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2026年05月17日

分かるかい分かるかい分かるかい、やがてそこに映った、大空の。一生懸命、一生懸命、一生懸命生きようとしているよ、、、、、、、、、、君の名前を忘れたよ、液晶画面の硝子越しに、あるいは網膜の裏側、視神経乳頭の盲点のあたり、ちょうど鳥が翼を畳んで眠るような姿勢で、君の名前が蹲っていたはずなのに。成層圏と対流圏の境目を曖昧にしながら広がる、青のグラデーション、その上層ではプルシアンブルーが、中層ではセルリアン、下層ではターコイズが、分子の密度の階段を一段ずつ降りていく、いつか夢の中で無数のイメージで投影された、あのパネルの海を思い出す。、、、、、、、始まったんだよ、航空機の窓から見下ろす地上の街並みは、まるで回路基板のように光の粒を散らしながら、都市計画と欲望と物流が半田付けされた電子回路を見なよ、コンデンサみたいなマンション群。発熱する変圧器みたいな歓楽街。雨水を流す地下暗渠には、都市温度で温められたゴキブリが配管の裏を移動している、それはもちろん、バグさ。生体電流をシナプスに走らせるさ、そのメタファーの中で、もう新しい世界を始めているんだ。機内後方のギャレーでは、キャビンアテンダントが金属製カートのロックを外し、紙コップを重ねる乾いた音がした。電子レンジで温め直された機内食の匂い。トマトソースの酸味。加圧された客室特有の、少し鉄っぽい空気。誰かのイヤホンから漏れる微かなシンセサイザー。泣き止んだばかりの赤ん坊のしゃくり上げ。通路側のサラリーマンが、眠りながら咽喉を鳴らす低い呼吸音。そのすべてが、巨大な循環系の内部を流れる血液、そして僕は何処へ向かっているんだろう、永久凍土に覆われた最果ての場所、マンモスの牙が顔を出しかけている地層の真上か。それとも熱帯夜とサンゴ礁の、白々しい南の島の楽園、褐虫藻が日中の光合成の余韻で淡く発光している、あの白化しかけた珊瑚の枝の上か。コインを投げてさ、表か裏かって尋ねるんだ、百円玉の側面に刻まれた、ぎざぎざの溝の数まで僕は数えているって偉そうに言うけど、もう既に詐欺だって言っちゃ駄目だよ、そうだよ僕はどちらが表か裏かも言っていない、昭和六十三年だってフェイクニュースだよ、けど、この世界の歴史もそうじゃないかって、笑いながら考えているんだ。黄斑中心窩の視細胞がひしめく網膜の裏側が、牡蠣の殻になっていたら、何て美しいんだろうと思う今日この頃。都合の良い補完を見ているのに飽きたら、何も知らないふりをしている。待ちわびた八月の風、足の先から翳りて廻る風車。声、すなわち毎秒三百四十メートルの縦波を投げ出したなら、そのエネルギーの減衰の先、逆二乗則の彼方にあるのは永遠の沈黙。海馬の歯状回から忘却の彼方へ、樹状突起ごと欠落していく昨日。きらめく夏模様、水芭蕉の白い仏炎苞、睡蓮の蝋を引いたような花弁、蝶の鱗粉が触れた蜘蛛の巣の、放射状の縦糸と螺旋状の横糸が陽光にきらめく、あの風景にも、雨が通り過ぎ―――た・・。子音と母音の組み合わせが、どうしても正しい配列で並んでくれない。熱を帯びて蒸気を立ち上らせ、タイヤの跡が残る溝に細かな砂利が溜まり、蟻が列をなして運ぶようなものさ。声帯が震え、空気が振動し、音波となって、街路樹の葉を揺らし、電線を震わせ、遠くのマンションのベランダに干された、まだ湿り気を残したタオルの端を、わずかに揺らしていくみたいな、バタフライエフェクト、その揺れの連鎖の何処かに、君の耳朶があったはずなのに、今はもう、その座標が分からない。絶対音感の僕は、心の中ですべての音を掻き鳴らして、蜜の香りと棘の痛みに溺れる。世界は巨大なオーケストラだ。しかも指揮者不在の。ヴァイオリン群が勝手にボーイングを始め、金管群がバッファロー・コルネットで割り込み、ティンパニが誰の合図もなくロールを打つ。でも時々こういう風に考えることもある、だから僕は相対音感のふりをしているんだろうって。ウィー、ウィー。焦ると...ますます...思い...出せない...からじ...れったい...。圧倒的に圧倒的に。(ウィー、ウィー、)グレースケールがカラフルになる、雑踏が台風になる、圧倒的に圧倒的に。君ハ君ハゲームノ攻略本ヲ見ツケルンダ、美シイ季節ガ動物園ニナル、送電線カラ揮発性ノ音楽ガ流レテクル。マンホールノ蓋ノ隙間カラ、地下ノ暗渠ヘト落チテイク水ノ音ガ、カスカナ打楽器ノヨウニ、都市ノ鼓動ニ混ザッテイル。海外観光客ノ笑イ声、大型ビジョンノ広告。SNS配信用のリングライト。全部ガ渦ニナッテ、人間ヲ飲ミ込ンデイク。「こみあげる、なまめかしくて。」雨のおかげであらゆるものの色がくっきりと見えた、海も町もすべて灰色に濡れて、紫陽花が、向日葵が、ダリアが、その排水溝のなかに沈んでいくのを眺めていよう。春夏秋冬が、檻の中の動物のように、番号を振られ、解説され、イベント発生条件として整理されていく。世界五分前仮説も、水槽の脳も、マトリョーシカのような地球の中の地球も、い、入れ子構造の宇宙論。ホログラムのような人の中の人も、と、投影原理の自己言及。ひたすらに乾きゆく背中の夏の太陽の地図が、一気に剥がれ落ちるまで。ほら、ほら、ほら!人々の傘の群れは、衛星写真で見る低気圧の渦のように、ゆっくりと、しかし確実に、中心へと巻き込まれていく、僕等は蟻だった、薔薇の花の中の斜面へと吸い込まれて―――いく・・。フィードバック、薄墨色の。(LANケーブルが延びてゆく...)“What?”フラッシュバック。真昼時の、蒼き綾。取り消しの効かないことを笑いながら、凶々しい鬱屈した感情で、挫折していく君を見ている。もうさ、記憶が輪郭を失い、感情だけが残る過程を、顕微鏡で拡大して見ていたいのさ。(誰も知る由もないよ、)身体中に満ちた切なさに溺れながら、常軌を逸した、あの日吐いた嘘が耳の奥で熱い。ねえ、まだ世界に触れたことのない、淡い色の皮膚を、ぐちゃぐちゃに掻きまわしてみたいのさ、才能のない歌は人生の無駄だ、生きている価値のない君はもういらない、(気持ちいいよ、)、、、、、、、、、、、すれちがうとき火の匂い。燐の発火する、あの一瞬の硫黄に似た香気で、長い夢から目覚める。どうしてそんなに走り去っていくんだ、ずっと前から、好きだった―――のに・・。ルーターの小さなLEDが、規則正しく点滅し、データの送受信を示す。降りしきる陽射しのうねり出す向こう側に、瞳を細めていた君を思い出すんだ。高速道路では西から東に向う車が何キロも数珠繋ぎに渋滞して、じっと眺めていると、それらは雨の中で少しずつ溶けかけている、蛞蝓みたいに見えた。まだ世界という名の汚染に触れたことのないものとは、いま消えてなくなるもののこと、そんなことを考えてみたことはないだろうか、深夜のコンビニの駐車場、あるいは、SNSのタイムラインの片隅で、君は何度も、小さな失敗を積み重ねていくけど、そのことに本当の意味があるかどうかなんて、死の造形力の前では、本能の生み出した視座の前では、どんな近いところよりも、さらに遠いかも知れない。そうさ、水の膜の向こう側へと滲んでいく。テールランプの赤い光が、濡れた路面に反射して、長い尾を引きながら、ゆっくりと形を失っていくそのときに、人生や生き方が影を落としていることに、何となく気付くような取りこぼしを、いまでも繰り返しながら。前頭葉の奥底から鳴り響いている、エマージェンシーコール。もし君がそれを望むなら僕の才能のすべてを賭けて、それこそが自由だと呟いてみたい、土地や星の名前が人の名前だったかも知れないみたいに、神の名前も、ありとあらゆる名前のうちの有り触れたもので、美しいとか綺麗とかなんてなかったのに、それがあとあとになってプログラムされていった、洗脳されていった、マインドコントロールされていった、儀式化され、様式化されていった、そして僕が最後の場所らしきところで、そのすべての反対の意味を完璧に証明する、神はいた、そして神を僕は確かに何か変な名前で呼んでいた、一緒に遊んでいた、でも記憶には残らなかった、そしてそいつが毎日いたるところで違う顔をして見かけられる、この世界の秘密がその名前の中にある、単純なことだよ、全部嘘だったって言ってしまえば解き明かされる、永遠の不毛の一歩手前でいいじゃないか、だって僕等は何もかもでありうるんだろう、そして何もかもではないと言い切れるんだろう、だったら僕はそういうのがいい、もう何年もずっとそうさ、何百年も誰もいない場所で考えるのを止めて、ずっと静かにしていたい気持ちを抱えている。鍾乳洞の最深部、滴る水滴が石灰岩の柱を一ミリ伸ばすのに、百年かかる、あの暗闇のなかで、生き物を止める準備をそろそろ始めてもいいかい?ウィー、ウィー。焦ると...ますます...思い...出せない...からじ...れったい...。圧倒的に圧倒的に。(ウィー、ウィー、)コンビニが集合住宅になる。空き地が高層マンションになる、人は宇宙人になる。逃げてね/おいでよ右へ/左へ恍惚かって言って/畏怖かもと言う愛かもと言ったら/憎しみと答えて天使が死んだら/悪魔も死ぬ記憶が浮上すれば星が見えて来る、漂白された昼と夜、それでもまだ影のように去ることのできない世界が続く、かつての路地裏の猫の寝そべる石畳、小さな公園の錆びたブランコ、君と立ち話をした電柱の影、すべてがCAD図面の記号に置き換わっていく。透明な期待になりながら、静かな笑いを浮かべながら、快適、未来、ラグジュアリー、いつまでだって終わらない中身のない会話、素敵ね、そうだね、幸せだね、でもちょっと馬鹿だね、その安らかな天国でも地獄でもない、もう一つの世界が見えてくる、(はずだ、)もう一つの世界が見えてくる、(はずだ、)港の突堤が溶け、クレーンが溶け、建ち並んだビルが溶け、黒い雨傘も溶け、ふと見上げた、巨大な極彩色の電光掲示板が、様々なメッセージを伝えている、株価やニュース速報や、広告コピーを映し出すから鼻で笑ってしまう、「今を生きろ」とか、自分中心の世界を止めない限りそれは無理でしょう。ほら、誰かの人生がその裏で静かに破綻している。「未来を変えろ」とか、戦争ごとき平和ごとき出来ないこの世界に、一ミリの期待をすることなんて誰にもできないでしょう、本音はシリアスだ、知り合いが借金大魔王になってしまった、(耳から離れない言葉がある、結婚したら態度を変える男や女もいる、)あなたの周囲が地雷だらけだったらいいのに、ヤフー知恵袋の無責任な回答者や、承認欲求モンスターのインフルエンサーの周囲から、(歩かなくていいよ、)あなたの家だけ爆弾が落ちればいいのに、おお、なんて美しい花火、空っぽの奴等の言葉もこんなに美しい花火、(もう何も喋らなくていいよ、)大きく揺れるカーテンのような雨景色なんて、一ミリも知らずに。ピサの斜塔のように崩れそうな不思議なバランスで続く、中身のない会話が青かった。もうすぐ失われる視野の中に入っていたい、水がインクの中に溶けてゆく一日を終わらせよう。君ハ君ハラムネノ空キ壜ヲ見ツケルンダ、ソコニレコードガ入ルコトヲ妄想シテイル、地下鉄デハ今日モ迷子ガ生マレルカラ、イツマデモ愛ガ欲シイ人々ヲ戸惑ワセルカラ。ソレデモ言葉ノヒトツヒトツガマダ美シイ、水圧ニ押シ潰サレソウニナリナガラ、業ヲ飼イ慣ラシナガラ、ソレデモカロウジテ形ヲ保ッテイル愛。「かどわかす、声をなぞりながら。」蛇口でペットボトルに水を入れて冷蔵庫に入れる、透き通ったその水が透き通るままに腐ってゆくのを、何処かの映画みたいに思い出している僕は、ストックホルム症候群を誘う誘拐犯の囁きのようでもあり、生殖本能に根ざした恋人の甘い誘いのようでもあり、社会規範をインストールする教師の諭す声のようでもあり、扇風機の風が、ほつれ毛を弄ぶように襟元をくすぐる、その一瞬に崖上に咲いていた危うい花の名前を思い出す、ほら、風だ見えるかい?君が走り去った跡だ。愛おしい体温を持って、僕等は駆け抜けた。窓にはただ全体的に暗くなっていく一枚だけの景色が、貼りついていた、そこに、ひっそりと、崩折れながら呼吸する、夜の植物の匂い、ゲオスミンやフィトンチッドの匂いを運んで、ああもちろん、証明書も、契約書も、保証書もない、気の狂った新時代のムードを形成する、夜風は思いがけないほど冷たくて、救いなのか呪いなのかは、まだ分からないまま世界は後方へと流れていった、汗の粒、雨滴の反射、光の屈折、指紋の渦、息の温度、瞳の震え、陳腐な言葉が美しいなんてことはない、高架下の湿ったコンクリートの匂いも、真夏のアスファルトの照り返しも、自転車のブレーキワイヤーの軋みも、君の髪についたシャンプーの匂いも、全部まとめて、メールストロムの旋渦を誘う、でも単純なことがこの世界には必要なんだ、僕は君を愛していた、(だから君は笑ったんだろう、逃げ場所のない世界を知っていたから、)本当にただ君のことを愛していた、(もう一度世界を作り変えてみる?全部何もかもやり直してみる?そんなことの中に真理や愛は眠っているだろうか、寝ぼけているそいつの目を潰して、何も見えないこの世界を明るくしよう) 、、、、、、、、、、、、、、―――今日も地球は自転を続けている。赤道上では時速千六百七十キロで、極点ではほぼ静止しながら、傾斜角二十三度四分の地軸を、ほんの少しずつ歳差運動させながら。
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