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2012.08.01
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カテゴリ: 読んだ本
訳:大西 憲
1998年 2月 ハヤカワ文庫より


最終戦争ですべてが崩壊し、廃墟となったアメリカで、人々は小さな集落をきずき、
やっと行きのびていた。ゴードンは、そんな世界をひとりで生き抜いてきた男だった。
だが、山中に遺棄された郵便配達のジープを発見したとき、彼の運命は大きく変わった。
郵便配達の制服を着たゴードンは、アメリカ再建をめざし、孤立無援の戦いに挑むが・・・。
キャンベル記念賞、ローカス賞受賞、ケビン・コスナー監督・主演で映画化の話題作。

(裏表紙 紹介文より)


アメリカ西海岸のオレゴン州が舞台。
『最終戦争』後17年が経過した世界で、現代文明社会は崩壊し、
無法の世界に生き残った人々は、小さなコミュニティを維持するのがやっとという状態。

主人公は戦争勃発時には10代の大学生だったゴードン・クランツ。
訪れた集落で、一人芝居を演じてみせて報酬として宿や食料を得ながら旅をして、
安住の地を探している。


そんな時、たまたま郵便配達のジープを発見する。
ジープの中には殺された郵便配達員の骸骨化した遺体。
ゴードンは郵便配達の制服・制帽・配達されなかった手紙類などを手に入れる。
衣類を失っていたゴードンはそれらを身に着け、次の町へ。
人々はゴードンを本物の郵便配達員だと思い大歓迎。
それらしく振る舞いながら旅を続けるうちに、ゴードンのついた嘘、
つまり、復興合衆国政府が設立され、再び郵便配達網を確立しようとしており、
自分は政府の査察官である、という嘘が広がっていき・・・・という話。

ストーリーとしては面白い話なんですが、訳がよくないのか、
作者がわかりやすい親切な書き方をしていないのか、いろいろと理解するまでに
ちょっと時間がかかる本でした。


『終末戦争』後の崩壊した世界、横行するサバイバリスト(ホルニスト)と呼ばれる暴力集団、
町を襲うサバイバリストと戦う主人公と町の人々・・・。
ケビン・コスナー監督・主演で映画化されたそうですが、なるほど映像で見れば
いかにもアメリカ映画らしい仕上がりで悩む所はなかったんじゃないかと思われます。
見てないからわからないですけど。


細かい点がわかりにくい。
内容的にはおもしろかったと思います。

以下、ネタバレとなりますので間を開けておきます。
























まず『最終戦争』について。
世界規模の核爆弾とかではなく、中規模の災害が次々に起こったという設定。
どれか1つだけなら、どの災害でも人々は耐えられたが、
重なったために被害が拡大し、文明社会を維持できなくなったということみたい。

具体的には、海上と宇宙における最初の『技術戦争』が大陸に広がったこと。
疫病。
疫病がひどかった東半球では悪魔の兵器(核かな?)が制御を失い、死の灰を降らせた。
死の灰から逃れようとした避難者が、医療機関のもろいネットワークをダメにした。
病原菌の侵入を怖れた市町村が線路や道路を封鎖し、飢餓が広がった。
核兵器の一部が使用され、<3年間の冬>をもたらし、三度の凶作が起きた。
その中でも、最悪の事態をもたらしたのがサバイバリスト達だった、となっています。

一般的なサバイバリストをネットで調べると、サバイバリズムを信奉・実行する人。
サバイバリズムは生き残り主義。
核戦争や地震にも生き残れるように、核シェルターを作ったり食糧を備蓄しておくことで、
別に悪いものではありません。

しかし、この小説内では戦うべき『悪』という形で描かれます。
サバイバリストの聖者と言われたネイサン・ホルンが提唱した思想の狂信的支持者達なので
ホルニストとも呼ばれます。
力の強い者が全てを支配し、弱い者はそれに従うべきという弱肉強食の思想で、
侵略・破壊・殺人・誘拐(奴隷にするため)という無法の限りを行うプロの殺人集団。
彼等のために交易網がずたずたになり、町同士が相互援助ができなくなった孤立化したみたい。

主人公のゴードンが最初に襲われて全てを奪われたのも、こういう集団です。

ゴードンは旅を続けているので、サバイバルに長けた人間。
正義感があり、大学で議論をしていた平和だった時代への郷愁も強い。

郵便配達員の制服を手に入れ、訪れたパインビューという村で厚遇を受けます。
村人が勝手にゴードンを郵便配達員だと思い込んで、文明社会を思い出してのことでした。
ここで押し付けられた手紙を持って、次の町オークリッジへ向かったゴードン。

ここでは市長が独占的に町を支配していて、農夫達は作物の種のために市長に借金をし
収穫物は全て搾取されている状態を見る。
直前に、よそ者を警戒する人々に襲われ、廃墟で発見した薬を奪われた恨みもあって、
ゴードンは町を訪れ、郵便配達網を復旧させようとしている復興合衆国の査察官だと言って
市長と対決することになるのです。
市民達の前での市長とのやりとりが、緊迫感がありました。
信じる気のない市長に対し、本当に郵便配達員であると信じさせるために、
パインビューで預かってきた手紙を出し、受取人はいないかと呼びかけるゴードン。
しかし、宛先人は皆死んでいる。
市長は「電話帳から名前を拾ってきたに違いない」と決め付け、人々は半信半疑。
「ミス・グレース・ホートンさんは」と言った時、市長が「町にそんななの人間はいない」と
勝ち誇り、立ち去らないと撃つと脅す。
しかし、1人の女性が「ホートンは私の旧姓、市長が来る前に結婚した」と名乗り出る。
人々はわっと喜び沸いて、ゴードンを歓喜と共にゴードンを郵便配達員と認め
町に受け入れるんです。
いいシーンでした。

こうして、実際には存在しない復興合衆国政府の査察官というゴードンの嘘は広がり、
同時に、訪れる町々でゴードンが任命した郵便配達員たちにより、ささやかな郵便配達網が
機能し始めるのです。

その後、ゴードンはコーヴァリスという北部の町で、サイクロプスというスーパーコンピュータが
生きているという噂を聞きます。
このコンピュータは学習し、知能を持つことができるみたい。
このへんがSFっぽい感じ。

その町ではコンピュータの指示に従って、世界の復興を目指し、近隣の町に対しても
助言や指導をしています。
ゴードンは喜んで、もう嘘はやめてこのコンピュータのために働きたいと考えます。
しかし、実際にはそのコンピュータはサバイバリストの襲撃により既に壊れていて、
一部の技術者達がそれを隠して、助言や指導を行っていただけ、と知ります。
絶望するゴードン。
でも、復興合衆国政府も幻のスーパーコンピュータも人々に希望を与えるという点では
同じものだと思うんですよね。
嘘から出た誠って言うの?
こうやって新たに建国がされていくのかなあという希望のある話っぽかったんですよ。

しかし、そこで『敵』であるホサバイバリストの登場で、正義vs悪の対決に。
この危機に、ゴードンはシュガーローフ山の主と言われるジョージ・パウハタンという
南部の勇者に援助を頼みに行くのですが、断られてしまいます。
パウハタンは最終戦争の時、国のために戦っている間に妻子を殺され、
国などの大きな力のために戦うのではなく、自分の手の届く範囲の大切なものを守りたい
という考えで今は生きているからです。

パウハタンなしでゴードン達は戦うことになり、負けて捕虜になってしまいます。
ここでサバイバリストの謎が解ける。
彼等の内の支配者である少数人は、戦争前のアメリカ軍が兵器として使用するために
肉体改造を行って超人的に強くなったスーパーマンであることが判明。
このへんもSFっぽいかな。
改造人間に殺されかけるゴードン。

あわやという時に、パウハタンが来てくれます。
実は彼もスーパーマンだったのです。
強い男を集めて作った改造計画は、平時に凶暴な戦士となるため失敗として断念されましたが、
その後、軍は人間性を重視して人を選び改造計画を続けていたのです。
パウハタンは人間性重視組。

サバイバリストを倒したパウハタンに、ゴードンがなぜ来てくれたのか訊ねる。
すると「あの娘達に動かされてしまった」と答える。

あの娘達、というのはスーパーコンピュータに仕えていた女性達。
その中にはデーナというゴードンの恋人?もいました。
ヒロイン役なんだと思うけど、彼女の言動がよくわからない。

強くてりっぱな男もいるでしょうね。でも凶暴な男だっている。
そして、この凶暴な男たちは世界を滅ぼしてしまうかもしれないのよ。
女よ、男を裁きなさい。
りっぱな男とひどい男との間にある昔からよくある戦いを、二度と許したりしてはならないの。
女よ、自分でも責任を負いなさい。
そして、自分自身の才能を、この闘争に持ち込んで・・・・。

決して忘れるな。
最もりっぱな男たち-----英雄たち-----でさえ、時には自らの義務を怠るものだということを。
女よ、時には男に思い出させてやりなさい。


という思想に基づいて、デーナとその指導を受けた娘達40人。
彼女達はサバイバリスト達の所へ出向き、強い男に憧れている、農夫の妻はイヤと偽って
彼等の妻や愛人となり、期日を決めて一斉に蜂起し、サバイバリスト達を殺すという計画を
実行したのです。
計画はサバイバリスト達に漏れ、作戦はわずかなサバイバリストを殺害したのに留まります。
そして彼女達は全員死んでしまう。
デーナも、捕まっていたゴードンと同じ場所に運び込まれ、その腕の中で死んでしまう。

こうして書くと感動的っぽいんですが、小説で読むと、彼女達の行動が唐突なんですよね。
事前には、何か計画があって、ゴードン達にそれは絶対ダメだと止められている、としか
出て来ない。
クライマックスを盛り上げるために、意図的に詳しく書かなかったのかもしれないけど、
え?何これ?といった印象でした。

前述の引用部分も、最後に世の女性達に残された教訓として登場するので、
読んでいる最中は、デーナの行動の動機がわからないんですよ。
デーナについて「本物のフェミニストがいまだにいるとは」みたいな発言があったので
女性の権利について、作者が何か訴えるところがあったのかもしれないけど、
私には読み取れませんでした。

※ フェミニズム
  性差別を廃止し,抑圧されていた女性の権利を拡張しようとする思想・運動、性差別に
 反対し女性の解放を主張する思想・運動などの総称。


最後は、郵便配達員として査察官として、また旅立っていくゴードンで終わります。
再び建国を目指すフロンティア精神にあふれるアメリカの象徴って感じ?
デーナの部分がよくわからなかったけど、いいエンディングなんじゃないかと思います。





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Last updated  2014.02.11 21:29:26
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デーナは  
ヘルヴァ さん
正直好きじゃないですね。
思想もよくわからないし、賛同もできない。
彼女はサイクロプスの庇護の中で育って、外の悲惨な現実を全く知らないので
頭でっかちで理想ばかりな感じがします。
この小説、けっこうアメリカ人でないとわからないのかな?な部分があります。
郵便屋さんに対する人々の感情の持ち方とか
なんでたびたびベンジャミン・フランクリンがでてくるのかとか
もしかしたらデーナにも何かそんなものがあるのかな???
ただ、ゴードンさんがひじょーに好きなんですね、私。
誰かが言ってたけど『ロマンティストの生き残り』だったかな?
皆自分が生き延びることしか考えてない時代に
まだ理想を捨てきれずにいるあたりが…
余談ですが
第一部と第二部(続編?)は別々にかかれたものらしいです。
そういわれるとカラーが違うのもちょっと納得するかな?
映画は、ホルニストとの戦いがメインになっていて、サイクロプスは出てこないそうです。
私はCD借りたんだけど、序盤でがっかりして見るのを止めてしまったのでわかりません(^_^.)
(2012.08.01 22:35:20)

トータルでは楽しめた1冊(^^)  
ヘルヴァさん
-----
デーナは私も好きになれませんでした。
自己犠牲を賛美するような思想、他に選択肢がないならともかく、
積極的にすることがフェミニズム???って印象です。
解説で、郵便屋さんはアメリカ開拓時代に郵便網が整備されていったとのことで
開拓=復興、古き良きアメリカの象徴という感じなのかな?と理解しました。
でも他はわかりにくい点が結構ありましたね。
ゴードンはいいですね~♪
オークリッジの町での市長との対決はドキドキしました。
こんな感じで彼が架空の復興合衆国を作り上げていく話が続くのかと期待していたんですよね。
後半のホルニストの戦いは、アメリカ人が好みそうな正義vs悪でしたが、
私的にはそっちにいっちゃったか~という残念感がありました。
メインじゃなくサブ的な要素ならよかったんですけど。
映画はイマイチなんですね。(^^;
じゃあ見ないでおこう。
面白い本を紹介してくださってありがとうでした!(^^)
(2012.08.02 10:19:17)

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