眠れない夜のおつまみ

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2005/03/01
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テーマ: 小説日記(233)
カテゴリ: LOVE
電話は公衆電話からだった。

公衆電話からの電話に不審に思ったが、もし誰か事故にでもあったのかもしれないと思ってサトミは通話ボタンを押した。
相手が話すまでサトミは無言でいた。
「もしもし・・・。」
相手はミケだった。
「もしもし。あの・・・ミケだけど。こんな夜遅くにごめん。眠れなくて。」
電話の向こうはしんと静まり返っており、時折ヒタヒタと足音が聞こえた。
そして救急車のサイレンがだんだん近づいてくるのが聞こえる。

「勘がいいね、アリスは。」
と言うとミケはフフフと笑った。
「俺、明日から治療を受ける。その前日に眠れなくて一番声を聞きたい相手に電話した。」
「病気なの?」
「・・・でも、今回の治療が終わればきっと完治するさ。」
サトミは何がなんだか分らなかった。
「アリス、また会ってくれる?いつになるかははっきり言えないけど。また、いつか会ってくれるかな。会ってくれるだけでいいんだ。顔を見て話をする、それ以上は望まないから。」
「そうね。また、いつかね。」
「ありがとう。」
そう言うとミケは電話を切った。

それ以降ミケとは繋がらなくなった。


ピーター:急にメールが来てね。俺の代わりに管理人をしてくれ、って言うから>アリス
 アリス:そうだったんだ>ピーター
ピーター:どうしたんだろうね?何か聞いてる?>アリス
 アリス:ううん>ピーター

ミケのHPも閉められ、教えあった携帯も繋がらなかった。




サトミは母からの久しぶりの電話に泣いた。
そして大学からの独り暮らしにピリオドを付け実家に戻った。



金魚鉢に太陽が当たって水が揺らめいているのをサトミはじっと見つめていた。
あれから、もう3年の月日が過ぎていた。
サトミはコウジでもなくミケでもない人と結婚していた。
息子も一人もうけていた。
息子は幸せに輝くようにと幸輝と名づけた。
あの頃のような、心が揺らぐ事もなく、安定した静かで安らぎに満ちた生活をサトミは手に入れていた。
波一つない穏やかな海を大きな船で進んでいるような生活。
幸輝の寝顔を見ながら思う。
それでいい、とサトミは満足していた。
これが、私の選択。
自宅の電話のベルが鳴った。
「もしもし。」
「渡辺さんのお宅でしょうか?」
聞き覚えのない声だ。
セールスだろうか?専業主婦になって初めて気づいた。セールスの電話の多い事。
「脇坂探偵事務所のものですが、あの・・・サトミさんはいらっしゃいますでしょうか?」
「え?私ですけど、何か。」
「あの、後依頼主様から預かり物がございまして。後依頼主様は事情があってお届けにあがれないとの事ですので、私が代理をさせていただくことになりました。怪しい物ではありませんし、お時間も取りません。こちらからお伺いしますので、是非。」
「でも、そんな・・・。」
不安になった。
「後依頼主様はミケ様です。覚えてらっしゃいますか?」
「ミケ?!」
衝撃が走った。


待ち合わせはセントラルホテルのロビーだった。
幸輝を連れて行った。
窓側の席に腰掛けた。
すると間もなく身なりのきちんとした男が現れた。
「こんにちは。はじめまして。」
と、男は名詞をサトミに差し出した。

脇坂探偵事務所 佐藤行伸

「よくおいで下さいました。サトミ様。いえアリス様と呼んだほうがよろしいかもしれません。では早速ご依頼の品をお渡しする事にしましょう。」
佐藤はアタッシュケースから一枚の封筒を取り出し、サトミに渡した。
「これは・・・どういうことでしょうか。」
「ミケ様、相田幸輝様は生前私どもの会社にこの手紙を持ってこられました。4年間預かって欲しい、と。もし、治療に成功して戻ってこれたら自ら手紙は取りに来ます、しかし、4年経っても現れなかったら、この宛名の人物を探してこの手紙を届けて欲しい、と。私どもも、こんな依頼は初めてでしたし、お断りしようかと思ったのですが、あまりにも真剣なので熱意に打たれてお受けしたのです。」
「もう、ミケ、いえ相田さんは・・・。」
「残念ながら。慢性骨髄性白血病だったそうです。骨髄移植を受けられたそうです。しかし、強い拒絶反応が現れて・・・。ご家族の方のもお会いしてきました。是非に、息子の願いをかなえて欲しい、とおっしゃっていました。我々はサトミ様の事を4年間追跡してまいりました。お子様が生まれた誕生日、そしてお名前が相田様のと偶然にも一緒だったのをご家族にお話ししたところ、泣いておられました。私もびっくりいたしましたが。では、我々の受けた依頼はこれで終了させていただきます。どうぞ、サトミ様お幸せに。」
佐藤はそう言うと会釈をし颯爽と去っていった。

サトミは自宅のテーブルに手紙を置いて眺めていた。
側には幸輝がスースーと寝息をたてて眠っている。


アリスへ

俺は社会人になってから初めての検診で慢性骨髄性白血病と診断された。
ショックだった。
今まで急性転化と寛解期を何度となく繰り返し、やっと待望のドナーが見つかった。
これが上手く行けば俺は病気ともさよならできる。
そしたら、アリス、君に一番に会いたい。
可笑しいかもしれないけど、俺は君に惚れてしまった。
初めて会ったあの日、俺は忘れない。
もしも、君がコウジかそれとも他の誰かの物になっていたとしたら。
それでアリスが幸せなら、俺は諦めるよ。
だけど、もう一度、もう一度でいいから君の顔を見ながら話がしたい。
あの日、行った海をまた君と一緒に眺めたい。

この手紙を俺は絶対自分で取りに来るつもりだ。
そうなる事を信じている。

でも、もしそれが叶わなかったら・・・・。

それでも、俺はきっとアリス君の側で君が悲しまないように見守っていたいよ。

あの時、本名聞いておけばよかったな。

どうしてもこの気持ちを届けておきたいと思う俺を許してください。


                   相田幸輝


サトミは寝息をたてている幸輝の幸せそうな寝顔を何時までも何時までも眺めていた。



                         <終わり>

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+あとがき+

病名を使わせていただき、読まれた方の中に不快感を与えていたら本当にすみません。

すべてフィクションです。

最後まで読んでくださった方、いつもながらの駄文でしたが、心から感謝します。
感想など添えてくださったら嬉しく思います。

みなさんがラストをどう思うか分りませんが、もともと書き始めた時にこうすると私自身決めていました。

心が揺らいで苦しい気持ち、それぞれの本当の気持ちを書いてみたかったです。

一応私的には大きな意味でのハッピーエンドのつもりです。

ちょっと後味悪いって、言う声が聞こえそうです。(笑)

書き始めた当初と設定を変えたのは探偵事務所の佐藤を起用した事です。
本当はミケの両親が手紙を持ってやって来る、という設定にしようと思ったいましたが第三者が淡々と述べる方がいいかな~と思って・・・。

次は何書こうかな~。



書いてる時に聴いた曲

マイケル・ナイマン 
ピアノレッスン(サントラ盤)

サザンオールスターズ
バラッド3(2枚目)

鈴木雅之
マティーニ2

スガシカオ
甘い果実・AFFAIR・波光・サヨナラ


ではでは、また~。












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Last updated  2005/03/01 12:36:55 PM
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