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2008.07.15
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カテゴリ: 読んだ本
1974年~1982年 週刊朝日に連載
1987年9月 新潮文庫より(平成17年1月 44刷改版)

徳川家康が方広寺の鐘銘に難癖をつけるなどして強引に豊臣方を開戦に追い込むのを見てとった
真田幸村は、密かに九度山をむけ出て大坂城に入ることを決意する。大坂入場を果たした幸村は、
外堀の外に真田丸と名づけた小さな砦を設け、これによって徳川軍を散々に打ちすえる。この
一戦によって幸村の武名が初めて天下に轟くが、すでに家康の和平工作が淀君周辺に及んでいる
のだった。

(裏表紙の内容紹介より)

とうとう大坂冬の陣。
ずっと機会を狙っていた家康、方広寺(ほうこうじ)の鐘名事件で開戦に踏み切ります。

方広寺(ほうこうじ)の鐘名事件というのは、秀吉が建てて地震で崩壊した方広寺大仏殿を
豊臣家が再建して、その梵鐘の銘文が「国家安康」と「君臣豊楽」であったため、
「国家安康」の「安」の字で「家康」の文字を引き裂いて呪うもの、
「君臣豊楽」は「豊臣を君として楽しむ」と豊臣家の反映を願うものであると、


真田幸村も九度山を脱出し、息子の大助を伴って大坂城に入ります。
九度山を出る前に、幸村は大助に問いかけます。

「父と共に死ぬるか、それとも、沼田の叔父上(信之)の元へまいるか・・・どちらでもよい。
 いまここで大坂城へ入場することがよいともいえぬ。この父は、わがままな性分ゆえ、
 母や子たちの行く末も思案せずに入場するのじゃ」
「父上は、何のために大坂へ入場をいたされますか?」
「大御所の首を討ち取るためである」
「父上のお供をつかまつります」


この父はわがままな性分ゆえ、ですよ。
すごく幸村らしいセリフだと思う。
幸村の本意は、既に徳川をうち倒して豊臣の天下を取り戻す、などというところにはない。
「わが戦の仕様を、天下に問うてくれよう」それだけです。

そのことは、兄である信之も理解しています。
幸村が大坂側からの誘いに応じず、豊臣に味方しないことを表明すれば、恐らく九度山での
謹慎が解かれ、信之の居城である沼田へ引き取ることが許されるだろうと見ている。
が、しかし「果たしてそれが、弟ほどの漢の本意にかなうであろうか」と。
それはきっと死ぬよりもつらいことだろうと、わかってしまっているんです。


それを追って、沼田の信之の下にいた向井佐平次も、沼田を出奔してやってきました。
幸村は出丸『真田丸』を建てて、そこで配下に付けられた牢人達の調練などもして、彼等の心を
がっちりつかんでしまいます。
志気の高い真田軍は赤備え。
超カッコいいです♪


でも結局、戦闘が始まった時には、徳川軍は真田軍に手痛い目に合わせられるんだけどね。

それにしても、冬の陣はいろいろ残念です。
豊臣の総大将はもちろん豊臣秀頼。
しかし、9巻で幸村を感動させたほどのたたずまいというか、雰囲気は失われてしまいました。
怠惰が堕落を招いてしまった様子。
それでも微かに、武将の心は残っているようですが、戦の経験がないため、発言は控えています。
それに代わって、物事を決めているのが淀君と大野治長。
大野治長は文官で、「豊臣のために」という気持ちは強いですが、戦のやりようを知らない。

幸村の提案する策は、この2人に全然受け入れられない。
危ないから、失敗したら困るから、などと言って何もさせてもらえず、チャンスはどんどん
失われてしまいます。

まるで関ヶ原の戦いにおける島津義弘や宇喜多秀家を見るようです。
夜襲の提案とか、彼等もいろいろしたけど、結局は石田三成に受け入れられずに西軍は敗れた。
やっぱねー、文官が戦をしちゃいかんよ。

それでも、秀吉が築いた名城「大坂城」ですから、そう簡単には落とせない。
長引けば徳川軍が不利になるにも関わらず、豊臣軍内部にいる徳川への内通者やら何やらで、
結局は家康の口車にのって、淀君や大野治長はうかうか和平に応じてしまいます。
そして外堀はおろか内堀まで埋められちゃう。
愚かの極み、という感じ。
これじゃあ豊臣は滅ぶよね、どう考えても。

それにしても、「ああ、時代は移ってしまったんだなあ」という印象ですよ。
幸村のような「武士の心」を持った武将は、もうほとんど残っていない。
豊臣軍にあっては、幸村と後藤又兵衛基次くらいのものです。

じゃあ徳川軍はどうかって言うと、こちらも戦国時代を戦い抜いた武将達は既に死去して、
次代に替わっている。
残っているのは、老いた家康くらいのもの。

そのため、幸村の心意気や真田丸の怖さを誰よりもわかってくれる人は、実は徳川家康である
という皮肉な結果になっています。
時代の流れには誰も逆らえないんですねえ。

次の11巻は、たぶん夏の陣が中心になるのかな。
幸村の最期も近いんだろうか。
ちょっと溜息でちゃう。






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Last updated  2008.07.15 17:18:48
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