさせておきました。と騙すと相手は騙されて、行き



 はったと睨めば、仰天して、籠を被っていますると合わせる顔がない、御免有れとわななきなが

ら言うのは笑止である。

 百嶋はかっらかっらと笑い、智者は惑わず、勇者は恐れずと言う。おのれは智慧こそはないが匹

夫の勇でも勇はある。ただ今殺すのは易いけれども、若宮御誕生の折でもあり、殊に勝舟が殺しさ

した奴であれば、勝舟に首を打たそう。縄をかかれと踏み伏せて、足手を取って八重無尽にからげ

つければ、ああ、もう、御免、御免、御免と大声を上げて泣いている。心地よくこそ感じるのだ。

 向こうの岡から以前の牛が継母の身體の真ん中を突き通して、肩に振りかけて一散に走って来

た。親王の前に膝を折り、黄涙を垂れ、人間の声を出して、みずからは伊駒の宿祢の娘で、五位の

介諸岩の妻であり候。配所の夫に貢ぐ為に室公と呼ばれ、遊君の流れの身と成った所に、少し夫婦

の契りが途切れたので敵の縁によって嫌われるとは露知らず、嫉妬の恨みに蛇身となりこの世を去

り成仏して浮かびもしない苦しみの中、忘れもしない妹背の道、君の御身を守らん為に地獄の責め



しさよ。有難さよ。この忠節の誠により、地獄道も逃れるでしょう。尚々弔いたび給えと言うかと

思えば牛はそのまま起き上がり、身振るいして頭を振り、継母を大地に打ち付けて家路を指して走

っていく。

 かくと聞くより検非違使と長者諸共に馳せ参じて、一先ずは館に移し参らせて都に注進申さんと

御乗り物を指し寄せたところ、継母の頭から電光の如く飛んで出て虚空に閃きが見えたのだが、忽



る。

 継母の一身に入って不思議を見せたのも我であるぞよ。我が秘術をふるまうならば中々都へは帰

さない。と、虚空を駆けながら叫んだが黒雲があたりを晦まして、山河草木震動して天地も裂ける

ばかりである。

 百嶋も勝舟も心ばかりは逸るのだが、太刀も刀も力なく虚空を睨んで立ち竦んでいる。

 不思議や、若宮左の御手を少し開き給えば御掌の内から光明が辺りを輝かして、益良が魔術の力

も尽きて大地にかっぱと落ちた所を、おっつめ、おっつめ刺し通せば正体は本当の眼(まなこ)の玉

が貫かれていたのが不思議であるよ。

 長者は愈々渇仰(かつぎょう、深く信仰する)して、その夜に御殿を設えて先ず移し奉る。和国に

仏法の始まりの種を植え初めし恋草や、草刈り笛の声の色に、心の色と思いの色、色に和らぐ国で

あるから御法に民も和らいだのである。

                第  五

 仏日西天(ぶつにちさいてん)の隠れて遺燿東北(いようとうぼく)にかかやく。釈迦が死んでもそ

の余光は天竺の東北方の日本に輝いている。

 獅子吼の金言は過たず、仏法流布は王道の盛りの初めとなったのだ。御誕生の若宮を厩戸の王子

と名付け参らせける。これは駒繋ぎの辺で降誕なされた故であろう。

 然るにこの宮は御襁褓(きょうほう)のうちから左の手を開きなされず。如何なる胎気の御病か、

或いは外道が魅入れたのか、一先ずは都に行啓なし参らせ、名医の教えに任せようと海(あま)の戸

を渡る商人の筑紫通いにもてなして、任せる風も君が為、座せるが如き波の上、一日一夜を明かす

それではないが、明石潟、播磨の国に着いたのだ。

 山の手を見れば騎馬武者、徒歩武者千騎あまり、金銀で日月を打った錦の旗を真っ先に押し立て

て東風吹く風に翩翻(翩翻)して、勇みに、勇んで馬を走らせている。

 勝舟と百嶋がこれはどうしたことかと怪しんでいると、五位の介諸岩兵藤太入道が諸卒を具して

御前に膝まづき、さても我が君、筑紫潟に御開きあって、眞野の長者と御語らいの風聞、山彦の王

子は安からずや存知つらん。

 悪党を語らい丹州大江山のふもとに土城を築き、野面(のづら、山から運んできたまま手を加え

ていない)の石垣、麦わら塀、要害疎し(防衛力が乏しい)と申せども、地の利防戦に有利である

ので、御退治の叡慮猶予の由を承り、憚りを顧みずに我々は君の奏聞と称して、山彦征伐の勅宣を

願い奉り候所に、叡感まことに浅からずこの度御誕生の若宮に、親王の宣下があって、即ち御名を

聖徳太子と名付け申し、大将軍に立て参らせ、朝敵追伐あるべしとの勅命を戴き、日月の御旗を預

け下し給わって馳せ参り候と大息ついて言上した。

 親王を始めとして各々が頭を地につけて、勅書を拝し奉り、御悦びは限りがない。

 なかんずく兵藤太入道の働き、五位の介の忠節は親王自らが周囲に御吹聴なされたので、長者一

家や勝舟もあっと感じるばかりである。

 宗徒(むねと)の御味方は八十(やそ)の眞人(まつど)、武知(たけぢ)の郡司(ぐんじ)、揖熊(おしく

ま)の武者所・安摘(あづみ)の宗賢(むねかた)、坂の上の古虎、御盃を賜り、軍師・軍監・軍配者

、物見・遠見・物がしら、手分け、手配り、手組を備え、錦の御旗を給わる上は天子の行幸と同然

である。

 行く所に幸いが有り、吉日吉方はこの日にある。時刻を移すな、打って立て。と、貝も太鼓も高

砂の尾上の鐘も巳の時(午前十時頃)と輝く月日の御旗を押し立ててこそ押し寄せたのだ。

 そもそもこの山は後ろに険阻を負って、弓手に大河が流れている。前に大木を切りかけて乱杭・

竹束を隙間もなく、所々に井楼(いろう、井桁の形に木を高く積んだ物)・屋木偏に羅(ぎり、防

備した垣や塀の類)を付けて横矢を繁くぞ構えている。

 官軍が既に間近かになったので、山手川手の前後の備え、十重二十重に取り巻いて、貝鐘を鳴ら

し箙(えびら、矢を入れて背負う武具)を叩き、鬨(とき)の声を挙げたのだ。

 待ち設けていた城方にも同じく鬨を合わせたのだ。

 検非違使の勝舟は堀瑞に進んで、大音を上げ、御新発の大将は事も愚かや、欽明天王の孫王、厩

戸の王子・聖徳太子で、御父親王の御代官として向かわせなされたその意趣は、山彦匹夫外道を重

んじ仏神っを軽んじて王法を傾けようとしている。

 天は是を許さず、急ぎ匹夫の首を取って神慮を清め鎮めて、三世の諸仏の報恩に供え、かねては

宸襟をば安んじ、国家の泰平を致すべしとの宣旨を蒙り、龍蹄(りゅうてい、駿馬、太子の馬の讃

辞)を差し向けられた。命が惜しければ陣頭に股をくぐって降参せよとぞ呼ばわった。

 王子は怒って甲冑もも帯せずに井楼にかけあがって猛虎が吠える如くである。大音を挙げて、や

あ、緩怠過ぎた広言であるよ。日本国が集まってもこととも思わぬ山彦が立てこもっている山城に

昨日今日生れ出てまだへその緒も落ちない聖徳とやら、粉徳(のろ間人形の名)とやら言う倅、丸に

向かわんなどとは蟻の鬚で須弥山を崩そうとするに似ている。

 益良はいないか、魔法を以てあれ、蹴散らせよ。と、下知すれば益良は続いて駆けあがり、度々

某が秘術の手並みを見せたのだが、性懲りもない奴ばら、いで、片端から立ち竦みにしてくれんと

ぞ呼ばわった。

 五位の介諸岩駆け出でて、魔法使いの益良殿、御辺の片目は如何した。おお、結構なる魔法か

な。御用ならばこれにあると、槍の先に貫き、是は豊後の府内にて化け廻るのを突き止めたのだ

が、覚えがあろう。鹽漬けにして勝ち戦の酒盛りをする際に、吸い物にしようと思ったが、ただ今

返すので受け取れ。地に抜き捨ててから草鞋で踏みにじって笑うのだった。

 王子は大に怒りをなし、物な言わせそ、追ッ散らせ、承ると逆茂木(茨の枝などを立てて敵の

侵入を防ぐ物)引き除けて突いて出れば、味方の勢、潮相はよし、乗っ取れと一度にどっとおめい

て掛かり、花よ紅葉と戦いける。

 味方は運に乗っているので、二三度四五度突きくずして朝敵は怯んで見えた。

 時に敵の内から深山の如くに揃った武者が五騎出で来たのである。我は王子の御味方、黒島雲墨

荒鷲鬼廣鬼正と名乗って大太刀鉞(まさかり)・長刀・大薙鎌に九尺の棒得物、得物々々を引っ提げ

て木戸口に立ち並び、寄せ手の方に武知(たけぢ)楫熊(おしくま)安摘(あづみ)古虎・八十(やそ)の

眞人(まつど)と言う強者(つわもの)有と聞き及んでおろう。見参の為に馳せ出でたり。晴れ業の勝

負である、出合えやっと呼ばわったり。

 やさし、しおらし、参りそうと五人が五人に分け分かって、得物々々に渡り合い、半時ばかりぞ

戦いける。或いは撃ち伏せ、叩き伏せて、五人の敵を五人の味方、一度に取ってどうと伏せて、さ

あ、末代までの語り句に一度に首を取ろうではないか。

 おお、尤も、と拍子を揃えてはらりと首を掻き落とし首を引っ提げてしづしづと味方の陣に入り

ければ、官軍は一度に声をあげて、いや、御手柄、御手柄とどっとどよみもやまざりけり。

 益良も今は堪えかねて、一丈有余の鉄の棒、麻よりも軽くひっさげ仏と仰ぐ親王に参り会って、

この益良と仏道と外道の勝負を試そう。親王よ、出でよとののしった。

 かかる所に見慣れぬ若武者が真一文字に躍り出て、柄は八尺の槍鉋をひらめかせて立ったのだ。

諸人がこれを見れば、桶結いの久馬平が物の具固め(武装して、鎧を着こんで)にっこと笑い、先年

王子殿に参り合い、系図を名乗り申し上げれば具(つぶさ)に申し上げるに及ばず、定めて沙汰にも

聞き及んでおられようが、この得物道具にて推量して下され、要らざる職人の武士立てではあるが

ふと頼まれ、奉りし。途中で止めてはいられません。裏壁を塗り塞いで後始末をし、具足も拙者が

細工した桶側胴とはこれである。

 一つ残った益良殿の片目を申し受けたしと、高らかにぞ呼ばわったのだ。

 益良はからからと笑い、うぬらが分で某に向かわんとは汚らわしい、推参である。こいつを打ち

獲れ、見物しよう。味方はないのかと呼ばわれば、さ知ったりと雑兵共、左右から打ってかかる。

それをひらりと外し、はっしと受け、数年鍛錬錬磨して使い覚えた槍鉋をひらりひらりと切り回わ

れば、或いは真向片頬片耳・鼻柱、腕先膝節を打ち欠かれて、四方にぱっとぞ逃げたのだ。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2025年06月25日 21時05分49秒
コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: