眠れない夜のおつまみ

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2005/12/26
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カテゴリ: 小説
俺達はお互いを惜しむようにホテルをでて別れた。
「またね。」
とかおるが言った言葉がいつまでも俺の中で木霊している。
「またね。」
車を運転しながらつぶやいた。

家族が寝静まっている家に着いた。
疲れたが俺は充実感に満ちていた。
今夜は夢の中でもかおるに会いたい。
ベッドにもぐりこむとすぐに眠る事が出来た。

今回は酷い痛みだ。
額に脂汗が浮き出てきた。
俺は痛みで動けなくなってベッドにうずくまった。
鎮痛剤を飲みたい。でも、動けない。そうだ。鎮痛剤なんて即効性は無い。
気休めでもいいから飲みたい。
そして冷蔵庫の中の座薬を使いたい。
あぁ・・・一体こんな夜にどれだけの人が痛みで苦しんでいるというのだろう。
駄目なのか?入院の事が頭をかすめる。
かおるの微笑む顔が頭に浮かんだ。
いや、これは罰なのか?
あぁ、そうか。罰なら受けなくてはならないな。

余裕なんて無いはずなのに。
そんな事を考える俺自身が笑える存在のように思った。俺は痛みで勝手にこぼれてくる涙を頬に感じながら、顔を歪ませて声を出さずに笑った。
何分たったのか分からないが、少しだけ痛みが落ち着いてきた。
この隙に鎮痛剤と座薬を入れる為にキッチンへ向かった。
生ぬるい水をコップに汲み薬を飲んで冷蔵庫から座薬を取り出して素早く肛門に入れた。

両親の眠っている寝室まで行く気力ももうない。
救急車は慣れているから大丈夫だ。
今まで何度も痛みで救急外来に行った。
初期の頃はあまりにも頻繁に救急外来に来る俺にDrも苦笑いだった。
あの頃よりも、対処する思考回路も強化されて落ち着いている。
電話の子機を両手で握り締めてリビングのソファに前かがみで座った。
子機を握り締めたまま朝がやって来た。
朝食を作る為に起きてきた母親が俺に気付いてびっくりしたようだ。
「腹痛?母さんを起こしてくれればいいのに。」
いつも言う言葉だ。
「病院に行く?母さんなら仕事なんて休んでもいいんだから。」
「自分で何とかなりそう。」
必死でそう答えると
「馬鹿な子。病院に行くわよ。ちょと待ってって。支度するから。」
とまた2階に上がっていった。
今度は親父と一緒にリビングまで降りてきて2人は俺を囲んだ。
「哲哉、母さんに病院に連れて行ってもらうんだ。いいな。」
と親父がいつに無く心配そうに言うので
「わ、分かった・・・。」
とだけ答えた。
母は後ろで病院へ電話をかけていた。
「哲哉、症状はどうなの?」
母親が俺に聞く。
「深夜に右の脇腹に激痛。3時頃だと思うけど鎮痛薬と座薬を使ったけど効かなくて5時にも同じものを使った。」
と途切れ途切れに言うと俺の言ったように受話器に向かって言っていた。
母に連れられて病院に着いた。
動くとまた脂汗が浮き上がってくるのを感じた。
病院の玄関で車椅子に乗せられてまだ一般診療時間ではないので救急外来に向かった。
救急外来には救急車から搬送された患者が丁度俺たちの目の前を通り過ぎて行った所だった。
暫くすると俺の名前が呼ばれた。
中に入ると俺の主治医の長谷川Drが椅子に座って俺を迎えた。
今日は当直だったらしい。
「腹痛がやってきましたか。」
「はい。」
「どうしよう。注射して様子見るか、入院って言う手もあるけど。」
かおるの顔が頭を過ぎって迷わず注射を選んだ。
「すぐには効かんだろうけど・・・。」
と言ってナースから薬のアンプルを受け取ると、ポキっといい音を立てて割り、注射器の針で薬液を吸うと右手をゴムで縛り浮き出た血管注射をした。
「効くか少し様子を見てから帰りなさい。効かなかったら、入院だな。」
と言って長谷川Drはゴムをほどくと血管から薬を入れ終えた注射を引き抜いた。
母と俺は病院の廊下の椅子に腰掛けて暫く様子を見た。
薬は効いた様だった。
スッと嫌な汗も引いて行くのが分かった。

母の運転での帰り道、有り難いとは思うが情けないとも思った。
こんな年になってまで、親に面倒になって・・・。
車の中は冷房で涼しかったが、外の景色は徐々に暑さが増していくのが見るだけでわかった。
思ったよりも早く終わったので仕事へも間に合わなくなかったが、結局一睡も出来なかった為、仕事は休む事にした。
母は少し遅れて仕事に出かけた。
俺は誰も居ない家で一人過ごす事になった。
しかし、すぐにたまらない眠気が襲ってきて深い深い底に落ちて行くように眠っていった。

目が覚めると夕方近かった。
頭がハッキリしてくると、かおるの事が頭に浮かんできた。
もしかしたら、また入院する事になるかもしれないな。
かおるにはもう嘘は付けないだろう。
何とかごまかせて来てはいるが、もう限界だ。
相手はナースだし、病名をぴったり当てる事は出来ないかもしれないが、どこか変だともう思われているかもしれない。
そういえば、奈良の帰りにしきりに体調を心配していた。

いっそ、この時点で終わりにしてしまった方のが、後々お互いに苦しまなくても済むのかも知れない・・・。

初めからずっと上手く行くなんて思ってやしないさ。

強がる俺の気持ちとは裏腹に、心は真冬の北風が通り抜けたように冷たくなっていた。

                          <つづく>




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18話かぁ・・・。長くなってきたなぁ・・・・。
今年中に終わらせたいのだけど、この話・・・。





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Last updated  2005/12/27 03:14:20 AM
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